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禊祓詞

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 俺の男の証明の部分が、茶髪女の唇にあと少しまで迫ったところで、緖美は俺に待ったをかけた。  俺の中の黒い欲望がピークに達していたので、素直にそれに従う事を躊躇ったが、愛する緖美の意見に逆らうわけにもいかない。  俺は渋々、女の口から俺のシンボルを遠ざけて、緖美の次の行動を待った。 「ねぇ……あなたは分かっているのかしら。私が智春に抱かれるということの意味を。私は本当の陽奈美になるのよ。つまりあなたはこの先、2度とこの世に現れなくなるの。だって本物の陽奈美がここに居るのだから。つまりこれは、あなたが『彼』に触れられる最後のチャンス。彼をその身体で愛することが出来る唯一の機会。それなのにそんなに嫌がって、受け入れることを拒絶していて良いのかしら。後悔はしない?」  顎関節に添えていた手を離して、その白い指先で女の顎をクイッと持ち上げるようにして緖美が言う。  その目をじっとのぞき込んで。  涙混じりで不安に揺れている、髪と同じ茶色の瞳をじっとのぞき込んで。  まるで彼女の心の中を見通すかのようにしながら、緖美は口を開く。 「最後にもう一度だけ聞くわ。これが本当に最後の機会。あなたは智春のモノをその唇で愛したいの?それとも例え二度と触れられなくても彼のモノを愛することを拒絶する?こたえて」  再び残虐な笑みを浮かべて、女を見下ろす緖美。  先ほどとは違い、女は即座に拒絶することはなかった。  緖美の言っている言葉の意味を、吟味しているのかもしれない。  明らかに先ほどとは違う、迷いの色が彼女の顔に表れていたのだから。  そして女のそのような不安げな表情が、俺の中の黒い欲望を更に駆り立てていく。 「智春ももう我慢が出来ないようね。さぁ……どうするの?」  最後通牒を叩き付けるかのようにいう緖美。  女は力なく項垂れて、消え入りそうな小さな声で「愛させてください」といった。 「あらあら……残りかすといえど、あの陽奈美が、遂にその言葉を。墜ちたモノね、いえ最後の最後でようやく素直になったというべきかしら」  楽しそうに笑う緖美。  緖美の手が女の下着、胸を覆っていたブラジャーにかかる。 「最後だもの、ちゃんと見て貰いなさい。触れられることもないくせに立派に育ったあなたのその胸を」  緖美の言葉責めに女は羞恥の色を浮かべた。  止まることのない涙が、彼女の心情を表しているように見えて、俺は少しだけ心が痛んだ。    しかしそのふくよかで汚れない乳房を見た時、俺の中で欲望の炎が更に激しく燃えさかった。  先ほど感じた胸の痛みなど、瞬時に消え去ってしまうほどの強い炎で。 「なぁ……緖美。この女の女陰ほとにさえ入れなければ何をしても良いよな……」  自分のモノとは思えない、低くかすれた声に恐れを感じる。  だがそんなことはどうでも良いと思えるほど、身体を突き動かす衝動が抑えきれなかった。 「あら……ちょっと妬ける発言ね。でも良いわ……女陰ほとさえ入れなければ許してあげる、ただし今回だけね。これから先は絶対に許さないわ。智春……あなたの髪の毛一本に至るまで、全部私のものなのだから……今回は本当に特別。この哀れな陽奈美の残りかすに対する最大の慈悲、それが分かっているなら良いわよ……あんたの好きなように汚してあげて」    俺の肩にしなだれかかるようにしながら、熱い息と共に耳にささやく緖美。  俺の手がゆっくりと、目の前でその姿をさらした豊かな乳房へと伸びていく。  リィン……リィン……リィン  甲高い金属音、いや鈴の音が規則正しいリズムで部屋の中に広がっていく。  俺は何事が起きたのかと周囲を見回すが、変わった様子はない。  緖美は俺とは対照的に、先ほどの笑みも余裕も忘れたかのように蒼白な顔色に変わっていた。  音の発生源を探そうとしているのか、落ち着きなく部屋の中を見回している。  そんな緖美とは対照的に、茶髪女の表情には余裕が戻っていた。  リィン……リィン……リィン  リィン……リィン……リィン  リィン……リィン……リィン  間断なく続く鈴の音。  その音が繰り返される度に、俺の中の黒い感情が徐々に消えていき、身体を突き動かしていた獣のような荒々しさも消えていく。  高天原尓神留坐須たかまのはらにかむづまります~♩神魯岐神魯美乃命以氐かむろきかむろみのみこともちて♩    鳴り続ける鈴の音に重なるように、透明感のある美しい女性の声が響き渡る。 「誰が……まさか妹の方が……なんてこと、なんでいつも私の邪魔ばかり!!」  怒りの感情を爆発させる緖美。  比例するように冷静さを取り戻していく俺。  頭の中のモヤも消えていき、身体にまとわりついていたような重い気配も薄れていく。  そして俺はようやくにして、目の前に居る茶髪女の名を思い出す。 「稲森……陽女……か」    禊祓比給布時みそきはらひたまふときに爾生坐世留あれませる祓戸乃大神等はらへとのおほかみたち  美しい響きの女の声はまだ続いていた。  聞くものの心まで浄化するような、清涼なる空気が部屋の中に満ちていく。 「……私は絶対に、本当の陽奈美になる……絶対に諦めないから!」  蒼白な顔をしたまま緖美はそう言い捨てると、慌てて部屋から出て行く。  俺はそれを追いかけようとしたが、体中から力が抜けてしまったかのようにその場でふらつき、床に跪く。  そんな俺の身体を慌てて受け止めてくれたのは陽女だった。  彼女はショーツ一枚だけで手足を縛られていたので、受け止めるというよりは俺の下敷きになるような形ではあったが。  温かくて柔らかで、そして良い匂いに包まれているのが分かる。  我に返ると、不可抗力とは言え俺は陽女の豊かな胸に顔を埋めるような形になっていた。  先ほどまでのどす黒く、衝動的な感情はすでに消えていたが、俺も健康的な男子高校生だから、陽女のその柔らかな胸の感触に抗うのは困難なことは周知の事実だと思う。  俺は起き上がろうとするものの、男子高校生らしい感情と欲求からつい躊躇ってしまい、結果的にずっと陽女の胸に顔を埋めたままになっていたのだが、わざとらしい咳払いの声で我に返り、慌てて立ち上がった。    急に立ち上がったからか、まだ力が戻っていないのか分からないが、再度倒れそうになった俺を誰かの手が支えてくれたため、俺はもう一度無様に床に倒れることだけは回避できた。  ふと手の持ち主を見てみると、そこには笑顔では在るモノの、妙な迫力を感じさせる、美月の姿があった。 「美月……あなたの禊祓詞みそぎはらえのことばのおかげで……助かりました……」  縛られたまま俺の下敷きになっていた陽女が、恥ずかしそうに頬を染めながらそう言った。  美月は上半身が完全に裸の姉をチラリと見て、その後かなり冷たい視線で俺を見て、ため息を吐くと慌てて陽女のいましめを解き、彼女の身体を俺の視線から隠すようにしながら服を着せていた。  俺はそんな美月から見えないように、そっとトランクスとパンツをズリあげ、けだるさのままベッドにもたれかかってその様子を見ていた。 「美月……よくここが分かりましたね、それにあの者の織り込んだ呪法をよく解除できましたね」 「あれは……守藤特有の方陣だったから……私に解けないはずがないわ」  複雑な表情、悲しみと怒りとどこか諦めにも似た表情をその顔に浮かべたまま、美月はささやくようにそう言った。  そんな美月の言葉に陽女もまた同じような表情を浮かべていた。  彼女たちの過去に、なにか守藤との関わりがあったのかもしれないなと、俺はぼんやりそう思った。 「それで……智春さま……姉に何をしようとしていたのでしょうか。その辺りはっきりお聞かせ願えますよね?」  しばらく時間が経過して、気持ちが落ち着いたのか、美月の矛先が俺に向いた。 「私の大切な姉を、あのような恥ずかしい格好にした上で……その……その、不浄なものを押しつけようとしていましたよね!」  美月の目がスゥッと細められて、俺が今まで見た中で一番冷ややかな視線を俺に向けて、詰め寄ってくる。  俺の意思のようで、俺の意思ではない様なそんな不可思議な状態で有ったとは言え、最愛の姉を汚そうとした俺を許せないという美月の気持ちは理解できたので、俺はその攻めを甘んじて受けようと覚悟を決めた。  逃げることなく美月の視線をしっかりと受け止める。 「……見苦しい言い訳や、適当な言葉でごまかそうとしない、そんな智春さまですからこれ以上は何も言いません。恐らくそれも全て守藤の術中だったのでしょう。」  俺がまっすぐに美月の視線を受け止めたからなのか、小さくため息を吐いた美月は少しだけ視線を和らげて俺にいってくれた。 「ことがここまで進行している以上、もう全てをお話しするしか無いのかもしれません……」  美月とのやり取りが終わると、服装を整え終えた陽女がそう言って俺の近くまでやってきた。  美月の表情にかすかな緊張が走るのが見える。  相当に大事な話があるのだろうと、俺は大きく息を吸って吐いた後、彼女たちをじっと見つめる。 「何処から話せば良いのか……見当もつきませんが……そして長い話になりますけれど」  陽女が苦しそうな、それでいてどこか諦めたかのような表情を浮かべて俺を見つめる。  その隣に座っている美月はやはり悲しそうな顔をして俺を見つめていた。  そこで俺は知ることになる。朋胤とは陽奈美とは、そして俺が想像もしていなかった長い長い因縁の話を……    



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 俺の男の証明の部分が、茶髪女の唇にあと少しまで迫ったところで、緖美は俺に待ったをかけた。  俺の中の黒い欲望がピークに達していたので、素直にそれに従う事を躊躇ったが、愛する緖美の意見に逆らうわけにもいかない。  俺は渋々、女の口から俺のシンボルを遠ざけて、緖美の次の行動を待った。 「ねぇ……あなたは分かっているのかしら。私が智春に抱かれるということの意味を。私は本当の陽奈美になるのよ。つまりあなたはこの先、2度とこの世に現れなくなるの。だって本物の陽奈美がここに居るのだから。つまりこれは、あなたが『彼』に触れられる最後のチャンス。彼をその身体で愛することが出来る唯一の機会。それなのにそんなに嫌がって、受け入れることを拒絶していて良いのかしら。後悔はしない?」  顎関節に添えていた手を離して、その白い指先で女の顎をクイッと持ち上げるようにして緖美が言う。  その目をじっとのぞき込んで。  涙混じりで不安に揺れている、髪と同じ茶色の瞳をじっとのぞき込んで。  まるで彼女の心の中を見通すかのようにしながら、緖美は口を開く。 「最後にもう一度だけ聞くわ。これが本当に最後の機会。あなたは智春のモノをその唇で愛したいの?それとも例え二度と触れられなくても彼のモノを愛することを拒絶する?こたえて」  再び残虐な笑みを浮かべて、女を見下ろす緖美。  先ほどとは違い、女は即座に拒絶することはなかった。  緖美の言っている言葉の意味を、吟味しているのかもしれない。  明らかに先ほどとは違う、迷いの色が彼女の顔に表れていたのだから。  そして女のそのような不安げな表情が、俺の中の黒い欲望を更に駆り立てていく。 「智春ももう我慢が出来ないようね。さぁ……どうするの?」  最後通牒を叩き付けるかのようにいう緖美。  女は力なく項垂れて、消え入りそうな小さな声で「愛させてください」といった。 「あらあら……残りかすといえど、あの陽奈美が、遂にその言葉を。墜ちたモノね、いえ最後の最後でようやく素直になったというべきかしら」  楽しそうに笑う緖美。  緖美の手が女の下着、胸を覆っていたブラジャーにかかる。 「最後だもの、ちゃんと見て貰いなさい。触れられることもないくせに立派に育ったあなたのその胸を」  緖美の言葉責めに女は羞恥の色を浮かべた。  止まることのない涙が、彼女の心情を表しているように見えて、俺は少しだけ心が痛んだ。    しかしそのふくよかで汚れない乳房を見た時、俺の中で欲望の炎が更に激しく燃えさかった。  先ほど感じた胸の痛みなど、瞬時に消え去ってしまうほどの強い炎で。 「なぁ……緖美。この女の女陰ほとにさえ入れなければ何をしても良いよな……」  自分のモノとは思えない、低くかすれた声に恐れを感じる。  だがそんなことはどうでも良いと思えるほど、身体を突き動かす衝動が抑えきれなかった。 「あら……ちょっと妬ける発言ね。でも良いわ……女陰ほとさえ入れなければ許してあげる、ただし今回だけね。これから先は絶対に許さないわ。智春……あなたの髪の毛一本に至るまで、全部私のものなのだから……今回は本当に特別。この哀れな陽奈美の残りかすに対する最大の慈悲、それが分かっているなら良いわよ……あんたの好きなように汚してあげて」    俺の肩にしなだれかかるようにしながら、熱い息と共に耳にささやく緖美。  俺の手がゆっくりと、目の前でその姿をさらした豊かな乳房へと伸びていく。  リィン……リィン……リィン  甲高い金属音、いや鈴の音が規則正しいリズムで部屋の中に広がっていく。  俺は何事が起きたのかと周囲を見回すが、変わった様子はない。  緖美は俺とは対照的に、先ほどの笑みも余裕も忘れたかのように蒼白な顔色に変わっていた。  音の発生源を探そうとしているのか、落ち着きなく部屋の中を見回している。  そんな緖美とは対照的に、茶髪女の表情には余裕が戻っていた。  リィン……リィン……リィン  リィン……リィン……リィン  リィン……リィン……リィン  間断なく続く鈴の音。  その音が繰り返される度に、俺の中の黒い感情が徐々に消えていき、身体を突き動かしていた獣のような荒々しさも消えていく。  高天原尓神留坐須たかまのはらにかむづまります~♩神魯岐神魯美乃命以氐かむろきかむろみのみこともちて♩    鳴り続ける鈴の音に重なるように、透明感のある美しい女性の声が響き渡る。 「誰が……まさか妹の方が……なんてこと、なんでいつも私の邪魔ばかり!!」  怒りの感情を爆発させる緖美。  比例するように冷静さを取り戻していく俺。  頭の中のモヤも消えていき、身体にまとわりついていたような重い気配も薄れていく。  そして俺はようやくにして、目の前に居る茶髪女の名を思い出す。 「稲森……陽女……か」    禊祓比給布時みそきはらひたまふときに爾生坐世留あれませる祓戸乃大神等はらへとのおほかみたち  美しい響きの女の声はまだ続いていた。  聞くものの心まで浄化するような、清涼なる空気が部屋の中に満ちていく。 「……私は絶対に、本当の陽奈美になる……絶対に諦めないから!」  蒼白な顔をしたまま緖美はそう言い捨てると、慌てて部屋から出て行く。  俺はそれを追いかけようとしたが、体中から力が抜けてしまったかのようにその場でふらつき、床に跪く。  そんな俺の身体を慌てて受け止めてくれたのは陽女だった。  彼女はショーツ一枚だけで手足を縛られていたので、受け止めるというよりは俺の下敷きになるような形ではあったが。  温かくて柔らかで、そして良い匂いに包まれているのが分かる。  我に返ると、不可抗力とは言え俺は陽女の豊かな胸に顔を埋めるような形になっていた。  先ほどまでのどす黒く、衝動的な感情はすでに消えていたが、俺も健康的な男子高校生だから、陽女のその柔らかな胸の感触に抗うのは困難なことは周知の事実だと思う。  俺は起き上がろうとするものの、男子高校生らしい感情と欲求からつい躊躇ってしまい、結果的にずっと陽女の胸に顔を埋めたままになっていたのだが、わざとらしい咳払いの声で我に返り、慌てて立ち上がった。    急に立ち上がったからか、まだ力が戻っていないのか分からないが、再度倒れそうになった俺を誰かの手が支えてくれたため、俺はもう一度無様に床に倒れることだけは回避できた。  ふと手の持ち主を見てみると、そこには笑顔では在るモノの、妙な迫力を感じさせる、美月の姿があった。 「美月……あなたの禊祓詞みそぎはらえのことばのおかげで……助かりました……」  縛られたまま俺の下敷きになっていた陽女が、恥ずかしそうに頬を染めながらそう言った。  美月は上半身が完全に裸の姉をチラリと見て、その後かなり冷たい視線で俺を見て、ため息を吐くと慌てて陽女のいましめを解き、彼女の身体を俺の視線から隠すようにしながら服を着せていた。  俺はそんな美月から見えないように、そっとトランクスとパンツをズリあげ、けだるさのままベッドにもたれかかってその様子を見ていた。 「美月……よくここが分かりましたね、それにあの者の織り込んだ呪法をよく解除できましたね」 「あれは……守藤特有の方陣だったから……私に解けないはずがないわ」  複雑な表情、悲しみと怒りとどこか諦めにも似た表情をその顔に浮かべたまま、美月はささやくようにそう言った。  そんな美月の言葉に陽女もまた同じような表情を浮かべていた。  彼女たちの過去に、なにか守藤との関わりがあったのかもしれないなと、俺はぼんやりそう思った。 「それで……智春さま……姉に何をしようとしていたのでしょうか。その辺りはっきりお聞かせ願えますよね?」  しばらく時間が経過して、気持ちが落ち着いたのか、美月の矛先が俺に向いた。 「私の大切な姉を、あのような恥ずかしい格好にした上で……その……その、不浄なものを押しつけようとしていましたよね!」  美月の目がスゥッと細められて、俺が今まで見た中で一番冷ややかな視線を俺に向けて、詰め寄ってくる。  俺の意思のようで、俺の意思ではない様なそんな不可思議な状態で有ったとは言え、最愛の姉を汚そうとした俺を許せないという美月の気持ちは理解できたので、俺はその攻めを甘んじて受けようと覚悟を決めた。  逃げることなく美月の視線をしっかりと受け止める。 「……見苦しい言い訳や、適当な言葉でごまかそうとしない、そんな智春さまですからこれ以上は何も言いません。恐らくそれも全て守藤の術中だったのでしょう。」  俺がまっすぐに美月の視線を受け止めたからなのか、小さくため息を吐いた美月は少しだけ視線を和らげて俺にいってくれた。 「ことがここまで進行している以上、もう全てをお話しするしか無いのかもしれません……」  美月とのやり取りが終わると、服装を整え終えた陽女がそう言って俺の近くまでやってきた。  美月の表情にかすかな緊張が走るのが見える。  相当に大事な話があるのだろうと、俺は大きく息を吸って吐いた後、彼女たちをじっと見つめる。 「何処から話せば良いのか……見当もつきませんが……そして長い話になりますけれど」  陽女が苦しそうな、それでいてどこか諦めたかのような表情を浮かべて俺を見つめる。  その隣に座っている美月はやはり悲しそうな顔をして俺を見つめていた。  そこで俺は知ることになる。朋胤とは陽奈美とは、そして俺が想像もしていなかった長い長い因縁の話を……    



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