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武地也がプリヤの前に立ち塞がった。
いや『立ち塞がってしまった』という言葉が適切であろう。
男である、学生プロレス出身である、プロレスラーの卵である。
更
に
は
!
紺色の法被を着た危ないヤツ!
『ザ・イエロー・シャーマン』!
何ていったって、フォークを自分の額に突き刺すヤツだ!
しかも、いきなり想像の斜め上! 180度明後日の方向の感情をぶつけてきた!
武地也がいかに『純粋な愛』を持っていたとしても――。
「な、何よあれ……」
「い、いきなり自分の額にフォークを突き刺したわよ!」
神輿を担ぐギャル達はドン引きするのは当たり前。
「アカン! なんやあいつ!」
「ヤバすぎるでオマ!」
「兄ちゃん、何を力んでるんや(その目は優しかった)」
「コレは教育やろなあ」
と浪速の人々もドン引きするのは当たり前。
「ワ、ワッショイ……」
そして、プリヤもドン引きするのは当たり前。
当たり前!
当たり前!
当たり前体操である!
そ
し
て
ッ
!
自然と起こるのは……。
「きっしょい!」
の言葉。
そ
れ
に
合
わ
せ
て
!
きっしょい! きっしょい! きっしょい!
きっしょい! きっしょい! きっしょい!
きっしょい! きっしょい! きっしょい!
わっしょいコールが――。
きっしょい! きっしょい! きっしょい!
きっしょい! きっしょい! きっしょい!
きっしょい! きっしょい! きっしょい!
きっしょいコールへと様変わりするッ!
「う、うう……」
哀れ武地也は、
「雄吼吼吼吼吼吼吼吼吼吼吼吼吼吼吼!」
額から大量出血をしての大号泣!
それもそのはず!
「キッショイ!」
きっしょいコールにプリヤの「キッショイ!」も含まれていたからだ!
愛をドストレートに伝えたものの!
拒まれ! 嫌がれ! 否定された!
どうする?
どうする武地也!
愛を無くした男はこう述べるしかないのだ!
「愛などいらぬ!」
と!
増悪入り混じった黒き感情!
歪んだ赤き炎が心に灯る!
「プリヤ、ボンバイエ!」
武地也は言った!
ボ
ン
バ
イ
エ
!
と!
ボンバイエ。
ザイール(現・コンゴ民主共和国)で用いられるリンガラ語で「ぶっ殺せ」「やっちまえ」の意味を持つ。
つまり、武地也は愛よりも憎しみを選んでしまったのだ!
「今日から俺は『ザ・イエロー・シャーマン』を捨てる!」
憎しみを選んだ武地也は――。
「今日より俺、いや私は『ザ・グレート・サタン』!」
額から流れる血を使い血化粧を施し!
クマドリを作り出す!
「オディオ武地也にギミックチェンジだ!」
オディオ! それは憎しみを意味する!
従
っ
て
!
武地也は『オディオ武地也』と変貌したのであった!
オ
デ
ィ
オ
武
地
也
爆
誕
ッ
!
「フハハハハハ!」
両手を掲げドヤ顔のオディオ武地也。
そんな彼の前に見物人の男が現れた。
「アホか、オディオつけただけやないか」
彼の名前は山田龍馬、年齢は25歳。
関西一帯を縄張りとする『牛若丸空手塾』の黒帯(段位は三段)である。
フルコンタクト空手の各種大会で優勝しており、地元の十三では『阪急のゴッドハンド』と呼ばれる。
「ワ、ワッショイ?」
プリヤはこのあんちゃんのことは知らない。
その界隈(阪急、十三駅一帯)でしか有名なだけだからだ、哀しいね。
「おう、ギャル神輿で目の保養してるのに邪魔すんなや」
「誰だ貴様は?」
「阪急のゴッドハンド! 山田龍馬や!」
「誰だよ……何にせよ、消えてもらうがな」
オディオ武地也は右手を貫手の形へと変える。
そう、得意の『地獄突き』の体制へと入ったのだ。
「それ、ひょっとして空手?」
対する龍馬はバカにしたような顔となった。
そして、リズミカルにステップを刻む。
オディオ武地也の構えから『なんちゃって空手』であることを見抜いたのだ。
「そのガマ・オテナなウソ空手でワイを――」
イキる龍馬!
「倒せると思ったら大間違いや!」
――必殺! 十三乱打乱蹴スパーク!
得意の足技繰り出した!
その名も『十三乱打乱蹴スパーク』!
阪急十三駅周辺の活気と混沌を表現した連続蹴り!
十三にちなみ十三連撃お見舞いするぞ!
「ダリャアアアアアッ!」
龍馬はこの必殺蹴りで勝利を狙うも!
「チェエエエエエエエエイ!」
「ぐぎゃあ!」
瞬
殺
さ
れ
て
し
ま
っ
た
!
地獄突きが喉仏にクリーンヒット!
涎を垂らしながら倒れて果てた!
何だったんだお前!
「プリヤ、ボンバイエ!」
倒れた龍馬を踏みつけながら睨む!
オディオ武地也!
「た、助けて!」
「警察や! 警察呼ばんと!」
「きゅ、救急車もやで!」
「で、でも、そないなことすると『ギャル神輿』が中止になるかもしれんのやで!?」
「そ、それはそうやけども!」
天神橋商店街は大混乱だ!
この招かれざる客が起こした蛮行を止めねばならない!
本来であれば警察(と救急車)を呼んだ方が得策だ!
しかし、商店街の人々は出来なかった!
こんなところで警察(と救急車)を呼べば、メディアに騒がれ『ギャル神輿は危険!』というレッテルが貼られるからだ!
只でさえ、うら若き乙女達が行う大イベント! 商店街の人々は! 浪速の人々は!
アレ系のお客をそれとなく近づかさないように頑張ってきた!
しかし、今年はアイタタな乱入者を許してしまった!
この想定外すぎるトラブルをどう対処するか!?
その策も! マニュアルも! 攻略法も!
何
も
な
か
っ
た
!
「プリヤ、あんた何とかしなさいよ!」
「そーよ、そーよ!」
「ワ、ワッショイ……」
プリヤの周りの神輿ギャルが騒ぎ始めた。
それもそのはず、オディオ武地也はプリヤだけが目的なのだ。
別にこのギャル神輿を中止するつもりはない。
ただただ、プリヤが「ワッショイ!」と偽りでもいいので愛に答えればいいだけだ。
「ワッショイ!」
でも、プリヤにそれは出来なかった!
インド人はウソつけなかったのだ!
混乱する商店街の人々、恐怖する神輿ギャル、悩むプリヤ。
あ
ゝ
ど
う
な
る
ギ
ャ
ル
神
輿
!
「あきまへんで」
その時だ!
映画の吹き替えのような『渋い声』が商店街に木霊した!
「ギャル神輿を邪魔したら、あきまへんで」
縦じまの法被を着た男がスッと割り込んできた。
彼は天神橋商店街青年会の会長。
藤
村
虎
之
助
登
場
!
その名も藤村虎之助!
猛虎のような猛々しい雄々しさ!
高校球児のような熱き魂を持った男である!
「ワ、ワッショイ!」
そして!
プリヤがバイトするカレー店『Socoイチバンや!』の店長であり!
「ワッショイ……」
プリヤが恋焦がれる想い人であった!
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