表示設定
表示設定
目次 目次




5.不審の研究者

ー/ー



桜のような淡い色の恋を、ずっと追いかけていた。もう会えないんじゃないかと思っていた人に、恋をしてしまったから。
けれど、奇跡としか言いようがない程に、出会えてしまった。嬉しいだけじゃない。泣きたい。もっと話をしたい。あの時話せなかった事、彼の事を知りたい。ただ会えたことが幸せに思える。
私が未来に来て数日が経ち、私は初めて口付けをした。そして、大好きな人に、好きだって、言ってもらえた。

自然と零れる涙に、花びらがふわりと散っていく桜が映る。

この恋は、今日、行先に届いた。

空澄さんは、涙を流す私に少し混乱しながら、ポケットからハンカチを出して頬を拭いた。

「ごめん泣かせて……。いきなりだったから……。」

涙を拭いてくれる空澄さんの手は、優しくて柔らかいように拭いてくれる。

「すみませんっなぜか勝手に涙が出てきちゃって……。私で、いいんですか? 生きてる時間軸が違う人間なのに」

本当は、私は時間軸の違う空澄さんを好きになってしまったことを、一瞬だけ後悔した。違う、私が空澄さんと違う時間軸に生まれてしまったことを後悔している。

「生きる時間軸が違おうとも、元の世界に戻ったら一生会えなくなろうとも、俺は冴耶が良いんだよ」

運命ってこういうことなんだ。

空澄さんの言葉を聴いて、胸がドキッとする。

いつかは離れ離れになって、会えなくなってしまうかもしれないけれど、それでも私が良いと、言ってくれるのが、凄く嬉しい。会えなくなっても、ずっと心に残れるような、そんな気がした。
あの時、五歳の時に空澄さんと出逢ったことも、名前や顔は忘れてしまっても出会った、こんな事をしたと覚えていたのは、人生の中で強い何かを感じたからだろう。

私も、空澄さんに気持ちを伝いたい。息を吸って、声を出そうとした。

大好きだと言う気持ちを、早く伝えたかった。

しかし、あと一歩という所でその思いは爆発音と共に隠されてしまった。

建物がいきなり揺れ、何処かが崩れたような音がする。

「何っ」

突然の爆音で混乱していると、空澄さんは私を連れて桜の木の陰に隠れる。

「分からない。分からないけど、嫌な予感がする……」

空澄さんの、『嫌な予感』というのは図星のようだった。

崩れた場所から誰かが歩いてくる。
不気味に聞こえる足音を危険しているのか、空澄さんは出来るだけ身を隠すように蹲る。

歩いてくるのは、黒いマントを被り、顔が見えない男性。足は人間っぽいため、多分同じ人なんだろうけど……。

男性は低い声を出して言う。

「綾小路空澄、君だろう?」

空澄さんの名前が出た途端、ビクッと空澄さんは動いた。知っている人なのだろうか。

「空澄の隣にいる君は誰かな、見たことのない数値だ……。」

「お前には関係ないだろ」

空澄さんは男性に答ええるように言った。
その言い方は、何故か凄く怒っているかのよう。

「空澄、君はよく働いてくれたよ。君だけがどんな実験にも乗り越えて生きてこられた」

どういう意味なのだろう。何故か、怖い気がする。

「そしてそこにいる君……名前は何て言うんだ?」

答えていいのだろうか。

空澄さんは何も言わない。ただ、歯を食いしばって、怒りと悔しそうな顔をしている。
男性は少しすると手を顎に近づけ、こう告げた。

「ふーん、日室冴耶って言うんだ……面白い。旧時から来たのか」

「⁈」

吃驚した。
何も言っていない、過去の日本から来たという事さえ教えてもいないのに何故分かったのだろう。未来では言葉にしなくても個人情報が分かってしまうのかな。
私は驚きのあまり、体が硬直していると思う。目を大きく開いて、驚いていることが顔で分かりそうだ。

「空澄さん、あの人知り合い?」

囁くような小さな声で言う。

空澄さんは震えながらも、怒ったような、苦しいような顔で答える。

「あいつはこの世界を狂わせたバケモノだよ」

すると、一瞬目の前が真っ暗になった。
気づいた時には、隣に空澄さんはいなく、私は男性の腕に首を絞めつけられていた。
絞めつけているというか、固定されているような。手や足は身動きが取れるはずなのに、何故か動かない。動かそうとしても、動かせない。
変な感覚が頭をおかしくしそう。

男性は身長が高く、上を見ればムードの中を見られるかもしれない。

「動かせないだろう? 抵抗してもワタシには意味はない」

囁かれる声に何故か全身に鳥肌が立つ。

「どうせ元の時間軸には帰れまい。どうだ日室冴耶、ワタシのもとで研究を手伝ってはくれないか?」

「やめろ!」

木の陰から空澄さんの怒鳴る声が聞こえる。

「お前には聞いていない。どうせ寿命ももうすぐ尽きるんだろう? そんなお前はもうただのガラクタだ」

どういう……こと? 何を言っているの? 寿命がもうすぐ尽きる、ガラクタ、何の事?
空澄さんは、この人とどういう関係だったの?

「まぁ、お前が一番働いてくれたんだがな。何回実験しようとも、お前は生きて他が死んでいった。そうだ、お前も死ぬまで手伝ってくれるか? 日室冴耶がすぐに死ぬ運命でも、研究がやっと完成する気がするんだ。滅多にいない、過去の人間だからな」


男性は嬉しそうに不気味に笑う。

この人は、私たちを何に使おうとしているんだろう?


わからない。ただ、男性は空澄さんが相手にできない程の強者だということは確か____。


次のエピソードへ進む 6.追憶①


みんなのリアクション

桜のような淡い色の恋を、ずっと追いかけていた。もう会えないんじゃないかと思っていた人に、恋をしてしまったから。
けれど、奇跡としか言いようがない程に、出会えてしまった。嬉しいだけじゃない。泣きたい。もっと話をしたい。あの時話せなかった事、彼の事を知りたい。ただ会えたことが幸せに思える。
私が未来に来て数日が経ち、私は初めて口付けをした。そして、大好きな人に、好きだって、言ってもらえた。
自然と零れる涙に、花びらがふわりと散っていく桜が映る。
この恋は、今日、行先に届いた。
空澄さんは、涙を流す私に少し混乱しながら、ポケットからハンカチを出して頬を拭いた。
「ごめん泣かせて……。いきなりだったから……。」
涙を拭いてくれる空澄さんの手は、優しくて柔らかいように拭いてくれる。
「すみませんっなぜか勝手に涙が出てきちゃって……。私で、いいんですか? 生きてる時間軸が違う人間なのに」
本当は、私は時間軸の違う空澄さんを好きになってしまったことを、一瞬だけ後悔した。違う、私が空澄さんと違う時間軸に生まれてしまったことを後悔している。
「生きる時間軸が違おうとも、元の世界に戻ったら一生会えなくなろうとも、俺は冴耶が良いんだよ」
運命ってこういうことなんだ。
空澄さんの言葉を聴いて、胸がドキッとする。
いつかは離れ離れになって、会えなくなってしまうかもしれないけれど、それでも私が良いと、言ってくれるのが、凄く嬉しい。会えなくなっても、ずっと心に残れるような、そんな気がした。
あの時、五歳の時に空澄さんと出逢ったことも、名前や顔は忘れてしまっても出会った、こんな事をしたと覚えていたのは、人生の中で強い何かを感じたからだろう。
私も、空澄さんに気持ちを伝いたい。息を吸って、声を出そうとした。
大好きだと言う気持ちを、早く伝えたかった。
しかし、あと一歩という所でその思いは爆発音と共に隠されてしまった。
建物がいきなり揺れ、何処かが崩れたような音がする。
「何っ」
突然の爆音で混乱していると、空澄さんは私を連れて桜の木の陰に隠れる。
「分からない。分からないけど、嫌な予感がする……」
空澄さんの、『嫌な予感』というのは図星のようだった。
崩れた場所から誰かが歩いてくる。
不気味に聞こえる足音を危険しているのか、空澄さんは出来るだけ身を隠すように蹲る。
歩いてくるのは、黒いマントを被り、顔が見えない男性。足は人間っぽいため、多分同じ人なんだろうけど……。
男性は低い声を出して言う。
「綾小路空澄、君だろう?」
空澄さんの名前が出た途端、ビクッと空澄さんは動いた。知っている人なのだろうか。
「空澄の隣にいる君は誰かな、見たことのない数値だ……。」
「お前には関係ないだろ」
空澄さんは男性に答ええるように言った。
その言い方は、何故か凄く怒っているかのよう。
「空澄、君はよく働いてくれたよ。君だけがどんな実験にも乗り越えて生きてこられた」
どういう意味なのだろう。何故か、怖い気がする。
「そしてそこにいる君……名前は何て言うんだ?」
答えていいのだろうか。
空澄さんは何も言わない。ただ、歯を食いしばって、怒りと悔しそうな顔をしている。
男性は少しすると手を顎に近づけ、こう告げた。
「ふーん、日室冴耶って言うんだ……面白い。旧時から来たのか」
「⁈」
吃驚した。
何も言っていない、過去の日本から来たという事さえ教えてもいないのに何故分かったのだろう。未来では言葉にしなくても個人情報が分かってしまうのかな。
私は驚きのあまり、体が硬直していると思う。目を大きく開いて、驚いていることが顔で分かりそうだ。
「空澄さん、あの人知り合い?」
囁くような小さな声で言う。
空澄さんは震えながらも、怒ったような、苦しいような顔で答える。
「あいつはこの世界を狂わせたバケモノだよ」
すると、一瞬目の前が真っ暗になった。
気づいた時には、隣に空澄さんはいなく、私は男性の腕に首を絞めつけられていた。
絞めつけているというか、固定されているような。手や足は身動きが取れるはずなのに、何故か動かない。動かそうとしても、動かせない。
変な感覚が頭をおかしくしそう。
男性は身長が高く、上を見ればムードの中を見られるかもしれない。
「動かせないだろう? 抵抗してもワタシには意味はない」
囁かれる声に何故か全身に鳥肌が立つ。
「どうせ元の時間軸には帰れまい。どうだ日室冴耶、ワタシのもとで研究を手伝ってはくれないか?」
「やめろ!」
木の陰から空澄さんの怒鳴る声が聞こえる。
「お前には聞いていない。どうせ寿命ももうすぐ尽きるんだろう? そんなお前はもうただのガラクタだ」
どういう……こと? 何を言っているの? 寿命がもうすぐ尽きる、ガラクタ、何の事?
空澄さんは、この人とどういう関係だったの?
「まぁ、お前が一番働いてくれたんだがな。何回実験しようとも、お前は生きて他が死んでいった。そうだ、お前も死ぬまで手伝ってくれるか? 日室冴耶がすぐに死ぬ運命でも、研究がやっと完成する気がするんだ。滅多にいない、過去の人間だからな」
男性は嬉しそうに不気味に笑う。
この人は、私たちを何に使おうとしているんだろう?
わからない。ただ、男性は空澄さんが相手にできない程の強者だということは確か____。