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醜悪で加虐的な夜

ー/ー



時間は夜。黒髪に片目が髪で隠れた黄色の瞳の黒スーツの男はカーキ色の厳ついピックアップトラックを運転していた。助手席には黒のキャップに赤髪で片目がぱっつん前髪で隠れている赤い瞳の白のブカブカパーカーの存在を乗せている。

「(醜悪たん。珍しい車乗ってるね。趣味?)」
首を傾げて聞いてくるが口は黒のマフラー覆われており、その問いは声になっていない。
「仕事用。俺は乗り物に興味ない。大型バイクを乗り回すお前とは違うんだ。狩命(かめい)
狩命と呼ばれた存在は成る程と頷く。
「(荷台に何か乗ってるのは聞かない方がいい奴だよね)」
長方形の黒い袋が乗っている。男、醜悪な悪魔はは何も答えない。
「(邪魔しないならいいや。これはデートです。醜悪たんが誘ってくれたんだから)」
眠たそうな顔をしているが上機嫌なようだ。その後は会話もなく、目的地まで車は走っていった。

豪華なカジノの隣の廃ビルの前に車を駐める。醜悪な悪魔は迷いなくそのビルの横にある裏路地に歩いていく。
「(こんなビル壊せばいいのに。景観悪いじゃないの)」
「意味はすぐに分かる」
数分歩き、凄まじい悪臭を放つゴミコンテナの前で醜悪な悪魔は立ち止まった。
「(これは死臭だね。ははーん、成る程。廃ビルで解体ショーとかやってるんだ。人間のね。悪趣味だこと)」
狩命は眉を吊り上げている。
「(見物客をこのコンテナに放り込みたいね)」
「捨て置け。ああいう手合いはいずれ痛い目を見る」
醜悪な悪魔は黒のスーツから紺の作業着に着替えて、マスクをしていた。脱がれたスーツが鉄骨にかかっている。
「そのスーツ、駄賃代わりに好きにしてい…」
言葉を言い終わる前に狩命はスーツを抱いて、顔を埋めていた。
「(脱ぎたてホカホカ。フォカヌポウ。醜悪たんの香りがするお。昂りを抑えられないでござる)」
「ろくでもない事したら置いていくからな」
狩命を一瞥してからコンテナを漁る。するとぐちゃぐちゃになった死体が出てきて、醜悪な悪魔はそれを回収していた。
「(うわー。人間って本当に悍ましい。ん?それ、悪魔の死体じゃん。擬態してても分か…おやおや、魂がある。そんな風になっても生きてるとは流石、悪魔)」
「へぇ…死神…女連れかよ…って…イジってやろうかとしたのに…性別不詳か…よ」
「(喋ったぁぁぁぁぁぁ)」
「驚くならもっとらしく驚け」
死体袋に入れた悪魔を抱えて、小走りで車に向かい、到着してから先客の隣に放り投げた。そして、何食わぬ顔でその場を後にした。

「(醜悪たん。ずっと死体袋がもぞもぞしててキモい)」
「なら、開封するが?」
「(遠慮しておきます)」
車は人けのない山道に入って、駐まった。
「服くれね?」
死体袋の中から声がする。
「まだ待て」
醜悪な悪魔は袋を開けた。全裸の男が袋から這い出てくる。人の原型を留めない程に。血塗れの肉塊だったのにそれは色んな意味で生まれたての姿をしていた。
「(醜悪たんの御立派様を拝んでないのに。目が腐る)」
余った袖をぶらつかせながら大げさに目を塞ぐ。
「何だよ。お前ら恋人じゃ…冷て!」
悪魔はバケツの水を掛けられていた。水は近くの川から持ってきたようだ。
「お前に持たせてたビニール袋を寄越せ」
「(ほい)」
80センチ程の大きな袋を車の側に置く。醜悪な悪魔はそこから石鹸を取り出して、悪魔を洗う。
「もっと良い扱いしろよー!」
「甘えるな」
数分後には綺麗な姿になった。服も着せられているがTシャツにスウェットのズボンだった。
「もっと洒落た服が良かった」
「じゃあ、パンツ一丁で帰れ」
「意地悪!」
「(で?この悪魔なんなの?敵なら斬り伏せるよ)」
「…この死神、無口だけど何か言ってる?」
「気にするな。そういう仕様の奴だ。加虐の悪魔」
悪魔は加虐な悪魔と言うらしい。狩命は首を傾げる。
「(こんななっさけないのが加虐?)」
「マゾヒストの意味だ」
「(醜悪たんの教育に宜しくないね。捨てて帰ろう)」
「死神はなんて言ってる?」
「こんな気持ちの悪い奴は放置して帰ると言ってる」
「んー!辛辣!」
いつの間にか髪が生え揃った加虐の悪魔。緑のウエーブ髪に覇気のない黒い瞳をしている。
「(キモワカメ)」
「ものすごい暴言食らった気がする」
「鋭いな。合ってる」
「すごく嬉しくない褒め言葉」
凹みながら加虐の悪魔は髪を束ねている。
「そういえば、先客は何者なんだね。死神連れてるしさ。そういうお仕事請け負ったの?」
「違う。それはお前の為に用意した魔力補給用の代物。魔法使い族の屍だ」
「わぉ!よくそんなの用意出来たね。見ていい?…この死神怖い目してる。え…怖いって」
先客の情報を聞いて狩命は命をキモワカメの為に消費するのかね?と言いたげに加虐の悪魔を睨みつけている。
「おい、文句は俺に言え。そいつは悪くない」
「(せやろか。契約関連と見た。つまりはコイツのせい)」
「当たってはいる。概要を話すとしよう」
各々が適当な岩や倒木に座ると醜悪な悪魔は話し始める。
「まず最初に俺の仕事の話。コイツに『迎えに来い』と言われた。契約で絶対に自力で帰れないというものでな。理由は見てもらった通り」
「そう、俺は人間と契約してスナッフビデオの演者になったのよ。俺はその名の通りありとあらゆる痛みを快感に変えられるし、耐久力もある。最高の仕事だけども基本的に帰れないんだわ。ぶち殺されたり、バラされたりするから」
「(そして、君達にとってはそんな事知ってるよ知識だけど話させてもらおう。魔法使い族は闇世界に住む者。闇の種族。つまりは悪魔や死神と似たような存在。9割が女の種族な為に魔女族とも呼ばれる。血筋によっては人外並みの耐久力を持つが基本は魔力だけが突出した種族で魔力が魂と強く結びついてる為、魔力を使い果たすと死ぬという種族でもある。まあ、回復が早いから魔力使い果たす死なんて隕石に当たって死ぬのと同じ位にレアな死因だけど。それはそれとして概要だけ聞くと不憫な種族だと思われがちだが賢く、美しく、他の闇の種族は男率が高い為に子孫を残すという目的で伴侶として迎える事も多い種族という訳)」
「えー…なんて?」
「魔法使い族の説明してたぞ」
「何が言いたいの…?」
「(魂≒意識。だが、その魔法使い族の魂には意識がない。幽世に行ってる。では、なんなんだこれとなるが単なる人の形をした魔力の塊という訳だけども敬意を払うか有効活用しないと許さない。僕は死神。死者を愚弄する愚か者を許す訳にはいかないのだ)」
「要するに敬意を払ってから使えだそうだ」
「そりゃ勿論。死神様の前で無礼は働かないさ」
狩命の睨む強さがやわらいだ所で死体袋を開くと美しい青髪の女性がシンプルな麻のローブを纏って現れた。
「それでは頂きます。力をお分けください魔女様」
背後から抱きしめると屍は加虐の悪魔の身体に吸い込まれていき、ローブだけが残った。
「うぉぉぉぉっ!?すげぇ魔力だ!流石、魔法使い族!」
頭の出っ張り程度に生えていた角が悪魔らしい大きさの立派な角になった。深爪だった爪も長く鋭く生え揃う。
「(それでまた、ぶち転がされて再生する魔力が足りないぴえんぴえんとか言うんでしょ)」
「罵られたね?」
「(ちょっと思ったけど加虐の悪魔だけあって罵倒を感じる能力に長けてるね?)」
「かもな」
「二人の世界を展開しないでくれる?ハブるなよ」
狩命はマフラーをずらしてから、あかんべーをした。え?という呆気に取られた顔をしている加虐の悪魔を無視して、何事もなかったかのようにマフラーで口を覆う。
「お付き合いしていらっしゃる?えっと、かめ…」
「(そいつには仮名(かりな)と呼ばせろ)」
ブカブカ袖で加虐の悪魔の頬をぶつ。
「なに?なになに?」
「仮名と呼べだそうだ」
「仮名さん、様…?めちゃくちゃ俺の事嫌うじゃん」
狩命は腕を組んで、顔を背ける。
「文句は口に出せ」
「(嫌。伝わればそれでいいです)」
「やれやれ。ちなみに友人関係であって付き合っていないぞ」
狩命は関係を否定されて、見せつけるように腕に抱き着く。
「おい、汚れるぞ」
「(この身が汚れても愛します。我々は恋人なのだー)」
醜悪な悪魔は呆れ返り、されるがままにしている。
「あ…うん。複雑なのね」
加虐の悪魔は伸びをして立ち上がる。
「お熱いお二人の邪魔しないように帰るわ。今度はイケてる格好でお会いしましょう」
一礼すると加虐な悪魔は消えた。醜悪な悪魔の手には契約満了の印がついた書類が現れた。
「これを上に提出すれば完了だ。お前は知らないだろうが同族との契約は加点低めだ」
「(え?そうなの?損じゃないの)」
「塵も積もれば山となる。俺はこういう事もやる。他の二つ名持ちと違って地道にやっていくのが俺のやり方だ」
「(醜悪たんのコツコツ苦労を側で眺めて、頑張り見てるよ、偉い!って沢山褒めてあげるからね。愛してるよ醜悪たん)」
「そうか。それはそれとして離れろ。車を返してから、書類提出しないとならん。あまり気は進まないが一緒に入浴…」
「(僕が運転しよう。休んでて)」
あっという間に運転席に座って、エンジンを掛ける。醜悪な悪魔は溜め息を付きながら助手席に乗った。

「(醜悪たんの御立派様…くすん)」
狩命は悲しみながら不定形の黒いスライム状の醜悪な悪魔を洗っている。
「嘘は言ってない。入浴してやってるだろ」
「(御立派様…)」
「煩悩を捨てろ。それと此方が本来の姿だと知っているだろうに」
「(しくしく。ツルンツルンぷにぷにスライムボディ…これにねっちょり絡まれたら…昂ってきたでござる)」
「離れろ。今回はかなり外道な行為が絡むが故に死神としてはマトモなお前に監視して欲しくて声を掛けたが…間違いだったな」
「(嘘です。2割ぐらい嘘です。許してください)」
「殆ど煩悩というのは分かった。ドスケベ死神め」
「(そんな言葉使っちゃ駄目よ!醜悪たんたらいつからそんな子になったのよ。あの加虐の悪魔のせいね。プンスコ)」
「俺はお前より歳上悪魔かつ余裕で成人してるどころか老人カテゴリに腰突っ込んでるというツッコミしても無駄だろうな」
深い溜め息をつく。狩命の熱烈さと過保護に片足突っ込んでいる理想の押しつけにはほとほと困っているようだが数少ない友人かつ褒められる事自体や肯定してくれる味方がいるという事実は悪くない為、なんだかんだ仲良くしている醜悪な悪魔であった。


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「(醜悪たん。珍しい車乗ってるね。趣味?)」
首を傾げて聞いてくるが口は黒のマフラー覆われており、その問いは声になっていない。
「仕事用。俺は乗り物に興味ない。大型バイクを乗り回すお前とは違うんだ。狩命《かめい》」
狩命と呼ばれた存在は成る程と頷く。
「(荷台に何か乗ってるのは聞かない方がいい奴だよね)」
長方形の黒い袋が乗っている。男、醜悪な悪魔はは何も答えない。
「(邪魔しないならいいや。これはデートです。醜悪たんが誘ってくれたんだから)」
眠たそうな顔をしているが上機嫌なようだ。その後は会話もなく、目的地まで車は走っていった。

豪華なカジノの隣の廃ビルの前に車を駐める。醜悪な悪魔は迷いなくそのビルの横にある裏路地に歩いていく。
「(こんなビル壊せばいいのに。景観悪いじゃないの)」
「意味はすぐに分かる」
数分歩き、凄まじい悪臭を放つゴミコンテナの前で醜悪な悪魔は立ち止まった。
「(これは死臭だね。ははーん、成る程。廃ビルで解体ショーとかやってるんだ。人間のね。悪趣味だこと)」
狩命は眉を吊り上げている。
「(見物客をこのコンテナに放り込みたいね)」
「捨て置け。ああいう手合いはいずれ痛い目を見る」
醜悪な悪魔は黒のスーツから紺の作業着に着替えて、マスクをしていた。脱がれたスーツが鉄骨にかかっている。
「そのスーツ、駄賃代わりに好きにしてい…」
言葉を言い終わる前に狩命はスーツを抱いて、顔を埋めていた。
「(脱ぎたてホカホカ。フォカヌポウ。醜悪たんの香りがするお。昂りを抑えられないでござる)」
「ろくでもない事したら置いていくからな」
狩命を一瞥してからコンテナを漁る。するとぐちゃぐちゃになった死体が出てきて、醜悪な悪魔はそれを回収していた。
「(うわー。人間って本当に悍ましい。ん?それ、悪魔の死体じゃん。擬態してても分か…おやおや、魂がある。そんな風になっても生きてるとは流石、悪魔)」
「へぇ…死神…女連れかよ…って…イジってやろうかとしたのに…性別不詳か…よ」
「(喋ったぁぁぁぁぁぁ)」
「驚くならもっとらしく驚け」
死体袋に入れた悪魔を抱えて、小走りで車に向かい、到着してから先客の隣に放り投げた。そして、何食わぬ顔でその場を後にした。

「(醜悪たん。ずっと死体袋がもぞもぞしててキモい)」
「なら、開封するが?」
「(遠慮しておきます)」
車は人けのない山道に入って、駐まった。
「服くれね?」
死体袋の中から声がする。
「まだ待て」
醜悪な悪魔は袋を開けた。全裸の男が袋から這い出てくる。人の原型を留めない程に。血塗れの肉塊だったのにそれは色んな意味で生まれたての姿をしていた。
「(醜悪たんの御立派様を拝んでないのに。目が腐る)」
余った袖をぶらつかせながら大げさに目を塞ぐ。
「何だよ。お前ら恋人じゃ…冷て!」
悪魔はバケツの水を掛けられていた。水は近くの川から持ってきたようだ。
「お前に持たせてたビニール袋を寄越せ」
「(ほい)」
80センチ程の大きな袋を車の側に置く。醜悪な悪魔はそこから石鹸を取り出して、悪魔を洗う。
「もっと良い扱いしろよー!」
「甘えるな」
数分後には綺麗な姿になった。服も着せられているがTシャツにスウェットのズボンだった。
「もっと洒落た服が良かった」
「じゃあ、パンツ一丁で帰れ」
「意地悪!」
「(で?この悪魔なんなの?敵なら斬り伏せるよ)」
「…この死神、無口だけど何か言ってる?」
「気にするな。そういう仕様の奴だ。加虐の悪魔」
悪魔は加虐な悪魔と言うらしい。狩命は首を傾げる。
「(こんななっさけないのが加虐?)」
「マゾヒストの意味だ」
「(醜悪たんの教育に宜しくないね。捨てて帰ろう)」
「死神はなんて言ってる?」
「こんな気持ちの悪い奴は放置して帰ると言ってる」
「んー!辛辣!」
いつの間にか髪が生え揃った加虐の悪魔。緑のウエーブ髪に覇気のない黒い瞳をしている。
「(キモワカメ)」
「ものすごい暴言食らった気がする」
「鋭いな。合ってる」
「すごく嬉しくない褒め言葉」
凹みながら加虐の悪魔は髪を束ねている。
「そういえば、先客は何者なんだね。死神連れてるしさ。そういうお仕事請け負ったの?」
「違う。それはお前の為に用意した魔力補給用の代物。魔法使い族の屍だ」
「わぉ!よくそんなの用意出来たね。見ていい?…この死神怖い目してる。え…怖いって」
先客の情報を聞いて狩命は命をキモワカメの為に消費するのかね?と言いたげに加虐の悪魔を睨みつけている。
「おい、文句は俺に言え。そいつは悪くない」
「(せやろか。契約関連と見た。つまりはコイツのせい)」
「当たってはいる。概要を話すとしよう」
各々が適当な岩や倒木に座ると醜悪な悪魔は話し始める。
「まず最初に俺の仕事の話。コイツに『迎えに来い』と言われた。契約で絶対に自力で帰れないというものでな。理由は見てもらった通り」
「そう、俺は人間と契約してスナッフビデオの演者になったのよ。俺はその名の通りありとあらゆる痛みを快感に変えられるし、耐久力もある。最高の仕事だけども基本的に帰れないんだわ。ぶち殺されたり、バラされたりするから」
「(そして、君達にとってはそんな事知ってるよ知識だけど話させてもらおう。魔法使い族は闇世界に住む者。闇の種族。つまりは悪魔や死神と似たような存在。9割が女の種族な為に魔女族とも呼ばれる。血筋によっては人外並みの耐久力を持つが基本は魔力だけが突出した種族で魔力が魂と強く結びついてる為、魔力を使い果たすと死ぬという種族でもある。まあ、回復が早いから魔力使い果たす死なんて隕石に当たって死ぬのと同じ位にレアな死因だけど。それはそれとして概要だけ聞くと不憫な種族だと思われがちだが賢く、美しく、他の闇の種族は男率が高い為に子孫を残すという目的で伴侶として迎える事も多い種族という訳)」
「えー…なんて?」
「魔法使い族の説明してたぞ」
「何が言いたいの…?」
「(魂≒意識。だが、その魔法使い族の魂には意識がない。幽世に行ってる。では、なんなんだこれとなるが単なる人の形をした魔力の塊という訳だけども敬意を払うか有効活用しないと許さない。僕は死神。死者を愚弄する愚か者を許す訳にはいかないのだ)」
「要するに敬意を払ってから使えだそうだ」
「そりゃ勿論。死神様の前で無礼は働かないさ」
狩命の睨む強さがやわらいだ所で死体袋を開くと美しい青髪の女性がシンプルな麻のローブを纏って現れた。
「それでは頂きます。力をお分けください魔女様」
背後から抱きしめると屍は加虐の悪魔の身体に吸い込まれていき、ローブだけが残った。
「うぉぉぉぉっ!?すげぇ魔力だ!流石、魔法使い族!」
頭の出っ張り程度に生えていた角が悪魔らしい大きさの立派な角になった。深爪だった爪も長く鋭く生え揃う。
「(それでまた、ぶち転がされて再生する魔力が足りないぴえんぴえんとか言うんでしょ)」
「罵られたね?」
「(ちょっと思ったけど加虐の悪魔だけあって罵倒を感じる能力に長けてるね?)」
「かもな」
「二人の世界を展開しないでくれる?ハブるなよ」
狩命はマフラーをずらしてから、あかんべーをした。え?という呆気に取られた顔をしている加虐の悪魔を無視して、何事もなかったかのようにマフラーで口を覆う。
「お付き合いしていらっしゃる?えっと、かめ…」
「(そいつには仮名《かりな》と呼ばせろ)」
ブカブカ袖で加虐の悪魔の頬をぶつ。
「なに?なになに?」
「仮名と呼べだそうだ」
「仮名さん、様…?めちゃくちゃ俺の事嫌うじゃん」
狩命は腕を組んで、顔を背ける。
「文句は口に出せ」
「(嫌。伝わればそれでいいです)」
「やれやれ。ちなみに友人関係であって付き合っていないぞ」
狩命は関係を否定されて、見せつけるように腕に抱き着く。
「おい、汚れるぞ」
「(この身が汚れても愛します。我々は恋人なのだー)」
醜悪な悪魔は呆れ返り、されるがままにしている。
「あ…うん。複雑なのね」
加虐の悪魔は伸びをして立ち上がる。
「お熱いお二人の邪魔しないように帰るわ。今度はイケてる格好でお会いしましょう」
一礼すると加虐な悪魔は消えた。醜悪な悪魔の手には契約満了の印がついた書類が現れた。
「これを上に提出すれば完了だ。お前は知らないだろうが同族との契約は加点低めだ」
「(え?そうなの?損じゃないの)」
「塵も積もれば山となる。俺はこういう事もやる。他の二つ名持ちと違って地道にやっていくのが俺のやり方だ」
「(醜悪たんのコツコツ苦労を側で眺めて、頑張り見てるよ、偉い!って沢山褒めてあげるからね。愛してるよ醜悪たん)」
「そうか。それはそれとして離れろ。車を返してから、書類提出しないとならん。あまり気は進まないが一緒に入浴…」
「(僕が運転しよう。休んでて)」
あっという間に運転席に座って、エンジンを掛ける。醜悪な悪魔は溜め息を付きながら助手席に乗った。

「(醜悪たんの御立派様…くすん)」
狩命は悲しみながら不定形の黒いスライム状の醜悪な悪魔を洗っている。
「嘘は言ってない。入浴してやってるだろ」
「(御立派様…)」
「煩悩を捨てろ。それと此方が本来の姿だと知っているだろうに」
「(しくしく。ツルンツルンぷにぷにスライムボディ…これにねっちょり絡まれたら…昂ってきたでござる)」
「離れろ。今回はかなり外道な行為が絡むが故に死神としてはマトモなお前に監視して欲しくて声を掛けたが…間違いだったな」
「(嘘です。2割ぐらい嘘です。許してください)」
「殆ど煩悩というのは分かった。ドスケベ死神め」
「(そんな言葉使っちゃ駄目よ!醜悪たんたらいつからそんな子になったのよ。あの加虐の悪魔のせいね。プンスコ)」
「俺はお前より歳上悪魔かつ余裕で成人してるどころか老人カテゴリに腰突っ込んでるというツッコミしても無駄だろうな」
深い溜め息をつく。狩命の熱烈さと過保護に片足突っ込んでいる理想の押しつけにはほとほと困っているようだが数少ない友人かつ褒められる事自体や肯定してくれる味方がいるという事実は悪くない為、なんだかんだ仲良くしている醜悪な悪魔であった。