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ノンコと✕✕✕2

ー/ー



 ……声がする。
 お母さんの声だ。
 お母さんの大好きな、あの人の声もする。

 今日は早く帰ってきてくれたんだね、嬉しい。

「マジで死んでんじゃん、どうするんだよ?!」

 あの人が怒鳴ってる。
 うるさい。

「とにかく、慌てたふりをして救急車呼びましょう」

 お母さん、何を言っているの?

 救急車?
 あわてたふり?

 意味がわからない。
 とにかく起きなきゃ。
 目を、開けなきゃ。

 ノンコはそっと目を開ける。
 そうしたら、最初に見えたのは、お母さんの頭だった。
 ノンコが、お母さんを見下ろしてる?

 最初はノンコが浮いているのかと思ったけど。
 下を見たら赤黒い足が見えた。

 あれ?
 どういうこと?
 ノンコが大きくなっちゃったの?

 わからなくて、頭の中がぐしゃぐしゃする。
 お母さんが電話機の方に向かうと、床に倒れてるノンコの姿が見えた。

 なんで?
 どうしてノンコがもう一人いるの?

 倒れてるノンコは動かない。
 顔も白くて、唇は紫色になってる。

「こいつ、さっさと焼いて墓に入れるんだよな?」

 あの人が言った。

 焼く?
 ノンコを焼くの?

 嫌だ。

 怖い、助けてお母さん!

 叫ぼうとしたら、喉が熱くなる。

「お、があざん」

 ノンコの口から出た声は、ガラガラになってた。

 お母さんは。

「しー……あ、すみません、救急車をお願いします! 娘が、娘が息をしてないんです!」

 泣きそうな声をして、電話口で叫ぶ。


 お母さんも、助けてはくれないんだね。
 ノンコは焼かれて、白い入れ物に入れられるんだ。

 いやだ。

「いぃ、あぁだぁ」

 叫んで、そのまま、近くにあったハサミを掴んだ。
 あの人が悪い。
 あの人さえいなければ、きっとお母さんはノンコを愛してくれたはずだもの。

 そう思ったから、ノンコはハサミをあの人の胸に突き立てる。

「え?」

 あの人は、声が出たのと一緒に、床に倒れ込む。
 電話が終わって、戻ってきたお母さんはあの人の事を見て驚いた。

「どうしたの?! しっかりして!」

 お母さんはあの人に駆け寄って、胸の傷を見ると、叫び声をあげる。

 ねえ? お母さん。
 助けてくれないお母さんなんて、必要ないんだよ。

「ゆぎぃ」

 口から声が漏れだす。
 そして、泣き叫ぶお母さんの首に、ハサミを突き刺した。

 ノンコは絶対、あの入れ物には入らない。
 絶対に……。





 そうだ。
 もうお母さんに怒られないから、遊びに行こう。

 お友達、たくさん作って、みんなとひとつになろう。

 そうしたら、もうのんこは寂しくない。

 もう自由なんだから。
 のんこはどこにだって行けるんだから。




 だのじぃなぁ。
 どどだぢ、たぐざん、づぐろお。

END


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 ……声がする。
 お母さんの声だ。
 お母さんの大好きな、あの人の声もする。
 今日は早く帰ってきてくれたんだね、嬉しい。
「マジで死んでんじゃん、どうするんだよ?!」
 あの人が怒鳴ってる。
 うるさい。
「とにかく、慌てたふりをして救急車呼びましょう」
 お母さん、何を言っているの?
 救急車?
 あわてたふり?
 意味がわからない。
 とにかく起きなきゃ。
 目を、開けなきゃ。
 ノンコはそっと目を開ける。
 そうしたら、最初に見えたのは、お母さんの頭だった。
 ノンコが、お母さんを見下ろしてる?
 最初はノンコが浮いているのかと思ったけど。
 下を見たら赤黒い足が見えた。
 あれ?
 どういうこと?
 ノンコが大きくなっちゃったの?
 わからなくて、頭の中がぐしゃぐしゃする。
 お母さんが電話機の方に向かうと、床に倒れてるノンコの姿が見えた。
 なんで?
 どうしてノンコがもう一人いるの?
 倒れてるノンコは動かない。
 顔も白くて、唇は紫色になってる。
「こいつ、さっさと焼いて墓に入れるんだよな?」
 あの人が言った。
 焼く?
 ノンコを焼くの?
 嫌だ。
 怖い、助けてお母さん!
 叫ぼうとしたら、喉が熱くなる。
「お、があざん」
 ノンコの口から出た声は、ガラガラになってた。
 お母さんは。
「しー……あ、すみません、救急車をお願いします! 娘が、娘が息をしてないんです!」
 泣きそうな声をして、電話口で叫ぶ。
 お母さんも、助けてはくれないんだね。
 ノンコは焼かれて、白い入れ物に入れられるんだ。
 いやだ。
「いぃ、あぁだぁ」
 叫んで、そのまま、近くにあったハサミを掴んだ。
 あの人が悪い。
 あの人さえいなければ、きっとお母さんはノンコを愛してくれたはずだもの。
 そう思ったから、ノンコはハサミをあの人の胸に突き立てる。
「え?」
 あの人は、声が出たのと一緒に、床に倒れ込む。
 電話が終わって、戻ってきたお母さんはあの人の事を見て驚いた。
「どうしたの?! しっかりして!」
 お母さんはあの人に駆け寄って、胸の傷を見ると、叫び声をあげる。
 ねえ? お母さん。
 助けてくれないお母さんなんて、必要ないんだよ。
「ゆぎぃ」
 口から声が漏れだす。
 そして、泣き叫ぶお母さんの首に、ハサミを突き刺した。
 ノンコは絶対、あの入れ物には入らない。
 絶対に……。
 そうだ。
 もうお母さんに怒られないから、遊びに行こう。
 お友達、たくさん作って、みんなとひとつになろう。
 そうしたら、もうのんこは寂しくない。
 もう自由なんだから。
 のんこはどこにだって行けるんだから。
 だのじぃなぁ。
 どどだぢ、たぐざん、づぐろお。
END