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第1部のあらすじ

ー/ー



 高校を卒業したばかりの工藤(くどう)和泉(いずみ)は、地元・大阪府和泉市のオーケストラ楽団に所属するヴァイオリニストである。4月から社会人として働き始めるまでの春休み期間中、大好きな楽器演奏三昧の毎日を謳歌しているものの、絶対音感の持ち主である彼女は自分にだけ日常に溢れる特定の音が低く聞こえることに違和感を覚えていた。

 そんな和泉の楽団に、一人のチェリストが入団する。クールで整った顔立ちの高杉(たかすぎ)日向(ひゅうが)という男は、初対面であるはずの和泉にまるで顔見知りのような接し方をしてきた。そして彼により、和泉は100年以上前に日本全国で密かに活躍していた、国守護楽団(こくしゅごがくだん) Brillante(ブリッランテ)の総長の生まれ変わりであることが明かされる。
 かつてブリッランテと敵対していた暗黒軍メスト首領・黒使(こくし)は、当時の和泉によって封印された。しかし、いずれその封印が解かれることを予期したメンバーたちは、自分たちの意思を受け継ぐ魂を転生させることにより、生まれ変わった自分たちの存在に再び封印させることを計画したのだ。

 日向と、後に合流した同じブリッランテメンバーの荒井(あらい)安芸(あき)和田(わだ)近江(おうみ)には、前世で受けた記憶復活(アウフレーベント)の儀によって過去の記憶を幼少期に取り戻していた。だが何故か和泉にはその作用が機能しておらず、何も知らないまま現在に至っているようだ。
 和泉は困惑するも、自分だけに聞こえる音のズレはメストによる仕業であると知った彼女は戦うことを決意し、〝変化(ヴァリエ)〟というブリッランテの特殊能力で自らの楽器を武器に変え、メストとの戦闘の日々に巻き込まれていくのである。


 一方で日向は、蘇った前世の和泉との記憶に苦しんでいた。彼らは前世で恋人同士であったが故、己が和泉に寄せる感情は〝前世の自分〟に影響されているせいなのか、それとも自分自身の感情なのか判断をつけられずにいるのだ。そんな日向を横目に、現世で和泉に一目惚れした安芸は、惜しみなく彼女にアプローチをかけており、それがまた日向へプレッシャーを与える。
 恋愛に鈍感な和泉は、安芸の気持ちにも日向のジレンマにも気づいていないが、日向に対してはどこか懐かしさを含む安堵を感じているようだ。それを他人事と思いながら見守る近江……。

 複雑な三角関係を抱えつつも、彼らは順調に残り6人の仲間のうち当時の副長・武蔵(むさし)を始めとする3人とも合流。ついに現世のメストを率いているのが〝暗里(アンリ)〟という人物であることと、潜伏先のアジトを突き止める。
 早速乗り込んだ彼らは暗里こそ逃すが、ボロボロになりながらも強敵・五音衆(ごおんしゅう)(しょう)を封印し、突如現れた越後(えちご)と名乗る仲間と思しき男と共にアジトからの脱出に成功した。

 命を失いかけた和泉も何とか息を吹き返し、全員の無事を喜ぶのも束の間。
 越後は弱った和泉を拘束し、自らの刃を突きつけるのであった――。


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【機密記録】
<転生系統論 国守護楽団(ブリッランテ)と〝遺伝魂〟の覚醒について>

1. 序論
 国守護楽団(ブリッランテ)とは、かつて100年以上前に存在した特殊武装音楽団体であり、国内各地に首領を配し、〝音の力〟を用いて暗黒軍メストと対峙していた。
 現在確認されている生まれ変わりたちは前世の記憶を保有しており、当時の意思を継ぐ者として活動している。

2. 転生の構造
 転生者は〝前世そのもの〟の完全な再来ではない。以下の三要素が分離・再統合される形で、魂の継承が行われていると考えられる。
>魂の記憶:前世での『記憶復活(アウフレーベント)の儀』によって覚醒。
>現世人格:個々の育ち・環境・資質に起因する人格。
>外見的相似:顔つき等が前世に似ている。血筋を辿る遺伝子操作の影響があると推測。
 これらが交差することにより、転生者たちは「自分自身でありながら、かつての自分でもある」という、いびつな自己構造を持つことになる。

3. 魂の宿りかた
 彼らの魂は無作為に宿ったわけではなく、前世の者たちが〝自身の魂を未来の血筋へと種として仕込んだ〟という仮説がある。この遺伝魂は、数代にわたり受け継がれ、ある一定期間を得て覚醒するものと思われる。

4. 記憶の欠損
 全員が完全なる記憶を取り戻しているわけではない。多くの転生者が「自身の最期」や「黒使封印の瞬間」の記憶を欠損しており、その空白は何らかの不測の事態によるものか、転生者の心神に負荷をかけないための処置であると推測される。

5. 総長・和泉の異常性
 唯一、和泉のみが記憶を取り戻していない。封印の要である彼女にだけ強固なロックがかけられたとすれば、和泉自身が〝記憶を持ってはならない存在〟として『記憶復活(アウフレーベント)の儀』を施さずに転生された可能性がある。その理由は項目4の推測とほぼ同等として考えられる。

6. 結語
 ブリッランテの転生者は、単なる蘇りではなく「意志の継承装置」である。しかし、かつての志がそれぞれの心に脈打を打ちつつ、今の人格が重なった我々は、前世よりも強固な意思を持つ存在として生きながらえている。
 何より絶望の苦しみを乗り越えた我々だからこそ、同じ境遇にあった仲間との絆をより深めることができるのだ。この絆は前世も劣らないと断言しよう。

 現世に生きる我々ブリッランテは、再び和泉と共に黒使を完全封印し、この長き戦いに終止符を打たんとする。


 今川(いまがわ)武蔵(むさし)個人PC 機密情報ファイルより極秘公開



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 高校を卒業したばかりの|工藤《くどう》|和泉《いずみ》は、地元・大阪府和泉市のオーケストラ楽団に所属するヴァイオリニストである。4月から社会人として働き始めるまでの春休み期間中、大好きな楽器演奏三昧の毎日を謳歌しているものの、絶対音感の持ち主である彼女は自分にだけ日常に溢れる特定の音が低く聞こえることに違和感を覚えていた。
 そんな和泉の楽団に、一人のチェリストが入団する。クールで整った顔立ちの|高杉《たかすぎ》|日向《ひゅうが》という男は、初対面であるはずの和泉にまるで顔見知りのような接し方をしてきた。そして彼により、和泉は100年以上前に日本全国で密かに活躍していた、|国守護楽団《こくしゅごがくだん》 |Brillante《ブリッランテ》の総長の生まれ変わりであることが明かされる。
 かつてブリッランテと敵対していた暗黒軍メスト首領・|黒使《こくし》は、当時の和泉によって封印された。しかし、いずれその封印が解かれることを予期したメンバーたちは、自分たちの意思を受け継ぐ魂を転生させることにより、生まれ変わった自分たちの存在に再び封印させることを計画したのだ。
 日向と、後に合流した同じブリッランテメンバーの|荒井《あらい》|安芸《あき》・|和田《わだ》|近江《おうみ》には、前世で受けた|記憶復活《アウフレーベント》の儀によって過去の記憶を幼少期に取り戻していた。だが何故か和泉にはその作用が機能しておらず、何も知らないまま現在に至っているようだ。
 和泉は困惑するも、自分だけに聞こえる音のズレはメストによる仕業であると知った彼女は戦うことを決意し、〝|変化《ヴァリエ》〟というブリッランテの特殊能力で自らの楽器を武器に変え、メストとの戦闘の日々に巻き込まれていくのである。
 一方で日向は、蘇った前世の和泉との記憶に苦しんでいた。彼らは前世で恋人同士であったが故、己が和泉に寄せる感情は〝前世の自分〟に影響されているせいなのか、それとも自分自身の感情なのか判断をつけられずにいるのだ。そんな日向を横目に、現世で和泉に一目惚れした安芸は、惜しみなく彼女にアプローチをかけており、それがまた日向へプレッシャーを与える。
 恋愛に鈍感な和泉は、安芸の気持ちにも日向のジレンマにも気づいていないが、日向に対してはどこか懐かしさを含む安堵を感じているようだ。それを他人事と思いながら見守る近江……。
 複雑な三角関係を抱えつつも、彼らは順調に残り6人の仲間のうち当時の副長・|武蔵《むさし》を始めとする3人とも合流。ついに現世のメストを率いているのが〝|暗里《アンリ》〟という人物であることと、潜伏先のアジトを突き止める。
 早速乗り込んだ彼らは暗里こそ逃すが、ボロボロになりながらも強敵・|五音衆《ごおんしゅう》の|商《しょう》を封印し、突如現れた|越後《えちご》と名乗る仲間と思しき男と共にアジトからの脱出に成功した。
 命を失いかけた和泉も何とか息を吹き返し、全員の無事を喜ぶのも束の間。
 越後は弱った和泉を拘束し、自らの刃を突きつけるのであった――。
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【機密記録】
<転生系統論 |国守護楽団《ブリッランテ》と〝遺伝魂〟の覚醒について>
1. 序論
 |国守護楽団《ブリッランテ》とは、かつて100年以上前に存在した特殊武装音楽団体であり、国内各地に首領を配し、〝音の力〟を用いて暗黒軍メストと対峙していた。
 現在確認されている生まれ変わりたちは前世の記憶を保有しており、当時の意思を継ぐ者として活動している。
2. 転生の構造
 転生者は〝前世そのもの〟の完全な再来ではない。以下の三要素が分離・再統合される形で、魂の継承が行われていると考えられる。
>魂の記憶:前世での『|記憶復活《アウフレーベント》の儀』によって覚醒。
>現世人格:個々の育ち・環境・資質に起因する人格。
>外見的相似:顔つき等が前世に似ている。血筋を辿る遺伝子操作の影響があると推測。
 これらが交差することにより、転生者たちは「自分自身でありながら、かつての自分でもある」という、いびつな自己構造を持つことになる。
3. 魂の宿りかた
 彼らの魂は無作為に宿ったわけではなく、前世の者たちが〝自身の魂を未来の血筋へと種として仕込んだ〟という仮説がある。この遺伝魂は、数代にわたり受け継がれ、ある一定期間を得て覚醒するものと思われる。
4. 記憶の欠損
 全員が完全なる記憶を取り戻しているわけではない。多くの転生者が「自身の最期」や「黒使封印の瞬間」の記憶を欠損しており、その空白は何らかの不測の事態によるものか、転生者の心神に負荷をかけないための処置であると推測される。
5. 総長・和泉の異常性
 唯一、和泉のみが記憶を取り戻していない。封印の要である彼女にだけ強固なロックがかけられたとすれば、和泉自身が〝記憶を持ってはならない存在〟として『|記憶復活《アウフレーベント》の儀』を施さずに転生された可能性がある。その理由は項目4の推測とほぼ同等として考えられる。
6. 結語
 ブリッランテの転生者は、単なる蘇りではなく「意志の継承装置」である。しかし、かつての志がそれぞれの心に脈打を打ちつつ、今の人格が重なった我々は、前世よりも強固な意思を持つ存在として生きながらえている。
 何より絶望の苦しみを乗り越えた我々だからこそ、同じ境遇にあった仲間との絆をより深めることができるのだ。この絆は前世も劣らないと断言しよう。
 現世に生きる我々ブリッランテは、再び和泉と共に黒使を完全封印し、この長き戦いに終止符を打たんとする。
 |今川《いまがわ》|武蔵《むさし》個人PC 機密情報ファイルより極秘公開