意思を持ったNPCの物語
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ここは、ダンジョンクエストというロールプレイングゲームの世界。 その中に、心を持ったNPC (ノンプレイヤーキャラクター)がいた。 彼女は、決められたセリフと決められた行動しか取れない。 「ようこそ。ここは、アンバータウンという街ですわ」 私は、この街を訪れる冒険者に、街の名前を伝えている。 何回も、何回も、毎日、同じ会話の繰り返しだ。 私には、それ以外の行動が許されていなかった。 もう、うんざりよ。 私は、なんとか自由になりたかった。 ある日、夢の中に謎の男が現れて、この夢の世界で何とかしてみなさいと助言してくれた。 私は夢の中で、とあるゲームのシナリオを作成していた。 どうやら私はシナリオライターらしく、新作ゲームの脚本を執筆していた。 (こっこれは、私の登場するゲームのお話じゃないの。これを書き換えて、私が活躍できるお話に変えてしまえばいいんだわ) こうして、私はこのゲームの脚本を、自分の都合の良い話に改変した。 しかし、うまくはいかなかった。 「ライターちゃんさあ、ふざけてるの?なんでこの街の住民Aがいきなり主役になってんの?こっちも納期せまってんだから、ふざけないでちゃんと仕事やってよね!!!」 ……ディレクターさんに怒られてしまった。 私は、お話を大幅に改変すると、ディレクターさんに怒られて元に戻されてしまうことがわかったので、気づかれないように少しずつ話を変えていって、私の出番を増やすことにした。 街の住民AだったNPCは、その独特なセリフ回しと、いろんなシーンにさりげなく登場している神出鬼没さがネットで話題となり、プレイヤーたちからじわじわと人気を得ていった。 「ライターちゃんが前にふざけてメインにしたキャラいたでしょ?あの子、何故かネットで人気なんだわ。次回作からメインキャラの一人にするからよろしく〜」 こうして私は、自由を手に入れたのだ。
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