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間が近くて契りが薄い3 So Close, Yet So Far

ー/ー



 高二の冬、マンションの屋上でやった流星群の観測会。
 僕の学校からも数人参加して、崇直も直樹も友達連れて来てたな。
 あの年は当たり年で、一等星二等星クラスがバンバン流れて賑やかだった。
「枠外だったけど、火球のでっかいのが流れてきたよな」
「ああ、あれニュースにもなってたっけ」
「そうそう、同じように寝転がって観測してるのテレビで見て、興奮したよ。俺もしたぞって」
  
 田中が当時のことを懐かしそうに、話してる。
 僕はと言えば、適当に返事をし、自分の馬鹿さ加減にうんざりしていた。
 紅緒にあんな顔をさせてしまったのだ。
 視線を前を歩く二人に向けると、崇直の頭に目がいく。ハーフアップにした先っちょが小刻みに揺れてる。
 不意に紅緒がこっちを振り返り、僕と目が合うと口元を緩めて笑顔を作った。
 
「亘くん、着いたよ。話してると、あっという間だな」
 田中の声で、我に返る。
 池袋駅からの記憶がほとんどないよ。
「もう着いたんだ」
 そのまま流れに押されるようにして、ホームに降りる。

 改札を抜け歩いていたら、背後から田中の声が聞こえてきた。
「えーっ、べーちゃんここで帰っちゃうの」
 うそ、ここでさよならなのか。
 ヒヤリとした、痛みにも似た感触が喉元から下腹に抜ける。
 僕は、何を期待してたんだろう。
 足が止まり、紅緒の顔を見たいのに体が動かないよ。

  
「直ちゃんに、持って帰りたいだけ。あ、誕生日だし皆で挨拶する?」
 えっ?
 振り返ると、田中が笑顔で僕の肩に手を置いた。
「直樹に挨拶ってさ。行こうぜ」

 神社の参道の緩い坂道を上り、境内を抜け社務所の裏へ回ると大きな楠が見えてきた。
 住居と境内とを仕切るように立つ楠。
 そこを過ぎたら、崇直たちの住む家がある。
 近代的な紅緒の家の門前を通り過ぎ、中庭を抜けたら旧家然とした崇直の家の格子戸が見えた。
 その隙間から、間口四間の豪華な玄関が見える。
 
 僕らは玄関から出入りすることはない。
 今夜も格子戸を抜けたら、当たり前のように玄関を無視して勝手口へ向かう。
 数年ぶりとは言え、通いなれた道順だ。
 すたすたと歩いていたら田中に腕を掴まれた。
「あれ、玄関……」
 田中が玄関の方を向き、立ち止まる。
「そっちは客用。おい、亘」
 崇直が振り返り、僕に向かって顎をしゃくる。
 へいへい、分かってますよ。
「僕らは玄関からは入らないんだよ」
「なんで? 俺ここ来たらいつも玄関で声かけてたけど」
「ああ、それは良いんだよ。田中はお客さんだから。でも、今夜は僕らと一緒だからね」
「意味分からんが、そう言う仕来り(しきたり)なのか」
「さぁ、僕もよく分からないけど、特別な時以外は勝手口からしか入ったことないんだ」
 
 田中が初めて見るのか、勝手口を見渡している。
「これが裏口なんだ……さすが旧家」
 まあ、普通の家の玄関程度に間口は広いかな。

「準備できたら呼ぶから、ここで待ってて」
 紅緒に言われ、僕と田中はダイニングを抜けた先にあるソファに座らされた。
「ついでにオレは着替えてくるわ」
「おばちゃんたちは?」
「そこの地下で氏子たちと集まって飲み会だろ」
 と社務所の方に顎を向ける。
 ああ、それで誰も居ないのか。
   
 準備ができた紅緒に呼ばれ、そろって僕らは部屋に向かった。
 そして、僕は五年ぶりに直樹に挨拶をした。
 ご無沙汰、直樹。
 そこから、僕らはどんな風に見えてるんだろう。
 何もできなくて、未だに見てるだけの僕をそこから笑って見てるのか。
 知っての通り僕はやっぱり、紅緒が好きだ。
 もし、紅緒が僕の事を選んでくれたら、それでも直樹はそこで笑って見ててくれるか。
 そう願い、頭を下げる。
 祭壇の右脇下に据えてある棚。
 祖霊舎から離れる時、写真の直樹と目が合った。


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 高二の冬、マンションの屋上でやった流星群の観測会。
 僕の学校からも数人参加して、崇直も直樹も友達連れて来てたな。
 あの年は当たり年で、一等星二等星クラスがバンバン流れて賑やかだった。
「枠外だったけど、火球のでっかいのが流れてきたよな」
「ああ、あれニュースにもなってたっけ」
「そうそう、同じように寝転がって観測してるのテレビで見て、興奮したよ。俺もしたぞって」
 田中が当時のことを懐かしそうに、話してる。
 僕はと言えば、適当に返事をし、自分の馬鹿さ加減にうんざりしていた。
 紅緒にあんな顔をさせてしまったのだ。
 視線を前を歩く二人に向けると、崇直の頭に目がいく。ハーフアップにした先っちょが小刻みに揺れてる。
 不意に紅緒がこっちを振り返り、僕と目が合うと口元を緩めて笑顔を作った。
「亘くん、着いたよ。話してると、あっという間だな」
 田中の声で、我に返る。
 池袋駅からの記憶がほとんどないよ。
「もう着いたんだ」
 そのまま流れに押されるようにして、ホームに降りる。
 改札を抜け歩いていたら、背後から田中の声が聞こえてきた。
「えーっ、べーちゃんここで帰っちゃうの」
 うそ、ここでさよならなのか。
 ヒヤリとした、痛みにも似た感触が喉元から下腹に抜ける。
 僕は、何を期待してたんだろう。
 足が止まり、紅緒の顔を見たいのに体が動かないよ。
「直ちゃんに、持って帰りたいだけ。あ、誕生日だし皆で挨拶する?」
 えっ?
 振り返ると、田中が笑顔で僕の肩に手を置いた。
「直樹に挨拶ってさ。行こうぜ」
 神社の参道の緩い坂道を上り、境内を抜け社務所の裏へ回ると大きな楠が見えてきた。
 住居と境内とを仕切るように立つ楠。
 そこを過ぎたら、崇直たちの住む家がある。
 近代的な紅緒の家の門前を通り過ぎ、中庭を抜けたら旧家然とした崇直の家の格子戸が見えた。
 その隙間から、間口四間の豪華な玄関が見える。
 僕らは玄関から出入りすることはない。
 今夜も格子戸を抜けたら、当たり前のように玄関を無視して勝手口へ向かう。
 数年ぶりとは言え、通いなれた道順だ。
 すたすたと歩いていたら田中に腕を掴まれた。
「あれ、玄関……」
 田中が玄関の方を向き、立ち止まる。
「そっちは客用。おい、亘」
 崇直が振り返り、僕に向かって顎をしゃくる。
 へいへい、分かってますよ。
「僕らは玄関からは入らないんだよ」
「なんで? 俺ここ来たらいつも玄関で声かけてたけど」
「ああ、それは良いんだよ。田中はお客さんだから。でも、今夜は僕らと一緒だからね」
「意味分からんが、そう言う|仕来り《しきたり》なのか」
「さぁ、僕もよく分からないけど、特別な時以外は勝手口からしか入ったことないんだ」
 田中が初めて見るのか、勝手口を見渡している。
「これが裏口なんだ……さすが旧家」
 まあ、普通の家の玄関程度に間口は広いかな。
「準備できたら呼ぶから、ここで待ってて」
 紅緒に言われ、僕と田中はダイニングを抜けた先にあるソファに座らされた。
「ついでにオレは着替えてくるわ」
「おばちゃんたちは?」
「そこの地下で氏子たちと集まって飲み会だろ」
 と社務所の方に顎を向ける。
 ああ、それで誰も居ないのか。
 準備ができた紅緒に呼ばれ、そろって僕らは部屋に向かった。
 そして、僕は五年ぶりに直樹に挨拶をした。
 ご無沙汰、直樹。
 そこから、僕らはどんな風に見えてるんだろう。
 何もできなくて、未だに見てるだけの僕をそこから笑って見てるのか。
 知っての通り僕はやっぱり、紅緒が好きだ。
 もし、紅緒が僕の事を選んでくれたら、それでも直樹はそこで笑って見ててくれるか。
 そう願い、頭を下げる。
 祭壇の右脇下に据えてある棚。
 祖霊舎から離れる時、写真の直樹と目が合った。