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#3

ー/ー



 イギリスに帰国後、間をあけずパブリックスクールに戻った。タイタニックに乗船したことは学校側に伝えてない。風邪をひいて数日休んだことになっている。

 登校して最初の一週間は、たまった課題の提出に追われた。そんなあわただしさも、日常に戻るリハビリみたいなものだった。

 得難いものを手に入れた。前向きになれた。それが、何より嬉しかった。
 遊園地は、夏の休暇に行くことが決まった。
 
***

 客席のざわめきは、俺たちのいる袖まで届いていた。演出が舞台監督に最終指示を出す。

「ドキドキするね、アシュリー。客席がほとんど埋まってるよ」

 オーガンジーをあしらった女神の衣装を着たランディが、隣でそわそわしている。開演を知らせるブザーが鳴った。
 
「いよいよだな」

 ランディの頭に飾られた花冠を直してやり、俺は小道具の剣を腰に差した。

 母さんは真ん中あたりに座ると言っていた。ブライアンは最前列に陣取ってるんだろうか。客電が落とされ確認できなかった。

 少し緊張する。父さんが初めて俺の舞台を観に来ている。演劇の良さを少しでもわかってくれたら嬉しいけど、どうだろうな。

 俺は目を閉じ深呼吸した。
 五月祭(メイデイ)の幕が上がる。

【了】




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 イギリスに帰国後、間をあけずパブリックスクールに戻った。タイタニックに乗船したことは学校側に伝えてない。風邪をひいて数日休んだことになっている。
 登校して最初の一週間は、たまった課題の提出に追われた。そんなあわただしさも、日常に戻るリハビリみたいなものだった。
 得難いものを手に入れた。前向きになれた。それが、何より嬉しかった。
 遊園地は、夏の休暇に行くことが決まった。
***
 客席のざわめきは、俺たちのいる袖まで届いていた。演出が舞台監督に最終指示を出す。
「ドキドキするね、アシュリー。客席がほとんど埋まってるよ」
 オーガンジーをあしらった女神の衣装を着たランディが、隣でそわそわしている。開演を知らせるブザーが鳴った。
「いよいよだな」
 ランディの頭に飾られた花冠を直してやり、俺は小道具の剣を腰に差した。
 母さんは真ん中あたりに座ると言っていた。ブライアンは最前列に陣取ってるんだろうか。客電が落とされ確認できなかった。
 少し緊張する。父さんが初めて俺の舞台を観に来ている。演劇の良さを少しでもわかってくれたら嬉しいけど、どうだろうな。
 俺は目を閉じ深呼吸した。
 |五月祭《メイデイ》の幕が上がる。
【了】


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