インターミッション〜世界の片隅で愛を叫べなかったケモノ〜③
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中学生になると、男子どもが急に色めき立ち、三葉の周囲に集まるようになった。
オレたちの住む人工島では、合計3つの小学校から、あいらんど中学校に進学する生徒がいるのだが、自分たちが卒業した、あいらんど小学校以外の学校から中学校に進学してきた生徒には、特にその傾向が強かった。
三葉は、次々と交際の申込みをしてくる男子に対して、丁寧に断りを入れていたようで、そのソフトな対応の仕方も、彼女の人気を支えていたそうだ。
(今となっては、その頃の三葉はまだ、猫を被っていたんだろうな、と感じるのだが……)
オレを含め、あいらんど小学校の卒業生たちは、そのようすを少し遠巻きに眺めていたのだが、自分たちと同じ学校を卒業した白井三葉が、学内だけでなく、学外でも注目を集めはじめたことを、どこか誇らしく感じている面があったことは確かだ。
中学校に入学してから、SNSの更新頻度をあげていった彼女は、メディアからの注目も集めはじめ、しばらくは、舞台女優の娘であることを隠しながら、Clover_fieldというアカウント名で活動していたが、母親に誕生日プレゼントを贈る動画をアップロードしたところ、彼女の母が数年前にメディアを騒がせた有名人であることから、身バレしてしまい、それからは、将来有望な二世タレントとしても、世間の関心を持たれることになった。
(ちなみに、彼女のアカウント名は、オレが自身のお気に入りの映画のタイトルと三葉の名前とを絡めて提案したモノで、オレの密かな自慢のひとつになっている)
ただ、あいらんど小学校の他の卒業生と違って、徐々に自分との立場の違いが鮮明になっていく三葉に対して、オレ自身は、複雑な感情を抱くようになっていた。
次々と彼女に告白しては、玉砕していく男子どもに対しては、
(三葉の歌声とパフォーマンスの素晴らしさに、最初に気づいたのはオレなのに……)
という感情を抱き、三葉自身に対しては、
(控えめな性格だったアイツが、あんなに輝いているのに、オレ自身は……)
という劣等感の入り混じった想いを感じていた。
表面上は、冬馬や桜花先輩、そして、桃たちと放送部の活動に打ち込んでいたが、三葉に対する複雑な想いは、中学生の頃から、ずっとオレの心の中にあった。
三葉と同じく、桃入学直後に男子から立て続けに告白されたことでトラブルに巻き込まれ、
「誰とも付き合うつもりはないし……興味のないヒトから好意を向けられるのって……気持ち悪い」
という意味の言葉を吐いたときには、そこに
(三葉も同じように感じているんだろうか……)
と、小学生から親しくしている同級生女子の姿を重ねて安堵する一方で、また、そんな根拠に乏しい考えにすがっている自分自身の情けなさに落ち込む日々が続いた。
中学生活の後半に入ってから、歌手としてデビューを目指す三葉は、本格的にレッスンを再開したこともあり、学校に登校してくる機会が少しずつ少なくなっていった。
周囲の男子との接点が少なくなったことから、三葉との関係を進展させるような存在は居なくなったが、同時に、放送部の活動で放課後は忙しくなったオレ自身との接点もますます少ないものになった。
少しずつ、それでも確実に自身の活躍の場を広げていく三葉に対して、言いようのない感情を抱きながら中学生活を終えたオレは、彼女や親友とともに、あいらんど高校に進学する。
高校に入学してからの彼女は、いよいよ、歌手としてのデビューも果たし、さらに地道に続けていたSNSの活動が実を結んだのか、いまでは、ファッションやコスメ関係の企業案件も手掛ける同世代のカリスマとなっていた。
(あの春休みに、寂しそうにスマホをいじっていた、大人しい転校生が……)
と考えると、感慨深いモノがあるが、日々、高校の授業と部活動をこなす以外、とくに目標を持って生きている訳ではない自分と彼女を比較し、オレの中の三葉に対するコンプレックスは、ますます大きくなっていた。
そして、二年生の夏休み直前のこと――――――。
ここ一年〜二年の間は、まったく、男性の影が見えなかった彼女に、果敢に交際を申し込み続ける男子生徒があらわれた。
それは、夏の大会を前に、県内でも屈指の好投手として注目されていた三年の才木先輩で、彼は、三葉たちと複数名で何度か遊びに出かけたあと、陽が傾きはじめた教室に彼女を呼び出し、
「白井三葉、もし、オレが甲子園に出場できたら、付き合ってくれないか?」
と告白した。
放送・新聞部の取材のため、たまたま放課後の校舎内を移動していたオレは、三年生の教室で、その光景を目撃してしまったオレは、三葉が、ゆっくりと首をタテに振った瞬間を目にすることになる。
それは、オレが、この世でもっとも目にしたくなかった光景だったことは言うまでもない。
ショックを受けたオレは、その場から駆け出してしまい、無意識のまま、学校の敷地外へと飛び出す。
だが、そのとき、普段は、交通量の少ない学校前の道路を走ってくる乗用車に気づかなかった――――――。
校門からマリンパーク駅のロータリーの方に向かって道路を横切ろうとした瞬間、
ファ〜ン!
という大きなクラクションが聞こえ、
ドンッ
と、全身に強い衝撃を受けたオレは、そのまま意識を失ってしまった。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
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中学生になると、男子どもが急に色めき立ち、|三葉《みつば》の周囲に集まるようになった。
オレたちの住む人工島では、合計3つの小学校から、あいらんど中学校に進学する生徒がいるのだが、自分たちが卒業した、あいらんど小学校以外の学校から中学校に進学してきた生徒には、特にその傾向が強かった。
|三葉《みつば》は、次々と交際の申込みをしてくる男子に対して、丁寧に断りを入れていたようで、そのソフトな対応の仕方も、彼女の人気を支えていたそうだ。
(今となっては、その頃の|三葉《みつば》はまだ、猫を被っていたんだろうな、と感じるのだが……)
オレを含め、あいらんど小学校の卒業生たちは、そのようすを少し遠巻きに眺めていたのだが、自分たちと同じ学校を卒業した|白井三葉《しろいみつば》が、学内だけでなく、学外でも注目を集めはじめたことを、どこか誇らしく感じている面があったことは確かだ。
中学校に入学してから、SNSの更新頻度をあげていった彼女は、メディアからの注目も集めはじめ、しばらくは、舞台女優の娘であることを隠しながら、Clover_fieldというアカウント名で活動していたが、母親に誕生日プレゼントを贈る動画をアップロードしたところ、彼女の母が数年前にメディアを騒がせた有名人であることから、身バレしてしまい、それからは、将来有望な二世タレントとしても、世間の関心を持たれることになった。
(ちなみに、彼女のアカウント名は、オレが自身のお気に入りの映画のタイトルと|三葉《みつば》の名前とを絡めて提案したモノで、オレの密かな自慢のひとつになっている)
ただ、あいらんど小学校の他の卒業生と違って、徐々に自分との立場の違いが鮮明になっていく|三葉《みつば》に対して、オレ自身は、複雑な感情を抱くようになっていた。
次々と彼女に告白しては、玉砕していく男子どもに対しては、
(|三葉《みつば》の歌声とパフォーマンスの素晴らしさに、最初に気づいたのはオレなのに……)
という感情を抱き、|三葉《みつば》自身に対しては、
(控えめな性格だったアイツが、あんなに輝いているのに、オレ自身は……)
という劣等感の入り混じった想いを感じていた。
表面上は、|冬馬《とうま》や|桜花《おうか》先輩、そして、|桃《もも》たちと放送部の活動に打ち込んでいたが、|三葉《みつば》に対する複雑な想いは、中学生の頃から、ずっとオレの心の中にあった。
|三葉《みつば》と同じく、|桃《もも》入学直後に男子から立て続けに告白されたことでトラブルに巻き込まれ、
「誰とも付き合うつもりはないし……興味のないヒトから好意を向けられるのって……気持ち悪い」
という意味の言葉を吐いたときには、そこに
(|三葉《みつば》も同じように感じているんだろうか……)
と、小学生から親しくしている同級生女子の姿を重ねて安堵する一方で、また、そんな根拠に乏しい考えにすがっている自分自身の情けなさに落ち込む日々が続いた。
中学生活の後半に入ってから、歌手としてデビューを目指す|三葉《みつば》は、本格的にレッスンを再開したこともあり、学校に登校してくる機会が少しずつ少なくなっていった。
周囲の男子との接点が少なくなったことから、|三葉《みつば》との関係を進展させるような存在は居なくなったが、同時に、放送部の活動で放課後は忙しくなったオレ自身との接点もますます少ないものになった。
少しずつ、それでも確実に自身の活躍の場を広げていく|三葉《みつば》に対して、言いようのない感情を抱きながら中学生活を終えたオレは、彼女や親友とともに、あいらんど高校に進学する。
高校に入学してからの彼女は、いよいよ、歌手としてのデビューも果たし、さらに地道に続けていたSNSの活動が実を結んだのか、いまでは、ファッションやコスメ関係の企業案件も手掛ける同世代のカリスマとなっていた。
(あの春休みに、寂しそうにスマホをいじっていた、大人しい転校生が……)
と考えると、感慨深いモノがあるが、日々、高校の授業と部活動をこなす以外、とくに目標を持って生きている訳ではない自分と彼女を比較し、オレの中の|三葉《みつば》に対するコンプレックスは、ますます大きくなっていた。
そして、二年生の夏休み直前のこと――――――。
ここ一年〜二年の間は、まったく、男性の影が見えなかった彼女に、果敢に交際を申し込み続ける男子生徒があらわれた。
それは、夏の大会を前に、県内でも屈指の好投手として注目されていた三年の|才木《さいき》先輩で、彼は、|三葉《みつば》たちと複数名で何度か遊びに出かけたあと、陽が傾きはじめた教室に彼女を呼び出し、
「|白井三葉《しろいみつば》、もし、オレが甲子園に出場できたら、付き合ってくれないか?」
と告白した。
放送・新聞部の取材のため、たまたま放課後の校舎内を移動していたオレは、三年生の教室で、その光景を目撃してしまったオレは、|三葉《みつば》が、ゆっくりと首をタテに振った瞬間を目にすることになる。
それは、オレが、この世でもっとも目にしたくなかった光景だったことは言うまでもない。
ショックを受けたオレは、その場から駆け出してしまい、無意識のまま、学校の敷地外へと飛び出す。
だが、そのとき、普段は、交通量の少ない学校前の道路を走ってくる乗用車に気づかなかった――――――。
校門からマリンパーク駅のロータリーの方に向かって道路を横切ろうとした瞬間、
ファ〜ン!
という大きなクラクションが聞こえ、
ドンッ
と、全身に強い衝撃を受けたオレは、そのまま意識を失ってしまった。