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第2章〜Everything Everyone All At Once〜⑥

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 あまりに唐突に、核心に迫る質問が投げかけられたため、声が震えるのを抑えることができない。 「ふ、ふ、普段のオレって、どういう意味ですか……?」  自分の動揺が、相手に伝わっていることは間違いないが、色々なを股にかけて、思うがままに活動していた自分に後ろめたさを感じていたため、足はガクガクと震え、背中にはイヤな汗が流れる。  上ずった声で問い返すオレのようすが可笑おかしかったのか、オレと桜花おうか先輩の会話を聞いていた冬馬とうまは、クックック……と、声を殺して笑いをこらえているようだ。 「な、なにが可笑おかしいんだよ、冬馬とうま?」  うろたえながら、言葉を返すと、親友は、「いや、ゴメンゴメン……」と苦笑しながら謝ったあと、 「でも、も人が悪いよ……はすっかり、ビビっちゃてるじゃないか?」 と、桜花おうか先輩をたしなめるように言った。 「あら、? 私は、彼のセカイで、どんなポスターが飾られているか、純粋に興味があっただけなんだけど?」  桜花おうか先輩の姿をした女子生徒は、いつもの調子で、淡々と親友の姿をした男子生徒に答えを返しているが――――――。  そのようすは、オレの知っている人間では無いように感じられる。  いつから、冬馬とうまは、先輩にタメぐちで話すようになったんだ?  ふたりは、今朝からのおかしな現象やオレのことについて、どこまで知ってるんだ?  そもそも、ブルームとか、ゲルブとか、変な名前で呼び合って、いったい、ナニを言ってるんだ?  そんな疑問が次々に湧き上がって来るのが、室内のふたりにも伝わったのか、冬馬とうま……いや、「ゲルブ」と呼ばれた生徒は、ニヤニヤした表情を崩さないまま、口をひらいた。 「ブルーム、時間もあまりないし、彼の疑問に答えて、本題に入ろう」  親友の姿をしている男子生徒が、そう提案すると、「そうね……」と、軽くうなずいた桜花おうか先輩の姿をした女子生徒は、困ったような表情で苦笑し、オレに問いかけてくる。 「さて、どこから話したモノかしら……? 玄野くろのくん、なにか聞きたいことはある?」  いや……いきなり、聞きたいことと言われても……そもそも、自分の周りで、いったいナニが起こっているのかすら理解できていないのだが――――――。 「聞きたいことは色々とあるが……ナニからたずねたら良いのかが、わからん……今朝から起きている謎の現象は、いったい何なんだ? だいたい、アンタらは何者なんだ? そして、オレの身に起こったことについて、アンタらは、どこまで知っているんだ?」  自分の中で、次々にわいてくる疑問をぶつけるように、オレが、一気にまくし立てると、ブルームとゲルブと呼び合っているふたりは、互いに顔を見合わせた。  そして、ブルームと呼ばれた女子生徒が、ふたたび口を開く。 「今日、世界中を騒がせているこの混乱を私たちは、『統合補完計画』と呼んでいるわ。もっとも、私たちは、その計画を阻止するために動いているんだけど……」 「オレのふたつ目の質問の答えが、アンタらの目的ってわけか?」 「えぇ、理解が早くて助かるわ、玄野くろのくん」 「いや、全然、理解できていないんだが……最初の質問に戻って悪いが、そもそも、『統合補完計画』ってなんなんだ?」  自分自身だけでなく、世界中に影響を与えているであろう謎の現象について、再度、問いただすと、ブルームは、ふぅ〜と、ため息をひとつつき、一瞬の間を置いたあと、ゆっくりと説明を始めた。 「もう、気づいていると思うけど、いま現在、貴方あなたや私たちが存在しているセカイは、玄野くろのくんが、色々なセカイを飛び回りながら行った行動の結果が反映されているの」 「それは、オレが、三葉みつばへの告白を成功させようと画策したり、河野こうのとの仲を深めようとして行動した結果ということか?」 「そうよ……さすがに、自分の行動がもたらした影響については、責任を感じているみたいね」  その一言は、オレが今朝から、うっすらと感じていた罪悪感を刺激するのに十分な内容だった。 「それは、つまり……オレが別々のセカイで親しくしていた三葉みつば河野こうのももが、ひとつのセカイに集まってきている、ってことなんだな?」  確認するようにたずねると、これまで質問に答えていたブルームだけでなく、親友と同じ姿をしているゲルブと呼ばれていた生徒も、同時に首をタテに振った。  なかば、予想していたことではあったが、結果的に、その内容を確認することになったため、自分の軽率さと不誠実さを突きつけられたような気持ちになる。  腰掛けていたパイプ椅子の背もたれに背中を預け、部室の天井を見つめると、思わず、声が漏れてしまった。 「マジかぁ……」  そして、オレは自分の中で理解が深まりつつある、この現象について、あらためて詳細を理解するため、ふたりにたずねる。   「詳しいことはわからないが……海外で株価が不自然な値上がりと値下がりを繰り返したり、国の代表者を名乗る人間が大勢でてきたり、スポーツの勝敗結果の記録に矛盾が生じていたりするのも、セカイがひとつになってしまったからなんだな?」  オレが、そう質問すると、ブルームとゲルブは、またも同時に大きくうなずくのだった。



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 あまりに唐突に、核心に迫る質問が投げかけられたため、声が震えるのを抑えることができない。 「ふ、ふ、普段のオレって、どういう意味ですか……?」  自分の動揺が、相手に伝わっていることは間違いないが、色々なを股にかけて、思うがままに活動していた自分に後ろめたさを感じていたため、足はガクガクと震え、背中にはイヤな汗が流れる。  上ずった声で問い返すオレのようすが可笑おかしかったのか、オレと桜花おうか先輩の会話を聞いていた冬馬とうまは、クックック……と、声を殺して笑いをこらえているようだ。 「な、なにが可笑おかしいんだよ、冬馬とうま?」  うろたえながら、言葉を返すと、親友は、「いや、ゴメンゴメン……」と苦笑しながら謝ったあと、 「でも、も人が悪いよ……はすっかり、ビビっちゃてるじゃないか?」 と、桜花おうか先輩をたしなめるように言った。 「あら、? 私は、彼のセカイで、どんなポスターが飾られているか、純粋に興味があっただけなんだけど?」  桜花おうか先輩の姿をした女子生徒は、いつもの調子で、淡々と親友の姿をした男子生徒に答えを返しているが――――――。  そのようすは、オレの知っている人間では無いように感じられる。  いつから、冬馬とうまは、先輩にタメぐちで話すようになったんだ?  ふたりは、今朝からのおかしな現象やオレのことについて、どこまで知ってるんだ?  そもそも、ブルームとか、ゲルブとか、変な名前で呼び合って、いったい、ナニを言ってるんだ?  そんな疑問が次々に湧き上がって来るのが、室内のふたりにも伝わったのか、冬馬とうま……いや、「ゲルブ」と呼ばれた生徒は、ニヤニヤした表情を崩さないまま、口をひらいた。 「ブルーム、時間もあまりないし、彼の疑問に答えて、本題に入ろう」  親友の姿をしている男子生徒が、そう提案すると、「そうね……」と、軽くうなずいた桜花おうか先輩の姿をした女子生徒は、困ったような表情で苦笑し、オレに問いかけてくる。 「さて、どこから話したモノかしら……? 玄野くろのくん、なにか聞きたいことはある?」  いや……いきなり、聞きたいことと言われても……そもそも、自分の周りで、いったいナニが起こっているのかすら理解できていないのだが――――――。 「聞きたいことは色々とあるが……ナニからたずねたら良いのかが、わからん……今朝から起きている謎の現象は、いったい何なんだ? だいたい、アンタらは何者なんだ? そして、オレの身に起こったことについて、アンタらは、どこまで知っているんだ?」  自分の中で、次々にわいてくる疑問をぶつけるように、オレが、一気にまくし立てると、ブルームとゲルブと呼び合っているふたりは、互いに顔を見合わせた。  そして、ブルームと呼ばれた女子生徒が、ふたたび口を開く。 「今日、世界中を騒がせているこの混乱を私たちは、『統合補完計画』と呼んでいるわ。もっとも、私たちは、その計画を阻止するために動いているんだけど……」 「オレのふたつ目の質問の答えが、アンタらの目的ってわけか?」 「えぇ、理解が早くて助かるわ、玄野くろのくん」 「いや、全然、理解できていないんだが……最初の質問に戻って悪いが、そもそも、『統合補完計画』ってなんなんだ?」  自分自身だけでなく、世界中に影響を与えているであろう謎の現象について、再度、問いただすと、ブルームは、ふぅ〜と、ため息をひとつつき、一瞬の間を置いたあと、ゆっくりと説明を始めた。 「もう、気づいていると思うけど、いま現在、貴方あなたや私たちが存在しているセカイは、玄野くろのくんが、色々なセカイを飛び回りながら行った行動の結果が反映されているの」 「それは、オレが、三葉みつばへの告白を成功させようと画策したり、河野こうのとの仲を深めようとして行動した結果ということか?」 「そうよ……さすがに、自分の行動がもたらした影響については、責任を感じているみたいね」  その一言は、オレが今朝から、うっすらと感じていた罪悪感を刺激するのに十分な内容だった。 「それは、つまり……オレが別々のセカイで親しくしていた三葉みつば河野こうのももが、ひとつのセカイに集まってきている、ってことなんだな?」  確認するようにたずねると、これまで質問に答えていたブルームだけでなく、親友と同じ姿をしているゲルブと呼ばれていた生徒も、同時に首をタテに振った。  なかば、予想していたことではあったが、結果的に、その内容を確認することになったため、自分の軽率さと不誠実さを突きつけられたような気持ちになる。  腰掛けていたパイプ椅子の背もたれに背中を預け、部室の天井を見つめると、思わず、声が漏れてしまった。 「マジかぁ……」  そして、オレは自分の中で理解が深まりつつある、この現象について、あらためて詳細を理解するため、ふたりにたずねる。   「詳しいことはわからないが……海外で株価が不自然な値上がりと値下がりを繰り返したり、国の代表者を名乗る人間が大勢でてきたり、スポーツの勝敗結果の記録に矛盾が生じていたりするのも、セカイがひとつになってしまったからなんだな?」  オレが、そう質問すると、ブルームとゲルブは、またも同時に大きくうなずくのだった。



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