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section06「再会を約束しない約束」

ー/ー



 駅前のロータリー。
 緩やかに降り始めた霧雨が、街灯の光に濡れて静かに煌めいていた。
「……じゃあ、今日はここで解散、かな」
 風雅が誰に言うでもなくつぶやくと、由香がそれに応じて首を傾ける。
「明日もまた会うわけじゃないのに……なんか、変だよね。普通、もっと気まずくなるもんだけど」
「むしろ、さっぱりしてていいと思うよ」
 創が口を挟む。「“次が決まってない”からこそ、自由だし」
 慎はふっと笑う。
「またここで集まるのも、誰かの気まぐれでいい気がする。計画しないからこそ、面白い」
 由真が、駅前の柱に背中を預けてぽつりと言った。
「……私は、次にまた会えたらいいなって、思ってます。誰が来るとか、そういうの抜きで」
「そうだね」
 泉が傘を差しながら言う。
「今日みたいな日が、またどこかにあるって思えるだけで、ちょっと元気出るかも」
 その言葉に、誰も返事をしなかった。ただ、どこかあたたかい沈黙が場を包んでいた。
「じゃあ、またね」
 それぞれが、名前を呼ぶこともなく、手を振り合いながら散っていく。
 最後まで残ったのは、風雅と杏奈だった。
「……帰らないの?」
「もう少しだけ、雨の音を聞いていたい」
 杏奈のその言葉に、風雅は意外そうに眉を上げた。
「理屈じゃなく?」
「うん。理由はない。ただ、そうしたいだけ。……そういうの、最近やっと“許していい”と思えるようになったから」
 風雅は笑った。
「そっか。じゃあ俺も、意味なくここにいる」
「それは……真似?」
「うん。たぶん、いい真似」
 二人の間に、静かな時間が流れた。
「ねえ、風雅さん」
「ん?」
「今日って、なんだったんだろうね」
「うーん……“ちょっとだけ違う、普通の日”かな」
「……いい表現」
 雨が止む気配はない。でも、その中で立っていることが、どういうわけか気持ちよかった。
「……また、会うかもね」
 杏奈が言った。
「うん、“かも”がいいね。約束しないくらいが、ちょうどいい」
「そう思うなら、たぶん私はまた来る」
 杏奈はそう言って、傘を広げた。
 風雅も自分の傘を開いたが、すぐには歩き出さず、彼女の背中を見送る。
 そして、静かに独り言を漏らした。
「たぶん、俺も……来ると思うよ。なんか、また会いたい気がするし」
 雨の中、それぞれの傘が別々の方向へと動き出す。
 けれどその中心には(アンサンブル)で過ごした、かけがえのない“ひととき”が確かに残っていた。
 それは、誰にも約束されない。
 でも、確かに“つながった記憶”だった。


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 駅前のロータリー。
 緩やかに降り始めた霧雨が、街灯の光に濡れて静かに煌めいていた。
「……じゃあ、今日はここで解散、かな」
 風雅が誰に言うでもなくつぶやくと、由香がそれに応じて首を傾ける。
「明日もまた会うわけじゃないのに……なんか、変だよね。普通、もっと気まずくなるもんだけど」
「むしろ、さっぱりしてていいと思うよ」
 創が口を挟む。「“次が決まってない”からこそ、自由だし」
 慎はふっと笑う。
「またここで集まるのも、誰かの気まぐれでいい気がする。計画しないからこそ、面白い」
 由真が、駅前の柱に背中を預けてぽつりと言った。
「……私は、次にまた会えたらいいなって、思ってます。誰が来るとか、そういうの抜きで」
「そうだね」
 泉が傘を差しながら言う。
「今日みたいな日が、またどこかにあるって思えるだけで、ちょっと元気出るかも」
 その言葉に、誰も返事をしなかった。ただ、どこかあたたかい沈黙が場を包んでいた。
「じゃあ、またね」
 それぞれが、名前を呼ぶこともなく、手を振り合いながら散っていく。
 最後まで残ったのは、風雅と杏奈だった。
「……帰らないの?」
「もう少しだけ、雨の音を聞いていたい」
 杏奈のその言葉に、風雅は意外そうに眉を上げた。
「理屈じゃなく?」
「うん。理由はない。ただ、そうしたいだけ。……そういうの、最近やっと“許していい”と思えるようになったから」
 風雅は笑った。
「そっか。じゃあ俺も、意味なくここにいる」
「それは……真似?」
「うん。たぶん、いい真似」
 二人の間に、静かな時間が流れた。
「ねえ、風雅さん」
「ん?」
「今日って、なんだったんだろうね」
「うーん……“ちょっとだけ違う、普通の日”かな」
「……いい表現」
 雨が止む気配はない。でも、その中で立っていることが、どういうわけか気持ちよかった。
「……また、会うかもね」
 杏奈が言った。
「うん、“かも”がいいね。約束しないくらいが、ちょうどいい」
「そう思うなら、たぶん私はまた来る」
 杏奈はそう言って、傘を広げた。
 風雅も自分の傘を開いたが、すぐには歩き出さず、彼女の背中を見送る。
 そして、静かに独り言を漏らした。
「たぶん、俺も……来ると思うよ。なんか、また会いたい気がするし」
 雨の中、それぞれの傘が別々の方向へと動き出す。
 けれどその中心には、《アンサンブル》で過ごした、かけがえのない“ひととき”が確かに残っていた。
 それは、誰にも約束されない。
 でも、確かに“つながった記憶”だった。