商談76 回想―痛恨―
ー/ー
開始線へ戻る際、俺は右足首に違和感を覚えた。この感覚、もしや捻挫か? おそらく、さっきの縺れ合いで右足首を痛めたのかもしれない。よりにもよって、上段の軸足である右足を負傷するとは。
「始め!」
主審の号令で試合再開。俺は前に踏み出そうとするが、右足首のズキズキとした痛みがそれを阻む。ここぞという時に、捻挫は俺の足枷になってしまっている。
「ヤァァァ......ッッッ!!」
俺は右足首の痛みを押し殺そうと、肚の底から咆哮した。万が一にも、対馬にこのことを勘付かれてはいけない。仮にそうなってしまったら、ヤツは攻めに転じてくるだろう。それだけは何としても阻止せねば!
「ヤァァァサァァァッ!!」
対馬は相変わらず縦横無尽に動き回る。俺も必死に喰らい付こうするが、足首の負傷は思いの外手痛い。だが、俺は仮にも鹿児島の火竜。例え片足をもがれようとも、飛燕に屈するわけにはいかないんだ!!
対馬は着実に間を詰めて来る。そして、ヤツに対峙する俺もまたじりじりと間を詰め牽制する。だが、足首の痛みはここでも俺の動きを制限する。運も実力のうち、その言葉が皮肉にも俺の現状を言い表している。くそっ! 俺の足首、根性見せろ!!
気のせいだろうか? 心なしか、対馬の足運びがこれまでとは違っているように見受けられる。何と言うか、どことなく攻め入っているような感じだ。
......まずいな、これは対馬に俺の弱みを勘付かれたか。面越しに見える対馬の目は、先程とは打って変わって狙いを定めているかのような鋭さだ。
「セヤァァァッッッ!!!」
ナメるな!! 俺はその一心で咆哮するが、吠えれば吠えるほど俺の額には冷や汗が走る。強そうに咆哮すると、弱そうに見えてしまうのは何とも皮肉な話だ。
もちろん、対馬の表情は一切変わらない。俺の心を見透かし、飛燕はただ一点だけを見据えている。
間は一足一刀。本来はここで対馬に一太刀を浴びせたいところだが、俺の右足は思いに呼応してくれない。......くそっ! これじゃ鹿児島の火竜は名折れじゃないか!!
おそらく、俺の表情は苦悶に満ちていることだろう。俺の隙へ付け入るように、対馬はそこから半歩踏み入って来た!
踏み入る足に追従するように、対馬は手首を返した。竹刀の剣先は俺に向かって一直線、向かう先は言うまでもなく俺の喉元だ。
「ツキィィィッッッ!!!」
その瞬間、俺の喉元に強い衝撃が走る。飛燕は火竜の突き垂れ目掛けて突進してきたのだ。
「ぐほっ......!!」
不覚にも、火竜は喉を貫かれた。
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「始め!」
主審の号令で試合再開。俺は前に踏み出そうとするが、右足首のズキズキとした痛みがそれを阻む。ここぞという時に、捻挫は俺の足枷になってしまっている。
「ヤァァァ......ッッッ!!」
俺は右足首の痛みを押し殺そうと、肚の底から咆哮した。万が一にも、対馬にこのことを勘付かれてはいけない。仮にそうなってしまったら、ヤツは攻めに転じてくるだろう。それだけは何としても阻止せねば!
「ヤァァァサァァァッ!!」
対馬は相変わらず縦横無尽に動き回る。俺も必死に喰らい付こうするが、足首の負傷は思いの外手痛い。だが、俺は仮にも鹿児島の火竜。例え片足をもがれようとも、飛燕に屈するわけにはいかないんだ!!
対馬は着実に間を詰めて来る。そして、ヤツに対峙する俺もまたじりじりと間を詰め牽制する。だが、足首の痛みはここでも俺の動きを制限する。運も実力のうち、その言葉が皮肉にも俺の現状を言い表している。くそっ! 俺の足首、根性見せろ!!
気のせいだろうか? 心なしか、対馬の足運びがこれまでとは違っているように見受けられる。何と言うか、どことなく攻め入っているような感じだ。
......まずいな、これは対馬に俺の弱みを勘付かれたか。面越しに見える対馬の目は、先程とは打って変わって狙いを定めているかのような鋭さだ。
「セヤァァァッッッ!!!」
ナメるな!! 俺はその一心で咆哮するが、吠えれば吠えるほど俺の額には冷や汗が走る。強そうに咆哮すると、弱そうに見えてしまうのは何とも皮肉な話だ。
もちろん、対馬の表情は一切変わらない。俺の心を見透かし、飛燕はただ一点だけを見据えている。
間は一足一刀。本来はここで対馬に一太刀を浴びせたいところだが、俺の右足は思いに呼応してくれない。......くそっ! これじゃ鹿児島の火竜は名折れじゃないか!!
おそらく、俺の表情は苦悶に満ちていることだろう。俺の隙へ付け入るように、対馬はそこから半歩踏み入って来た!
踏み入る足に追従するように、対馬は手首を返した。竹刀の剣先は俺に向かって一直線、向かう先は言うまでもなく俺の喉元だ。
「ツキィィィッッッ!!!」
その瞬間、俺の喉元に強い衝撃が走る。飛燕は火竜の突き垂れ目掛けて突進してきたのだ。
「ぐほっ......!!」
不覚にも、火竜は喉を貫かれた。