『そう、我が名はみそさざめ!!!』
記憶を失っていた彼の正体はミソサザイ、鳥の王様と名高い孤高の小鳥だ。熱い声援によって、王様は都合よく記憶を取り戻した。
『ミソサザイさん、確かカラスに殺されたって聞いたッスよ!?』
Birdieboyをはじめ、鳥界隈においてミソサザイは亡き者とされていたらしい。そんな彼が生還したとなれば、驚きを隠せないのは無理もない。
『聞きたいか!? 僕の武勇譚! 仕方ないなぁ、教えたる!!」
どういうわけか、ミソサザイはメジロ達の口ずさんでいた小粋なリズムに乗せて語り出した。おそらく、鳥界隈で流行りのラップなのだろう。
『そのすごい武勇譚を言ったげて!!』
しんご君はすかさず合いの手を入れてくる。彼の順応性の高さはある意味でのりこのそれに近いかもしれない。
『ギエンに嵌められ異世界転生!』
ラップ調で語られるミソサザイのこれまで。小粋なリズムもさることながら、異世界転生という印象的な言葉に一同は驚愕している。
『すごい! 狂戦士ワーウルフと正面衝突!!』
狂戦士ワーウルフとミソサザイの正面衝突。おそらく、それは壮絶な一場面であったに違いない。
『意味はないけれど、イライラしたからぁ~、異世界の壁突き破って現世に戻るぅ~』
メジロ3羽のバックコーラスに合わせてミソサザイが小粋なリズムで語り続ける。というより、イライラしただけで異世界から戻れるのは実にご都合展開である。
「このビート、ここで乗らねばラッパーが廃るっ!!」
心地良いビートにのりこも踊り出さずにはいられない。だが、のりこはいつからラッパーになったのだろうか??
『タンタンタタンタン! タンタンタタンタン! タンタンタタンタン……』
そのリズムに乗るのは4羽と一人になろうが変わらない。音楽とは、心を通わせる最良のツールに違いない。
『そういえば聞かなきゃいけない! ギエンは今どうしてる!? デコポン!!』
ミソサザイのラップは中途半端なところで締め括られた。ラップ口調でありながらも彼の目は真剣そのものだ。
『みそさざめさん、ラップなんかしてる場合じゃないッス!! ギエンが森林へ侵攻を始めたんスよ!!』
時間差で入るBirdieboyのツッコミ。それは鳥の王様を前にしたら、やむを得ない場面なのかもしれない。
『Birdieboy、それを早く言ってくれ!』
ラップの首謀者が何を言う。目上の立場にはなかなか話を切り出しづらいこと、それは人間社会に限ったことではないようだ。
『とにかく、ギエンの元へ急ぐぞ!!』
ここでようやく王様の威厳を取り戻したミソサザイ。彼はメジロ3羽を引き連れて事件の渦中へ急ぐ。
「私達も行くわよ!!」
それを聞いたのりこも彼らに追従する。果たして、ギエンとは一体何者なのだろうか......?
――
ここは森林の深奥。カラス達は人里から離れてひっそりと暮らしていたが、ムクドリ達の襲来を受け迎撃態勢となっている。
『カラス達の無慈悲によって、諸君らの敬服したミソサザイは死んだ。今こそ、彼の無念を晴らすのだ!!』
大群を率いているのは、統領のギエン。言葉巧みに群衆を導いているが、その瞳の奥には深い闇を蓄えている。
『ムクドリの統領は群衆を欺いている。だがしかし、それに屈する我らではないわ!!』
ミソサザイ殺害の容疑をかけられた挙句、棲家を襲撃されたカラス達は怒り心頭。両者は今まさに一触即発の様相を呈している。
『皆の衆、静まれぇっっっ!!!』
そんな両者の間に、4羽の小鳥が割って入る。その先陣を切るのはもちろん、鳥の王様ミソサザイだ。
『おおぅ......あれはミソサザイさん......!!』
小柄ながらも、風格漂う雄姿に周囲は圧巻。その多くがミソサザイに敬服し、次々に地上へと舞い降りていく。
『貴様、生きていたのか......!!?』
その中で、ただ不服の念を抱いているのはムクドリの統領ギエン。彼はミソサザイを謀略によって異世界へ追放し、鳥の王座を奪取することを企てていたのだ。
『ギエン、この森林はみんなのものだ! お前1羽が支配していいものじゃない!!』
陽光を背にしたミソサザイは、さながら太陽神。その言葉には、王に相応な威厳が込められている。
『全ては私のものだ! そう、この森林でさえもなぁ......!!』
ギエンはこの世の全てを我が手中に収めたかった。それが王座を欲する最大の理由だ。その野望は、人間たちにもひしひしと伝わっていた。
『ギエン。お前はもう、死んでいる......!!』
ギエンの利己的な発言に嫌気が差したミソサザイ。彼の瞳は怒りの炎が燃え上がっている。
『死んでいるのは貴様だ、ミソサザイ!! はーはっはっはっは......っ!!!??』
ミソサザイの言動に対し、侮蔑の高笑いをしていたギエン。だが、突如として猛禽類の爪が彼を襲い、謀略を巡らせたことに対する断罪が下された。
その場面に遭遇したのりこたちは、自然界の残酷さを目の当たりにした。存在理由を失った命は粛々と淘汰されていく、それが自然界の大原則なのである。