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守藤家

19/68





「とーもーはーるっ」  俺が入院してから2日目。9月も中頃  両親は父親が海外への長期出張中で、母親はそれに着いていったために、現在は俺は一人暮らしのために、見舞いに来てくれるような家族は居ない。  親しく付き合いのある親族というものも、特には居ないし少なくともすぐにこれる距離にも居ない。  学校ではそこそこの付き合いのある奴は何人かいるが、部活だデートだと忙しい中、ましてや平日に訪れてくれる奴も居らず、暇を持て余していた俺。  あまりにも暇すぎて、看護師さんに無理を言って売店で買ってきてもらったラノベを読んでいると、誰かが俺に声をかけてきた。  病室のドアの開く音にさえ気がつかないとは、よほどこの作品に没入していたのだろう。 『ヴァンズブラッド』  うん、熱い作品だなぁ。  主人公が、目的のために全てを力業で蹴散らしていく、泥臭く血なまぐさい戦闘シーン。  最近ありがちな、安易な無双で世界を自由に動き回るのではなくて、傷つき血を流しボロボロになりながらもひたすらに戦い抜く姿が、男の子心おとこのこごころを熱くさせる。   「ともはる?とーもーはーる!とっもっはっるっ!」  俺があまりにも本に没入していたから、反応するのを忘れていたお見舞い客どっかのだれかが、自分を気づかせようと大声で騒ぎ立てるので、俺は仕方なく本から顔を上げる。 「やかましい、ちゃんと聞こえてる。てかなんでお前が来るんだ」  声から誰が来たのかを容易に想像していた俺は、面倒くさそうに顔を顰めて相手を見る。  顔立ちは悪くない少女が、憤慨したように腰に手を当ててそこには立っていた。



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「とーもーはーるっ」  俺が入院してから2日目。9月も中頃  両親は父親が海外への長期出張中で、母親はそれに着いていったために、現在は俺は一人暮らしのために、見舞いに来てくれるような家族は居ない。  親しく付き合いのある親族というものも、特には居ないし少なくともすぐにこれる距離にも居ない。  学校ではそこそこの付き合いのある奴は何人かいるが、部活だデートだと忙しい中、ましてや平日に訪れてくれる奴も居らず、暇を持て余していた俺。  あまりにも暇すぎて、看護師さんに無理を言って売店で買ってきてもらったラノベを読んでいると、誰かが俺に声をかけてきた。  病室のドアの開く音にさえ気がつかないとは、よほどこの作品に没入していたのだろう。 『ヴァンズブラッド』  うん、熱い作品だなぁ。  主人公が、目的のために全てを力業で蹴散らしていく、泥臭く血なまぐさい戦闘シーン。  最近ありがちな、安易な無双で世界を自由に動き回るのではなくて、傷つき血を流しボロボロになりながらもひたすらに戦い抜く姿が、男の子心おとこのこごころを熱くさせる。   「ともはる?とーもーはーる!とっもっはっるっ!」  俺があまりにも本に没入していたから、反応するのを忘れていたお見舞い客どっかのだれかが、自分を気づかせようと大声で騒ぎ立てるので、俺は仕方なく本から顔を上げる。 「やかましい、ちゃんと聞こえてる。てかなんでお前が来るんだ」  声から誰が来たのかを容易に想像していた俺は、面倒くさそうに顔を顰めて相手を見る。  顔立ちは悪くない少女が、憤慨したように腰に手を当ててそこには立っていた。



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