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最終話②

ー/ー



「こうした話をいきなり信じろ、と言われても難しいかもしれません。しかしあまり長話をするわけにもいきませんから、単刀直入にいかせてもらいます」

「それは、伊沢さんが与えられた力を、僕にも与える、という話ですか?」

「そうです。我々には、我々で決めたルールというものがいくつかありまして、そのひとつに、原則人類のやることに介入してはならない、というものがあるんです。

 しかし、そうやって任せた結果、最近少し、霊的に問題が発生することが増えてしまったのです。その結果、手が足りないというような状況になってしまいまして、こうして伊沢さんのような人の手を借りることにしたわけです」

「最近、悪い霊がだんだん増えてきているんだよ。ここ最近のうちが引き受けた依頼だって、ほとんどが悪霊絡みじゃん。それだけ、負の力が強まってるってことなんだよ」

 伊沢が補足した。

「ただ、それだけではないんですよ。これから近いうちに、恐ろしいトラブルが起きます。これを止めることはもう不可能です。問題はそのあとで、そこでの対処のしかた次第で、日本という国が滅びる可能性があるのです」

「え、それって、どういうことですか? 何が起きるんですか?」

「それについても、私が教えることはできないんです。それよりも、とにかく重要なのは、あなたの力が日本を守るために必要だということです。

 ちゃんと霊力があって、体も丈夫で、かつ正しい心を持っている人間というのはかなり限られます。ありがたいことに、あなたはその条件をすべて満たしています。あなたになら、力を預けることができるでしょう」

「なるほど、わかりました。そういうことなら」

「すみません、まだちょっと一番大事な話が終わっていないのです」

「他に何かあるんですか?」

「この力を預けるにあたって、問題があってですね。この力というのがかなり強すぎるので、通常、人間の体ではそれに耐えられません」

「僕では耐えられない、ということですか?」

「あなただけではありません。そこにいる伊沢さんも、力を預けたために、寿命があともう、長くても四年ほどしかないはずです」

「え⁉」

 村山は思わず、彼女のほうを見た。

「それ、本当なんですか?」

 伊沢ははうなずいた。

「今は、体を強化してもらって、力を使っても身体が崩壊しないようにしてくれてはいる。それでも、もってそれぐらいだと思う。自分でも、いつ体が限界を迎えるのかっていうのが、なんとなくわかるんだよね」

 彼女は言った。

「ですから、村山さん。私はあなたにこれを無理強いすることはできません。また、断ったからといって、何か悪いことが起こるとか、そういうことは一切ありません。ただ、記憶は消させてもらうことにはなるので、ここで話した内容だけは忘れてしまいますが、それだけです」

 力を手にして日本のために戦って寿命が五年以下になるか、すべてを忘れて今まで通り生きるか。そのどちらかを村山は選ばなければいけなくなった。

 力を手にして戦ったとして、得るものはひとつもない。それどころか、今から五年しか生きられないとなると、長くても28歳までしか生きられないことになる。

 しかしすべてを忘れて生きたところで、日本が滅亡してはもとも子もない。長生きするには、誰かが日本を救ってくれることを祈るしかない。

 どちらを選べばいいのか。

 村山は思案した。あまりにも夢中になって考えたため、どれほど時間が経っているのかや、二人を長く待たせていたことにも気づかなかった。やがて、彼は口を開いた。

「僕は――」 


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「こうした話をいきなり信じろ、と言われても難しいかもしれません。しかしあまり長話をするわけにもいきませんから、単刀直入にいかせてもらいます」
「それは、伊沢さんが与えられた力を、僕にも与える、という話ですか?」
「そうです。我々には、我々で決めたルールというものがいくつかありまして、そのひとつに、原則人類のやることに介入してはならない、というものがあるんです。
 しかし、そうやって任せた結果、最近少し、霊的に問題が発生することが増えてしまったのです。その結果、手が足りないというような状況になってしまいまして、こうして伊沢さんのような人の手を借りることにしたわけです」
「最近、悪い霊がだんだん増えてきているんだよ。ここ最近のうちが引き受けた依頼だって、ほとんどが悪霊絡みじゃん。それだけ、負の力が強まってるってことなんだよ」
 伊沢が補足した。
「ただ、それだけではないんですよ。これから近いうちに、恐ろしいトラブルが起きます。これを止めることはもう不可能です。問題はそのあとで、そこでの対処のしかた次第で、日本という国が滅びる可能性があるのです」
「え、それって、どういうことですか? 何が起きるんですか?」
「それについても、私が教えることはできないんです。それよりも、とにかく重要なのは、あなたの力が日本を守るために必要だということです。
 ちゃんと霊力があって、体も丈夫で、かつ正しい心を持っている人間というのはかなり限られます。ありがたいことに、あなたはその条件をすべて満たしています。あなたになら、力を預けることができるでしょう」
「なるほど、わかりました。そういうことなら」
「すみません、まだちょっと一番大事な話が終わっていないのです」
「他に何かあるんですか?」
「この力を預けるにあたって、問題があってですね。この力というのがかなり強すぎるので、通常、人間の体ではそれに耐えられません」
「僕では耐えられない、ということですか?」
「あなただけではありません。そこにいる伊沢さんも、力を預けたために、寿命があともう、長くても四年ほどしかないはずです」
「え⁉」
 村山は思わず、彼女のほうを見た。
「それ、本当なんですか?」
 伊沢ははうなずいた。
「今は、体を強化してもらって、力を使っても身体が崩壊しないようにしてくれてはいる。それでも、もってそれぐらいだと思う。自分でも、いつ体が限界を迎えるのかっていうのが、なんとなくわかるんだよね」
 彼女は言った。
「ですから、村山さん。私はあなたにこれを無理強いすることはできません。また、断ったからといって、何か悪いことが起こるとか、そういうことは一切ありません。ただ、記憶は消させてもらうことにはなるので、ここで話した内容だけは忘れてしまいますが、それだけです」
 力を手にして日本のために戦って寿命が五年以下になるか、すべてを忘れて今まで通り生きるか。そのどちらかを村山は選ばなければいけなくなった。
 力を手にして戦ったとして、得るものはひとつもない。それどころか、今から五年しか生きられないとなると、長くても28歳までしか生きられないことになる。
 しかしすべてを忘れて生きたところで、日本が滅亡してはもとも子もない。長生きするには、誰かが日本を救ってくれることを祈るしかない。
 どちらを選べばいいのか。
 村山は思案した。あまりにも夢中になって考えたため、どれほど時間が経っているのかや、二人を長く待たせていたことにも気づかなかった。やがて、彼は口を開いた。
「僕は――」