ベンチから
2/2
アナウンスは、オレの名前のあとに、次の投手の名前をコールした。 五回裏。ぎりぎりでの降板。欲を言えば、もう1アウトを取ってから、とは思ったが、今回の打者とは分が悪いとのスコアに渋々了承して、今は六回を待つばかりである。 一投一打。 持てるものも、持たされるものも違う。だから、使い分ける。そういうものだ。 オレのできなかったことを、やってのける。 ほかのスポーツであればいざ知らず。 野球は、一度ベンチに戻れば、もう二度と、あちら側の土を踏むことは無い。 冷やされる肩を気にしてなんかいられない。 なぜオレは打たれたのか。 なぜオレは動けなかったのか。 頭ではわかっていることが、こちら側に戻ればできなくなる。 練習は嘘をつかない。 結果も、出てしまえば変えられない。 たぶん、オレがへばっている間に、あいつはちゃんと、じゅんびをしていた。必要な準備を全て行っていた。だから、そうして試合に出ることができる。それを継続することができている。だから好きなモノがない。 そう。それだけのこと。 オレは、出来ていなかった。 クオリティスタートは成功したように思う。 思うだけで、結果、現状、負けているのだから、なんの意味も無い。 べつに、オレに敗戦投手の汚名をかぶせ続けてくれて構わない。 いつか、きっちり、返上してやるのだ。 たとえばそこで投げている、昨年まではライバルチームにいた、あいつのように。
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