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第3章〜逆転世界の電波少女〜②

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 ブルームから時間を停止することができるアイテムを、ゲルブからはトリッパーを見分けることができるデバイスを譲り受けたことで、少しだけ安心して、『ラディカル』のメンバーの動向を追うことが可能になった。

 銀河連邦の捜査官たちとの話し合いの結果、オレの役割は、取り戻したトリップ能力で並行世界に移動し、『ラディカル』の動きを監視、報告することに決まった。

 ブルームとゲルブによると、銀河連邦では、それぞれのセカイに番号を振って管理しているそうで、オレが『ルートA』と呼んでいる三葉(みつば)と親密にセカイは、No.141421356、『ルートB』と呼んでいる河野(こうの)と親しくなったセカイは、No.173205080、『ルートC』と呼んでいる(もも)が同居人となっているセカイは、No.223620679というナンバーが振られているらしい。

 ゲルブから受け取ったデバイスは、レーザー射出のスイッチを押すとディスプレイにいま現在のセカイがデジタル表示される便利仕様になっているので、この探知機でトリッパーを発見次第、捜査官の彼らに報告してほしい、とふたりから依頼された。
(なお、彼らへの連絡方法は、オレのスマホから、メッセージアプリのLANEを使ってもらって良い、というオレたちの住むセカイにとって、誠に都合が良いモノだった)

 ゲルブたちへの捜査協力(という程、だいそれたモノではないかも知れないが……)の準備が整ったことで、オレは朝から学校に登校し、部活動の終わったあとや休日は、並行世界に移動して、『ラディカル』のメンバーが、それぞれのセカイに入り込んでいないか監視することが、日課となった。

玄野(くろの)くん……『ラディカル』のメンバー、とくにリーダーのシュヴァルツは、トリップの能力を持っている貴方(あなた)に執着していると思うから、並行世界での行動については、十分に気をつけてね。LANEで連絡をくれたら、私やゲルブ、他の捜査官がすぐに貴方(あなた)の居るところに駆けつけるから」

雄司(ゆうじ)、キミは、捜査のプロじゃないんだから、あんまり無茶なことはしないようにね」

 ブルームとゲルブは、こんな風にオレを気づかってくれたが、なるべく、彼らの負担にならないように活動したいという想いが強くなる。

 それは、多様なセカイを守ろうと奮闘する彼らの想いに共感したことと、その職務に少しでも協力することで、自分が行った軽率な行動に対する罪をつぐないたいと考えているからだ。

 そんな想いをもって行動していたオレは、キルシュブリーテと校舎の屋上で対峙し、彼の行動を阻止した日から数日後、『ルートC』と呼んでいたNo.223620679のセカイに移動し、我が家のリビングで(もも)と語り合っていた。

(もも)、さいきん、学校で変わったことはなかったか? たとえば、急に今までと違った行動をし始めた先生や生徒が居るとか……」

 さりげない世間話しを装って、部活の後輩にして同居人となった彼女から情報収集を試みる。
 彼女は、スマホで、お気に入りのインフルエンサー・瓦木亜矢(かわらぎあや)のライブ配信画面を見ながら、生返事で、答えを返してきた。

「なんなの? その、娘から相手されなくなった父親が無理やりコミュニケーションを取ろうとして失敗する典型みたいな質問は……変わったことなんて、同じ学校に行ってるから、なにかあれば、お兄ちゃんも気づくでしょ?」

 ぐうの音も出ない正論に、思わず言葉が詰まってしまう。

「いや、まあ、確かにそれはそうだが……一年のこととか、(もも)のクラスのことは、わからないだろ?」

 なんとかごまかしながら、そう返答すると、(もも)は、「う〜ん……」と、少し考えたあと、

「そう言えば、変なことと言えば……」

と、つぶやく。どんな些細なことでも手がかりが欲しかったオレは、

「なんだ? (もも)の周りで変わったことがあったのか?」

と、彼女の言葉に食いつく。

 しかし、(もも)から返ってきたのは、オレの期待に反するモノだった。

「何日か前、変な夢を見たんだよね……お兄ちゃん……ううん、くろセンパイが、()()()()()()とか、クラス委員の河野(こうの)さんと付き合ってるとか言うの。しかも、朝からウチまで押しかけて来たりして……お兄ちゃんが、あんなモテ方をするとか、悪夢をとおり越して、この世の終わりが来たのかと思っちゃったよ……なんで、あんな夢を見たんだろう?」

 心の底から不思議がるようなようすで(もも)はつぶやくが、彼女の言葉は、オレの肝を冷やすのに、十分な効果があった。

「な、なに言ってんだ(もも)……オレが、そんなにモテるわけないだろ……」

(彼女たちは、明日の朝、それぞれ元いたセカイで目覚めて、今日、起きた数々の出来事は、まるで夢の中で起きたことであるように感じながら日々を過ごすことになると思うわ……)

 そう言っていたブルームの言葉を思い出しつつ、数日前に部室で会話をした時と同じような冷や汗を感じながら返答すると、口さがない同居人は、

「だよね〜。でも、安心して! ワタシが見た夢以上にヘンなことは、今のところ起きてないから」

と言って、フフンと笑いながら、ライブ配信の視聴に戻るのだった。


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 ブルームから時間を停止することができるアイテムを、ゲルブからはトリッパーを見分けることができるデバイスを譲り受けたことで、少しだけ安心して、『ラディカル』のメンバーの動向を追うことが可能になった。
 銀河連邦の捜査官たちとの話し合いの結果、オレの役割は、取り戻したトリップ能力で並行世界に移動し、『ラディカル』の動きを監視、報告することに決まった。
 ブルームとゲルブによると、銀河連邦では、それぞれのセカイに番号を振って管理しているそうで、オレが『ルートA』と呼んでいる|三葉《みつば》と親密にセカイは、No.141421356、『ルートB』と呼んでいる|河野《こうの》と親しくなったセカイは、No.173205080、『ルートC』と呼んでいる|桃《もも》が同居人となっているセカイは、No.223620679というナンバーが振られているらしい。
 ゲルブから受け取ったデバイスは、レーザー射出のスイッチを押すとディスプレイにいま現在のセカイがデジタル表示される便利仕様になっているので、この探知機でトリッパーを発見次第、捜査官の彼らに報告してほしい、とふたりから依頼された。
(なお、彼らへの連絡方法は、オレのスマホから、メッセージアプリのLANEを使ってもらって良い、というオレたちの住むセカイにとって、誠に都合が良いモノだった)
 ゲルブたちへの捜査協力(という程、だいそれたモノではないかも知れないが……)の準備が整ったことで、オレは朝から学校に登校し、部活動の終わったあとや休日は、並行世界に移動して、『ラディカル』のメンバーが、それぞれのセカイに入り込んでいないか監視することが、日課となった。
「|玄野《くろの》くん……『ラディカル』のメンバー、とくにリーダーのシュヴァルツは、トリップの能力を持っている|貴方《あなた》に執着していると思うから、並行世界での行動については、十分に気をつけてね。LANEで連絡をくれたら、私やゲルブ、他の捜査官がすぐに|貴方《あなた》の居るところに駆けつけるから」
「|雄司《ゆうじ》、キミは、捜査のプロじゃないんだから、あんまり無茶なことはしないようにね」
 ブルームとゲルブは、こんな風にオレを気づかってくれたが、なるべく、彼らの負担にならないように活動したいという想いが強くなる。
 それは、多様なセカイを守ろうと奮闘する彼らの想いに共感したことと、その職務に少しでも協力することで、自分が行った軽率な行動に対する罪をつぐないたいと考えているからだ。
 そんな想いをもって行動していたオレは、キルシュブリーテと校舎の屋上で対峙し、彼の行動を阻止した日から数日後、『ルートC』と呼んでいたNo.223620679のセカイに移動し、我が家のリビングで|桃《もも》と語り合っていた。
「|桃《もも》、さいきん、学校で変わったことはなかったか? たとえば、急に今までと違った行動をし始めた先生や生徒が居るとか……」
 さりげない世間話しを装って、部活の後輩にして同居人となった彼女から情報収集を試みる。
 彼女は、スマホで、お気に入りのインフルエンサー・|瓦木亜矢《かわらぎあや》のライブ配信画面を見ながら、生返事で、答えを返してきた。
「なんなの? その、娘から相手されなくなった父親が無理やりコミュニケーションを取ろうとして失敗する典型みたいな質問は……変わったことなんて、同じ学校に行ってるから、なにかあれば、お兄ちゃんも気づくでしょ?」
 ぐうの音も出ない正論に、思わず言葉が詰まってしまう。
「いや、まあ、確かにそれはそうだが……一年のこととか、|桃《もも》のクラスのことは、わからないだろ?」
 なんとかごまかしながら、そう返答すると、|桃《もも》は、「う〜ん……」と、少し考えたあと、
「そう言えば、変なことと言えば……」
と、つぶやく。どんな些細なことでも手がかりが欲しかったオレは、
「なんだ? |桃《もも》の周りで変わったことがあったのか?」
と、彼女の言葉に食いつく。
 しかし、|桃《もも》から返ってきたのは、オレの期待に反するモノだった。
「何日か前、変な夢を見たんだよね……お兄ちゃん……ううん、くろセンパイが、|あ《・》|の《・》|幼《・》|な《・》|じ《・》|み《・》とか、クラス委員の|河野《こうの》さんと付き合ってるとか言うの。しかも、朝からウチまで押しかけて来たりして……お兄ちゃんが、あんなモテ方をするとか、悪夢をとおり越して、この世の終わりが来たのかと思っちゃったよ……なんで、あんな夢を見たんだろう?」
 心の底から不思議がるようなようすで|桃《もも》はつぶやくが、彼女の言葉は、オレの肝を冷やすのに、十分な効果があった。
「な、なに言ってんだ|桃《もも》……オレが、そんなにモテるわけないだろ……」
(彼女たちは、明日の朝、それぞれ元いたセカイで目覚めて、今日、起きた数々の出来事は、まるで夢の中で起きたことであるように感じながら日々を過ごすことになると思うわ……)
 そう言っていたブルームの言葉を思い出しつつ、数日前に部室で会話をした時と同じような冷や汗を感じながら返答すると、口さがない同居人は、
「だよね〜。でも、安心して! ワタシが見た夢以上にヘンなことは、今のところ起きてないから」
と言って、フフンと笑いながら、ライブ配信の視聴に戻るのだった。