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〜エピローグ〜

ー/ー



「もう、相変わらずろくな仕事ないわねぇ」
 ファーストフード店で携帯電話とにらめっこしながら彼女はボヤいてる。
「どんな仕事したいんだよ」
 フライドポテトをかじりながら俺は聞いてみた。
「うーんと、高収入であんまり疲れない仕事かな」
「それこそ、ろくな仕事じゃないんじゃないの」
 俺が呆れてそう言うと、彼女は納得いかないと顔をしかめて舌を出した。
 俺と彼女が出会ったあの夜から一週間が経っていた。
 人助けをして高収入。その言葉に誘われて彼女はあの仕事に手をだしたそうだ。
 自殺者の後押し。死のうと思ってても寸前になると思いとどまってしまうことが多いようだ。まぁ、わからなくはない。そんな人たちの背中を押してやることによって楽にしてあげようって話らしい。全く馬鹿げた仕事だ。しかしこれが仕事になってしまうというのだから馬鹿げているのは世の中だ。
 飛び降りてグチャグチャになった遺体を必要とする人たちがいる。身元が割り出しにくいので死体のすり替えに使えるのだと言う。自分が死んだことにして、別の人間となって新しい人生を送る。そんなことを望む人が世の中に少なくないらしい。
 まぁ、そんな訳でその死体を用意する仕事。いわゆる自殺屋という職業が成立するということだ。更に驚いたのがそいつらは独自のルートで収集した「自殺者予定リスト」というものを持っているらしい。も
れなく俺もそのリストに載っていたので、彼女は俺のことを多少なり知っていた訳だ。
「それにしても、あれから何もなさそうだけど大丈夫かよ」
 そんな危険な仕事から逃げたのに、特に逃げ回ってる様子もなく普通に暮らしている彼女が不思議だった。
「え、何が?」
「いや、あんなヤクザみたいな連中相手に、よく無事でいられるなと」
 俺は回りを気にして小声でそう言うと、彼女は真顔でこう答えた。
「さすがにあの高さじゃ助からないでしょ」
「え?」
 彼女の平然と答えた言葉に戦慄を覚える。マットを敷いていたんじゃなかったのか。あの夜はとにかく逃げることしか考えていなかったので、男が落ちた後の姿は確認していなかったが。
 俺は彼女の顔を見つめ続けた。また「嘘よ」と一言付け加えることを期待して。だが彼女が語りだした真相は別のことだった。
「リストの中にね、姉の名前があったの」
「君のお姉さんも死にたがってるの?」
 彼女は首を横に振る。
「一年前、病気と戦うことに疲れて飛び降りた」
 あの夜、死にたい理由を聞いたときの話が思い出される。姉のことだったのか。
「リストに載ってた姉さんの名前は赤いマジックで消されてた。その横には日付が書いてあってね、姉さんが飛び降りた日だった。本当なら遺体はあいつらが回収しちゃうんだろうけど、姉さんの体ちょっと特
殊だったから品物にならなかったみたい」
 すべては彼女の復讐だったってことか。俺が神妙な顔をしていると彼女は突然笑い出す。
「あははは、何その顔。本気にしたの?あなた何でも信じちゃうのね」
 そう言った彼女の瞳は潤んで見えた。俺は彼女の言ってることの真偽を確かめる気にはなれなかった。




みんなのリアクション

「もう、相変わらずろくな仕事ないわねぇ」 ファーストフード店で携帯電話とにらめっこしながら彼女はボヤいてる。
「どんな仕事したいんだよ」
 フライドポテトをかじりながら俺は聞いてみた。
「うーんと、高収入であんまり疲れない仕事かな」
「それこそ、ろくな仕事じゃないんじゃないの」
 俺が呆れてそう言うと、彼女は納得いかないと顔をしかめて舌を出した。
 俺と彼女が出会ったあの夜から一週間が経っていた。
 人助けをして高収入。その言葉に誘われて彼女はあの仕事に手をだしたそうだ。
 自殺者の後押し。死のうと思ってても寸前になると思いとどまってしまうことが多いようだ。まぁ、わからなくはない。そんな人たちの背中を押してやることによって楽にしてあげようって話らしい。全く馬鹿げた仕事だ。しかしこれが仕事になってしまうというのだから馬鹿げているのは世の中だ。
 飛び降りてグチャグチャになった遺体を必要とする人たちがいる。身元が割り出しにくいので死体のすり替えに使えるのだと言う。自分が死んだことにして、別の人間となって新しい人生を送る。そんなことを望む人が世の中に少なくないらしい。
 まぁ、そんな訳でその死体を用意する仕事。いわゆる自殺屋という職業が成立するということだ。更に驚いたのがそいつらは独自のルートで収集した「自殺者予定リスト」というものを持っているらしい。も
れなく俺もそのリストに載っていたので、彼女は俺のことを多少なり知っていた訳だ。
「それにしても、あれから何もなさそうだけど大丈夫かよ」
 そんな危険な仕事から逃げたのに、特に逃げ回ってる様子もなく普通に暮らしている彼女が不思議だった。
「え、何が?」
「いや、あんなヤクザみたいな連中相手に、よく無事でいられるなと」
 俺は回りを気にして小声でそう言うと、彼女は真顔でこう答えた。
「さすがにあの高さじゃ助からないでしょ」
「え?」
 彼女の平然と答えた言葉に戦慄を覚える。マットを敷いていたんじゃなかったのか。あの夜はとにかく逃げることしか考えていなかったので、男が落ちた後の姿は確認していなかったが。
 俺は彼女の顔を見つめ続けた。また「嘘よ」と一言付け加えることを期待して。だが彼女が語りだした真相は別のことだった。
「リストの中にね、姉の名前があったの」
「君のお姉さんも死にたがってるの?」
 彼女は首を横に振る。
「一年前、病気と戦うことに疲れて飛び降りた」
 あの夜、死にたい理由を聞いたときの話が思い出される。姉のことだったのか。
「リストに載ってた姉さんの名前は赤いマジックで消されてた。その横には日付が書いてあってね、姉さんが飛び降りた日だった。本当なら遺体はあいつらが回収しちゃうんだろうけど、姉さんの体ちょっと特
殊だったから品物にならなかったみたい」
 すべては彼女の復讐だったってことか。俺が神妙な顔をしていると彼女は突然笑い出す。
「あははは、何その顔。本気にしたの?あなた何でも信じちゃうのね」
 そう言った彼女の瞳は潤んで見えた。俺は彼女の言ってることの真偽を確かめる気にはなれなかった。


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