第5話 討伐依頼
ー/ー 門を抜けると、そこは平原であった。
本当は少し歩いたけどな!
特別依頼を受けて西にある平原まで来た。今のところは特に何も見えないな。大体いつも居るのはスライムかイノシシだが、今日はそれも見えない。草原を駆け回るイノシシはこの草原の名物だったのに…オークが出た影響か?
「早急にオークを倒さないとだな」
「そうですね。いつもは森に居るオークがとなると、北の方でしょうか?」
「かもね」
平原は見渡しが良くて逃げるのには最適だが、肉食のオークには食料が少ない。オークのノロイ動きで素早いイノシシを狩れると思えないし、森の入り口で狩りをしている可能性が高い。
それに北の森入り口にはゴブリンが出て来ているらしい。オークは嗅覚が優れているし、臭いのキツイゴブリンを避けて北の森に行く事はないだろう。
とは言え——
「住処を追われた魔物は何をするか分からない。暴走して草原を越えるか森を突っ切れば街に入りかねない」
「入る前に門番に倒されるのではないですか?」
「それでも、もしもはある。もしもオークが通常より強かったら?もしも門番では止め切れなく、街の人が襲われたら?皆が魔法を磨いている訳ではない。そう言ったリスクを最大限減らすのも冒険者だ」
「なるほど…確かに、全員が力に自信のある訳では無いですからね。他者と自分の違い…覚えておきます」
そんな会話をしている内に森まで辿り着いた。
少し寒い地域と言う事もあり木が高い。この大きさの幹では隠れたオークを探すのは難しいな。
一度森の周りを回ってみるか。
考えをトーカに伝えて北西方面に向かって歩いてみる。森の入り口ですらいつもより静かに感じる。この辺りの生物が一斉に移動したのか?
森の縁をなぞりながら進むと、3つに別れた巨大な渓谷が現れた。森はここまで、この先は深い谷と川がある。
「ここはいつ見ても不思議な形をしていますね。3つ連なった渓谷なんて」
「ドラゴンが引っ掻いた後だ!なんて言っている人も居たな。俺もいつ出来たのか知らないが、少なくとも俺が生まれてからはずっとこうだ」
「あながちドラゴンと言うのも間違いでは無いのかもしれませんね」
「だな。じゃあ引き返すか」
この先に行くには森を抜けなければならない。異変が起こったと思われる場所だ。だとすればこっちにオークは居ない。
森の外周に居なかったとすると、やはり森の中か。あるいは草原を抜けようとしている?
それともそれ以外の何かか。
「こう言う時に索敵魔法を持ってる人が羨ましくなるよな。俺のゴーレムも視界共有とか出来れば良いのに」
「私の様に心があれば走り回って情報を持って来れるのですが…」
「索敵用のゴーレムも案に入れておくか。やり方さえ考えれば実現出来そうではあるんだよな」
会話しながら道を戻っていると、最初の場所まで帰って来た。相変わらず森は静かなままだ。
…ん、なんかさっきと変わったか?ここの視界がもっと悪かった気が。
「ん、草が倒れてるな」
背の高い草が横倒しにされている。それに踏みつけられて固まっている。誰かが踏んで行ったみたいだな。
意見を求める様にトーカに目を向けると、すぐに視線を落として草を観察し始める。気のせいか?一瞬だが俺を見ていた様な気がする。
「オークの物でしょうか…?」
トーカは触れて欲しくなさそうだ。
ならこっちもそれに乗るべきだろう。人間だって踏み込まれたく無い事くらいあるしな。
「人にしては歩幅がデカいな。向き的には草原の方に向かっている。足跡のつき方から…恐らく3体は居るな。それに…見てみなトーカ、ここの草が綺麗に揃って切れている。オークの知能で扱える物なら石斧か冒険者が落とした短剣とかだろうね」
「この現場からそこまで…流石マスターです」
「さて、足跡を追ってみるか」
門の外に出て既に3時間は経ったか。ようやく件のオークの足取りを掴めた。
基本数体で行動しているからか痕跡はかなり残っている。追跡は簡単だな。
遠くに門が見える。かなり街の方に近づいているみたいだ。そして足跡は別方向へ伸びている。
見えているのに襲っていないと言う事はまだ限界では無いのだろう。人は集団で行動する。オークからすれば自分達より知能が高く、更に大人数で行動する人間を襲うリスクは計り知れない。
完全に飢えているなら見境なく突っ込むだろうが、まだその段階ではない。
「マスター、あそこに複数の影が見えます」
街を見ながら考えているとトーカに肩を叩かれた。トーカの視線の先を見てみると、確かに影が見える。はっきりとは見えないが、大きさ的にオークだろう。
「流石だトーカ。行くよ」
「光栄です」
走ってその方向へ向かう。
徐々にその姿が見える様になる。
到着すると、その場には3体のオークが居た。先頭の1体は短い剣を低い位置で持ち、その切先がたまに草を切り落としている。
すると最後尾に居たオークが突然振り向いた。鼻をヒクつかせているため、俺達の匂いを感じ取ったか?
ふごーー!
っと鼻を鳴らすと、先頭のオークがすぐに武器を構えながら出て来た。敵襲の合図だったらしい。
「トーカ、頼めるか?」
「はいマスター、お任せ下さい」
トーカも同様に剣を構える。
オークの物とは違う長剣。トーカの構えか剣の効果か、トーカの方が威圧感を出している気がする。
俺は肩にかけた鞄を開くと中を弄る。手触りから石だと判断すると、それを引っ張り出した。
「ロックゴーレム。トーカ、サポートする」
「はい。それでは行きます——」
「ぶもっ!!?」
瞬間的に動いたトーカの動きは俺ですら捉えられない。地面の土を抉り、急接近したトーカの剣はオークの剣を持つ右腕を切り落とした。後ろから顔は見えないが、トーカは戦闘時に何を考えているのだろうか。
オークから悲鳴が上がる。引っ付いたトーカを引き剥がすために仲間のオークが近づいて来る。
手を伸ばした瞬間に、その手を剣の先端が切り上げた。手のひらが真っ二つに切れる。
「サポートは要らないか。なら俺はもう一体を」
ロックゴーレムを操り傍観するオークへ向かわせる。ただの岩に手足が生えた様な小さいゴーレムではあるが、ゴーレム魔法の効果で多少堅くなっている。
勿論その効果は防御だけではなく、攻撃に活かせば重量を持った一撃となる——!
「喰らえ!」
肉の千切れる音が鳴る。
ロックゴーレムの一撃は呆然としていたオークの顔へと直撃し、頬辺りの肉を飛び散らせた。
その攻撃で脳が揺れたのか、フラフラと歩いた後に地面に伏した。
「申し訳ないが、ここで駆除するよ」
今回の件に関してはオークも被害者だろう。
住処を追われ、行くところも無く彷徨っていた。可哀想ではあるが、このまま放置すればいずれ死傷者が出る。
だからせめて苦しまない様に。
「じゃあな」
ロックゴーレムに鋭い石を持たせ、うつ伏せに倒れたオークを背中から刺す。
叫び声を上げ、痙攣した後に動かなくなった。
「さてトーカは…終わってたか」
「はい。これで依頼は達成ですね」
「討伐証明部位は指だな。切り落としてくれ」
ロックゴーレムを鞄に詰め込んでいる内にトーカの剣で指を切り落として貰う。
魔物は死ねば魔力へ還元される。このまま放置しても問題はない。
依頼達成を報告するため、トーカと共に街へと足を向けた。
—————
見ていただきありがとうございます!
モチベになりますので、良ければ作品フォロー等の評価よろしくお願いします!
本当は少し歩いたけどな!
特別依頼を受けて西にある平原まで来た。今のところは特に何も見えないな。大体いつも居るのはスライムかイノシシだが、今日はそれも見えない。草原を駆け回るイノシシはこの草原の名物だったのに…オークが出た影響か?
「早急にオークを倒さないとだな」
「そうですね。いつもは森に居るオークがとなると、北の方でしょうか?」
「かもね」
平原は見渡しが良くて逃げるのには最適だが、肉食のオークには食料が少ない。オークのノロイ動きで素早いイノシシを狩れると思えないし、森の入り口で狩りをしている可能性が高い。
それに北の森入り口にはゴブリンが出て来ているらしい。オークは嗅覚が優れているし、臭いのキツイゴブリンを避けて北の森に行く事はないだろう。
とは言え——
「住処を追われた魔物は何をするか分からない。暴走して草原を越えるか森を突っ切れば街に入りかねない」
「入る前に門番に倒されるのではないですか?」
「それでも、もしもはある。もしもオークが通常より強かったら?もしも門番では止め切れなく、街の人が襲われたら?皆が魔法を磨いている訳ではない。そう言ったリスクを最大限減らすのも冒険者だ」
「なるほど…確かに、全員が力に自信のある訳では無いですからね。他者と自分の違い…覚えておきます」
そんな会話をしている内に森まで辿り着いた。
少し寒い地域と言う事もあり木が高い。この大きさの幹では隠れたオークを探すのは難しいな。
一度森の周りを回ってみるか。
考えをトーカに伝えて北西方面に向かって歩いてみる。森の入り口ですらいつもより静かに感じる。この辺りの生物が一斉に移動したのか?
森の縁をなぞりながら進むと、3つに別れた巨大な渓谷が現れた。森はここまで、この先は深い谷と川がある。
「ここはいつ見ても不思議な形をしていますね。3つ連なった渓谷なんて」
「ドラゴンが引っ掻いた後だ!なんて言っている人も居たな。俺もいつ出来たのか知らないが、少なくとも俺が生まれてからはずっとこうだ」
「あながちドラゴンと言うのも間違いでは無いのかもしれませんね」
「だな。じゃあ引き返すか」
この先に行くには森を抜けなければならない。異変が起こったと思われる場所だ。だとすればこっちにオークは居ない。
森の外周に居なかったとすると、やはり森の中か。あるいは草原を抜けようとしている?
それともそれ以外の何かか。
「こう言う時に索敵魔法を持ってる人が羨ましくなるよな。俺のゴーレムも視界共有とか出来れば良いのに」
「私の様に心があれば走り回って情報を持って来れるのですが…」
「索敵用のゴーレムも案に入れておくか。やり方さえ考えれば実現出来そうではあるんだよな」
会話しながら道を戻っていると、最初の場所まで帰って来た。相変わらず森は静かなままだ。
…ん、なんかさっきと変わったか?ここの視界がもっと悪かった気が。
「ん、草が倒れてるな」
背の高い草が横倒しにされている。それに踏みつけられて固まっている。誰かが踏んで行ったみたいだな。
意見を求める様にトーカに目を向けると、すぐに視線を落として草を観察し始める。気のせいか?一瞬だが俺を見ていた様な気がする。
「オークの物でしょうか…?」
トーカは触れて欲しくなさそうだ。
ならこっちもそれに乗るべきだろう。人間だって踏み込まれたく無い事くらいあるしな。
「人にしては歩幅がデカいな。向き的には草原の方に向かっている。足跡のつき方から…恐らく3体は居るな。それに…見てみなトーカ、ここの草が綺麗に揃って切れている。オークの知能で扱える物なら石斧か冒険者が落とした短剣とかだろうね」
「この現場からそこまで…流石マスターです」
「さて、足跡を追ってみるか」
門の外に出て既に3時間は経ったか。ようやく件のオークの足取りを掴めた。
基本数体で行動しているからか痕跡はかなり残っている。追跡は簡単だな。
遠くに門が見える。かなり街の方に近づいているみたいだ。そして足跡は別方向へ伸びている。
見えているのに襲っていないと言う事はまだ限界では無いのだろう。人は集団で行動する。オークからすれば自分達より知能が高く、更に大人数で行動する人間を襲うリスクは計り知れない。
完全に飢えているなら見境なく突っ込むだろうが、まだその段階ではない。
「マスター、あそこに複数の影が見えます」
街を見ながら考えているとトーカに肩を叩かれた。トーカの視線の先を見てみると、確かに影が見える。はっきりとは見えないが、大きさ的にオークだろう。
「流石だトーカ。行くよ」
「光栄です」
走ってその方向へ向かう。
徐々にその姿が見える様になる。
到着すると、その場には3体のオークが居た。先頭の1体は短い剣を低い位置で持ち、その切先がたまに草を切り落としている。
すると最後尾に居たオークが突然振り向いた。鼻をヒクつかせているため、俺達の匂いを感じ取ったか?
ふごーー!
っと鼻を鳴らすと、先頭のオークがすぐに武器を構えながら出て来た。敵襲の合図だったらしい。
「トーカ、頼めるか?」
「はいマスター、お任せ下さい」
トーカも同様に剣を構える。
オークの物とは違う長剣。トーカの構えか剣の効果か、トーカの方が威圧感を出している気がする。
俺は肩にかけた鞄を開くと中を弄る。手触りから石だと判断すると、それを引っ張り出した。
「ロックゴーレム。トーカ、サポートする」
「はい。それでは行きます——」
「ぶもっ!!?」
瞬間的に動いたトーカの動きは俺ですら捉えられない。地面の土を抉り、急接近したトーカの剣はオークの剣を持つ右腕を切り落とした。後ろから顔は見えないが、トーカは戦闘時に何を考えているのだろうか。
オークから悲鳴が上がる。引っ付いたトーカを引き剥がすために仲間のオークが近づいて来る。
手を伸ばした瞬間に、その手を剣の先端が切り上げた。手のひらが真っ二つに切れる。
「サポートは要らないか。なら俺はもう一体を」
ロックゴーレムを操り傍観するオークへ向かわせる。ただの岩に手足が生えた様な小さいゴーレムではあるが、ゴーレム魔法の効果で多少堅くなっている。
勿論その効果は防御だけではなく、攻撃に活かせば重量を持った一撃となる——!
「喰らえ!」
肉の千切れる音が鳴る。
ロックゴーレムの一撃は呆然としていたオークの顔へと直撃し、頬辺りの肉を飛び散らせた。
その攻撃で脳が揺れたのか、フラフラと歩いた後に地面に伏した。
「申し訳ないが、ここで駆除するよ」
今回の件に関してはオークも被害者だろう。
住処を追われ、行くところも無く彷徨っていた。可哀想ではあるが、このまま放置すればいずれ死傷者が出る。
だからせめて苦しまない様に。
「じゃあな」
ロックゴーレムに鋭い石を持たせ、うつ伏せに倒れたオークを背中から刺す。
叫び声を上げ、痙攣した後に動かなくなった。
「さてトーカは…終わってたか」
「はい。これで依頼は達成ですね」
「討伐証明部位は指だな。切り落としてくれ」
ロックゴーレムを鞄に詰め込んでいる内にトーカの剣で指を切り落として貰う。
魔物は死ねば魔力へ還元される。このまま放置しても問題はない。
依頼達成を報告するため、トーカと共に街へと足を向けた。
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