間が近くて契りが薄い4
ー/ー 祖霊舎から離れる時、写真の直樹の視線がこっちを見てる気がした。
「んじゃ、行きますか」
崇直の声に視線を向けたら、紅緒が崇直の背中に顔を押し付けていた。
「すまん、先に行っててくれ。すぐに……」
あれは、泣いてるんだ。
子供の頃、何かあった時、悔しかった時、泣きそうになるとあいつは決まって崇直に甘えてた。
直樹が居た時は?
崇直が僕に背中を向け、完全に紅緒が見えなくなる。
紅緒の手が、崇直の首にかかる。
固く目を閉じ、何も考えない様にして踵を返し、廊下に出て、大きく深呼吸をした。
直樹が傍にいた時、紅緒はずっと笑ってたんだよな。笑顔だったんだ。
「亘くん、外で待ってようか」
顔を上げたら、廊下の先で田中が親指で勝手口を指していた。
外に出て、久しぶりなこともあり田中と一緒に境内を見て回る。
夜中だけど、二人で並んで柏手を打ち、お参りをした。
玄関先へ戻ったところで、ちょうど崇直が勝手口から出てきた。
「おまた~」
と暢気に、片手を上げる。
スウェットの上下に着替えてやがるよ。いつでも寝れそうな格好だな、それ。
直樹に成りきるんじゃなかったのかよ、と声を掛けようとしたら。
社務所の脇。地下の宴会場への入口から、人が出てきた。
紅緒だ。
「もうちょっと待ってくれ」
崇直に声をかけ、紅緒の方へ歩いて行く。
何持ってんだろう、両手に下げて重そうだな。
「わーちゃん! 助かった」
駈け寄ったら、ウソみたいな笑顔を向けられる。
「輝爺から適当に持って行けって袋渡されたから、美味しそうなの取って来た」
そう言って下げてきた紙袋の一つを差し出す。
こりゃ、結構な重さあるぞ。
「いくつ取って来たんだよ、こんなに飲む気かべー。酔ったって知らねーぞ」
中を見たら、缶チューハイにカクテルに、ハイボール。あら、缶の結露で袋が破れそうじゃん、このままじゃ。
「いいもん。わーちゃんが心配しなくても適当に酔ったら寝るから」
どこで寝る気だよ、この酔っ払いは。などと思ってたら崇直もやって来たよ。
「どんだけ呑む気だよ。ほら、底抜ける前に入れ替えないと」
と、紅緒が下げてる紙袋の今にも抜けそうな底に手をやり、落ちないように袋ごと一緒にその場にしゃがみ込む。
置いたとたんに破れた底から酒の缶が転がり出た。
慌てて崇直が缶を止めようと腕を伸ばし、尻もちをつく。
それが面白くて、紅緒が指さして笑いだした。
「ださ~っ」
まだワインが抜けない僕らは、それで楽しくなってしまったのか大笑いしてしまった。
それから歩いて僕らはマンションへ向かった。
「最上階の、ボタン押せないよ」
真っ先に乗り込んだ田中が、何度もボタンを連打する。
使い方を説明したら、今度はカギを貸せと言ってきた。
「亘くん、さんきゅー」
さっそくカギを受け取り、ボックスを開き開錠する。
とたん最上階のボタンが点灯しその他の明かりが消える。
「ヒャッホ―ッ。何これ! カッケーんだけど」
やれやれ、お酒入ると田中って面白いな。
部屋に着き、レジ袋三つに分けた酒缶とつまみ類をリビングのテーブルに持って行く。
「ごくろうさん。どーぞ、缶酎ハイ好きなの取って」
紅緒が取り出しやすいように、袋を広げてくれた。
「わーい、俺これがいい」
おお、田中それ新作の奴じゃん。
「じゃ、僕はこれでいいかな」
適当に出したら、レモン果汁割りだった。へぇ、美味そうじゃん。
崇直が缶を抜き出すのを確認し、紅緒が残りの酒が入ったレジ袋を持ち上げようとする。
「わーちゃん、氷ある?」
「ある、ある」
袋を下げ、キッチンへ向かう。
「大きなボウルとか、何かない? 氷入れてこれ冷やせば外で飲めるよ」
「! ナイスアイディア。ちょっと待って、良いのがあるんだ」
キッチンのコンロ下から入れ物代わりに使っていた、大きめの鉢を取り出した。
「わーちゃん、ワインクーラーじゃないこれ。イイのがあるじゃん」
二人して中身を入れ替える。
シンクにクーラーを入れ、紅緒が洗い始める。
僕は冷凍庫から、前に買っていた氷の袋を取り出した。
氷をクーラーに入れ、缶を中に突っ込む。
さて、これ持って外で飲み直しかなとリビングを見たら、田中が床に座ってる崇直にしがみついていた。
「直樹ーーーっ」
はぁ? 田中、大丈夫か。もう酔ったのか。
「何で死んだんだよ、馬鹿野郎ぉっ」
紅緒が僕の肩を叩いて、僕を引き戻す。
「わーちゃん、先に持って外に出よ、ね」
と小声で言う。手にはつまみが入った袋を持っていた。
僕は頷き、もう一度リビングを見ると崇直と目が合った。
泣いてるっぽい田中をあやしてる崇直に、静かにしてるよと口に指を当て、紅緒を誘導して外に出た。
「んじゃ、行きますか」
崇直の声に視線を向けたら、紅緒が崇直の背中に顔を押し付けていた。
「すまん、先に行っててくれ。すぐに……」
あれは、泣いてるんだ。
子供の頃、何かあった時、悔しかった時、泣きそうになるとあいつは決まって崇直に甘えてた。
直樹が居た時は?
崇直が僕に背中を向け、完全に紅緒が見えなくなる。
紅緒の手が、崇直の首にかかる。
固く目を閉じ、何も考えない様にして踵を返し、廊下に出て、大きく深呼吸をした。
直樹が傍にいた時、紅緒はずっと笑ってたんだよな。笑顔だったんだ。
「亘くん、外で待ってようか」
顔を上げたら、廊下の先で田中が親指で勝手口を指していた。
外に出て、久しぶりなこともあり田中と一緒に境内を見て回る。
夜中だけど、二人で並んで柏手を打ち、お参りをした。
玄関先へ戻ったところで、ちょうど崇直が勝手口から出てきた。
「おまた~」
と暢気に、片手を上げる。
スウェットの上下に着替えてやがるよ。いつでも寝れそうな格好だな、それ。
直樹に成りきるんじゃなかったのかよ、と声を掛けようとしたら。
社務所の脇。地下の宴会場への入口から、人が出てきた。
紅緒だ。
「もうちょっと待ってくれ」
崇直に声をかけ、紅緒の方へ歩いて行く。
何持ってんだろう、両手に下げて重そうだな。
「わーちゃん! 助かった」
駈け寄ったら、ウソみたいな笑顔を向けられる。
「輝爺から適当に持って行けって袋渡されたから、美味しそうなの取って来た」
そう言って下げてきた紙袋の一つを差し出す。
こりゃ、結構な重さあるぞ。
「いくつ取って来たんだよ、こんなに飲む気かべー。酔ったって知らねーぞ」
中を見たら、缶チューハイにカクテルに、ハイボール。あら、缶の結露で袋が破れそうじゃん、このままじゃ。
「いいもん。わーちゃんが心配しなくても適当に酔ったら寝るから」
どこで寝る気だよ、この酔っ払いは。などと思ってたら崇直もやって来たよ。
「どんだけ呑む気だよ。ほら、底抜ける前に入れ替えないと」
と、紅緒が下げてる紙袋の今にも抜けそうな底に手をやり、落ちないように袋ごと一緒にその場にしゃがみ込む。
置いたとたんに破れた底から酒の缶が転がり出た。
慌てて崇直が缶を止めようと腕を伸ばし、尻もちをつく。
それが面白くて、紅緒が指さして笑いだした。
「ださ~っ」
まだワインが抜けない僕らは、それで楽しくなってしまったのか大笑いしてしまった。
それから歩いて僕らはマンションへ向かった。
「最上階の、ボタン押せないよ」
真っ先に乗り込んだ田中が、何度もボタンを連打する。
使い方を説明したら、今度はカギを貸せと言ってきた。
「亘くん、さんきゅー」
さっそくカギを受け取り、ボックスを開き開錠する。
とたん最上階のボタンが点灯しその他の明かりが消える。
「ヒャッホ―ッ。何これ! カッケーんだけど」
やれやれ、お酒入ると田中って面白いな。
部屋に着き、レジ袋三つに分けた酒缶とつまみ類をリビングのテーブルに持って行く。
「ごくろうさん。どーぞ、缶酎ハイ好きなの取って」
紅緒が取り出しやすいように、袋を広げてくれた。
「わーい、俺これがいい」
おお、田中それ新作の奴じゃん。
「じゃ、僕はこれでいいかな」
適当に出したら、レモン果汁割りだった。へぇ、美味そうじゃん。
崇直が缶を抜き出すのを確認し、紅緒が残りの酒が入ったレジ袋を持ち上げようとする。
「わーちゃん、氷ある?」
「ある、ある」
袋を下げ、キッチンへ向かう。
「大きなボウルとか、何かない? 氷入れてこれ冷やせば外で飲めるよ」
「! ナイスアイディア。ちょっと待って、良いのがあるんだ」
キッチンのコンロ下から入れ物代わりに使っていた、大きめの鉢を取り出した。
「わーちゃん、ワインクーラーじゃないこれ。イイのがあるじゃん」
二人して中身を入れ替える。
シンクにクーラーを入れ、紅緒が洗い始める。
僕は冷凍庫から、前に買っていた氷の袋を取り出した。
氷をクーラーに入れ、缶を中に突っ込む。
さて、これ持って外で飲み直しかなとリビングを見たら、田中が床に座ってる崇直にしがみついていた。
「直樹ーーーっ」
はぁ? 田中、大丈夫か。もう酔ったのか。
「何で死んだんだよ、馬鹿野郎ぉっ」
紅緒が僕の肩を叩いて、僕を引き戻す。
「わーちゃん、先に持って外に出よ、ね」
と小声で言う。手にはつまみが入った袋を持っていた。
僕は頷き、もう一度リビングを見ると崇直と目が合った。
泣いてるっぽい田中をあやしてる崇直に、静かにしてるよと口に指を当て、紅緒を誘導して外に出た。
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