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籠絡

29/68





 一夜が明けた。  普段なら落ち着いているはずの感情が、未だざわついていることを感じる。  俺は別にそこまで感情的な人間じゃない。  一晩寝れば大抵のことは、ある程度冷静に見直すことが出来る。  だけど今回は全く怒りが収まっていないように感じる。  その理由がわからないことが、また俺の神経を苛立たせる。  一体何なんだと叫びたい気持ちにすらなる。  そこで違和感を感じた。  なんだろうこの匂いはと思い、再度大きく息を吸い込む。  味噌汁の匂い。  昨日疲れ果ててソファで横になったまま朝まで寝てしまったようだ。  だから食事の準備なんてしていなかったはずなのだが。  どういうことだろうと不信に思いソファから立ち上がろうとすると、大きめのダウンコートが掛けられていることに気づく。  再び頭の中に大量の疑問符が浮かび上がる。 「智春、そろそろ起こそうと思ったんだけど、ちょうど起きたみたいね。顔を洗ってらっしゃい、ご飯にするわよ」  聞きなじみのある声が聞こえて、声のした方向に顔を向ける。  予想通りそこにたっていたのは緖美だった。  普段あまり見ないような、カジュアルな装いをしていた。  白のニットに膝より少し上くらいの長さのプリーツスカート。  年相応に見えてなぜだかいつもよりも少し可愛く見えてドキッとしてしまう。  あまり私服姿を見た記憶は無いけれど、家の方針なのかいつもはもう少しカチッとした服装をしているのだ。 「おま……なんで、どうやって入った」 「何があったか知らないけど、玄関開けっぱなし。不用心だこと」  緖美は腰に手を当てて、少し呆れたと言いたげな表情でそう答える。  あの2人を追い返した後、こいつにメッセージを送ってすぐ、ソファに倒れ込んだんだと思い出した。  完全に鍵をかけることを忘れていた。 「別に取られるようなモノはないよ。そんな金持ちの家でもないのはわかるだろ」  そう、都会ならいざ知らずこの辺りのような地方の街じゃ一軒家を買うことはそんなに贅沢なことじゃない。  というよりも、賃貸物件が少なく持ち家が当たり前に近い。  だから一軒家の家だから、資産があるという判断はされない。  とはいえ、鍵もかけずに爆睡をしているのは確かに不用心ではあるのだけども。  そう考えているウチに、緖美はいつの間にかソファの真横まで近づいてきていた。  そして上半身をかがめるようにして、俺の耳元に顔を寄せてくる。 「ドロボウに狙われなかったとしても、泥棒猫にも用心してほしいんだけどな」  耳元に寄せた唇から小さなささやきが漏れる。  こいつまさか昨日のこと、知っているのかと全身が粟立つ。 「智春さぁ、自覚無いだろうけど、結構女子からも人気があるんだよ。だから家の鍵開けっぱなしだと誘ってるみたいに思われちゃうかもよ」  緊張してしまった俺の耳元で、いたずらっぽい口調でそういう緖美。  ばれていないのか……ばれているのか……それがわからないため、俺は何も言い返せず、緖美の表情を伺おうと顔を向けた。  その瞬間だった。  一瞬だけ視界が黒に塗りつぶされ、俺の唇に柔らかく熱を持った何かが押しつけられた。  視界が奪われたと思ったのは、俺に覆い被さってきた緖美の髪が目の前に広がったからだと、気がつく。  と言うことはこの柔らかさは……と思った瞬間、何か柔らかくてぬるっとしたモノが開きかけた俺の口の中に入り込んできた。  俺の口中に入り込んできたそれは、独立した1つの生き物かのように、口の中で複雑に動き、そして俺の舌を見つけるとそれを取り込もうとするかのように絡みついてくる。  最初に感じた違和感は、俺と緖美の舌が絡み合う度に、やがて甘美に感じ始めて、俺の身体は熱を帯びていった。 「ハァ……」  緖美がゆっくりと唇の話す。  俺と緖美の唇は1本の細い銀色の糸が繋がっていた。 「つぐ……み……俺、お前が……」  俺が全部を言い切る前に、再び緖美の唇が俺の唇を塞ぐ。  今度は短く触れるだけのキスだった。 「言葉は……要らないわ。態度で示して。わたし、覚悟を決めてここに来たんだから」  緖美の目が怪しく光っている。  その時の俺はその本当の意味に気がつかず、ぼんやりとした頭でただ、綺麗だなと思っていた。  チュプチュプと濡れた音が部屋の中に響いていた。  もうどのくらいの時間、俺たちはキスを続けているのだろうかとぼんやりとモヤのかかった頭で考える。  でもどうでもいい、緖美の柔らかい唇と滑らかな舌をもっと味わいたい。  原始的な欲求が俺の身体を突き動かして、僅かばかり残っていた理性を吹き飛ばす。  レースのカーテン越しに薄く差し込む光が、目の前に横たわる芸術品をより美しく魅せていた。  ニットは限界までめくり上がっており、その形の良い胸を惜しげも無く俺の目にさらしている。  滑らかで白く美しい肌も、大きくも小さくもない、手の平に少し余るくらいの胸の膨らみも、その先端で自己主張する桜色の突起物も、全てが俺の目の前にある。 「私……綺麗かな……」  いつもの勝ち気な様子がなりを潜め、頬を染めた緖美が恥ずかしそうに俺に問いかける。 「綺麗だよ。まるで芸術品みたいだ。本当に俺が触れて良いのか」  緊張のあまりかすれた声で聞き返す。 「もちろんだよ……私は智春に抱かれるため、智春のものになるため生まれてきたんだよ」  かすかに感じる言葉の違和感。  だが不自然なほどにモヤのかかった頭、自分ではないような感情の高ぶりに押し流されてそんな違和感はどうでも良く感じてしまった。 「ねぇ……私はあなたに捧げるためにその……まだしたことがないから、だから優しくしてほしい」 「う……うん、わかった。俺も不慣れだけど優しくする」    ゆっくりと顔を近づけて、緖美と唇を重ねる。  そして右手で緖美の膨らみにそっと触れてみる。  痛くないようにと気を遣いつつ、少し手の平に力を込めると、その膨らみは柔らかさと適度な弾力で応えてくれる。  それは本能なのか、それともこの感触があまりにも素晴らしいからなのか、俺はその膨らみから手を離すことが出来なくて、ずっと揉み続けながら、何度目かわからない唾液の交換を行う。  俺の舌と緖美の舌が、時には激しく時には優しく絡み合いつつき合いその度にあらたか快感が身体を駆け巡る。  胸の膨らみに触れていた手を少し移動させて、先ほどよりも明確に存在をアピールしている、桜色の突起物に触れさせてかるく指でつついてみる。  んふっとでも表現したら良いのか、鼻にかかった吐息が緖美から漏れて、俺は激しく興奮した。  あの緖美が、学校でも男子から人気を集めている、勝ち気で強気な緖美が、俺の指の動き1つでこんな甘い声を出すなんてと、高ぶる気持ちを抑えきれない。  朋美の唇から唇を離して、おれはその桜色の突起物を優しく口に含んでみる。  緖美の身体が大きく、ビクッと跳ね上がり、俺は緖美が俺の与える刺激を受け入れてくれていることを実感して、嬉しくなり、口に含んだそれを舌でつつき、転がし様々な刺激を与える。  その度に緖美は俺の聞きたかったあの甘い吐息を漏らしながら、ビクビクと身体を反応させてくれる。 「ね……智春……切ないよ」  少し泣きそうな顔で緖美が訴えてきた。  その意味をなんとなく理解した俺は、躊躇っていたため手を伸ばせなかった部分に、ゆっくりと手を伸ばす。  震える手が胸から離れて、ゆっくりと腹部を通り過ぎてすべすべとしたシルクの手触りを感じる場所まで降りていく。  そして緖美のきめ細かい肌とシルクの布地の隙間からゆっくりと入り込んでいく。  最初に感じたのはジョりッという感触。  緖美の下の毛は、本人の髪の毛と同じく滑らかでそして柔らかい感触だった。  密度はそれほど高くないようでその感触はすぐに終わり、やがて胸と比較すると小さく、だけども同じくらいはっきりと存在を主張する小さな突起に指が触れる。  その瞬間、緖美は今までに無いほど大きく腰をそらせて、あっと叫び声に近い声を上げた。  荒い息をしている緖美。  俺は少し心配になって動きを止めてしまう。 「だい……じょう……ぶ、嬉すぎて……感じすぎた……だけだか……ら、続けて……」  焦点の定まらないようなフワフワとした目で俺を見ながら、途切れ途切れに緖美は言った。  だから俺は止まっていた手を更に先に進ませる。  そこはもう、なんといえば良いのかわからないけれど、潤っているって状態じゃなかった。  緖美の下着はもう水でもこぼしたのかと思うくらいにビショ濡れになっていた。  ただ明らかに水とは違う温みとぬめりを持った液体だった。 「智春を受け入れたくて、あなたと1つになりたくて、私の身体……完全に受け入れ準備しちゃった」  頬を染めて、潤んだ目で俺を見ながら、朋美が柔らかく微笑んだ。  愛おしいという気持ちがこみ上げてくる。  もう我慢なんか出来そうに無かった。  優しくすると約束したのに、俺はもう押さえキレそうにないほどの衝動を感じていた。  緖美を俺のモノにしたい、こいつの初めてを貫いて、身体の奥底に俺を刻みつけたい。  獣のような獰猛な衝動に突き動かされ、俺は緖美の下着を取り払うと、自分のズボンのジッパーを下ろす。  手触りで感じたように、薄く狭い面積の毛、そのしたで艶やかなビンク色の亀裂が息つくようにヒクヒクと動いている。  俺を受け入れる準備のため、そして幾分かの興奮のために滴った液でいやらしく光っているその部分を目にして、俺の興奮は最高潮に達した。  ズボンから取り出した怒張に手を添えて、ゆっくりとピンク色をした亀裂にあてがう。  ぬるりとした感触がそこから伝わり、背筋を駆け上がっていく。  あとはこれを押し込むだけ、そうすれば緖美は俺のモノに……。  悪魔のささやきにも似た声が頭の中に響き、一瞬おくれて俺が腰に力を入れようとしたとの時だった。    ピリリリ……と無機質な着信音が部屋に響き渡る。  一瞬、緖美が舌打ちをした気がした。 「あと少しだったのに……まぁいいわ……」  少し不機嫌そうな口調で緖美は言うと、じっと俺の目を見る。 「とても残念だけど……、今はもう休んで。智春」  緖美がそういうと不意に強烈な眠気に襲われる。  意識がどんどんと闇に引きずり込まれるように黒くなり、俺の意識は途絶した。 ++++++++++++++++++++++++++ 「お嬢様、例の神社ですが……ええ、予想通りで、はい……そうですかわかりました」  たった2分程度で終わるやり取り。  その程度の報告のために、至福の時間を奪ったこの男を、八つ裂きにしてやりたい衝動を辛うじて抑える。 (いけない……命じたのは私、ただあいつが愚鈍で愚直なだけ……)  何度も深呼吸をして落ち着こうと試みる。  目の前のベッドの上、だらしなく眠る智春。  ズボンから今は勢いを無くした男のシンボルを出したまま眠っているのは少し滑稽ではあった。  でもそんな姿さえ愛おしいと思ってしまう。  本当は今すぐに呪縛を解いて、智春を目覚めさせて続きをしたいと思ってしまう。  だけど1度解けてしまった【催淫】の効果は失われてしまう。  あの状況を作ろうとするなら、再度1からやり直さなければならない。 「本当に……これ以上無い最高の条件が整っていたのに……ようやく、彼のモノを受け入れられると思ったのに」  智春の無防備な寝顔、その頬をそっと撫でながら零してしまう。  千載一遇ともいうべきチャンスだったのに……どうしてこうも上手くいかないのだろう。  そこまで考えて、ふと思いついた。  今日は無理でも、後のために【催淫】の種を植え付けておけば良いのだと。  種さえ植え付けておけば、些細な切っ掛け1つで、智春をその気にさせることが出来るはず。  問題があるとすれば、あの二匹のネズミ。  あいつらなら私の呪縛を解くことが出来てしまうだろう。  ばれないように、かつ確実に【催淫】のまじないを刻むにはどうすればいいか……。  必死に思案する。  大丈夫、私はこういうことは得意だ、なにより智春を絡め取り落としていく過程は愉悦ですら有る。  その先に彼を私だけのモノにすることが出来ると思うと、先ほどの余韻と合わさってこの場で絶頂しそうになるほどだ。 (月音、そしてもう1人の陽奈美。貴方たちには絶対に渡さない。いつもいつも彼の隣を占有した月音、彼を心から愛しているくせに、妹への義理のため身を引いた陽奈美、貴方たちには絶対に渡さない。)  私はゆっくりと亀裂に指を這わせ、おのれの密液をすくい取る。  それを智春の頬に当てて、ゆっくりと幾何学的な模様にして刻み込んでいく。  絶対に渡さない、月音にも陽奈美にも。  だって私が”陽奈美”なのだから!  



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29/68

 一夜が明けた。  普段なら落ち着いているはずの感情が、未だざわついていることを感じる。  俺は別にそこまで感情的な人間じゃない。  一晩寝れば大抵のことは、ある程度冷静に見直すことが出来る。  だけど今回は全く怒りが収まっていないように感じる。  その理由がわからないことが、また俺の神経を苛立たせる。  一体何なんだと叫びたい気持ちにすらなる。  そこで違和感を感じた。  なんだろうこの匂いはと思い、再度大きく息を吸い込む。  味噌汁の匂い。  昨日疲れ果ててソファで横になったまま朝まで寝てしまったようだ。  だから食事の準備なんてしていなかったはずなのだが。  どういうことだろうと不信に思いソファから立ち上がろうとすると、大きめのダウンコートが掛けられていることに気づく。  再び頭の中に大量の疑問符が浮かび上がる。 「智春、そろそろ起こそうと思ったんだけど、ちょうど起きたみたいね。顔を洗ってらっしゃい、ご飯にするわよ」  聞きなじみのある声が聞こえて、声のした方向に顔を向ける。  予想通りそこにたっていたのは緖美だった。  普段あまり見ないような、カジュアルな装いをしていた。  白のニットに膝より少し上くらいの長さのプリーツスカート。  年相応に見えてなぜだかいつもよりも少し可愛く見えてドキッとしてしまう。  あまり私服姿を見た記憶は無いけれど、家の方針なのかいつもはもう少しカチッとした服装をしているのだ。 「おま……なんで、どうやって入った」 「何があったか知らないけど、玄関開けっぱなし。不用心だこと」  緖美は腰に手を当てて、少し呆れたと言いたげな表情でそう答える。  あの2人を追い返した後、こいつにメッセージを送ってすぐ、ソファに倒れ込んだんだと思い出した。  完全に鍵をかけることを忘れていた。 「別に取られるようなモノはないよ。そんな金持ちの家でもないのはわかるだろ」  そう、都会ならいざ知らずこの辺りのような地方の街じゃ一軒家を買うことはそんなに贅沢なことじゃない。  というよりも、賃貸物件が少なく持ち家が当たり前に近い。  だから一軒家の家だから、資産があるという判断はされない。  とはいえ、鍵もかけずに爆睡をしているのは確かに不用心ではあるのだけども。  そう考えているウチに、緖美はいつの間にかソファの真横まで近づいてきていた。  そして上半身をかがめるようにして、俺の耳元に顔を寄せてくる。 「ドロボウに狙われなかったとしても、泥棒猫にも用心してほしいんだけどな」  耳元に寄せた唇から小さなささやきが漏れる。  こいつまさか昨日のこと、知っているのかと全身が粟立つ。 「智春さぁ、自覚無いだろうけど、結構女子からも人気があるんだよ。だから家の鍵開けっぱなしだと誘ってるみたいに思われちゃうかもよ」  緊張してしまった俺の耳元で、いたずらっぽい口調でそういう緖美。  ばれていないのか……ばれているのか……それがわからないため、俺は何も言い返せず、緖美の表情を伺おうと顔を向けた。  その瞬間だった。  一瞬だけ視界が黒に塗りつぶされ、俺の唇に柔らかく熱を持った何かが押しつけられた。  視界が奪われたと思ったのは、俺に覆い被さってきた緖美の髪が目の前に広がったからだと、気がつく。  と言うことはこの柔らかさは……と思った瞬間、何か柔らかくてぬるっとしたモノが開きかけた俺の口の中に入り込んできた。  俺の口中に入り込んできたそれは、独立した1つの生き物かのように、口の中で複雑に動き、そして俺の舌を見つけるとそれを取り込もうとするかのように絡みついてくる。  最初に感じた違和感は、俺と緖美の舌が絡み合う度に、やがて甘美に感じ始めて、俺の身体は熱を帯びていった。 「ハァ……」  緖美がゆっくりと唇の話す。  俺と緖美の唇は1本の細い銀色の糸が繋がっていた。 「つぐ……み……俺、お前が……」  俺が全部を言い切る前に、再び緖美の唇が俺の唇を塞ぐ。  今度は短く触れるだけのキスだった。 「言葉は……要らないわ。態度で示して。わたし、覚悟を決めてここに来たんだから」  緖美の目が怪しく光っている。  その時の俺はその本当の意味に気がつかず、ぼんやりとした頭でただ、綺麗だなと思っていた。  チュプチュプと濡れた音が部屋の中に響いていた。  もうどのくらいの時間、俺たちはキスを続けているのだろうかとぼんやりとモヤのかかった頭で考える。  でもどうでもいい、緖美の柔らかい唇と滑らかな舌をもっと味わいたい。  原始的な欲求が俺の身体を突き動かして、僅かばかり残っていた理性を吹き飛ばす。  レースのカーテン越しに薄く差し込む光が、目の前に横たわる芸術品をより美しく魅せていた。  ニットは限界までめくり上がっており、その形の良い胸を惜しげも無く俺の目にさらしている。  滑らかで白く美しい肌も、大きくも小さくもない、手の平に少し余るくらいの胸の膨らみも、その先端で自己主張する桜色の突起物も、全てが俺の目の前にある。 「私……綺麗かな……」  いつもの勝ち気な様子がなりを潜め、頬を染めた緖美が恥ずかしそうに俺に問いかける。 「綺麗だよ。まるで芸術品みたいだ。本当に俺が触れて良いのか」  緊張のあまりかすれた声で聞き返す。 「もちろんだよ……私は智春に抱かれるため、智春のものになるため生まれてきたんだよ」  かすかに感じる言葉の違和感。  だが不自然なほどにモヤのかかった頭、自分ではないような感情の高ぶりに押し流されてそんな違和感はどうでも良く感じてしまった。 「ねぇ……私はあなたに捧げるためにその……まだしたことがないから、だから優しくしてほしい」 「う……うん、わかった。俺も不慣れだけど優しくする」    ゆっくりと顔を近づけて、緖美と唇を重ねる。  そして右手で緖美の膨らみにそっと触れてみる。  痛くないようにと気を遣いつつ、少し手の平に力を込めると、その膨らみは柔らかさと適度な弾力で応えてくれる。  それは本能なのか、それともこの感触があまりにも素晴らしいからなのか、俺はその膨らみから手を離すことが出来なくて、ずっと揉み続けながら、何度目かわからない唾液の交換を行う。  俺の舌と緖美の舌が、時には激しく時には優しく絡み合いつつき合いその度にあらたか快感が身体を駆け巡る。  胸の膨らみに触れていた手を少し移動させて、先ほどよりも明確に存在をアピールしている、桜色の突起物に触れさせてかるく指でつついてみる。  んふっとでも表現したら良いのか、鼻にかかった吐息が緖美から漏れて、俺は激しく興奮した。  あの緖美が、学校でも男子から人気を集めている、勝ち気で強気な緖美が、俺の指の動き1つでこんな甘い声を出すなんてと、高ぶる気持ちを抑えきれない。  朋美の唇から唇を離して、おれはその桜色の突起物を優しく口に含んでみる。  緖美の身体が大きく、ビクッと跳ね上がり、俺は緖美が俺の与える刺激を受け入れてくれていることを実感して、嬉しくなり、口に含んだそれを舌でつつき、転がし様々な刺激を与える。  その度に緖美は俺の聞きたかったあの甘い吐息を漏らしながら、ビクビクと身体を反応させてくれる。 「ね……智春……切ないよ」  少し泣きそうな顔で緖美が訴えてきた。  その意味をなんとなく理解した俺は、躊躇っていたため手を伸ばせなかった部分に、ゆっくりと手を伸ばす。  震える手が胸から離れて、ゆっくりと腹部を通り過ぎてすべすべとしたシルクの手触りを感じる場所まで降りていく。  そして緖美のきめ細かい肌とシルクの布地の隙間からゆっくりと入り込んでいく。  最初に感じたのはジョりッという感触。  緖美の下の毛は、本人の髪の毛と同じく滑らかでそして柔らかい感触だった。  密度はそれほど高くないようでその感触はすぐに終わり、やがて胸と比較すると小さく、だけども同じくらいはっきりと存在を主張する小さな突起に指が触れる。  その瞬間、緖美は今までに無いほど大きく腰をそらせて、あっと叫び声に近い声を上げた。  荒い息をしている緖美。  俺は少し心配になって動きを止めてしまう。 「だい……じょう……ぶ、嬉すぎて……感じすぎた……だけだか……ら、続けて……」  焦点の定まらないようなフワフワとした目で俺を見ながら、途切れ途切れに緖美は言った。  だから俺は止まっていた手を更に先に進ませる。  そこはもう、なんといえば良いのかわからないけれど、潤っているって状態じゃなかった。  緖美の下着はもう水でもこぼしたのかと思うくらいにビショ濡れになっていた。  ただ明らかに水とは違う温みとぬめりを持った液体だった。 「智春を受け入れたくて、あなたと1つになりたくて、私の身体……完全に受け入れ準備しちゃった」  頬を染めて、潤んだ目で俺を見ながら、朋美が柔らかく微笑んだ。  愛おしいという気持ちがこみ上げてくる。  もう我慢なんか出来そうに無かった。  優しくすると約束したのに、俺はもう押さえキレそうにないほどの衝動を感じていた。  緖美を俺のモノにしたい、こいつの初めてを貫いて、身体の奥底に俺を刻みつけたい。  獣のような獰猛な衝動に突き動かされ、俺は緖美の下着を取り払うと、自分のズボンのジッパーを下ろす。  手触りで感じたように、薄く狭い面積の毛、そのしたで艶やかなビンク色の亀裂が息つくようにヒクヒクと動いている。  俺を受け入れる準備のため、そして幾分かの興奮のために滴った液でいやらしく光っているその部分を目にして、俺の興奮は最高潮に達した。  ズボンから取り出した怒張に手を添えて、ゆっくりとピンク色をした亀裂にあてがう。  ぬるりとした感触がそこから伝わり、背筋を駆け上がっていく。  あとはこれを押し込むだけ、そうすれば緖美は俺のモノに……。  悪魔のささやきにも似た声が頭の中に響き、一瞬おくれて俺が腰に力を入れようとしたとの時だった。    ピリリリ……と無機質な着信音が部屋に響き渡る。  一瞬、緖美が舌打ちをした気がした。 「あと少しだったのに……まぁいいわ……」  少し不機嫌そうな口調で緖美は言うと、じっと俺の目を見る。 「とても残念だけど……、今はもう休んで。智春」  緖美がそういうと不意に強烈な眠気に襲われる。  意識がどんどんと闇に引きずり込まれるように黒くなり、俺の意識は途絶した。 ++++++++++++++++++++++++++ 「お嬢様、例の神社ですが……ええ、予想通りで、はい……そうですかわかりました」  たった2分程度で終わるやり取り。  その程度の報告のために、至福の時間を奪ったこの男を、八つ裂きにしてやりたい衝動を辛うじて抑える。 (いけない……命じたのは私、ただあいつが愚鈍で愚直なだけ……)  何度も深呼吸をして落ち着こうと試みる。  目の前のベッドの上、だらしなく眠る智春。  ズボンから今は勢いを無くした男のシンボルを出したまま眠っているのは少し滑稽ではあった。  でもそんな姿さえ愛おしいと思ってしまう。  本当は今すぐに呪縛を解いて、智春を目覚めさせて続きをしたいと思ってしまう。  だけど1度解けてしまった【催淫】の効果は失われてしまう。  あの状況を作ろうとするなら、再度1からやり直さなければならない。 「本当に……これ以上無い最高の条件が整っていたのに……ようやく、彼のモノを受け入れられると思ったのに」  智春の無防備な寝顔、その頬をそっと撫でながら零してしまう。  千載一遇ともいうべきチャンスだったのに……どうしてこうも上手くいかないのだろう。  そこまで考えて、ふと思いついた。  今日は無理でも、後のために【催淫】の種を植え付けておけば良いのだと。  種さえ植え付けておけば、些細な切っ掛け1つで、智春をその気にさせることが出来るはず。  問題があるとすれば、あの二匹のネズミ。  あいつらなら私の呪縛を解くことが出来てしまうだろう。  ばれないように、かつ確実に【催淫】のまじないを刻むにはどうすればいいか……。  必死に思案する。  大丈夫、私はこういうことは得意だ、なにより智春を絡め取り落としていく過程は愉悦ですら有る。  その先に彼を私だけのモノにすることが出来ると思うと、先ほどの余韻と合わさってこの場で絶頂しそうになるほどだ。 (月音、そしてもう1人の陽奈美。貴方たちには絶対に渡さない。いつもいつも彼の隣を占有した月音、彼を心から愛しているくせに、妹への義理のため身を引いた陽奈美、貴方たちには絶対に渡さない。)  私はゆっくりと亀裂に指を這わせ、おのれの密液をすくい取る。  それを智春の頬に当てて、ゆっくりと幾何学的な模様にして刻み込んでいく。  絶対に渡さない、月音にも陽奈美にも。  だって私が”陽奈美”なのだから!  



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