27話 こんがらがっちゃ
ー/ー「第2フェーズってなんだ? そもそも、第1フェーズがあったことすら知らないぞ」
俺はフィロに疑問を投げる。ジィはさっきボソッと言葉を発してから、自分のお茶が無くなっているのを悲しそうな瞳で見つめている。可哀想だ。粉をかけてやってくれ。
「私が今決めたの。第1フェーズは今までの仕事よ。楓の研修期間みたいなものね。そして第2フェーズからは、私は粉の回収。楓とエルシオは今までどおりの仕事。つまり、別行動よ」
「粉の回収って、一体どこから回収するのですか?」
エルシオは首を傾げてフィロに問う。たしかに粉が無くなるのはまずいが、今までの話を聞くに、そんなに簡単に回収できるものではないはずだ。
「当てがあるのよ。まあ粉に関しては私に任せて、エルシオたちは仕事に集中して」
自慢げにそう言い放つフィロだったが、どこか心配だ。そしてそれはエルシオも同じ。
「1人で大丈夫なのですか? 楓くんはともかく、私はそっちに加担した方がいいのでは?」
「大丈夫よ! 私1人で余裕! それに、1人の方が動きやすいのよ」
何もできない俺はともかく、少なくともエルシオはフィロと行動して、粉が回収できてから仕事を再開してもいいとは思った。
だが、フィロがすごい天使なのはもう知っている。「1人の方が動きやすい」という言葉には、着いていったところで、エルシオですらかえって邪魔になるという意味も含まれているのかもしれない。
エルシオもそれを感じ取ったのか、素直に納得した。
「わかったのです。仕事内容については、エフィルロからの連絡を待てばいいのですか?」
「そうね! アイボーンで内容は送るから、そのとおり仕事してくれれば問題ないわ! 粉を手に入れたら、また今までどおりに戻るから……第2フェーズはそれで終わりね」
「どのくらい時間かかりそうなんだ? フェーズで分けるくらいだから、かなり時間がかかるってことだよな?」
「いや? 行って戻ってくるだけだから、楓たちが一仕事終わる頃には、新しい粉がゲットできるはずよ?」
なんとなくそんな気はしていた。きっとフィロは、「第2フェーズ」と言う言葉を使いたかっただけで、そこまで大したことをするわけでもなさそうだ。
「まあ要は、俺とエルシオが仕事に行っている間に、フィロは幸せの粉を新調してくれるってことだよな」
「そう言うこと!」
なら「第2フェーズ」などという言葉を使わないで欲しかったが、それはそれでフィロらしいと思った。
本当にフィロは幸せの粉を新調する当てなどあるのだろうか。ずっと黙って聞いているだけのジィが気になったが、フィロがそう言っているのだ。俺は信じる。
俺たちはジィにお茶の礼を言い、ソファーから立ち上がった。
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「小僧、これ持ってけ」
俺たちがゲートに飛び込む直前、ジィは俺に紫色の石がついた首飾りを渡してきた。首にかけられるよう赤い紐がついたその石は、ツルツルとした見た目をしており、勾玉のような形をしている。
「なんだこれ?」
「お守りじゃ」
この首飾りについて、ジィはそれ以上語ろうとしなかった。ジィの言うとおり、ただのお守りだろう。紫色の勾玉は、魔除け効果があると聞いたことがある。
俺は首飾りを身につけた。
「ありがとう、大切にするよ」
フィロとエルシオは先に行ってしまったため、今にも閉じそうなゲートを背に、俺はジィにお礼を伝えた。そして、2人を追うようにゲートへ飛び込んだ。
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「ん〜、少しは溜まったみたいだけど、まだまだね。まぁ、お仕事頑張りましょ!」
俺はローズベルクに帰るなり、フィロにポイントの確認をしてもらっていた。
フィロの「俺を人間として生まれ変わらせる」という願いを叶えるためには、ポイントが必要不可欠だ。それに俺自身も、人間に生まれ変わりたいと言う気持ちは変わっていない。
ただ気になるのは、天界の王から探されているというのに、フィロからは全く焦りが見えない点だ。むしろ、どこか楽しんでいるように思える。そういう性格なのだろう。そのおかげで、俺も楽観的でいられるのも事実だが。
そんなフィロとは違い、エルシオはどこか浮かない顔をしている。フィロの記憶を見て真実を知ってからだろうか、いつもより静かだ。
知った内容が内容なだけに、そうなるのが普通なのかもしれない。あの場ではあまり気にしていないように見えたが、内心ではショックが大きいのではないだろうか。
「じゃあ、私は幸せの粉を取りに行ってくるから、仕事はよろしくね! じゃあ、第2フェーズスタート!」
「それ、もういいから。エルシオからもなんか言ってやれよ」
「いってらっしゃいなのです」
やはり、エルシオに元気がない。いつもの俺への悪態も、フィロへのツッコミもない。
フィロはゲートを開きどこかへ消えていった。ローズベルクに取り残された俺たちは、フィロから仕事の連絡が来るまで待ちだ。
エルシオは無言で壁に寄りかかり、どこか遠いところを見つめている。何か声をかけるべきだろうか。だが、かける言葉が見つからない。
俺がかける言葉に悩んでいると、エルシオは下唇を出して目を細めた。なんとも言えない表情だ。
怒っているのか、拗ねているのか、悲しいのか、嬉しいのか。そのどれにも属さないようで、どれにも属しているような表情。
まったく何を考えているのかわからない。なおさら声をかけるのが難しくなったが、俺は、その表情に対して言及したい衝動に襲われた。
「なんだよその表情は。初めて見たぞ」
「そんな変な顔してますか?」
している。だが、思ったより普通に返事を返され逆に困る。
「いや、変ってわけじゃないけど、何考えてるかわかんないっていうか……」
「んー、ちょっと考え事なのです。楓くんは、エフィルロから今の天界の話を聞いて、どう思いましたか?」
考え事。言われてみれば、何か悩んでいる顔なのかもしれない。いや、そんなこともないかもしれない。
「どうって……どうだろ」
「私は……頭がこんがらがっちゃなのです」
「こんがらがっちゃ」そうだ。あの顔は、頭がこんがらがっちゃってる時の顔だ。
あの表情は、その言葉がなぜかとてもしっくりくる気がした。
いや、そんなこともないかもしれない。
俺はフィロに疑問を投げる。ジィはさっきボソッと言葉を発してから、自分のお茶が無くなっているのを悲しそうな瞳で見つめている。可哀想だ。粉をかけてやってくれ。
「私が今決めたの。第1フェーズは今までの仕事よ。楓の研修期間みたいなものね。そして第2フェーズからは、私は粉の回収。楓とエルシオは今までどおりの仕事。つまり、別行動よ」
「粉の回収って、一体どこから回収するのですか?」
エルシオは首を傾げてフィロに問う。たしかに粉が無くなるのはまずいが、今までの話を聞くに、そんなに簡単に回収できるものではないはずだ。
「当てがあるのよ。まあ粉に関しては私に任せて、エルシオたちは仕事に集中して」
自慢げにそう言い放つフィロだったが、どこか心配だ。そしてそれはエルシオも同じ。
「1人で大丈夫なのですか? 楓くんはともかく、私はそっちに加担した方がいいのでは?」
「大丈夫よ! 私1人で余裕! それに、1人の方が動きやすいのよ」
何もできない俺はともかく、少なくともエルシオはフィロと行動して、粉が回収できてから仕事を再開してもいいとは思った。
だが、フィロがすごい天使なのはもう知っている。「1人の方が動きやすい」という言葉には、着いていったところで、エルシオですらかえって邪魔になるという意味も含まれているのかもしれない。
エルシオもそれを感じ取ったのか、素直に納得した。
「わかったのです。仕事内容については、エフィルロからの連絡を待てばいいのですか?」
「そうね! アイボーンで内容は送るから、そのとおり仕事してくれれば問題ないわ! 粉を手に入れたら、また今までどおりに戻るから……第2フェーズはそれで終わりね」
「どのくらい時間かかりそうなんだ? フェーズで分けるくらいだから、かなり時間がかかるってことだよな?」
「いや? 行って戻ってくるだけだから、楓たちが一仕事終わる頃には、新しい粉がゲットできるはずよ?」
なんとなくそんな気はしていた。きっとフィロは、「第2フェーズ」と言う言葉を使いたかっただけで、そこまで大したことをするわけでもなさそうだ。
「まあ要は、俺とエルシオが仕事に行っている間に、フィロは幸せの粉を新調してくれるってことだよな」
「そう言うこと!」
なら「第2フェーズ」などという言葉を使わないで欲しかったが、それはそれでフィロらしいと思った。
本当にフィロは幸せの粉を新調する当てなどあるのだろうか。ずっと黙って聞いているだけのジィが気になったが、フィロがそう言っているのだ。俺は信じる。
俺たちはジィにお茶の礼を言い、ソファーから立ち上がった。
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「小僧、これ持ってけ」
俺たちがゲートに飛び込む直前、ジィは俺に紫色の石がついた首飾りを渡してきた。首にかけられるよう赤い紐がついたその石は、ツルツルとした見た目をしており、勾玉のような形をしている。
「なんだこれ?」
「お守りじゃ」
この首飾りについて、ジィはそれ以上語ろうとしなかった。ジィの言うとおり、ただのお守りだろう。紫色の勾玉は、魔除け効果があると聞いたことがある。
俺は首飾りを身につけた。
「ありがとう、大切にするよ」
フィロとエルシオは先に行ってしまったため、今にも閉じそうなゲートを背に、俺はジィにお礼を伝えた。そして、2人を追うようにゲートへ飛び込んだ。
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「ん〜、少しは溜まったみたいだけど、まだまだね。まぁ、お仕事頑張りましょ!」
俺はローズベルクに帰るなり、フィロにポイントの確認をしてもらっていた。
フィロの「俺を人間として生まれ変わらせる」という願いを叶えるためには、ポイントが必要不可欠だ。それに俺自身も、人間に生まれ変わりたいと言う気持ちは変わっていない。
ただ気になるのは、天界の王から探されているというのに、フィロからは全く焦りが見えない点だ。むしろ、どこか楽しんでいるように思える。そういう性格なのだろう。そのおかげで、俺も楽観的でいられるのも事実だが。
そんなフィロとは違い、エルシオはどこか浮かない顔をしている。フィロの記憶を見て真実を知ってからだろうか、いつもより静かだ。
知った内容が内容なだけに、そうなるのが普通なのかもしれない。あの場ではあまり気にしていないように見えたが、内心ではショックが大きいのではないだろうか。
「じゃあ、私は幸せの粉を取りに行ってくるから、仕事はよろしくね! じゃあ、第2フェーズスタート!」
「それ、もういいから。エルシオからもなんか言ってやれよ」
「いってらっしゃいなのです」
やはり、エルシオに元気がない。いつもの俺への悪態も、フィロへのツッコミもない。
フィロはゲートを開きどこかへ消えていった。ローズベルクに取り残された俺たちは、フィロから仕事の連絡が来るまで待ちだ。
エルシオは無言で壁に寄りかかり、どこか遠いところを見つめている。何か声をかけるべきだろうか。だが、かける言葉が見つからない。
俺がかける言葉に悩んでいると、エルシオは下唇を出して目を細めた。なんとも言えない表情だ。
怒っているのか、拗ねているのか、悲しいのか、嬉しいのか。そのどれにも属さないようで、どれにも属しているような表情。
まったく何を考えているのかわからない。なおさら声をかけるのが難しくなったが、俺は、その表情に対して言及したい衝動に襲われた。
「なんだよその表情は。初めて見たぞ」
「そんな変な顔してますか?」
している。だが、思ったより普通に返事を返され逆に困る。
「いや、変ってわけじゃないけど、何考えてるかわかんないっていうか……」
「んー、ちょっと考え事なのです。楓くんは、エフィルロから今の天界の話を聞いて、どう思いましたか?」
考え事。言われてみれば、何か悩んでいる顔なのかもしれない。いや、そんなこともないかもしれない。
「どうって……どうだろ」
「私は……頭がこんがらがっちゃなのです」
「こんがらがっちゃ」そうだ。あの顔は、頭がこんがらがっちゃってる時の顔だ。
あの表情は、その言葉がなぜかとてもしっくりくる気がした。
いや、そんなこともないかもしれない。
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