43話 心の麻痺(3)
ー/ー「佐伯ぃー! こっち来いよ!」
突然目の前に現れた、内藤さんの威圧的な声が廊下中に響く。あまりの圧に小春だけでなく俺まで身をすくませてしまったが、その間に入ったのは凛だった。
「何? そんな大きな声、出される筋合いはないと思うけど?」
「……はぁ? 大林には関係ないし!」
内藤さんは、小春にだけしか見せなかった本性を俺だけでなく、凛にまで見せてきた。
そこまで、切迫詰まっているということだろう。
「あるよ、友達だから。それよりさ、もしかしていつも、小春に対してこんなにキツく当たってたの?」
凛の瞳には内藤さんに対する怒りと、何故か罪悪感のような視線を小春に向けていた。
「……お前か?」
「何が?」
「お前が、あの音声送って来やがったんだなぁー!」
奇声と共に凛に飛びかかった内藤さんは、凛が握っていたスマホに手を伸ばす。
しかし短距離走の名手である凛は反射神経も良く、サッと身を引き距離を取る。
「音声って、何のこと?」
「しらばくれるんじゃねぇーよ! 私を信じるとか言って、全然じゃねーかよ! 佐伯に持たせてたんだろぉ! 私達を罠にハメる為に!」
「……罠?」
話が全く見えないと言いたげに凛はとりあえず落ち着いて話し合おうと提案するが、それによりヒートアップした内藤さんは、「嘘つき」、「卑怯者」と言葉を浴びせていく。
「もう、やめろよ!」
その場にいる中で唯一の男である俺が間に入るが、どうにも抑制力がないようで、ヒョロイ俺は女子の力でも簡単に跳ね除けられてしまう。
……翔がいてくれたら。
翔なら、この場を抑えてくれる。
話し合おうと、宥めてくれる。
情けないことに腕力でも、立場でも、コミュ力も劣っている俺には全く手に負えず、狼狽することしか出来ない。
凛を守らないと。だって、これは!
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