契夜
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静かな夜だった。 私と月音は、二人だけで寝具の整えられた部屋にいる。 宵宴の当日、私と月音は葦原殿より正殿と呼ばれるこの屋敷に移っていた。 今日この夜に、血縁書に名を連ねた二人は、この正殿で暮すことになる。 ここで初めての夜を過ごし、契りを交わし、夫婦として暮らすのだ。 「月音…私は果報者だ。お前とこうして居られるのだから。」 障子越しに差し込む月明かり以外、なんの照明もない部屋。 寝具の隣に居住まいを正している月音に気持ちを伝える。 真っ白な装束に身を包んだ月音は、とても綺麗だった。 障子越しの月明かりを背に受けて、本当に月の女神のように美しかった。 「守藤月音、今宵より主様の伴侶としてお努めいたします。」 三つ指をつき、綺麗な姿勢で座礼をする月音。 私はそんな彼女の肩を、両手で抱くと顔を見つめる。 月音の黒曜石の瞳が揺れていた。その中に潜む感情を読み取ることは出来ない。 私はその瞳に吸い込まれるように、そっと唇を重ねた。 優しく右手の指で、彼女の黒髪を梳く。 いつものようにひんやりとした彼女の髪は、上質な絹糸のような手触りとともに私の指から零れ落ちていく。 私はその手触りを堪能したい気持と、すこしでも月音が安心できるようにと、何度も何度も髪を指で梳いた。 月音は目を閉じて、少しだけ私の手により掛かるように頭を傾けたまま、されるがままにしている。 「主様、私は幸せ者にございます…愛しい貴方様に寵愛を頂けるなんて。」 その言葉が私の仲の自制心を取り払う。 月音と一言だけ呼びかけ、私は再び月音の唇に自分の唇を重ねた。 すこし湿り気を帯びた音が、部屋の中に響く。 私は月音の薄く小さな唇を吸い、その隙間から舌を滑り込ませて月音の唇の全てを堪能していた。月音も慣れないながらぎこちなく私の舌に、舌を絡ませてくる。 その健気さが愛おしかった。 抑えきれない衝動のまま、勢いに身を任せて彼女の着物の襟から手を入れて少しずつずらしていく。 ハラリと月音の肌の上を滑る着物が、彼女の肩口からはだけて落ちる。 薄闇の中浮かび上がる月音の肌は本当に白かった。 白すぎて闇の中から浮かび上がっているかのように見える。 「あまり見られては…恥ずかしゅうございます…。」 顔を朱に染めて、視線を下げて月音が、か細い声で訴えかけてくる。 恥ずかしさを示すかのように、その小ぶりな胸を両手で隠すようにしている。 私はまるでそうなることが自然であるかのように、そっと手を伸ばして、優しく月音の手をずらすと、その小振りだが柔らかな膨らみに触れる。 ビクリと月音の身体が小さく震えるが、抵抗をする素振りはない。 私は右手で月音の膨らみに触れたまま、左手を彼女の身体に伸ばして抱き寄せた。 月音の冷たい肌が、ほんのりと熱を帯び、全身が桜色に染まる。 私は自分の望むままに、月音の体中に手で触れ、唇を触れさせる。 月音はかすかな吐息を漏らすだけで、素直にわたしにされるがままにしてくれる。 私の手が胸の膨らみから腹部、そして下腹部へと移動していく。 その間も月音は、身体を固くしながらも一歳の抵抗をせず受け入れてくれる。 その健気さが私の胸を熱くし、それと比例するようにもっと触れたいという欲望が増していく。 私の手が下腹部を超え、女性の大切な場所に触れた時、聞き馴染みのない湿り気を帯びた音と、今まで体験したことのないぬかるみがそこにあった。 ぬめり気を帯びた雫が、そこからは溢れ出していた。 「だ…駄目です…主様…そこ…は…汚らわしいです…その様な所に…。」 「月音の身体に汚らわしい場所などあろうものか。私に身を任せてくれぬか。」 微かに抵抗を示した月音に優しく言い、再び唇を重ねる。 そうしながら私の右手は休むことなく、月音の大切な場所をほぐすように動かす。 月音の唇から漏れる吐息が、すこし荒くなり、湿り気を帯びた音を聞くのが恥ずかしいのか、きつく目を閉じている。 「月音‥そろそろ良いか…。」 いいながら月音の上に覆い被さるような姿勢になる。 私の欲望は既に準備万端となっており、早く月音と一つになりたいとせがんでいるようだ。 月音の首が小さく、うなずいた。 私はゆっくりと月音のぬかるみに、己の先端を触れさせ、少しづつそのぬめりの中に己自身を埋没させていく。 「クッ…」 小さな声で月音が痛みを訴えかけるが、直ぐに自分の唇を噛み締めて声をこらえようとする。痛いと訴えることで、私が止まってしまうことを危惧したのだろう。 私はそこで一度、進むことを止めて、優しく月音の髪を撫でる。 大丈夫だと優しい声で囁く。月音は一つ大きく息をすい、目尻に涙の浮かんだ目で私を見つめて、小さく頷いてくれる。 「私を…奪ってくださいまし…主様のものとして下さいませ…。」 月音の言葉に、一度だけうなずくと、私は再度、月音の中へと進む。 月音の目が閉じられ、苦痛のため眉根が寄っているが、先程の月音の思いを無碍にするわけにも行かないと、私は深くまで入り込む。 一瞬、強い抵抗があり、次の瞬間にはズルっと月音の一番奥まで私はたどり着くことが出来た。 月音の手はいつの間にか私の背中に回されており、破瓜の瞬間、私の背中に爪が立てられた。 その痛みは、月音の痛みなのだろうと、私は背中の痛みも甘美なものに感じていた。 「月音…一つになれた…こんなに嬉しいことはない。」 私の言葉に、涙を浮かべた月音は、それでも今まで見たどの笑顔よりも美しく笑ってくれた。 私自身が初めてだったこと、月音のそこがとても窮屈であったことから、私が精を放つまではさほど時間がかからなかったように思う。 私たちは漸く契りを結ぶことが出来た安堵と、気だるい疲れの中、いつしか抱き合ったまま眠りに落ちていた。 幸せだった。今までの人生で一番の幸せな時間だった。 その幸せの時間が、さほど長く続かないものであるとは、この時の私には知る由もなかった。 今はただ、この幸せを素直に信じて、噛み締めて緩やかに眠りに落ちていくのだった。
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