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僕の城

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僕の城
 今日から僕と彼女は、晴れて同棲することになった。

「やったーっ! 夢にまで見た、私だけの城! 城ってことは……私が女王様?」

 彼女は高校の先輩だった。中々珍しいことなんだけど、お互い一目惚れだったらしい。
 荷解きに手を付けずに、仁王立ちで呑気にそんなことを言っている彼女からは、いつも溢れ出るエネルギーを感じる。月並みな言葉で表現するなら、元気っ子と言ったところだろうか。

「ははっ。ま、そうとも言えるね」

「ねーねー君、そういえば料理得意だよね? だからさ、ご飯係は君で決定ってことで! ほら、私めっちゃ料理下手なの知ってるでしょ? このとーり、お願い!」

「えぇ……まぁ、いいけど」

「え! まじ? 冗談のつもりで言ったんだけど……ありがてー! 言ったよね、今いいけどって確かに言ったね?」

 彼女は、段ボールに貼られたガムテープを剥がすのに手こずっている僕に急に顔を近づけて笑った。
 いつもこうだ。彼女には振り回されてばかり。

「うん。作るよ」

「よーし! はははっ! 流石我が側近!」

 側近、か。

「ね、そんなこと言ってないで、早く手伝ってよ」

「んもー、いけすかないやつめ。はいはい。たまには王族も手伝ってやりますわよ。感謝しなさい。おほほほほっ」

 一通りの荷解きや家具の組み立てが終わると、もう日はすっかり置いていた。初夜、と言うやつだ。

「簡素だけど、どうぞ」

 丸く小さいテーブルに、チンしただけのカレーを二人分、置いた。

「あぁ、ますます私の城って感じがする……いただきまーす」

 私の城、か。
 彼女は僕の分のカレーにまで手を付けて、結局僕のカレーはほとんど食べられてしまった。まぁ、いいんだけど。
 あっという間に、夜が更けてきた。
 僕らは寝る準備をして、二人で使う一つのベッドで夜を過ごす。

「今日も楽しかったね」

 ベッドの中。彼女が囁く。

「うん」

「これからずっと、私の城で暮らそうね」

「うん。でも君は、女王様なんかじゃないよ」

「え」

 暗闇の中で、バサリ、と、布団の摩擦音が聞こえる。まぁ、僕が立てた音なんだけど。
 僕は彼女の上に体全体で乗っかった。

「な……に?」

「ん、どうしたの?」

 僕は耳元でそう言った。
 彼女の鼓動、生きている音がする。
 僕は次に、その耳を弱く弱く、僕の歯で噛んだ。

「えっ」

 彼女は混乱しているみたいだった。

「びっくりした?」

「いや……うん」

「初めてだもんね? こういうの」

 吐息が一つ。そしてもう一つ。

「えっと……うん」

「人生で一回もないもんね」

「うん」

「じゃあ初めてすることしよっか」
 
 その次に僕は言った。

「言っておくけど、ここは僕の城だからね」

 そう。僕はこの城の王様。そして君は、大好きな僕のお姫様。




みんなのリアクション

僕の城
 今日から僕と彼女は、晴れて同棲することになった。
「やったーっ! 夢にまで見た、私だけの城! 城ってことは……私が女王様?」
 彼女は高校の先輩だった。中々珍しいことなんだけど、お互い一目惚れだったらしい。
 荷解きに手を付けずに、仁王立ちで呑気にそんなことを言っている彼女からは、いつも溢れ出るエネルギーを感じる。月並みな言葉で表現するなら、元気っ子と言ったところだろうか。
「ははっ。ま、そうとも言えるね」
「ねーねー君、そういえば料理得意だよね? だからさ、ご飯係は君で決定ってことで! ほら、私めっちゃ料理下手なの知ってるでしょ? このとーり、お願い!」
「えぇ……まぁ、いいけど」
「え! まじ? 冗談のつもりで言ったんだけど……ありがてー! 言ったよね、今いいけどって確かに言ったね?」
 彼女は、段ボールに貼られたガムテープを剥がすのに手こずっている僕に急に顔を近づけて笑った。
 いつもこうだ。彼女には振り回されてばかり。
「うん。作るよ」
「よーし! はははっ! 流石我が側近!」
 側近、か。
「ね、そんなこと言ってないで、早く手伝ってよ」
「んもー、いけすかないやつめ。はいはい。たまには王族も手伝ってやりますわよ。感謝しなさい。おほほほほっ」
 一通りの荷解きや家具の組み立てが終わると、もう日はすっかり置いていた。初夜、と言うやつだ。
「簡素だけど、どうぞ」
 丸く小さいテーブルに、チンしただけのカレーを二人分、置いた。
「あぁ、ますます私の城って感じがする……いただきまーす」
 私の城、か。
 彼女は僕の分のカレーにまで手を付けて、結局僕のカレーはほとんど食べられてしまった。まぁ、いいんだけど。
 あっという間に、夜が更けてきた。
 僕らは寝る準備をして、二人で使う一つのベッドで夜を過ごす。
「今日も楽しかったね」
 ベッドの中。彼女が囁く。
「うん」
「これからずっと、私の城で暮らそうね」
「うん。でも君は、女王様なんかじゃないよ」
「え」
 暗闇の中で、バサリ、と、布団の摩擦音が聞こえる。まぁ、僕が立てた音なんだけど。
 僕は彼女の上に体全体で乗っかった。
「な……に?」
「ん、どうしたの?」
 僕は耳元でそう言った。
 彼女の鼓動、生きている音がする。
 僕は次に、その耳を弱く弱く、僕の歯で噛んだ。
「えっ」
 彼女は混乱しているみたいだった。
「びっくりした?」
「いや……うん」
「初めてだもんね? こういうの」
 吐息が一つ。そしてもう一つ。
「えっと……うん」
「人生で一回もないもんね」
「うん」
「じゃあ初めてすることしよっか」
 その次に僕は言った。
「言っておくけど、ここは僕の城だからね」
 そう。僕はこの城の王様。そして君は、大好きな僕のお姫様。


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