第40話_冥府八駅会合④
ー/ー目の前に立つのは――
具現化した都市伝説、そのものだった。
現実の中にあり得ないものが、当たり前のように立っている。
理解はできるのに、実感が追いつかない。
白と黒の瞳。
歪んだ美しさ。
見ているだけで、本能が拒絶する。
これからそんな存在へ立ち向かい、自分の意思を証明するのだ。
その時。
「燈」
背後から、低い声。
つきのみやだった。
振り返ると、彼女はいつもの距離よりも少し近い位置に立っていた。
その表情は険しい。
ほんのわずかに、眉間に皺が寄っている。
「……すまん」
静かに、そう言った。
燈の目が、わずかに揺れる。
「え……?」
つきのみやは視線を逸らさず続ける。
「こんなことになったのは……私のせいだ」
拳が、ゆっくりと握られる。
その言葉には、明確な後悔が滲んでいた。
燈は首を小さく横に振る。
「……ううん」
声はまだ少し震えている。
「これは……私の問題でもあるから」
つきのみやが、わずかに目を細める。
燈は続ける。
「さっきも言われたけど……証明、しなきゃだから」
拳をぎゅっと握る。
視線をきさらぎの方へ向ける。
まだ怖い。
でも、逸らさない。
「だから……」
小さく息を吸う。
「自分で、なんとかする」
その言葉に、つきのみやの肩がわずかに揺れた。
驚いたような、でも納得したような。
数秒、沈黙。
水音だけが、微かに響く。
そして。
つきのみやが、ぽつりと口を開く。
「……そうか」
一歩、燈に近づく。
「なら一つ、確認だ」
視線が、燈の胸元へ落ちる。
「最初に会った時に渡したもの、持っているか?」
燈は一瞬だけ瞬きをする。
(……あ)
思い出す。
すぐに胸ポケットへ手を差し入れる。
布の中を探る指先に、硬い感触。
引き抜く。
そこには――
翡翠色の勾玉。
淡い光を帯びているようにも見える。
燈はそれを、そっと掌に乗せる。
「……これ」
つきのみやの視線が、わずかに柔らぐ。
「ああ、それだ」
燈は勾玉を見つめる。
初めて渡された時のことが、ふと頭をよぎる。
(あの時は……こんなことになるなんて思ってなかった)
指先でそっと包み込み、軽く握る。
ひんやりとした感触が掌に伝わる。
「それは、私だ」
燈は首をかしげる。
「……えっ?」
つきのみやはそれ以上、多くは語らない。
ただ一言だけ、残した。
「私もそばに居る……それを忘れるな」
それだけだった。
けれど――
その言葉は、妙に重く、そして確かだった。
怖さは、消えない。
足も少し震えている。
でも。
(……一人じゃない)
そう思えた瞬間、胸の奥にほんのわずかな明かりが灯る。
具現化した都市伝説、そのものだった。
現実の中にあり得ないものが、当たり前のように立っている。
理解はできるのに、実感が追いつかない。
白と黒の瞳。
歪んだ美しさ。
見ているだけで、本能が拒絶する。
これからそんな存在へ立ち向かい、自分の意思を証明するのだ。
その時。
「燈」
背後から、低い声。
つきのみやだった。
振り返ると、彼女はいつもの距離よりも少し近い位置に立っていた。
その表情は険しい。
ほんのわずかに、眉間に皺が寄っている。
「……すまん」
静かに、そう言った。
燈の目が、わずかに揺れる。
「え……?」
つきのみやは視線を逸らさず続ける。
「こんなことになったのは……私のせいだ」
拳が、ゆっくりと握られる。
その言葉には、明確な後悔が滲んでいた。
燈は首を小さく横に振る。
「……ううん」
声はまだ少し震えている。
「これは……私の問題でもあるから」
つきのみやが、わずかに目を細める。
燈は続ける。
「さっきも言われたけど……証明、しなきゃだから」
拳をぎゅっと握る。
視線をきさらぎの方へ向ける。
まだ怖い。
でも、逸らさない。
「だから……」
小さく息を吸う。
「自分で、なんとかする」
その言葉に、つきのみやの肩がわずかに揺れた。
驚いたような、でも納得したような。
数秒、沈黙。
水音だけが、微かに響く。
そして。
つきのみやが、ぽつりと口を開く。
「……そうか」
一歩、燈に近づく。
「なら一つ、確認だ」
視線が、燈の胸元へ落ちる。
「最初に会った時に渡したもの、持っているか?」
燈は一瞬だけ瞬きをする。
(……あ)
思い出す。
すぐに胸ポケットへ手を差し入れる。
布の中を探る指先に、硬い感触。
引き抜く。
そこには――
翡翠色の勾玉。
淡い光を帯びているようにも見える。
燈はそれを、そっと掌に乗せる。
「……これ」
つきのみやの視線が、わずかに柔らぐ。
「ああ、それだ」
燈は勾玉を見つめる。
初めて渡された時のことが、ふと頭をよぎる。
(あの時は……こんなことになるなんて思ってなかった)
指先でそっと包み込み、軽く握る。
ひんやりとした感触が掌に伝わる。
「それは、私だ」
燈は首をかしげる。
「……えっ?」
つきのみやはそれ以上、多くは語らない。
ただ一言だけ、残した。
「私もそばに居る……それを忘れるな」
それだけだった。
けれど――
その言葉は、妙に重く、そして確かだった。
怖さは、消えない。
足も少し震えている。
でも。
(……一人じゃない)
そう思えた瞬間、胸の奥にほんのわずかな明かりが灯る。
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