2話優しい婚約者ほど、私を殺す未来を知っている
ー/ー優しい婚約者ほど、私を殺す未来を知っている
「君を信じる」と言った人ほど、最後には私の首に刃を落とした。
歓迎茶会の扉を開けた瞬間、義妹は泣いていて、父はもう私を責める顔をしていた。
1000回目の人生は、始まったばかりなのに、もう私を悪役にしようとしていた。
広間に入った瞬間、空気が変わった。
銀の食器が触れ合う音。
焼き菓子の甘い匂い。
温室から戻ったばかりの私のドレスについた土の匂い。
そして、泣いているリリア。
彼女は白い椅子に腰かけ、両手でハンカチを握っていた。
淡い金髪が頬にかかり、睫毛の先には小さな涙が光っている。
誰が見ても、傷ついた少女だった。
そして私は、遅れて現れた冷たい姉だった。
「エリシア」
父の声が低く響く。
怒鳴ってはいない。
けれど、その静けさのほうが痛い。
昔の私は、この声を聞くだけで胃が縮んだ。
父に嫌われたくなくて、すぐに謝った。
何に謝っているのかも分からないまま、頭を下げた。
すると周囲は言う。
やはりエリシア様が悪いのだ、と。
だから今回は、頭を下げなかった。
「遅くなりました」
私は静かに言った。
「体調が悪いと伺っていたが」
父が眉を寄せる。
「なぜ殿下と一緒にいた」
その言葉で、広間の視線が一斉に私へ刺さった。
レオンハルトは私の半歩後ろに立っている。
近すぎない。
でも、確かに隣にいる。
それだけで、リリアの涙に意味が生まれてしまう。
可哀想な妹。
妹を放って皇子と密会していた姉。
私が何も言わなくても、物語は勝手に組み上がる。
999回、見てきた光景だった。
「温室で偶然お会いしました」
「偶然?」
父の目が鋭くなる。
「はい」
「リリアがどれほど心配していたか分かっているのか」
リリアが小さく肩を震わせた。
「お父様、いいんです」
その声は、柔らかくて弱い。
「お姉様はきっと、私のことがまだ怖いのだと思います。急に妹だなんて言われても、困りますよね」
うまい。
本当にうまい。
自分を下げているようで、私を冷たい人間にする。
相手を責めているように聞こえないから、余計に周囲は味方する。
一度目の私は、この言葉に焦った。
違う。
そんなつもりじゃない。
あなたを怖がってなんかいない。
そう言い募って、さらに悪者になった。
百回目の私は黙った。
黙れば、図星だと思われた。
三百回目の私は笑った。
笑えば、薄情だと言われた。
何をしても、同じ場所へ流される。
けれど今回は、私はもうリリアの作った台詞に乗らない。
「怖いわ」
私は言った。
広間が静まり返った。
リリアの涙が止まる。
父が目を見開く。
レオンハルトだけが、私を見ていた。
「正直に言えば、怖いです」
私はリリアを見る。
「今日初めて会った相手を、急に家族として愛せと言われることも。母を亡くして一年も経たないうちに、新しい母と妹を迎えることも。笑顔で受け入れられなければ冷たいと言われることも」
父の顔色が変わった。
「エリシア」
「それでも、私は礼儀を欠いたつもりはありません」
私は父を見る。
「花束は受け取れませんでした。花の香りで気分が悪くなるからです。歓迎茶会を欠席したのも、体調不良とお伝えしました。リリアを侮辱する意図はありません」
広間の空気が揺れた。
使用人たちが目を伏せる。
父は言葉を失っていた。
たぶん、私が母のことを口にするとは思っていなかったのだろう。
彼にとって母は、過ぎた悲しみだった。
新しい妻を迎え、新しい娘を迎え、家を整えるために片づけられるべき過去。
でも私にとって母は、まだ毎朝目覚めるたびに探してしまう人だった。
999回死んでも、母の不在だけは薄れなかった。
リリアがハンカチを握りしめる。
「私、そんなつもりでは」
「分かっているわ」
私は穏やかに遮った。
「あなたに悪意がないなら、私が怖がることも許してくれるわよね」
リリアの唇がわずかに震えた。
この言い方なら、彼女は否定できない。
自分を優しい妹として見せたいなら、私の恐怖を踏みにじれない。
小さな沈黙。
その隙を埋めるように、レオンハルトが一歩前に出た。
「公爵」
父が慌てて姿勢を正す。
「殿下」
「私が温室にいたのは、亡きラヴェル公爵夫人が育てていた青薔薇を見たかったからです」
さらりと嘘を混ぜた。
でも完全な嘘ではない。
温室に青薔薇はあった。
「エリシア嬢を誘ったのは私です。責められるべきは私でしょう」
広間の視線が今度は彼へ向く。
皇子の言葉は重い。
誰も簡単には疑えない。
それを知っていて使う彼を、少しだけ怖いと思った。
同時に、助けられたことが悔しかった。
私は助けられたくないのに。
助けられると、期待してしまう。
リリアが小さく微笑んだ。
「殿下は、お姉様にお優しいのですね」
その声に、毒が一滴落ちた。
父には分からない。
使用人にも分からない。
でも私とレオンハルトには聞こえた。
責めている。
羨んでいる。
試している。
レオンハルトは表情を変えなかった。
「婚約者ですから」
その一言で、リリアの目が凍った。
私の胸も凍った。
婚約者。
久しぶりに聞いた言葉だった。
過去の私は、その言葉に縋った。
彼は私の婚約者だから。
いつか私を選んでくれるはずだから。
そう思って、何度も自分の傷を無視した。
けれど今は違う。
婚約者という言葉は、甘い約束ではなく、首輪に聞こえる。
誰かに選ばれる立場は、誰かに捨てられる立場でもある。
「殿下」
私は静かに言った。
「私はまだ、正式にご挨拶もしておりません」
レオンハルトがこちらを見る。
「そうだったね」
「ですから、婚約者として扱われるのは少し早いかと」
広間の空気がまた固まった。
父が声を荒げる。
「エリシア、それは王家への無礼だ」
「申し訳ありません」
私は頭を下げた。
今度は、意図して。
「ですが、私は本日リリアを迎えたばかりで、家族としての立場も整理できておりません。殿下に対しても未熟な態度を取る可能性があります。まずは一人の令嬢として礼を尽くしたいのです」
きれいごとだった。
でも、嘘ではない。
私はまだこの人の婚約者に戻りたくなかった。
戻った瞬間、未来が近づく気がした。
毒杯。
断罪。
処刑台。
「分かった」
レオンハルトはあっさり言った。
父が驚く。
「殿下」
「エリシア嬢の言う通りだ。急ぐ必要はない」
彼は私を見る。
その瞳が、ほんの少し寂しそうに揺れた。
「信頼は、命令で作るものではないから」
胸が痛んだ。
そういうことを、今さら言わないでほしい。
一度目の人生で聞きたかった。
二度目でもよかった。
せめて百回目までなら、私は泣いて信じたかもしれない。
でも今は、痛いだけだ。
茶会は、その後ひどくぎこちなく進んだ。
リリアは可憐に笑い、父の新しい妻であるセリーナ夫人は控えめに微笑んだ。
彼女はいつもそうだ。
優しく見えて、何もしない。
私が孤立しても。
リリアが嘘を重ねても。
父が私を責めても。
彼女は悲しそうな顔だけをして、場を止めない。
何もしない人間は、時に一番残酷だ。
レオンハルトは私の隣ではなく、少し離れた席に座った。
彼なりの配慮だと分かった。
それがまた腹立たしい。
気づかないでほしい。
私の恐怖にも、距離にも、息苦しさにも。
気づかれたら、優しくされる。
優しくされたら、また心が揺れる。
「お姉様は、どんなお菓子がお好きですか?」
リリアが尋ねた。
無邪気な声。
私はカップを置く。
「甘すぎないもの」
「そうなんですね。私は蜂蜜のケーキが好きです」
知っている。
その蜂蜜ケーキに毒が混ぜられ、私が犯人にされる未来を。
六年後の王宮舞踏会。
リリアは倒れる。
私の部屋から同じ毒の小瓶が見つかる。
それが最初の断罪の引き金だった。
ただ、その毒は即死しない。
喉を焼き、熱を出し、肌に赤い斑点を作る。
死なない程度に苦しむ毒。
同情を集めるには、ちょうどいい毒。
「蜂蜜は苦手だわ」
私が言うと、リリアはきょとんとした顔をした。
「どうしてですか?」
「甘いものほど、後味が残るから」
レオンハルトが一瞬こちらを見た。
リリアは笑った。
「お姉様らしいですね」
「今日会ったばかりなのに、私らしさが分かるの?」
言った瞬間、リリアの指が止まった。
ほんのわずか。
普通なら見逃すほどの揺れ。
でも私は見逃さない。
九百九十九回、彼女を見続けたのだから。
「これから知っていきたいと思っただけです」
「そう」
私は微笑む。
「私もあなたを知っていくわ」
リリアの目が、笑っていなかった。
茶会の終わり頃、父がレオンハルトを執務室へ案内した。
王家との話があるのだろう。
セリーナ夫人はリリアを連れて客室へ向かう。
私は一人、広間に残された。
使用人たちは片づけをしながら、ちらちらと私を見ている。
今日の私は、どんな噂になるのだろう。
冷たい姉。
可哀想な妹。
皇子を惑わせる令嬢。
それとも、母を盾にする厄介な娘。
何でもいい。
噂はいつも私より先に走る。
追いかけても転ぶだけだ。
私は広間を出て、自室へ戻った。
扉を閉めた瞬間、膝から力が抜けた。
床に座り込む。
手が震えている。
うまくやったはずだ。
少なくとも、最悪ではなかった。
リリアの罠を一つ避けた。
レオンハルトも、今回は彼女に微笑まなかった。
父も、完全には私を叱れなかった。
たったそれだけ。
それだけなのに、全身がひどく疲れていた。
人に嫌われないように生きるより、人に好かれないように生きるほうが難しい。
私は、ずっと誰かの顔色を見ていたのだと思った。
父の眉。
リリアの涙。
レオンハルトの目。
群衆の口。
その全部から逃げたくて、でも逃げられなくて、いつも自分を切り刻んで形を合わせていた。
1000回目になっても、まだ私は自由ではない。
机の引き出しから日記を出す。
1000回目。
最後にする。
誰も信じない。
その文字を見つめる。
そして下に書き足した。
リリアは記憶の断片あり。
レオンハルトも断片あり。
温室で予定外の接触。
茶会で罠、回避。
父は変わらない。
書いてから、最後の一文にペン先を止めた。
レオンハルトは、変わった。
そう書きそうになって、やめた。
変わったと認めるのが怖かった。
変わったなら、期待してしまう。
期待は毒だ。
甘くて、後から効く。
ペン先にインクが溜まり、紙に黒い点を作った。
その時、扉が控えめに叩かれた。
「お嬢様」
マリアの声。
私は日記を閉じる。
「何」
「レオンハルト殿下より、お手紙をお預かりしております」
胸が嫌な音を立てた。
手紙。
過去の人生で、手紙は何度も私を殺した。
偽造された密書。
リリア宛の脅迫状。
毒の購入記録。
皇子への反逆文書。
私の筆跡に似せて作られた紙切れが、いくつも処刑台へ私を運んだ。
「扉の下に置いて」
「直接お渡しするようにと」
「置いて」
強く言うと、少し間が空いた。
「かしこまりました」
紙が床を滑る音。
足音が遠ざかる。
私はしばらく動けなかった。
たった一通の手紙が怖い。
馬鹿みたいだと思う。
でも、人は自分を殺したものを忘れられない。
刃物で殺されれば刃物が怖い。
毒で殺されれば杯が怖い。
言葉で殺されれば、手紙だって怖い。
私は手袋をはめ、封筒を拾った。
白い封筒。
王家の青い封蝋。
まだ開けられた跡はない。
それでも信用できない。
私はペーパーナイフではなく、暖炉の火ばさみで封を切った。
中には短い文章だけがあった。
エリシアへ。
君を信じなくていい。
でも、君の言葉は疑わずに聞く。
今日のことを忘れない。
レオンハルト。
私は何度も読み返した。
たった四行。
謝罪でも、愛の言葉でもない。
約束に近い。
でも、私の逃げ道を塞がない言葉だった。
君を信じなくていい。
その一文が、胸に刺さった。
信じろと言われるのが苦しかった。
信じてほしいと言われるのも苦しかった。
私の傷より相手の誠実さを優先しろと言われている気がしたから。
でも、信じなくていいと言われると、どうしてこんなに苦しいのだろう。
もう少し近づいてもいいのだと、心が勝手に思ってしまうからだ。
私は手紙を暖炉に近づけた。
燃やすべきだ。
証拠にも、弱点にもなる。
誰かに見つかれば、また物語を作られる。
炎が紙の端を照らす。
でも、手が止まった。
燃やせなかった。
自分が嫌になる。
999回も死んで、まだこの人の言葉を捨てられない。
私は手紙を日記の間に挟んだ。
「今日だけ」
誰に言うでもなく呟く。
「今日だけ、残す」
それが依存の始まりだと知っている。
小さな例外が、やがて鎖になることも。
でも私は、燃やせなかった。
夕方、リリアが私の部屋を訪ねてきた。
予想していた。
彼女はいつも、二人きりになれる瞬間を逃さない。
侍女を下がらせ、私は扉の前で彼女と向き合った。
リリアは昼間とは違う淡い水色のドレスを着ていた。
泣き腫らしたように見える目。
でも、実際には泣いていない。
彼女は必要な時に涙を見せる。
本当に泣く時は、誰にも見せない。
それを知ってしまったのは、627回目の人生だった。
夜中、礼拝堂の裏で、彼女が一人で髪を掻きむしりながら泣いていた。
「どうして私じゃないの」
そう呟いていた。
あの時だけ、私は彼女に近づけなかった。
怪物だと思っていた相手が、自分と同じように壊れていると知るのは怖かった。
「お姉様」
リリアが微笑む。
「少し、お話しできますか」
「ここでなら」
「お部屋には入れてくださらないのですか?」
「ええ」
「警戒されているんですね」
「そうね」
正直に答えると、彼女は少し笑った。
「隠さなくなったんですね」
「隠しても無駄だから」
「殿下の影響ですか?」
その言葉に、胸が小さく痛む。
「私の判断よ」
リリアの目が細くなる。
「お姉様は、いつもそう言うんです」
「いつも?」
「自分で選んだ、自分で決めた、誰のせいでもないって」
リリアは廊下の窓へ視線を向けた。
夕日が彼女の横顔を赤く染める。
「でも結局、周りはお姉様を見ます。お姉様が黙っても、怒っても、逃げても、死んでも」
死んでも。
その言葉が、あまりにも自然に出た。
私は彼女を見つめる。
「あなたは、何回覚えているの」
リリアは笑った。
「数えていません」
「嘘」
「本当です。だって私、死ぬのはいつもお姉様だと思っていましたから」
背筋が冷える。
「私はただ、残されるだけ」
その声は静かだった。
「お姉様が死んだ後、世界はすぐ巻き戻る。でも、その直前の時間だけは覚えているんです。殿下が叫ぶ声。お父様が青ざめる顔。民衆が静まり返る瞬間」
リリアは私を見る。
「みんな、最後にはお姉様を見るんです」
私は言葉を失った。
そんなこと、考えたこともなかった。
私の死後の一瞬。
私はそこで終わる。
次に目覚める。
けれどリリアは、その間を見ていたのか。
私が知らない、私の死後を。
「私がどれだけ頑張っても、最後の視線はお姉様のもの」
リリアの声が震えた。
「だから、次こそはと思うんです。次こそは、死ぬ前に全部私のものにしようって」
「それで私を殺すの?」
「殺したいわけじゃありません」
彼女は即答した。
「ただ、お姉様がいなくなれば、空くと思ったんです」
「何が」
「席が」
その一言が、重かった。
私は昼間の温室で彼女が言った言葉を思い出す。
私には席があった。
彼女にはなかった。
けれどその席は、私にとって椅子ではなく断頭台だった。
「私の席は、あなたが思うほど温かくないわ」
「それでも欲しかった」
リリアは私を見た。
涙はない。
むしろ、そのほうが痛かった。
「お姉様は嫌なら捨てられるでしょう。でも私は、欲しいものを欲しいと言うことすら許されなかった」
「誰に」
「世界に」
幼い答えだと思った。
同時に、分かってしまった。
私たちは似ている。
似ているから、憎い。
互いに持っているものしか見えず、互いに持っていないものを想像できなかった。
リリアは私の婚約者を見ていた。
私はリリアに向けられる父の優しさを見ていた。
どちらも、相手が本当に満たされているかなんて見ていなかった。
「リリア」
「はい」
「私はあなたの敵にはなる」
彼女が瞬きをする。
「でも、あなたの理由にはならない」
「どういう意味ですか」
「あなたが壊れた理由を、私にしないで」
リリアの表情が歪む。
「私はあなたを憎んでいい。あなたも私を憎んでいい。でも、あなたの人生の空白を私で埋めようとしないで」
言いながら、自分にも刺さった。
私はずっとレオンハルトで空白を埋めようとしていた。
愛されれば、自分に価値があると思える気がした。
信じられれば、今までの死が報われる気がした。
でも、それは違う。
彼が私を選んでも、999回の私が消えるわけではない。
「お姉様は変わりましたね」
リリアが呟く。
「変わらなければ死ぬから」
「変わっても死ぬかもしれませんよ」
「知ってる」
私が答えると、リリアは初めて困った顔をした。
私が怯えると思ったのだろう。
もちろん怖い。
でも、脅しとしてはもう古い。
私は死を知りすぎた。
「でも今回は、死ぬ前にあなたの顔を見るつもりはない」
リリアの目が揺れる。
「どういう意味ですか」
「あなたに殺される物語を、私の最後にしないという意味」
廊下に沈黙が落ちる。
遠くで使用人が皿を運ぶ音がした。
日常はいつも残酷だ。
誰かの人生が壊れているすぐ隣で、銀食器は磨かれ、夕食のスープは温められる。
「殿下を信じるんですか」
リリアが低く問う。
「信じない」
「では、どうして手紙を燃やさなかったの」
心臓が跳ねた。
なぜ知っている。
私の表情を見て、リリアは笑った。
「ああ、本当に残したんですね」
誘導された。
私は唇を噛む。
リリアは嬉しそうだった。
「お姉様は賢いのに、殿下のことになると分かりやすい」
「あなたもね」
言い返すと、リリアの笑みが消えた。
「あなたも、レオンハルトのことになると分かりやすいわ」
リリアは黙った。
「あなたが欲しいのは、皇子そのもの?それとも、彼に選ばれる私の立場?」
リリアの顔から色が引く。
「黙って」
「違いが分からないうちは、何度奪っても満たされない」
彼女の手が上がった。
叩かれる。
そう思った。
けれどその手は、私の頬に触れる直前で止まった。
震えていた。
リリアは自分の手を見つめ、ゆっくり下ろした。
「嫌い」
掠れた声だった。
「お姉様なんて、大嫌い」
「私もよ」
私は答えた。
「でも、嫌いで終わらせたい」
殺すでも、奪うでも、縋るでもなく。
ただ、嫌いで終わる。
それがどれほど難しいか、私たちは二人とも分かっていた。
リリアは背を向けた。
「明日の朝、殿下は王宮へ戻られます」
「そう」
「その前に、お父様が正式な婚約確認の場を設けるそうです」
息が詰まった。
早すぎる。
今までのループでは、正式な婚約確認は半年後だった。
王宮で行われるはずだった。
なぜ明日。
何が変わった。
リリアが振り返る。
「お姉様が殿下を遠ざけたから、世界が急いでいるのかもしれませんね」
世界が急いでいる。
その言葉に、温室のひび割れたガラスを思い出す。
運命の修正力。
今まで何度も私を破滅へ戻した力。
変えれば変えるほど、別の場所から締めつけてくる。
リリアは微笑んだ。
「逃げますか?」
私は彼女を見る。
「逃げない」
「では、殿下の婚約者になる?」
答えられなかった。
レオンハルトの手紙が、日記の中で重くなる。
信じなくていい。
でも、君の言葉は疑わずに聞く。
その言葉を思い出す自分が嫌だった。
リリアは満足そうに笑った。
「その迷いが、いつもお姉様を殺すんです」
そう言って、彼女は去っていった。
私は廊下に一人残された。
窓の外はもう暗い。
ガラスに映る自分の顔は、十二歳とは思えないほど疲れていた。
部屋へ戻ると、机の上に置いた日記が少し開いていた。
閉じたはずなのに。
私は息を止める。
近づく。
日記の間に挟んだ手紙は、まだあった。
ただ、その横に小さな紙片が差し込まれていた。
私のものではない。
震える手で開く。
そこには、見覚えのない筆跡で一文だけ書かれていた。
婚約を拒めば、皇子が死ぬ。
全身の血が引いた。
誰が。
リリアか。
それとも別の誰かか。
世界そのものが、私に書かせているのか。
紙片を握りしめる。
息が苦しい。
まただ。
また選ばされる。
私が逃げれば誰かが死ぬ。
私が選べば私が壊れる。
愛すると失う。
愛さなくても失う。
私は椅子に座り込み、日記を開いた。
書かなければ。
整理しなければ。
明日の婚約確認。
レオンハルト死亡の予告。
リリアの記憶。
世界の修正。
でも、ペンを持つ手が震えて文字にならない。
その時、窓に小さな音がした。
こつん。
私は顔を上げる。
窓の外、バルコニーに人影があった。
心臓が止まりそうになった。
レオンハルトだった。
夜の闇に黒い外套をまとい、息を切らしている。
皇子が公爵令嬢の部屋のバルコニーに来るなど、噂になれば終わりだ。
私は慌てて窓を開けた。
「何をしているんですか」
「君に会いに来た」
「馬鹿ですか」
「たぶん」
彼は真顔で言った。
本当に馬鹿だ。
999回のどの人生でも、こんなことはなかった。
彼はいつも正しかった。
礼儀正しく、王子らしく、完璧だった。
だからこそ、間違えた時の残酷さが際立った。
今の彼は、少し息を乱し、髪も乱れ、十四歳の少年らしく不器用だった。
「手紙を送った」
「受け取りました」
「燃やした?」
答えられなかった。
レオンハルトは小さく笑った。
「よかった」
「よくありません」
「うん。でも、よかった」
怒りたいのに、胸が痛くて声が出ない。
彼はすぐに表情を引き締めた。
「明日の婚約確認のことを聞いた」
「早いですね」
「父上から急な通達があった。公爵側の要望だと」
「父はそんな」
そこまで言って、止まる。
父が自ら急ぐ理由はある。
王家との関係を固めたい。
新しい妻と義妹を迎えた家の立場を安定させたい。
私の不安定さを、婚約で押さえつけたい。
でも、それだけだろうか。
「君はどうしたい」
レオンハルトが尋ねた。
私は笑いそうになった。
どうしたい。
その問いが、こんなに難しい。
「分かりません」
正直に言った。
「婚約すれば、また同じ道に戻る気がします。拒めば、あなたが死ぬと書かれた紙がありました」
レオンハルトの顔色が変わる。
私は紙片を渡した。
彼は目を通し、眉を寄せる。
「筆跡に覚えは?」
「ありません」
「リリア?」
「分かりません。彼女なら、もっと私の心を刺す言葉を選ぶと思います」
「詳しいね」
「999回分ですから」
自嘲すると、彼は痛そうな顔をした。
その顔をしないでほしい。
私が悪いことをしたような気持ちになる。
「エリシア」
「はい」
「婚約は、君が望まないなら拒んでいい」
「あなたが死ぬかもしれない」
「それは僕の問題だ」
その言い方に、胸がざわついた。
「違います」
「違わない」
「違います。あなたが死ねば、私はまたそれを背負う」
声が震えた。
「300回目の人生で、あなたは私を庇って死にました。私は次に目覚めた時、一週間何も食べられなかった。あなたの死に顔を覚えています。体温が消えていく手も、血の匂いも、私を見て笑ったことも」
レオンハルトが息を呑む。
「あなたは私のせいではないと言った。でも私は、その言葉で余計に壊れた」
言葉が溢れる。
夜のせいだ。
手紙のせいだ。
彼が窓から来るなんて馬鹿なことをするせいだ。
「あなたは自分の命を軽く差し出さないで。私を救うためと言えば美しいと思っているなら、やめて」
涙は出なかった。
でも声は震えた。
「あなたが死んでも、私は救われません」
レオンハルトはしばらく黙っていた。
やがて、小さく頷く。
「分かった」
「本当に?」
「うん。死なない」
「簡単に約束しないで」
「じゃあ、努力する。君を残して死なない努力をする」
頼りない言葉だった。
でも、完璧な誓いより信じやすかった。
完璧な言葉ほど、現実に負けると知っているから。
「君は?」
レオンハルトが尋ねる。
「私?」
「君も、自分だけが傷つけばいいと思わないで」
心臓を掴まれたようだった。
「思っていません」
「嘘だ」
昼間と同じ言葉。
私は彼を睨む。
「決めつけないでください」
「ごめん。でも、そう見えた」
彼は視線を落とす。
「君はずっと、自分を罰しているように見える」
私は何も言えなかった。
自分を罰している。
そうかもしれない。
私は何度も思った。
私がもっと賢ければ。
もっと可愛げがあれば。
もっと早く気づいていれば。
もっと強ければ。
母が死んだ後、父を失わずに済んだかもしれない。
リリアを憎まずに済んだかもしれない。
レオンハルトを信じて壊れずに済んだかもしれない。
死ぬたびに、私は自分のどこが間違っていたのか探した。
でも、999回も間違い続ける人間なんているのだろうか。
それはもう、私だけの罪ではないのではないか。
そんな当たり前のことに、私は今さら気づきそうになっていた。
「明日」
私は言った。
「婚約確認の場で、条件を出します」
レオンハルトが顔を上げる。
「条件?」
「私の言葉を公的記録に残すこと。リリアを同席させること。婚約を結ぶとしても、私には一定期間の撤回権を認めること」
言いながら考える。
逃げるだけでは駄目だ。
結ぶだけでも駄目だ。
物語の形を変えなければならない。
婚約者という役割に飲まれるのではなく、私が条件を置く。
私の意思を、紙に残す。
偽造される手紙ではなく、誰も無視できない記録として。
「公爵が許すかな」
「許させます」
「強いね」
「強くありません」
私は即答する。
「怖いから準備するんです」
レオンハルトは少し笑った。
「それでも、強いと思う」
今度は否定しなかった。
強いと言われるのは嫌いだった。
強いなら耐えられるだろうと、何度も傷を押しつけられたから。
でも彼の声には、押しつけがなかった。
ただ、見ているだけだった。
私は視線を逸らした。
「もう戻ってください」
「うん」
彼は頷いたのに、動かなかった。
「何ですか」
「名前を呼んでほしい」
「嫌です」
「昼間は呼んだ」
「一度だけと言いました」
「じゃあ、明日の分を前借りで」
「殿下」
「はい」
私が冷たく呼ぶと、彼は苦笑した。
少しだけ、空気が緩んだ。
こんな時間があったことを、私は知らない。
過去の人生で、私たちはいつもすれ違っていた。
近づきすぎて傷つくか、離れすぎて疑うか。
こんなふうに、怖いまま言葉を交わすことはなかった。
「レオンハルト」
小さく呼んだ。
彼の目が揺れる。
「明日、死なないでください」
彼は真っ直ぐ私を見た。
「君も」
その返事に、胸が詰まった。
私たちは愛の言葉ではなく、生存の約束を交わしていた。
それが今の私たちには、何より切実だった。
彼がバルコニーから去った後、私はしばらく窓を閉められなかった。
夜風が冷たい。
でも、息は少ししやすかった。
机に戻り、日記を開く。
明日の条件を書く。
婚約確認。
公的記録。
撤回権。
リリア同席。
レオンハルト生存確認。
そこまで書いて、最後に一行だけ足した。
信じないまま、手を組む。
翌朝。
私はほとんど眠れないまま、鏡の前に立った。
侍女が髪を梳かす。
銀の髪に青いリボンを結ぶ。
青。
レオンハルトが昔、似合うと言った色。
わざとではない。
たまたまだ。
そう自分に言い聞かせても、鏡の中の私は少しだけ悔しそうだった。
婚約確認の間には、父、セリーナ夫人、リリア、王家の使者、そしてレオンハルトがいた。
リリアは昨夜のことなどなかったように微笑んでいる。
彼女は私の青いリボンを見て、一瞬だけ目を細めた。
気づかれた。
でも構わない。
私は席につく前に、部屋全体を見渡した。
窓。
扉。
書記官。
インク壺。
封蝋。
毒が仕込まれそうな茶器。
刃物になりそうなペーパーナイフ。
逃げ道。
すべて確認する。
999回死ぬと、礼儀より先に生存確認をするようになる。
父が口を開いた。
「本日は、ラヴェル公爵家長女エリシアと、第一皇子レオンハルト殿下の婚約について」
「その前に」
私は遮った。
父の眉が跳ねる。
「エリシア」
「婚約を確認するなら、私から条件があります」
場が凍る。
王家の使者が目を丸くした。
婚約に条件をつける令嬢など、聞いたことがないのだろう。
私だって一度目ならしなかった。
でも一度目の私は死んだ。
もういない。
「条件とは」
レオンハルトが静かに促した。
彼の声に、わずかに支えられる。
腹立たしい。
でも、助かった。
「第一に、本日の発言はすべて書記官に記録していただきたい」
書記官が父を見る。
父は渋々頷いた。
「第二に、私は婚約者である前にラヴェル家の娘として、新しい家族との関係構築期間が必要です。婚約確定後も一年間、双方の合意により撤回できる条項を設けてください」
王家の使者がざわつく。
父が立ち上がりかける。
「無礼だ」
「第三に」
私は父を見ずに続けた。
止まったら負ける。
怖くても、言い切る。
「リリアを、私の侍女や私物に無断で関わらせないこと。逆も同じです。互いの部屋、手紙、贈答品には第三者の確認を必要とします」
リリアの笑顔が薄くなる。
父が怒りを露わにした。
「妹を疑うのか」
「妹だけではありません。私自身も疑われないためです」
父が言葉に詰まる。
「家族になったばかりだからこそ、境界が必要です。信頼は、距離を無くすことではありません」
その言葉は、昨日レオンハルトが言ったものに少し似ていた。
信頼は命令で作るものではない。
悔しい。
使ってしまった。
リリアが口を開く。
「お姉様は、私と家族になりたくないのですか」
来た。
涙の声。
場の空気が彼女へ傾く。
私は彼女を見た。
「なりたいと思える日が来るかどうかを、これから確かめたいの」
リリアが固まる。
私は続ける。
「今日から家族です、だから愛しなさいと言われても、私にはできない。あなたにも無理をさせたくない。だから、時間と境界が必要なの」
綺麗な言葉だ。
でも本音でもある。
私はもう、嘘の仲良し姉妹を演じたくなかった。
演じれば演じるほど、憎しみは見えないところで育つ。
リリアの瞳が揺れた。
彼女は父に視線を向ける。
父は苦い顔をしている。
「殿下は、どうお考えですか」
王家の使者が尋ねた。
レオンハルトは私を見た。
一瞬だけ、昨夜の約束がよぎる。
君の言葉は疑わずに聞く。
彼は静かに言った。
「私は、エリシア嬢の条件を受け入れます」
部屋がざわめいた。
「むしろ、王家側からも記録を残しましょう。婚約は檻ではなく、約束であるべきです」
その言葉に、胸が痛んだ。
檻。
まさに私は、そう感じていた。
彼はそれに気づいていたのか。
それとも、記憶のどこかで知っていたのか。
リリアが机の下で拳を握るのが見えた。
父は不満そうだったが、皇子が受け入れた以上、拒めない。
条件は書面に残された。
私の名前。
レオンハルトの名前。
父の署名。
王家の封蝋。
それらが紙の上に刻まれていく。
私はじっと見ていた。
過去の人生で、紙は私を殺した。
今日は、紙が私を守るかもしれない。
その可能性が、少しだけ怖かった。
手続きが終わる直前、リリアが突然立ち上がった。
「お姉様」
全員の視線が彼女へ向く。
「私も、署名していいですか」
父が驚く。
「リリア?」
リリアは可憐に微笑んだ。
「私も家族ですから。お姉様と距離を置く約束を、ちゃんと守りたいんです」
いい妹の顔。
けれど私は、彼女の目を見た。
何かを企んでいる。
でも、ここで拒めば私が悪者になる。
「構わないわ」
私が言うと、リリアは書記官からペンを受け取った。
小さな手で署名する。
リリア・セリーナ・ラヴェル。
その瞬間、窓ガラスが小さく鳴った。
ぴしり。
誰も気づかないほどの音。
でも私は聞いた。
レオンハルトもこちらを見た。
リリアだけが、微笑んだままだった。
署名を終えた彼女は、ペンを置き、私へ近づいた。
「お姉様」
「何」
「これからよろしくお願いします」
彼女は両手を差し出した。
握手。
人前。
拒めない。
私は一瞬だけ迷った。
その迷いを、彼女は待っていた。
分かっている。
分かっていても、完全には避けられない。
私は手袋越しに、彼女の手を取った。
冷たい。
その小さな手が、私の手をぎゅっと握る。
耳元で、彼女は囁いた。
「婚約おめでとうございます」
それだけなら、祝福だった。
でも次の一言で、体中の血が凍った。
「これで、殿下を殺す理由ができました」
私は手を振り払った。
大きな音がした。
リリアがよろめく。
周囲が息を呑む。
父が怒鳴る。
「エリシア!」
リリアは床に座り込み、泣きそうな顔で私を見上げた。
「お姉様……?」
完璧だった。
また、私が悪役になる。
でも今回は、違った。
「書記官」
レオンハルトの声が鋭く響いた。
「今の接触直前からのやり取りを、すべて記録に」
リリアの顔が一瞬だけ歪んだ。
私の心臓が激しく鳴る。
彼は聞こえていないはずだ。
囁きは私にしか届かなかった。
それでも、私の反応を信じた。
疑わずに。
「エリシア嬢」
レオンハルトが私を見る。
「何を言われた?」
部屋中が静まった。
私はリリアを見た。
彼女は涙を浮かべている。
父は私を責める顔。
セリーナ夫人は口元に手を当てている。
王家の使者は戸惑っている。
いつもの構図。
でも、隣に一人だけ違う人がいる。
信じろとは言わない。
ただ、私の言葉を待っている人がいる。
私は息を吸った。
怖い。
言えば、また物語が壊れる。
言わなければ、私が壊れる。
「リリアは言いました」
自分の声が、部屋に響く。
「これで、殿下を殺す理由ができた、と」
沈黙。
リリアの涙が頬を伝う。
「そんなこと、言っていません」
震える声。
「お姉様、どうしてそんな酷いことを」
父が私を睨む。
「エリシア、今すぐ撤回しろ」
胸が苦しくなる。
まただ。
また誰も信じない。
そう思った瞬間。
「撤回しなくていい」
レオンハルトが言った。
彼は私の前に立った。
守るようにではない。
私の言葉を、背後に隠さないように。
「調べればいい。今日から互いの手紙や贈答品には第三者確認を入れる。今の発言も記録された。疑惑があるなら、形に残して検証すればいい」
父が言葉を失う。
リリアの泣き顔に、小さな亀裂が入る。
私は震えていた。
信じてもらえた。
そう思った瞬間、涙が出そうになった。
駄目。
まだ早い。
これだけで信じてはいけない。
でも、心は勝手に痛む。
999回、欲しくて欲しくて手に入らなかったものが、遅すぎる形で目の前に置かれた。
「エリシア」
レオンハルトが振り返る。
「大丈夫?」
私は首を振った。
「大丈夫ではありません」
彼は少し驚いた顔をした。
私は続けた。
「怖いです。腹が立ちます。今すぐ逃げたいです。あなたが信じてくれたことも、嬉しいと思ってしまう自分も嫌です」
言葉にしたら、少し呼吸ができた。
「でも、倒れません」
レオンハルトの目が柔らかくなる。
「うん」
その返事だけで、十分だった。
リリアは床に座ったまま、私たちを見ていた。
泣いているのに、その目だけは笑っていない。
彼女の口元が、ほんの少し動いた。
聞こえない。
でも、今度も分かった。
始まったね。
そう言っていた。
私は彼女を見返した。
始まったのではない。
ずっと続いていた地獄に、ようやく名前をつけただけだ。
婚約確認の書類には、全員の署名が残った。
私の条件も。
リリアの署名も。
そして、彼女に向けられた初めての疑惑も。
部屋を出る時、レオンハルトが私の横に並んだ。
手は触れない。
でも、距離は昨日より少し近い。
「信じないんだよね」
彼が小さく言った。
「はい」
「それでいい」
「でも」
私は足を止めた。
「今日のことは、覚えておきます」
彼も立ち止まる。
「僕も」
その声に、胸がまた痛んだ。
未練は消えない。
恐怖も消えない。
義妹の執着も、父の不信も、世界の歪みも、何一つ終わっていない。
むしろ悪化した。
でも、私は初めて処刑台以外の未来を少しだけ見た気がした。
それが希望なのか、新しい罠なのかは分からない。
分からないまま、私は歩き出す。
背後で、廊下の窓ガラスに細いひびが入る音がした。
世界が、私たちの選択を嫌がっている。
ならばきっと、間違ってはいない。
私は心の中で、リリアに言った。
今度は、私だけを悪役にはさせない。
そしてレオンハルトには、まだ言わなかった。
あなたを信じたいと思ってしまったことが、今日一番怖かった。
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