「ロゼ」
「なんだ?」
ゴシックロリータ専門店で服を見ているロゼに話し掛ける。そのロゼは幼い少女ではなく、高潔で麗しい成人女性。成長してしまったが為に服がなく、お気に入りの店で服を買っていた。あらかた買って、装飾品でも見ておくかと思っていたロゼは逆十字のアクセサリーを見ていた。
「これは夢なのかも知れないが…」
ロゼが呪いを受け、肉体が老いさらばえて、死してしまった時のに見た存在しない記憶の事。そこでロザリオを放り投げ、天に向かって中指を立てて、神と決別した事を話した。
「ふむ、興味深いな。ゆっくりと話したい。一度帰ろう」
ロゼは数着の衣装をジャックに持たせると裏路地に歩いていき、転移魔術で屋敷に帰った。
―
「神との決別。ふむふむ」
ジャックは洗練された動きで紅茶を淹れる。ロゼに渡した紅茶。そこにはゴールデンリングが出ていた。
「それはだなジャック。奇跡を否定し、私を信用したという事だ」
ジャックはそれは良くない事だろうと首を傾げながら席に着く。
「いや、最善手だ。私の不老の魔術は理詰めの魔術だ。魔法ならば祈りに意味はあるが魔術は計算されたもの。科学と同じ」
難しいかそれ?と言いたげに眉間に皺を寄せる。
「簡単に分かるように説明してやる。傾聴しろ」
ロゼは紅茶を口にして、満足げに微笑む。
「科学は精密に計られ、こうすればこういった結果が得られるという方法が記載されたもの。故に少しでも数が違えば一瞬にして崩れ去る。魔術もそう。魔法は祈りを文章化。つまりは原理を感覚ではなく文字で分かるようにしたものだが結局は精神性や才能が絡む。あと、自然との共存とかな。ややこしいからこの程度の説明にとどめる。魔術は精神論を排除し、とことん計算で原理を発動させる事に特化したもの。つまりは一言一句間違えなければ確実なる成果が得られるものなのだ」
それと信用の関係は?と首を傾げる。ジャックは顎に手を当てて考えるもさっぱり分からないという顔をしている。
「信用。つまりは私の魔術を肯定した。何一つ間違わない。ロゼは完璧であると。魔術はそれに答えた。よく分からない?極論でまとめると能動の魔法。祈りという届くかも分からない不定のものではなく、術者という計算を完璧に実行するという確実なる者に信用という更なる強き力を与えた。ダブルチェックのされた物品はそうは間違わないだろう?そういう事だ」
やはり、よく分からないという顔をしている。もう一歩だがなんだか腑に落ちないという顔をジャックはしている。
「ふむ、もっと簡潔にしよう。信じる事は最高の魔法なのだ。魔術は魔法から不定要素を抜いたものだが元は魔法。魔術は祈りを嫌い、信じる事を愛する。何故なら信じていなければ結果を得られないからだ。だからこそ貴様が私を信じる事が力になり、魔術は100%ではなく120%の力となったのだ」
まだまだ難しくて飲み込めてはいないが分かった気がするとジャックの顔が緩んだ。
「俺は俺の行いを誇らない。だが、ロゼを信じて良かったとは思う。ありがとうロゼ。愛しているロゼ」
真っ直ぐで迷いのない瞳で告げる。ロゼは初めての告白の時のように照れたりはしないが立ち上がって、ジャックに熱い口づけをする。
「愛しているぞジャック。そして、此方こそ感謝だ」
ジャックは口づけをされた事で真っ赤になり、慌てふためいている。
「全く、ウブな小僧だ」
ロゼはフフフと満足げに微笑んだ。