|玲《れい》|太《と》の意識が戻った時、最初に出た言葉は
「はぁ!?」
だった。
無理もない。
見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。
テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。
しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。
そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。
他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。
混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。
「フロッピーディスクはどこいった!?」
X-1 turbo Z IIの|灯《ひ》は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。
「なんじゃあ、こりゃあ!」
腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。
「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」
突っ込むところがそこかいな。
「ん……」
混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
「…………」
おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。
「なんじゃあ、こりゃあ!!」
二回目だね、それ。
さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。
「ん……ここは?」
愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。
「なんなの、ココ!?」
アシュレイが驚くのも無理はないよねー。
玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。
それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか?
しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。
「ええと、なにから説明しよう?」
混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。
さすがだね。
伊達に修羅場はくぐっていないよ。
いや、でもこっちの修羅場はどうだろう?
とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。
その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。
まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。
戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?
「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」
「そういうことになるね」
「でもどうしてかしら?」
アシュレイの疑問ももっともだ。
人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。
「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」
さすがは最年少ながら聖女として英才教育を受けてきたビルヒーだ。
「あは、かもしれないね」
ヴァネッサは相変わらずだ。
アシュレイは
「魔法のない世界なんだよね? 私、魔法なしで生きていけるかな?」
と、なんだか心細そうだ。
「なんとかなります。だって、私たちには玲太がいるんですもの」
クリスティーンの全幅の信頼がのしかかる。
「それもそうだな。玲太、これからもよろしくな」
ソフィアが手を差し出してくる。
思わずその手を取ってしまった玲太は心の中で若干失敗したと思った。
現代日本に転移してきた異世界の美少女たち。
彼女たちと玲太とのこれからは果たしてどうなっていくのか?
え?
そんなこと、|作者《オレ》が知るか!