そして春は巡る
ー/ー 温かな陽射しは、体育館の床をきらきら光らせ、校則をひとつも破っていない全校生徒の制服が、やけに眩しく見えた。
入学してから三度目の春を迎え、全校集会のステージにはスーツ姿の先生たちが並んでいる。初めまして、という言葉がぽつぽつ聞こえてくる。
「今年度から、一年五組を担当します。柏木秀です」
懐かしい声だった。
入学してから三度目の春を迎え、全校集会のステージにはスーツ姿の先生たちが並んでいる。初めまして、という言葉がぽつぽつ聞こえてくる。
「今年度から、一年五組を担当します。柏木秀です」
懐かしい声だった。
先生は見慣れないスーツを着ている。
離れた場所からその姿を見るだけで、私の瞼は熱くなった。大勢の拍手に迎えられ、ステージを下りてくる先生に、たくさん頑張ったんですね、と、つぶやく。
先生の視線が上がる。
不意に目が合って、周りの音が聞こえなくなった。放課後の理科室みたいに、私たちの周りだけ静かな時間が流れているような気がした。
「尾瀬さん」先生の唇が動き、胸ポケットから猫の御守りが出てくる。嬉しくて視界が滲む。私は瞼を拭って、胸ポケットに手を入れる。石ころを取り出して見せると、先生が笑った。
あの頃と同じ、柔らかな笑顔だった。
(終)
あの頃と同じ、柔らかな笑顔だった。
(終)
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