32話 棚に上げているのです
ー/ー「エルシオさんまだ見つからないの? もう、エルシオさんに追いついたじゃない。第二部隊たいちょ!」
「追いついたって……たまたまだよ」
エルシオさんを見つける業務は、いつの間にかほとんど優先されなくなっていた。特に進捗も聞かれなければ、死神との戦いに駆り出される回数が多く、なかなか探しに行く暇などなかった。そして、僕は気づけば天界騎士団第二部隊の隊長になっていた。
それでも僕は無理矢理にでも時間を作った。人間界に行き続けた。少し不純な理由かもしれない。命令よりも、ずっと大事な約束があるからだ。
「また来るよ」と伝えた人間に、会いに行くためだ。
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「なんでそんなことを言うの!!」
病室の扉を勢いよく開けた女性が泣きながら飛び出してきた。
セナの母親だ。あんなにも大きな声を出しているところは初めてみた。
「やあ! お母さんと喧嘩でもした……の……かい?」
僕は病室に入り、いつものようにセナに挨拶をするつもりが、彼女の表情を見たことで、語尾に辿り着くまでに声量が抜けていった。
いつも笑顔で迎え入れてくれるはずのセナの表情は暗く、明るい雰囲気が取り柄の彼女には似合わない姿だった。
「シルエト! 今日の面白い話は?」
セナはいつも、僕に面白い話を要求してくる。かなり難題ではあるが、いつも何か話題を持ってきていた。
だがそれより、今日はセナの様子がおかしい。無理矢理作った笑顔はぎこちなく、空元気を振り撒いているのがバレバレだ。
「今日は僕の好きな漫画の話をしようと思っていたんだよ。ついに鳩が天使の国を襲い始めたんだ」
「ついに!? もっと詳しく聞かせて!」
「いやそれよりも……セナ、何かあったのかい? お母さんがあんなに大きな声を出すなんて。普段はこんなことないじゃないか。それに……今日は様子が変だ」
「……やっぱりわかる? 目が見えるってずるいよね〜」
セナはそう言って苦笑する。年齢的には、もう高校生と言っていた。無理矢理笑顔でいることもできるようになった。痛みに耐えながら、元気な声を出すことも。
そして、自分の病気のことも理解している。
「ははっ、ツッコミにくい責め方は勘弁してくれよ。それで、何があったの?」
「ごめんごめん。ちょっとさ……お母さんに酷いこと言っちゃったかも」
微笑みは消えていないものの、目には哀愁が漂っている。僕は、彼女のそんな目を初めて見た。
「酷いことって?」
「……あのさ。私、もうダメなんだよね。わかるの。自分の体のことだし。ほんとは、もっと昔からだめだったんだけどね? お母さんのおかげで、何回も山場を乗り越えて、今も生きていられるの」
知っている。セナの病気のことは病院内で何度も耳にしていた。それでも、考えないようにしていた。
僕は死んだあとの世界を知っている。だから、いつかその日が来るとわかっていても、考えたくなかった。
「それでさ、お父さんは私が小さい頃に逃げちゃって、お母さんが1人で全部抱えてくれてたでしょ? 今回の治療も、ただ生き延びるためだけのものだと思うんだ。知ってる? すーっごくお金かかるんだよ。だからさ、お母さんに言っちゃったの。もう大丈夫だよって。人生やり残したことないって」
ダメだ。それだけは許されない。セナがその選択を選ぶことに、僕は納得できない。
ーーーーーーなぜ……?
僕は天界騎士団。死神を殺すためだけに生きてきたはずだ。
人間なんて、どうでもいいと思って生きてきたじゃないか。なのにどうして、こんなにも彼女への想いが溢れてくるんだ。
「いや、ダメだ。そんなの。やり残したこと、あるじゃないか。星だって、ほら見ていないだろ? それに……」
「いいの。もう見れないよ。それに叶った夢もある。そうでしょ? シルエト、あなたが友達になってくれた。とっても嬉しかったんだよ?」
「そんなの、僕の気まぐれで……なんとなくそうなっただけだ」
「友達になんてなった覚えはない」そう言いたかった。でも言えなかった。言えるはずがなかった。たとえ嘘でも、言葉にはできなかった。
「でも来てくれた。4年経っても来てくれた。それから何回も、何回も来てくれた。それで十分だよ。私の唯一の友達。友達とお話するって、その夢が叶っただけで、私は満足だよ! あとは天国で、楽しく過ごすよ」
「それは……」
無理だ。天国で楽しく過ごす。それが叶わないことを、僕は知っている。人間は死んだら皆地獄送りだ。それ以外の道はない。
「だからさ、ありが……」
「やめてくれ……」
溢れ出す想いの意味を、僕は理解できていない。溢れ出した涙の理由を、僕は知らない。
こんなにも、誰かに想いを抱くことはなかった。天使にも、ましてや人間になんて。
それでも、僕は口にしていた。振るえた声が聞こえる。そうか、僕の声は今、こんなにも弱々しいのか。
「君が……君がいないこの世界を……想像したくないんだ」
小さな吐息が聞こえた。セナは笑った。今日初めて、無垢な笑顔を僕に見せた。
「泣くなよっ! 男だろ〜?」
彼女は僕が泣いていることを知っていた。見えていないから、バレていないと思っていた。
でも、その溢れ出る涙が収まるほど、彼女の笑顔は美しかった。
毎日セナと会いたい。セナとずっと話していたい。
恋愛なんて、天使の僕には関係のないことだと思っていた。
僕の想いは、そういうことみたいだ。
これが僕の、叶わない初恋だ。
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「それで、泣き虫ってわけか」
「勘弁してよ! もう大丈夫さ。楽しかったからね。いい思い出になったよ」
病院の屋上で、シルエトは青色の髪を靡かせている。人が来ないからと、シルエトがここを提案した。紅葉も相まって、とてもいい景色だ。
シルエトは俺たちに、セナさんと出会ってから今までのことを話した。彼女の病気のこと、お母さんのこと、夢のこと、そして、初恋のこと。
エルシオはシルエトの話を聞き終えると、俺たちから離れて屋上からの景色を眺め始めた。俺は知っている。エルシオはこういう話に弱い。あと、怖い話にも。
「いいのかよ、ほんとに。今から俺たちはセナさんに粉をかける。その意味を、お前もわかってるはずだ」
「もちろん。こんな日が来るってことはわかってた。幸せを与えられて、セナの願いが叶うのであれば、本望だよ」
セナさんの想いについては、今シルエトから聞いた。幸せの粉に、治らない病気を治すことはできない。フィロが言っていたことだ。人を生かすものではない。そう言っていた。
お母さんを楽にしてあげたい。それがセナさんの1番の願いであり、幸せだろう。シルエトの表情を見ればわかる。セナさんもシルエトも、きっと覚悟はできている。
「天使ってこと、伝えなくていいのか? バレてないんだろ?」
「それも大丈夫。せっかくできた友達が、人間界の生き物じゃなかったなんて、笑えないだろう?」
「それもそう……なのか? じゃあ、お前の気持ちは、伝えなくていいのか?」
「いいんだ。僕の気持ちなんて……」
シルエトが言い切る直前、俺とシルエトの間に赤髪の天使が割り込んだ。そして、涙を溢しながらシルエトの胸ぐらを掴む。
いや、わかるけど、流石に乱暴だ。元上司のパワハラだ。
「いいわけないじゃないですか!! 会えなくなったら、もう何も伝えられないんですよ!? 粉をかけるのは仕事なのです。だから、その結果がどうなろうと仕方がないのです、それがあの子の幸せなので……」
エルシオは、シルエトの服を掴む手にさらに力を込めた。
「私は……自分の気持ちに蓋をすることは許さないのです!! それに……あの子の夢を、叶えてあげたいのではないのですか!?」
どの口が言ってるんだ。なんてことは今はいい。俺も同意見だ。それに俺は知っている。俺たちなら、セナさんの夢を叶えられるはずだ。
俺が死んだ時、かなり怪我を負っていたはずだ。それでも無傷でここにいる。それはきっと、セナさんにも当てはまる。
健康な状態で天界で面接ができるのであれば、俺と同じように、星を、人間界よりもずっと綺麗な星を見ることができる。
「エルシオさん……それ、エルシオさんが言いますかね」
言いやがった。しかもそれを言われた本人が。この男、メンタルが強すぎる。
「う、うるさいのです! 私のことは、今は棚に上げているのです」
そのことわざの使い方は合っているのか。普通自分では言わないだろう。
「でも、セナの夢は……」
「エフィルロに私から頼むのです。エフィルロなら、あの子を生まれ変わらせられる。天界に行けば、その際に星も見れるのです、シルエトの顔もなのです」
「そうかもしれないけど、そんなこと……僕は天界騎士団なんですよ? なんでそこまで……」
エルシオはシルエトの胸ぐらから手を離すと、鼻を高くして言い放った。
「目の前の困っている天使を助けるのに、理由なんて必要なのですか?」
どこかで聞いたことのあるような台詞に、思わず笑みが溢れた。
「いかにも、フィロが言いそうなセリフだな」
「こ、これは私の言葉なのです!」
俺たちが言い合っているのを見て、シルエトは「ははっ」と吹き出した。
そういえば、さっきまでシルエトは笑っていなかったなと、その笑顔を見て気がついた。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
シルエトは片膝をつき、エルシオの方へ顔を向けた。
「エルシオさん。セナを、よろしくお願いします」
「任せろなのです!」
じゃあフィロに連絡を、そう思った矢先だ。俺は重要なことを思い出した。
「なあ、今フィロいなくね?」
エルシオは「あっ」と口を開け、涙で腫れた目を俺に向けた。
「追いついたって……たまたまだよ」
エルシオさんを見つける業務は、いつの間にかほとんど優先されなくなっていた。特に進捗も聞かれなければ、死神との戦いに駆り出される回数が多く、なかなか探しに行く暇などなかった。そして、僕は気づけば天界騎士団第二部隊の隊長になっていた。
それでも僕は無理矢理にでも時間を作った。人間界に行き続けた。少し不純な理由かもしれない。命令よりも、ずっと大事な約束があるからだ。
「また来るよ」と伝えた人間に、会いに行くためだ。
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「なんでそんなことを言うの!!」
病室の扉を勢いよく開けた女性が泣きながら飛び出してきた。
セナの母親だ。あんなにも大きな声を出しているところは初めてみた。
「やあ! お母さんと喧嘩でもした……の……かい?」
僕は病室に入り、いつものようにセナに挨拶をするつもりが、彼女の表情を見たことで、語尾に辿り着くまでに声量が抜けていった。
いつも笑顔で迎え入れてくれるはずのセナの表情は暗く、明るい雰囲気が取り柄の彼女には似合わない姿だった。
「シルエト! 今日の面白い話は?」
セナはいつも、僕に面白い話を要求してくる。かなり難題ではあるが、いつも何か話題を持ってきていた。
だがそれより、今日はセナの様子がおかしい。無理矢理作った笑顔はぎこちなく、空元気を振り撒いているのがバレバレだ。
「今日は僕の好きな漫画の話をしようと思っていたんだよ。ついに鳩が天使の国を襲い始めたんだ」
「ついに!? もっと詳しく聞かせて!」
「いやそれよりも……セナ、何かあったのかい? お母さんがあんなに大きな声を出すなんて。普段はこんなことないじゃないか。それに……今日は様子が変だ」
「……やっぱりわかる? 目が見えるってずるいよね〜」
セナはそう言って苦笑する。年齢的には、もう高校生と言っていた。無理矢理笑顔でいることもできるようになった。痛みに耐えながら、元気な声を出すことも。
そして、自分の病気のことも理解している。
「ははっ、ツッコミにくい責め方は勘弁してくれよ。それで、何があったの?」
「ごめんごめん。ちょっとさ……お母さんに酷いこと言っちゃったかも」
微笑みは消えていないものの、目には哀愁が漂っている。僕は、彼女のそんな目を初めて見た。
「酷いことって?」
「……あのさ。私、もうダメなんだよね。わかるの。自分の体のことだし。ほんとは、もっと昔からだめだったんだけどね? お母さんのおかげで、何回も山場を乗り越えて、今も生きていられるの」
知っている。セナの病気のことは病院内で何度も耳にしていた。それでも、考えないようにしていた。
僕は死んだあとの世界を知っている。だから、いつかその日が来るとわかっていても、考えたくなかった。
「それでさ、お父さんは私が小さい頃に逃げちゃって、お母さんが1人で全部抱えてくれてたでしょ? 今回の治療も、ただ生き延びるためだけのものだと思うんだ。知ってる? すーっごくお金かかるんだよ。だからさ、お母さんに言っちゃったの。もう大丈夫だよって。人生やり残したことないって」
ダメだ。それだけは許されない。セナがその選択を選ぶことに、僕は納得できない。
ーーーーーーなぜ……?
僕は天界騎士団。死神を殺すためだけに生きてきたはずだ。
人間なんて、どうでもいいと思って生きてきたじゃないか。なのにどうして、こんなにも彼女への想いが溢れてくるんだ。
「いや、ダメだ。そんなの。やり残したこと、あるじゃないか。星だって、ほら見ていないだろ? それに……」
「いいの。もう見れないよ。それに叶った夢もある。そうでしょ? シルエト、あなたが友達になってくれた。とっても嬉しかったんだよ?」
「そんなの、僕の気まぐれで……なんとなくそうなっただけだ」
「友達になんてなった覚えはない」そう言いたかった。でも言えなかった。言えるはずがなかった。たとえ嘘でも、言葉にはできなかった。
「でも来てくれた。4年経っても来てくれた。それから何回も、何回も来てくれた。それで十分だよ。私の唯一の友達。友達とお話するって、その夢が叶っただけで、私は満足だよ! あとは天国で、楽しく過ごすよ」
「それは……」
無理だ。天国で楽しく過ごす。それが叶わないことを、僕は知っている。人間は死んだら皆地獄送りだ。それ以外の道はない。
「だからさ、ありが……」
「やめてくれ……」
溢れ出す想いの意味を、僕は理解できていない。溢れ出した涙の理由を、僕は知らない。
こんなにも、誰かに想いを抱くことはなかった。天使にも、ましてや人間になんて。
それでも、僕は口にしていた。振るえた声が聞こえる。そうか、僕の声は今、こんなにも弱々しいのか。
「君が……君がいないこの世界を……想像したくないんだ」
小さな吐息が聞こえた。セナは笑った。今日初めて、無垢な笑顔を僕に見せた。
「泣くなよっ! 男だろ〜?」
彼女は僕が泣いていることを知っていた。見えていないから、バレていないと思っていた。
でも、その溢れ出る涙が収まるほど、彼女の笑顔は美しかった。
毎日セナと会いたい。セナとずっと話していたい。
恋愛なんて、天使の僕には関係のないことだと思っていた。
僕の想いは、そういうことみたいだ。
これが僕の、叶わない初恋だ。
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「それで、泣き虫ってわけか」
「勘弁してよ! もう大丈夫さ。楽しかったからね。いい思い出になったよ」
病院の屋上で、シルエトは青色の髪を靡かせている。人が来ないからと、シルエトがここを提案した。紅葉も相まって、とてもいい景色だ。
シルエトは俺たちに、セナさんと出会ってから今までのことを話した。彼女の病気のこと、お母さんのこと、夢のこと、そして、初恋のこと。
エルシオはシルエトの話を聞き終えると、俺たちから離れて屋上からの景色を眺め始めた。俺は知っている。エルシオはこういう話に弱い。あと、怖い話にも。
「いいのかよ、ほんとに。今から俺たちはセナさんに粉をかける。その意味を、お前もわかってるはずだ」
「もちろん。こんな日が来るってことはわかってた。幸せを与えられて、セナの願いが叶うのであれば、本望だよ」
セナさんの想いについては、今シルエトから聞いた。幸せの粉に、治らない病気を治すことはできない。フィロが言っていたことだ。人を生かすものではない。そう言っていた。
お母さんを楽にしてあげたい。それがセナさんの1番の願いであり、幸せだろう。シルエトの表情を見ればわかる。セナさんもシルエトも、きっと覚悟はできている。
「天使ってこと、伝えなくていいのか? バレてないんだろ?」
「それも大丈夫。せっかくできた友達が、人間界の生き物じゃなかったなんて、笑えないだろう?」
「それもそう……なのか? じゃあ、お前の気持ちは、伝えなくていいのか?」
「いいんだ。僕の気持ちなんて……」
シルエトが言い切る直前、俺とシルエトの間に赤髪の天使が割り込んだ。そして、涙を溢しながらシルエトの胸ぐらを掴む。
いや、わかるけど、流石に乱暴だ。元上司のパワハラだ。
「いいわけないじゃないですか!! 会えなくなったら、もう何も伝えられないんですよ!? 粉をかけるのは仕事なのです。だから、その結果がどうなろうと仕方がないのです、それがあの子の幸せなので……」
エルシオは、シルエトの服を掴む手にさらに力を込めた。
「私は……自分の気持ちに蓋をすることは許さないのです!! それに……あの子の夢を、叶えてあげたいのではないのですか!?」
どの口が言ってるんだ。なんてことは今はいい。俺も同意見だ。それに俺は知っている。俺たちなら、セナさんの夢を叶えられるはずだ。
俺が死んだ時、かなり怪我を負っていたはずだ。それでも無傷でここにいる。それはきっと、セナさんにも当てはまる。
健康な状態で天界で面接ができるのであれば、俺と同じように、星を、人間界よりもずっと綺麗な星を見ることができる。
「エルシオさん……それ、エルシオさんが言いますかね」
言いやがった。しかもそれを言われた本人が。この男、メンタルが強すぎる。
「う、うるさいのです! 私のことは、今は棚に上げているのです」
そのことわざの使い方は合っているのか。普通自分では言わないだろう。
「でも、セナの夢は……」
「エフィルロに私から頼むのです。エフィルロなら、あの子を生まれ変わらせられる。天界に行けば、その際に星も見れるのです、シルエトの顔もなのです」
「そうかもしれないけど、そんなこと……僕は天界騎士団なんですよ? なんでそこまで……」
エルシオはシルエトの胸ぐらから手を離すと、鼻を高くして言い放った。
「目の前の困っている天使を助けるのに、理由なんて必要なのですか?」
どこかで聞いたことのあるような台詞に、思わず笑みが溢れた。
「いかにも、フィロが言いそうなセリフだな」
「こ、これは私の言葉なのです!」
俺たちが言い合っているのを見て、シルエトは「ははっ」と吹き出した。
そういえば、さっきまでシルエトは笑っていなかったなと、その笑顔を見て気がついた。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
シルエトは片膝をつき、エルシオの方へ顔を向けた。
「エルシオさん。セナを、よろしくお願いします」
「任せろなのです!」
じゃあフィロに連絡を、そう思った矢先だ。俺は重要なことを思い出した。
「なあ、今フィロいなくね?」
エルシオは「あっ」と口を開け、涙で腫れた目を俺に向けた。
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