魔断の剣1 碧翠眼の退魔師

魔断の剣1 碧翠眼の退魔師

人の心より、その剣は生まれる――


人の持てる力をはるかに超えたその能力で他者を蹂躙(じゅうりん)し、血肉を生きたまま啜(すす)り、命を自らの力とした上でさらに屠(ほふ)り続ける。

魅魎(みりょう)――魅魔(みま)、魅妖(みよう)、魎鬼(りょうき)、妖鬼(ようき)が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しているこの世界にあって、人は、あまりに非力な存在だった。

魅魎は主に人の生気を食べる。
人が、他の生き物を世界から搾取(さくしゅ)するように、それらは人から生きる力を奪い取るのだ。生きたまま肉を裂き、苦鳴の中で血を啜るといった行為は、自らの力を誇示し、愉悦に浸るための、単なるおまけでしかない。

だが自分たちを凌駕(りょうが)する力を持っているからといって、諦め、それをこの世界の定めとして受け入れられるわけがない。

魅魎にもてあそばれ、その気まぐれに翻弄(ほんろう)されるがままの存在であるなどということが、この世界において人間の位置するところであるとされるのならば、それは人にとって、この世界に生きるということが果てしなく絶望的な、到底堪えられるはずのない苦痛でしかないではないか。

獣に牙があるように。
逃げ延びるに足る俊足があるように。
人は、やがて自らの中に魅魎に抵抗するための力があることを知った。

もちろんだれにでもというわけではない。

魅魎を封じ、なおかつその命を永遠に絶つ力を生まれながらして備えた物。
意思を持つ生きた剣・魔断(まだん)と心を通じあわせ、ともに魅魎から弱き人を護る者。

彼らは退魔師と呼ばれていた。


※この作品は33年ほど前に個人誌として発行した作品で、すでに最後まで書き終えています。
 それに加筆修正したものになります。
※全70話+番外編1話。すべて予約投稿済みです。







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目次

序  章
第1章 幻 聖 宮
第2章 ガド砂漠
第3章 邪妖の町
第4章 魔性の夜
第5章 魅魎の罠
第6章 邪華の砦
第7章 邪妖の宴
第8章 碧翠眼の退魔師