表示設定
表示設定
目次 目次




⑫ 頁 芽雨りこ 様part

ー/ー



肩まで湯船に浸かると、今日一日の記憶も、経験も、肌に纏わりつく感情も、洗い流されていくように感じた。

「失礼するね。これ、アニキのだけど、多分着れると思うから」

「う、うん」

すりガラス越しに見えるシルエットに、思わず体を隠すように縮めてしまう。

「ねぇ」

すると、彼女は、珍しく少し甘えたような声で、言葉を続けた。

「私は変わり者だから。異端者だから。一般的な気持ちなんて分からない。だけど、分からない分、一般的な感覚じゃ、分からない事が分かるの………。今日のアンタは。かっこ……良かったよ………」

まさに不意打ちだった。彼女からそんな言葉を受け取るなんて、それだけで、今日の出来事も、生半可な思い付きも、全部、救済されていくように感じた。

「さ、さっさと温まって出てきなよ!長く入りすぎてのぼせたって、看病なんてしてあげないから!」

彼女はまくしたてるようにそう言い残すと、そそくさと洗面所を後にした。

「かっこ良かった………か………」

あぁ、駄目だ。顔が熱い。いや、顔というよりは、心臓が、頭が、指先が、とにかく体の全てが熱い。

あぁ、ごめん。折角の気遣いも無下にして。

だって、もう、とっくにのぼせてしまっているから。


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



肩まで湯船に浸かると、今日一日の記憶も、経験も、肌に纏わりつく感情も、洗い流されていくように感じた。
「失礼するね。これ、アニキのだけど、多分着れると思うから」
「う、うん」
すりガラス越しに見えるシルエットに、思わず体を隠すように縮めてしまう。
「ねぇ」
すると、彼女は、珍しく少し甘えたような声で、言葉を続けた。
「私は変わり者だから。異端者だから。一般的な気持ちなんて分からない。だけど、分からない分、一般的な感覚じゃ、分からない事が分かるの………。今日のアンタは。かっこ……良かったよ………」
まさに不意打ちだった。彼女からそんな言葉を受け取るなんて、それだけで、今日の出来事も、生半可な思い付きも、全部、救済されていくように感じた。
「さ、さっさと温まって出てきなよ!長く入りすぎてのぼせたって、看病なんてしてあげないから!」
彼女はまくしたてるようにそう言い残すと、そそくさと洗面所を後にした。
「かっこ良かった………か………」
あぁ、駄目だ。顔が熱い。いや、顔というよりは、心臓が、頭が、指先が、とにかく体の全てが熱い。
あぁ、ごめん。折角の気遣いも無下にして。
だって、もう、とっくにのぼせてしまっているから。