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44話 心の麻痺(4)

ー/ー



「何やってるんだ!」

 廊下の端より響いた怒声と共に、球場で盗塁を取るように俊敏に走ってきた頼もしい男子は、しゃがみ込んで震えている女子を庇うように立ちはだかった。

「小春から離れろよっ!」

 地響きのように低く、怒りに震えた声。プルプルと震える拳は振り上がっている。本来なら止めないといけないが、別に殴っても良いんじゃないかと不意に過ぎった俺は、ただことの成り行きを傍観していた。

「待って! お願い、許して!」

 翔の拳を両手で抑えるのは小田くんで、「南は悪くない。悪いのは俺だったんだ」という言葉を繰り返し、だから俺を殴ってくれとまで懇願してきた。
 小田くんの瞳があまりにも真っ直ぐだったからか、力を抜いた翔は、拳を下ろしていた。

「……あーあ、惨め。アンタ、彼氏盗られてるじゃん」

 誰に言っているか分からず思わず周囲を見渡すと、その相手は凛だった。

「えっ? いや。私達は元々友達で……」

 凛の説明も聞かずに距離を詰めてきた内藤さんは、凛の耳元でボソッと何かを呟いた。

「……!」

 明らかに表情を歪めた凛は口元を抑え、ガタガタと震えだした。

「密告してやろうか?」
「やれるものなら、やってみたら! 順番を当てれたの話だけど!」
「あんたバカ? 次に密告したら勝てるごとぐらい、気付いてるよね?」

 その言葉により何も返せなくなった凛は、ただ唇を噛み締めていた。
 一体、何のやり取りが繰り広げられているんだ?
 次に密告したら勝てるとは、どうゆう意味なのか?
 何も分からない俺は、そのやり取りをただ眺めることしか出来なかった。

「今ので分かったぁー! アンタは私の音声は持ってない! だからアンタは負け確定!」

 理論派の凛は、いつだって冷静に相手の話を聞き反撃の機会を待つが、今日に限ってはただ黙って聞いているだけだった。

「分かった? アンタを守ってくれるお友達とかは、このゲームで死ぬの! だから、あの音声は出すなぁ!」

 翔の鉄壁のガードがあるからか、内藤さんはようやく話を終わらせたようで、俺達の集まりから離れて行った。

「……音声って何?」

 凛が俺達に問うが、その場は静まり返る。
 だって俺以外、何のことか分かっていないのだから。

「凛こそ、大丈夫か?」

 俺が質問返しをしてしまうとビクンッと体を震わせ、何でもないと目を逸らしてしまう。

「……慎吾、少し話をしようか?」
「そう、だな」

 互いにパートナーに秘密を抱えていると確信した俺は、その言葉に頷く。
 翔に小春を託し、俺達は下の階へと階段を下っていく。


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「何やってるんだ!」
 廊下の端より響いた怒声と共に、球場で盗塁を取るように俊敏に走ってきた頼もしい男子は、しゃがみ込んで震えている女子を庇うように立ちはだかった。
「小春から離れろよっ!」
 地響きのように低く、怒りに震えた声。プルプルと震える拳は振り上がっている。本来なら止めないといけないが、別に殴っても良いんじゃないかと不意に過ぎった俺は、ただことの成り行きを傍観していた。
「待って! お願い、許して!」
 翔の拳を両手で抑えるのは小田くんで、「南は悪くない。悪いのは俺だったんだ」という言葉を繰り返し、だから俺を殴ってくれとまで懇願してきた。
 小田くんの瞳があまりにも真っ直ぐだったからか、力を抜いた翔は、拳を下ろしていた。
「……あーあ、惨め。アンタ、彼氏盗られてるじゃん」
 誰に言っているか分からず思わず周囲を見渡すと、その相手は凛だった。
「えっ? いや。私達は元々友達で……」
 凛の説明も聞かずに距離を詰めてきた内藤さんは、凛の耳元でボソッと何かを呟いた。
「……!」
 明らかに表情を歪めた凛は口元を抑え、ガタガタと震えだした。
「密告してやろうか?」
「やれるものなら、やってみたら! 順番を当てれたの話だけど!」
「あんたバカ? 次に密告したら勝てるごとぐらい、気付いてるよね?」
 その言葉により何も返せなくなった凛は、ただ唇を噛み締めていた。
 一体、何のやり取りが繰り広げられているんだ?
 次に密告したら勝てるとは、どうゆう意味なのか?
 何も分からない俺は、そのやり取りをただ眺めることしか出来なかった。
「今ので分かったぁー! アンタは私の音声は持ってない! だからアンタは負け確定!」
 理論派の凛は、いつだって冷静に相手の話を聞き反撃の機会を待つが、今日に限ってはただ黙って聞いているだけだった。
「分かった? アンタを守ってくれるお友達とかは、このゲームで死ぬの! だから、あの音声は出すなぁ!」
 翔の鉄壁のガードがあるからか、内藤さんはようやく話を終わらせたようで、俺達の集まりから離れて行った。
「……音声って何?」
 凛が俺達に問うが、その場は静まり返る。
 だって俺以外、何のことか分かっていないのだから。
「凛こそ、大丈夫か?」
 俺が質問返しをしてしまうとビクンッと体を震わせ、何でもないと目を逸らしてしまう。
「……慎吾、少し話をしようか?」
「そう、だな」
 互いにパートナーに秘密を抱えていると確信した俺は、その言葉に頷く。
 翔に小春を託し、俺達は下の階へと階段を下っていく。