22話 天界の真実
ー/ー 天界。それは人間界とは異なる、天使が暮らす世界。
天使は人間に幸せを与え、亡くなった人間を生まれ変わらせる。それが、この世界の理だ。
人間に幸せを与える。それには幸せの粉が必要であり、それを持つ天使は生まれた時から決まっている。
幸せの粉を授かる天使、通称「粉持ち」だ。
「粉持ち」は生まれてすぐに、どこからともなく壺を持ってくる。それをどこで手にれたのか、誰から与えられたのかすら誰にもわからない。
「粉持ち」は生まれつき所持品を保管する魔法を会得しているため、そこから粉を出していると考えられているが、なぜ幸せの粉を所持しているのか、なぜその魔法を使えるのかは謎のままだ。
不確定要素は多々あるが、古くから、天界に幸せの粉が不足したタイミングで、神様が、生まれる前の天使に幸せの粉を持たせていると言い伝えられている。
「粉持ち」として生まれた天使は、その他の天使から神の使いとして崇められた。
そして「粉持ち」を中心に、人間界へ出向き幸せの粉をかけた。
それが、天使の仕事の1つだった。
もう1つの仕事である、死者との面接では、人間のポイントを確認し、ポイントに応じて生まれ変わらせ、そして、余剰ポイントに応じて幸せの粉をかける。人間を殺した同族殺しは地獄に落ちる。それがルールだ。
もちろん、地獄から死神が生まれ、天使を襲うこともあった。それでも、ルールは遵守された。それが天使の仕事だから。
「……これが、本来あるべき天界の姿じゃ」
ジィは「粉持ち」と「天使の仕事」について俺に話した。幸せの粉の出処についてや、フィロが「粉持ち」と言う他の天使たちが崇める対象であることは初耳だが、この内容であれば、俺がフィロから聞いていた内容とさほど変わらない。
だがこれは「本来あるべき天界」の姿。
フィロ達が隠れて仕事をしている理由や、今現在、人間が生まれ変わらず地獄送りになっている状況は、「今の天界」が作り出している。
つまり、本題はここからだ。
『コツッ』
ジィが続きを話そうとしたその時、突然背後から足跡が鳴り響いた。
あの時と同じだ。突如謎の部屋に閉じ込められ、面接があると言う置き手紙を見て怯えていた。誰もいない空間で不安を感じていたあの時も、同じように背後から足音が聞こえた。あの時と1つ違うのは、それが誰の足音なのか、検討が着いているということだ。
ジィは、俺たちの背後を静かに見つめている。
「お前さんが話すか?」
「えぇ、そうね。私の方が、あの時からの天界の状況について話せるはず」
ジィの目線の先で、聞き慣れた声が聞こえた。そして、背後に現れた人物はジィの隣、すなわち、俺とエルシオの向かいに腰掛けた。
綺麗な黒髪と水色の瞳。それも、あの時と同じだ。
「なんだか、今の方が面接って感じだな。面接官2人と対面してるみたいだ」
「楓くんと同じ面接を受けているのはどこか癪なのです。エフィルロ、人間が皆地獄送りとはどういうことなのですか」
エルシオの軽口を無視し、俺はフィロを見つめた。エルシオも知らなかった事実が、ここで話される。それもあってか、この場には妙な緊張感が走っている。
まるで面接、高校入試の時のようだった。
「本当は、楓に話す気は無かったの。エルシオにさえ伝えていないこともある。でも、ジィに会うなら、2人はきっと知ることになる。それに、良い機会だしね! だったら、私から話したいと思ったの。ただ、絶対に真実を知っても……」
「わかってる。俺は、絶対に人間に生まれ変わる。それがフィロの望みなんだろ?」
「大正解。じゃあ見せてあげる。今の天界について、そして、なぜ私がローズベルクに居るのか」
「見せる……?」
直後、眩い光が俺の視界を白く染めた。
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私は、物心ついた時にはすでに「粉持ち」として、天使の仕事に就いていた。
亡くなった人間への面接を行い、人間界へ行って追加で粉をかけたりもした。それが私たちの仕事で、与えられた義務だった。
私が1人で仕事をするようになってからしばらくして、2人の可愛い天使に仕事を手伝ってもらうことにした。お金に困っていた2人と、そろそろ1人も寂しくなってきた私との間で、互恵関係が成立したからだ。
「エフィルロ! 起きて! 仕事の時間でしょ!」
アレシアはそう言って、私の肩を揺らす。いつものことだ。私の隣で寝ているエルシオも、私より強く揺らされている。
仕事内容は、天界の中心部である「コハクリア」からの通知で知らされる。その通知を見て、面接であればコハクリアの面接会場へ。幸せの粉の追加であれば、家からゲートを開いて人間界へ向かう。アレシアとエルシオには、人間界での仕事の手伝いを任せていた。
ある程度仕事の時間は決めているが、正直急ぐほどのことでもない。それでも、アレシアはいつも張り切って時間通りに仕事を始めようとする。良いことだ。それだけ、私たちの仕事に誇りを持っている。
私だって、時間にルーズなだけで誇りはある。「粉持ち」としての責任もある。そして何より、人間を幸せにするこの仕事が、大好きだった。
3人で仕事をするのも、大好きだった。
3人での仕事が始まってから、春を3回ほど経験した頃だろうか「コハクリア」から、訳の分からない通知が届いた。
ついさっきエルシオが天界騎士団に入ることを知らされたところで、お祝いの準備が必要だと言うのに、私はすぐさまゲートを開き「コハクリア」へ乗り込んだ。
基本、面接会場にしか出入りしていなかった私は、街の中心にある城に入ったことは生まれてから数回しかなかった。城の近くにある面接会場はすでに封鎖されており、通知の内容が事実であることを私に突きつけた。
城は厳重に警備されていて、一般の天使は立ち入りできない。たとえ「粉持ち」だとしても、限られた天使しか入ることは許されない。
「エフィルロ様、通知にも合った通り、これからは……」
「黙って。王に会わせて」
「バセラフィル様は只今会議中でございまして」
「関係ないわ。私も暇じゃないの」
私は門番を押し除け城内へ入った。
「バセラフィル」それは、今の天界の王の名だ。私が生まれた時から王ではあったが、どうも好きになれなかった。
だが、私はその王に気に入られており、この城の出入りも許可されている。
どうせ私の魔法目当てだろう。バセラフィルは、特殊で強力な、駒になり得る天使が好きなのだ。
私は、城内にある会議室へ向かった。
「びっくりした〜。エフィルロじゃないか!」
「会議中ですよ」
「通知を見て乗り込んできたんじゃないか?」
「無礼だぞ」
勢いよく部屋の扉を開けたのは良いものの、中に居るメンバーが目に入り、タイミングを間違えたと後悔する。最上位の天使たちだ。通称「四大天使」
各々が、私を見て発言している。
「お前たち。少し黙れ、急な通知だ。言いたいことの1つや2つあるだろう」
天使たちは、王であるバセラフィルの一言で静まり返った。
長い楕円形の卓の最奥、最も高い位置に据えられた椅子に、バセラフィルは腰を下ろしている。
バセラフィルを中心に、左右へと等間隔に並ぶ4つの席。そこに座するのは、「ミカエル」「ガブリエル」「ラファエル」「ウリエル」の王直属の天使たちだ。白とも銀ともつかぬ衣を纏い、背に宿した羽は折りたたまれているが、その1枚1枚が微かに光を帯び、呼吸のように揺らいでいる。
「まあ、エフィルロも座りなさい。話を聞いてやろうじゃないか」
バセラフィルは、私を手前の席へ促す。
4人の天使の視線を集めながら、私は席に着いた。
天使は人間に幸せを与え、亡くなった人間を生まれ変わらせる。それが、この世界の理だ。
人間に幸せを与える。それには幸せの粉が必要であり、それを持つ天使は生まれた時から決まっている。
幸せの粉を授かる天使、通称「粉持ち」だ。
「粉持ち」は生まれてすぐに、どこからともなく壺を持ってくる。それをどこで手にれたのか、誰から与えられたのかすら誰にもわからない。
「粉持ち」は生まれつき所持品を保管する魔法を会得しているため、そこから粉を出していると考えられているが、なぜ幸せの粉を所持しているのか、なぜその魔法を使えるのかは謎のままだ。
不確定要素は多々あるが、古くから、天界に幸せの粉が不足したタイミングで、神様が、生まれる前の天使に幸せの粉を持たせていると言い伝えられている。
「粉持ち」として生まれた天使は、その他の天使から神の使いとして崇められた。
そして「粉持ち」を中心に、人間界へ出向き幸せの粉をかけた。
それが、天使の仕事の1つだった。
もう1つの仕事である、死者との面接では、人間のポイントを確認し、ポイントに応じて生まれ変わらせ、そして、余剰ポイントに応じて幸せの粉をかける。人間を殺した同族殺しは地獄に落ちる。それがルールだ。
もちろん、地獄から死神が生まれ、天使を襲うこともあった。それでも、ルールは遵守された。それが天使の仕事だから。
「……これが、本来あるべき天界の姿じゃ」
ジィは「粉持ち」と「天使の仕事」について俺に話した。幸せの粉の出処についてや、フィロが「粉持ち」と言う他の天使たちが崇める対象であることは初耳だが、この内容であれば、俺がフィロから聞いていた内容とさほど変わらない。
だがこれは「本来あるべき天界」の姿。
フィロ達が隠れて仕事をしている理由や、今現在、人間が生まれ変わらず地獄送りになっている状況は、「今の天界」が作り出している。
つまり、本題はここからだ。
『コツッ』
ジィが続きを話そうとしたその時、突然背後から足跡が鳴り響いた。
あの時と同じだ。突如謎の部屋に閉じ込められ、面接があると言う置き手紙を見て怯えていた。誰もいない空間で不安を感じていたあの時も、同じように背後から足音が聞こえた。あの時と1つ違うのは、それが誰の足音なのか、検討が着いているということだ。
ジィは、俺たちの背後を静かに見つめている。
「お前さんが話すか?」
「えぇ、そうね。私の方が、あの時からの天界の状況について話せるはず」
ジィの目線の先で、聞き慣れた声が聞こえた。そして、背後に現れた人物はジィの隣、すなわち、俺とエルシオの向かいに腰掛けた。
綺麗な黒髪と水色の瞳。それも、あの時と同じだ。
「なんだか、今の方が面接って感じだな。面接官2人と対面してるみたいだ」
「楓くんと同じ面接を受けているのはどこか癪なのです。エフィルロ、人間が皆地獄送りとはどういうことなのですか」
エルシオの軽口を無視し、俺はフィロを見つめた。エルシオも知らなかった事実が、ここで話される。それもあってか、この場には妙な緊張感が走っている。
まるで面接、高校入試の時のようだった。
「本当は、楓に話す気は無かったの。エルシオにさえ伝えていないこともある。でも、ジィに会うなら、2人はきっと知ることになる。それに、良い機会だしね! だったら、私から話したいと思ったの。ただ、絶対に真実を知っても……」
「わかってる。俺は、絶対に人間に生まれ変わる。それがフィロの望みなんだろ?」
「大正解。じゃあ見せてあげる。今の天界について、そして、なぜ私がローズベルクに居るのか」
「見せる……?」
直後、眩い光が俺の視界を白く染めた。
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私は、物心ついた時にはすでに「粉持ち」として、天使の仕事に就いていた。
亡くなった人間への面接を行い、人間界へ行って追加で粉をかけたりもした。それが私たちの仕事で、与えられた義務だった。
私が1人で仕事をするようになってからしばらくして、2人の可愛い天使に仕事を手伝ってもらうことにした。お金に困っていた2人と、そろそろ1人も寂しくなってきた私との間で、互恵関係が成立したからだ。
「エフィルロ! 起きて! 仕事の時間でしょ!」
アレシアはそう言って、私の肩を揺らす。いつものことだ。私の隣で寝ているエルシオも、私より強く揺らされている。
仕事内容は、天界の中心部である「コハクリア」からの通知で知らされる。その通知を見て、面接であればコハクリアの面接会場へ。幸せの粉の追加であれば、家からゲートを開いて人間界へ向かう。アレシアとエルシオには、人間界での仕事の手伝いを任せていた。
ある程度仕事の時間は決めているが、正直急ぐほどのことでもない。それでも、アレシアはいつも張り切って時間通りに仕事を始めようとする。良いことだ。それだけ、私たちの仕事に誇りを持っている。
私だって、時間にルーズなだけで誇りはある。「粉持ち」としての責任もある。そして何より、人間を幸せにするこの仕事が、大好きだった。
3人で仕事をするのも、大好きだった。
3人での仕事が始まってから、春を3回ほど経験した頃だろうか「コハクリア」から、訳の分からない通知が届いた。
ついさっきエルシオが天界騎士団に入ることを知らされたところで、お祝いの準備が必要だと言うのに、私はすぐさまゲートを開き「コハクリア」へ乗り込んだ。
基本、面接会場にしか出入りしていなかった私は、街の中心にある城に入ったことは生まれてから数回しかなかった。城の近くにある面接会場はすでに封鎖されており、通知の内容が事実であることを私に突きつけた。
城は厳重に警備されていて、一般の天使は立ち入りできない。たとえ「粉持ち」だとしても、限られた天使しか入ることは許されない。
「エフィルロ様、通知にも合った通り、これからは……」
「黙って。王に会わせて」
「バセラフィル様は只今会議中でございまして」
「関係ないわ。私も暇じゃないの」
私は門番を押し除け城内へ入った。
「バセラフィル」それは、今の天界の王の名だ。私が生まれた時から王ではあったが、どうも好きになれなかった。
だが、私はその王に気に入られており、この城の出入りも許可されている。
どうせ私の魔法目当てだろう。バセラフィルは、特殊で強力な、駒になり得る天使が好きなのだ。
私は、城内にある会議室へ向かった。
「びっくりした〜。エフィルロじゃないか!」
「会議中ですよ」
「通知を見て乗り込んできたんじゃないか?」
「無礼だぞ」
勢いよく部屋の扉を開けたのは良いものの、中に居るメンバーが目に入り、タイミングを間違えたと後悔する。最上位の天使たちだ。通称「四大天使」
各々が、私を見て発言している。
「お前たち。少し黙れ、急な通知だ。言いたいことの1つや2つあるだろう」
天使たちは、王であるバセラフィルの一言で静まり返った。
長い楕円形の卓の最奥、最も高い位置に据えられた椅子に、バセラフィルは腰を下ろしている。
バセラフィルを中心に、左右へと等間隔に並ぶ4つの席。そこに座するのは、「ミカエル」「ガブリエル」「ラファエル」「ウリエル」の王直属の天使たちだ。白とも銀ともつかぬ衣を纏い、背に宿した羽は折りたたまれているが、その1枚1枚が微かに光を帯び、呼吸のように揺らいでいる。
「まあ、エフィルロも座りなさい。話を聞いてやろうじゃないか」
バセラフィルは、私を手前の席へ促す。
4人の天使の視線を集めながら、私は席に着いた。
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