第9話 さらに広がっていた!
ー/ー 旧音楽室の集まりから、数日後。
林優奈は自分の部屋で、スマホを握りしめていた。おりものが変で、下腹部に軽い違和感が続く。
葵が言った、「彩花のやったのってさ、粘膜接触だよ。口でやったりやられたりしたら、性病が感染する可能性あるんだぜ。ヘルペスとか、口から性器にうつるし、逆も」というヘルペス話が頭から離れない。「私も……ヤバいかも」放課後、優奈は高橋彩花を捕まえ、校舎裏で小声で切り出した。
「彩花、ちょっと……あのさ、一応病院行って検査してもらおうよ。一人じゃ怖いから、一緒に行こうよ」
彩花は猫目を細め、痛そうに下腹を押さえながら頷いた。「マジ? 私もさらに具合が悪くなってきてヤバいわ。ヒリヒリが止まらなくて、水ぶくれ増えてるし……。行こう行こう!」
二人は優奈の部屋に移動し、ベッドに並んで座ってネット検索を始めた。
「性感染症 匿名 検査 千葉」で調べると、保健所の匿名検査や自費クリニックの情報がずらり。
「じゃあ、どこで検査するか? ……あ、これ! 船橋から数駅離れた『千葉レディースクリニック』。口コミでプライバシー重視だって。自費で匿名対応可能みたい」優奈が画面を指差した。
「そこにしようぜ。電話してみなよ」彩花は頰を赤らめながら頷いた。
優奈がスマホを取り、クリニックに電話をかけた。「はい、千葉レディースクリニックでございます」
「あの……性感染症の検査と治療について相談なんですけど、匿名で受けられますか?親バレが怖くて……保険証使いたくないんです」と、優奈は声を低くして切り出した。
受付の女性は少し間を置き、丁寧に答えた。「はい、ご相談ありがとうございます。当院ではプライバシーを最優先にしておりますので、初診時は仮名や番号で対応可能です。自費診療も承っております。ただ、そのようなお話でしたら、詳しい内容を当クリニックの医師に直接説明していただけますか? 電話を回しますね」
少し待つと、落ち着いた女性の声。「はい、曽根崎です。ご相談の件、伺いました」
優奈と彩花は顔を見合わせ、スピーカーモードで説明した。症状の詳細、パパ活の心当たり、親バレの恐怖。
曽根崎医師は穏やかに応じた。「わかりました。込み入ったお話ね。当院で匿名対応可能です。自費で初回2万円前後くらい。自費診療で初回2万円前後、以降1万円程度が目安です。ただ、五類感染症の場合、診断確定後は報告義務で実名確認をお願いしますが、公表は一切ありません。明日以降、来院できますか? 平日放課後なら、営業後で対応しますよ」
二人はホッとして予約を取り、電話を切った。
翌日の放課後、二人は電車でクリニックへ。午後六時半過ぎ、チャイムを鳴らすと、白衣の女性がドアを開けた。ショートヘアの穏やかな顔立ち、名札に「曽根崎マリア」。
「いらっしゃい。予約の二人ね?どうぞ」クリニック内は誰もおらず、スタッフは帰したようだった。
マリアは診察室に案内し、二人に椅子を勧めた。「さあ、お座りなさい」だけど、なんか、女子高生の性病案件が多いわねえ……最近、ますます、増えてるわねえ、と思った。
二人は緊張しながら座った。マリアは問診を始め、症状を聞き、検査をテキパキ進めた。視診、採血、迅速キット……。
「この近くの高校なの?」マリアは軽くカマをかけた。
「船橋のKM高校です……」彩花がウッカリ口を滑らせた。優奈が慌てて彩花の腿をつねった。「彩花!」
(「船橋のKM高校」……崎山先生と伊達美代子の学校じゃないの! まさか、この二人、伊達さんのパパ活グループのメンバー?)
だが、マリアはそしらぬ顔で微笑んだ。「ふーん、そう。じゃあ、結果出るまで少し待ってね」
数十分後、マリアは結果用紙を手に告げた。「高橋さん、性器ヘルペスね。初感染の症状が強いわ。林さん、性器クラミジアと淋菌感染症のダブル。無症状に近いけど、しっかり陽性だったわ」
二人は仰け反った。彩花は顔を覆い、「マジかよ……ヘルペスって、治るの?」優奈は震える声で、「クラミジアと淋菌……私、無症状だったのに……」
マリアは穏やかに説明した。「でも、梅毒でもエイズでもないから、性器ヘルペス・クラミジア・淋菌はそれほど深刻じゃないわ。ヘルペスは抗ウイルス薬で症状抑えられるし、再発しても軽くなることが多い。クラミジアと淋菌は抗生物質で完治よ。パートナーにも検査勧めてね」
二人はホッとした顔で互いを見た。
(梅毒やエイズじゃなくてよかった……これなら、治療してまたパパ活できるかも。残りのお金で払えるし、もっと稼げば大丈夫)
もちろん、そんなとんでもないことはマリアには口に出さない。ただ、心の中で思った。
マリアは内心でため息をついた。
(これは……患者のプライバシー保持という医師の誓約もあるけど……崎山先生には伝えないと……)
その夜、マリアは美咲に電話をかけた。
「崎山先生、今日も船橋KM高校の生徒さんが二人来てね。パパ活グループのメンバーだと思うわ。高橋彩花と林優奈という生徒を知ってる?」
「伊達美代子と同級生の子たちだわ」美咲は息を呑んだ。
「なるほど……高橋彩花という子が、うっかり『自分は船橋KM高校』と口をすべらせたの。でも、伊達美代子とこの二人だけとは思えないわ」
「……明日、美代子からグループのメンバーを聞き出してみるわ。伊達、高橋、林の他に、佐藤という生徒もわかっている。これで四人。この四人だけかどうか、調べます」
「了解。で、知り合いの警部さんってのは?」
ちょうど、安藤架純から紹介された義理の姉・安納沙織警部と連絡を取ったばかりだった。
「曽根崎先生、明日、お話した警部との三人でお酒飲むってどう?」
「いいわよ。楽しみばい」マリアは快諾した。
輪は、さらに広がっていた……。
林優奈は自分の部屋で、スマホを握りしめていた。おりものが変で、下腹部に軽い違和感が続く。
葵が言った、「彩花のやったのってさ、粘膜接触だよ。口でやったりやられたりしたら、性病が感染する可能性あるんだぜ。ヘルペスとか、口から性器にうつるし、逆も」というヘルペス話が頭から離れない。「私も……ヤバいかも」放課後、優奈は高橋彩花を捕まえ、校舎裏で小声で切り出した。
「彩花、ちょっと……あのさ、一応病院行って検査してもらおうよ。一人じゃ怖いから、一緒に行こうよ」
彩花は猫目を細め、痛そうに下腹を押さえながら頷いた。「マジ? 私もさらに具合が悪くなってきてヤバいわ。ヒリヒリが止まらなくて、水ぶくれ増えてるし……。行こう行こう!」
二人は優奈の部屋に移動し、ベッドに並んで座ってネット検索を始めた。
「性感染症 匿名 検査 千葉」で調べると、保健所の匿名検査や自費クリニックの情報がずらり。
「じゃあ、どこで検査するか? ……あ、これ! 船橋から数駅離れた『千葉レディースクリニック』。口コミでプライバシー重視だって。自費で匿名対応可能みたい」優奈が画面を指差した。
「そこにしようぜ。電話してみなよ」彩花は頰を赤らめながら頷いた。
優奈がスマホを取り、クリニックに電話をかけた。「はい、千葉レディースクリニックでございます」
「あの……性感染症の検査と治療について相談なんですけど、匿名で受けられますか?親バレが怖くて……保険証使いたくないんです」と、優奈は声を低くして切り出した。
受付の女性は少し間を置き、丁寧に答えた。「はい、ご相談ありがとうございます。当院ではプライバシーを最優先にしておりますので、初診時は仮名や番号で対応可能です。自費診療も承っております。ただ、そのようなお話でしたら、詳しい内容を当クリニックの医師に直接説明していただけますか? 電話を回しますね」
少し待つと、落ち着いた女性の声。「はい、曽根崎です。ご相談の件、伺いました」
優奈と彩花は顔を見合わせ、スピーカーモードで説明した。症状の詳細、パパ活の心当たり、親バレの恐怖。
曽根崎医師は穏やかに応じた。「わかりました。込み入ったお話ね。当院で匿名対応可能です。自費で初回2万円前後くらい。自費診療で初回2万円前後、以降1万円程度が目安です。ただ、五類感染症の場合、診断確定後は報告義務で実名確認をお願いしますが、公表は一切ありません。明日以降、来院できますか? 平日放課後なら、営業後で対応しますよ」
二人はホッとして予約を取り、電話を切った。
翌日の放課後、二人は電車でクリニックへ。午後六時半過ぎ、チャイムを鳴らすと、白衣の女性がドアを開けた。ショートヘアの穏やかな顔立ち、名札に「曽根崎マリア」。
「いらっしゃい。予約の二人ね?どうぞ」クリニック内は誰もおらず、スタッフは帰したようだった。
マリアは診察室に案内し、二人に椅子を勧めた。「さあ、お座りなさい」だけど、なんか、女子高生の性病案件が多いわねえ……最近、ますます、増えてるわねえ、と思った。
二人は緊張しながら座った。マリアは問診を始め、症状を聞き、検査をテキパキ進めた。視診、採血、迅速キット……。
「この近くの高校なの?」マリアは軽くカマをかけた。
「船橋のKM高校です……」彩花がウッカリ口を滑らせた。優奈が慌てて彩花の腿をつねった。「彩花!」
(「船橋のKM高校」……崎山先生と伊達美代子の学校じゃないの! まさか、この二人、伊達さんのパパ活グループのメンバー?)
だが、マリアはそしらぬ顔で微笑んだ。「ふーん、そう。じゃあ、結果出るまで少し待ってね」
数十分後、マリアは結果用紙を手に告げた。「高橋さん、性器ヘルペスね。初感染の症状が強いわ。林さん、性器クラミジアと淋菌感染症のダブル。無症状に近いけど、しっかり陽性だったわ」
二人は仰け反った。彩花は顔を覆い、「マジかよ……ヘルペスって、治るの?」優奈は震える声で、「クラミジアと淋菌……私、無症状だったのに……」
マリアは穏やかに説明した。「でも、梅毒でもエイズでもないから、性器ヘルペス・クラミジア・淋菌はそれほど深刻じゃないわ。ヘルペスは抗ウイルス薬で症状抑えられるし、再発しても軽くなることが多い。クラミジアと淋菌は抗生物質で完治よ。パートナーにも検査勧めてね」
二人はホッとした顔で互いを見た。
(梅毒やエイズじゃなくてよかった……これなら、治療してまたパパ活できるかも。残りのお金で払えるし、もっと稼げば大丈夫)
もちろん、そんなとんでもないことはマリアには口に出さない。ただ、心の中で思った。
マリアは内心でため息をついた。
(これは……患者のプライバシー保持という医師の誓約もあるけど……崎山先生には伝えないと……)
その夜、マリアは美咲に電話をかけた。
「崎山先生、今日も船橋KM高校の生徒さんが二人来てね。パパ活グループのメンバーだと思うわ。高橋彩花と林優奈という生徒を知ってる?」
「伊達美代子と同級生の子たちだわ」美咲は息を呑んだ。
「なるほど……高橋彩花という子が、うっかり『自分は船橋KM高校』と口をすべらせたの。でも、伊達美代子とこの二人だけとは思えないわ」
「……明日、美代子からグループのメンバーを聞き出してみるわ。伊達、高橋、林の他に、佐藤という生徒もわかっている。これで四人。この四人だけかどうか、調べます」
「了解。で、知り合いの警部さんってのは?」
ちょうど、安藤架純から紹介された義理の姉・安納沙織警部と連絡を取ったばかりだった。
「曽根崎先生、明日、お話した警部との三人でお酒飲むってどう?」
「いいわよ。楽しみばい」マリアは快諾した。
輪は、さらに広がっていた……。
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