表示設定
表示設定
目次 目次




第67話 完璧な小鳥

ー/ー



 復讐に燃えるムクドリ達の執念に、島長親子は戦慄している。迫り来るムクドリの大群に青空は覆い尽くされ、様相はさながら世界の終末を呈している。
「まさかこれが、世界の終わり(ラグナロク)だっていうのか......!?」
 良行がそう言いたくなるのも分からなくはないが、世界の終わりにしてはスケールが物足りないかもしれない。それならば、せめてフェンリル辺りの登場を願うばかりだ。
「おとうさん! 空から何かが降ってくる!!」
 ムクドリの大群は陽光を遮り、地上へ雨の如く大量の糞を撒き散らす。都心部では時折野鳥の大群が襲来し、その通り道が糞で汚染されるという被害が発生する。
 しかし、離島をはじめとした地方でこのようなことは稀で、りょうたは戦々恐々としている。
『カァーッ!! カァーッ!!』
 ムクドリの襲来を察知したカラスもこれに応戦。島長親子の頭上で鳥たちが空中戦を繰り広げ、両者の羽がまるで豪雪の如く舞い降りてくる。
『ムクドリの侵略に屈するな! 青き清浄なる森林(せかい)ために!!』
 もちろん、カラス達も生きることに必死。万物の生きとし生けるものは、生まれながらにして居場所を欲する。
 たとえそれは人間であっても例外でなく、所有権や領有権という形で脈々と引き継がれている。
「大変! ムクドリ達の戦いが始まっちゃった!!?」
 緊迫した空気の中、先程どこかへ置いてきたのりこがやって来た。ついでに、彼女の両肩には先程のメジロ2羽も一緒だ。
「あっちゃん! しんご君! Birdieboy! 今こそ、私達の力を見せる時!!」
 のりこの号令でメジロ達は縦一列に整列すると、何やら上下に旋回し始めた。よく見ると、メジロが1羽追加されている。おそらく彼がそのBirdieboyなのだろう。
『恐れるぅ~なぁ~! 慄くぅ~なぁ~!!』
 メジロ3羽とのりこの、見事なコラボレーション。しんご君のさえずりがラップのように心地よく、思わず踊り出したくなってしまいそうだ。
「おねえちゃん、どうしちゃったの......!?」
 メジロ達のビートに乗せられて、のりこの踊りにはヘッドバンギングが入り混じる。その様子に、弟のりょうたは別の意味で心臓が高鳴ってしまう。
「いいぞぉーっ! のりこぉっっっ!!!」
 のりこ達のビートは、やがて観衆にも伝播する。観衆の一人、良行もぎこちないながらも踊り始めてしまう。
「おとうさんったら、もう......」
 こうなると、もはや誰ものりこ達を止められない。のりこ達のビートについていけないりょうたは、ただ傍観に徹した。悲しきはこれが陰キャの性なのである。 
「I‘m perfect birdie!」
 メジロ達の踊りは最高潮を迎えたらしく、のりこの決め台詞で締めとなった。直立不動の姿勢から両手を広げ、メジロ達もそれに倣う。
 歌と踊りは、古来より集団の心を一つにする行動としてうってつけだと相場が決まっているのだ。
「のりこぉーーーっっっ!!!」
 のりこと3羽のキレッキレな踊りに良行は魅せられ、思わず歓声を上げてしまう。いや、もしかしたらただの親バカなのかもしれないが......。
「ガサガサッ......!」
 踊り終えたのりこ達の背後で物音がした。一見すると、草むらで何かがもがいているように思えるが......??
『思い出せない......僕は一体誰なんだ!?』
 どうやら、草むらに潜む某は記憶を失ってしまっているようだ。だが、メジロのしんご君だけはその声に聞き覚えがある様子。
『その声は......まさかっ!!?』
 しんご君はその声に驚いたかのように、忙しなく周囲を飛び跳ねる。その反応を見たあっちゃんはというと?
『まさか、そんなはずは!?』
 あっちゃんも似たような反応を示す。彼もまた、しんご君同様忙しなく飛び跳ね始める。
『けれど、あの人しかいない......!!』
 Birdieboyに至っては、歓喜のあまり小躍りを始めてしまう。彼らの言うあの人とは如何に??
「きっと、あの人で間違いないわね......!!」
 口先ではそう言うが、おそらくのりこはあの人に心当たりはないものと思われる。理解していないのが半面、この雰囲気を楽しんでいるのが半面だろう。
「きっと、間違いないさ!!」
 良行に至っては、もはや空気を読んで調子を合わせているだけ。場の雰囲気の一体感に馴染めず、りょうたは尚更に傍観者の立場を取らざるを得ない。
『では皆様。ご唱和下さい彼の名を!! せーのっ!』
 これはお約束なのか? 突如としてしんご君が合いの手を入れ始める。ご唱和下さいと言われても、そんなものに心当たりはないという表情のりょうた。
『ミソサザイーっ!!!』
 りょうたを除く一同は、その名を叫んだ。一体感というのは、時に種族の垣根さえも越えていくらしい。
「......バサッ!!」
 声援を聞いて某が草むらから飛び出した!! それはスズメほどに小柄な鳥。だが、圧倒的存在感の小鳥だった。
『そう、我が名はミソサザイ!!!』
 記憶を失っていた彼の正体はみそさざめ、鳥の王様と名高い孤高の小鳥だ。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第68話 ギエンの野望


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 復讐に燃えるムクドリ達の執念に、島長親子は戦慄している。迫り来るムクドリの大群に青空は覆い尽くされ、様相はさながら世界の終末を呈している。
「まさかこれが、|世界の終わり《ラグナロク》だっていうのか......!?」
 良行がそう言いたくなるのも分からなくはないが、世界の終わりにしてはスケールが物足りないかもしれない。それならば、せめてフェンリル辺りの登場を願うばかりだ。
「おとうさん! 空から何かが降ってくる!!」
 ムクドリの大群は陽光を遮り、地上へ雨の如く大量の糞を撒き散らす。都心部では時折野鳥の大群が襲来し、その通り道が糞で汚染されるという被害が発生する。
 しかし、離島をはじめとした地方でこのようなことは稀で、りょうたは戦々恐々としている。
『カァーッ!! カァーッ!!』
 ムクドリの襲来を察知したカラスもこれに応戦。島長親子の頭上で鳥たちが空中戦を繰り広げ、両者の羽がまるで豪雪の如く舞い降りてくる。
『ムクドリの侵略に屈するな! 青き清浄なる|森林《せかい》ために!!』
 もちろん、カラス達も生きることに必死。万物の生きとし生けるものは、生まれながらにして居場所を欲する。
 たとえそれは人間であっても例外でなく、所有権や領有権という形で脈々と引き継がれている。
「大変! ムクドリ達の戦いが始まっちゃった!!?」
 緊迫した空気の中、先程どこかへ置いてきたのりこがやって来た。ついでに、彼女の両肩には先程のメジロ2羽も一緒だ。
「あっちゃん! しんご君! Birdieboy! 今こそ、私達の力を見せる時!!」
 のりこの号令でメジロ達は縦一列に整列すると、何やら上下に旋回し始めた。よく見ると、メジロが1羽追加されている。おそらく彼がそのBirdieboyなのだろう。
『恐れるぅ~なぁ~! 慄くぅ~なぁ~!!』
 メジロ3羽とのりこの、見事なコラボレーション。しんご君のさえずりがラップのように心地よく、思わず踊り出したくなってしまいそうだ。
「おねえちゃん、どうしちゃったの......!?」
 メジロ達のビートに乗せられて、のりこの踊りにはヘッドバンギングが入り混じる。その様子に、弟のりょうたは別の意味で心臓が高鳴ってしまう。
「いいぞぉーっ! のりこぉっっっ!!!」
 のりこ達のビートは、やがて観衆にも伝播する。観衆の一人、良行もぎこちないながらも踊り始めてしまう。
「おとうさんったら、もう......」
 こうなると、もはや誰ものりこ達を止められない。のりこ達のビートについていけないりょうたは、ただ傍観に徹した。悲しきはこれが陰キャの性なのである。 
「I‘m perfect birdie!」
 メジロ達の踊りは最高潮を迎えたらしく、のりこの決め台詞で締めとなった。直立不動の姿勢から両手を広げ、メジロ達もそれに倣う。
 歌と踊りは、古来より集団の心を一つにする行動としてうってつけだと相場が決まっているのだ。
「のりこぉーーーっっっ!!!」
 のりこと3羽のキレッキレな踊りに良行は魅せられ、思わず歓声を上げてしまう。いや、もしかしたらただの親バカなのかもしれないが......。
「ガサガサッ......!」
 踊り終えたのりこ達の背後で物音がした。一見すると、草むらで何かがもがいているように思えるが......??
『思い出せない......僕は一体誰なんだ!?』
 どうやら、草むらに潜む某は記憶を失ってしまっているようだ。だが、メジロのしんご君だけはその声に聞き覚えがある様子。
『その声は......まさかっ!!?』
 しんご君はその声に驚いたかのように、忙しなく周囲を飛び跳ねる。その反応を見たあっちゃんはというと?
『まさか、そんなはずは!?』
 あっちゃんも似たような反応を示す。彼もまた、しんご君同様忙しなく飛び跳ね始める。
『けれど、あの人しかいない......!!』
 Birdieboyに至っては、歓喜のあまり小躍りを始めてしまう。彼らの言うあの人とは如何に??
「きっと、あの人で間違いないわね......!!」
 口先ではそう言うが、おそらくのりこはあの人に心当たりはないものと思われる。理解していないのが半面、この雰囲気を楽しんでいるのが半面だろう。
「きっと、間違いないさ!!」
 良行に至っては、もはや空気を読んで調子を合わせているだけ。場の雰囲気の一体感に馴染めず、りょうたは尚更に傍観者の立場を取らざるを得ない。
『では皆様。ご唱和下さい彼の名を!! せーのっ!』
 これはお約束なのか? 突如としてしんご君が合いの手を入れ始める。ご唱和下さいと言われても、そんなものに心当たりはないという表情のりょうた。
『ミソサザイーっ!!!』
 りょうたを除く一同は、その名を叫んだ。一体感というのは、時に種族の垣根さえも越えていくらしい。
「......バサッ!!」
 声援を聞いて某が草むらから飛び出した!! それはスズメほどに小柄な鳥。だが、圧倒的存在感の小鳥だった。
『そう、我が名はミソサザイ!!!』
 記憶を失っていた彼の正体はみそさざめ、鳥の王様と名高い孤高の小鳥だ。