第4話 面倒事は勘弁
ー/ー「昨日は休みを取れたし、今日は討伐依頼でも受けようか」
大通りを歩きながらトーカに言う。
休日をしっかり満喫出来たため、今日はギルドで活動する事にする。1日戦闘していないだけでも感覚が落ちるからな。
「はい。しかしマスター、私は未だ冒険者登録が出来ない身です。ギルドへ行けば止められるのでは…?」
「そうだろうな。だからトーカにはギルド前で待ってて貰う事になる。ごめんな」
仕方のない事ではあるが、これではトーカを物扱いしているのと同じ様なものだ。
申し訳無さを隠さず言うと、トーカは苦笑して返した。
「大丈夫です。この間マスターが言ってくれましたし、きっと登録出来ますよ」
「…あぁ。そうだと良いね」
会話をしながら歩くとやがてギルドに辿り着いた。いつ見てもこの建物は大きいな。敷地で言ったら一軒家4つ分くらいあるんじゃないか?
トーカを待たせて中に入る。そして何人か見ている掲示板へと向かった。
冒険者ギルドではこうして依頼が掲示板へと貼られる。掲示板は2つに分かれており、片方は恒常依頼、もう一つは特別依頼だ。
迷う事無く特別依頼の掲示板へと向かう。もう10年も冒険者をしていれば手慣れたものだ。
今日出てるのは…西平原にオークの数体と北の森入り口辺りにゴブリンの群れか。後は家の清掃とか工事の手伝いが多いな。
それにしても平原にオークか。基本臆病なゴブリンが森の入り口まで来ているのも珍しい。何かあったのか?
「この中ならオークかな」
依頼書を剥ぎ取って受付まで持って行く。特別依頼の場合はそれで受理されるのだ。ちなみに恒常依頼は毎日同じ内容で募集しているため、依頼書の上に掛かった札を持って行けば受理される。
「すいません、この依頼受けたいんですけ…ど」
「はい。あ…この間の」
作業をしていた受付嬢に話しかける。
が、その顔は見覚えのある者だった。この間のトーカの件で対応して貰った人だ。
決まりとは言え純粋に仕事をしている彼女に当たってしまったのも事実。ここは素直に——
「…あーどうも。先日は怒鳴っちゃってすいませんでした」
「いえ、仕事ですから。それにゴーレムが冒険者として認められない事に怒る気持ちも分かりますので。それで、そちらですか?」
「はい、受理お願いします」
なんとか穏便に済ませられた。
怒っている様子は無かったが、お互いの考えが分かるために気まずい。凄くクールな人だが、同時に話すのも得意ではないらしい。
それより、彼女が受付ならトーカを待たせる意味は無かったな。この人が受理してくれるならトーカが居たところで変わらないだろう。
そんな事を考えている内に受理が終わった。
ついでに気になった事を聞いてみる。
「あの、もしかして北西の方で何か起こってますか?西平原にオーク、北の森入り口にゴブリン、森の奥で何かが起こって、それから逃げて来たとか」
「…流石ですね。詳しくはまだ調査中なので分かりません。ちょうど今朝、他の冒険者の方が調査に向かわれた所なんです」
調査段階か。
ギルドから依頼が出てるって事は、そこそこの確率で何か起こっている証拠だ。群れで行動するゴブリンはともかく、オークが逃げ出すレベルとは…。
「そうですか…後もう一つだけ。トーカの件はいつ返答を貰えそうですか?」
「そうですね…昨日上層部に請願を提出したばかりなので、少なくとも1週間はかかるかと。難しい問題ですので、長くて1月はかかると思っておいて下さい」
「…分かりました。ありがとうございます」
「はい、それではお気をつけて」
そう返すと受付嬢は元の仕事に戻った。
最低1週間、長くて1月か。確かに人間の定義を考え直すと中々進まないだろうし、そのくらいはかかっても仕方ない。
もしこれで認められない時は…最終手段だな。
さて、そろそろ依頼に——
「——ぃだろ?こんな所で放置する様な奴、さっさと忘れちまえよ」
…なんだか面倒な事になっていそうだ。
外に出ると、トーカが屈強な男2人に囲まれている。話の内容的にナンパか。
だがトーカの顔は明らかに苛立っている。腰にある携帯した剣で今にも斬り殺しそうだ。
「トーカ」
「!マスター、お帰りなさいませ」
「おいおいおい、待ち人ってこんなヒョロガリかよッ!姉ちゃんには勿体ねぇなぁ!」
「おい男、この姉ちゃんは今から俺等と遊ぶからよぉ。今日は帰ってくれや」
め、面倒くせぇぇ!!
なんでこれでナンパが成功すると思ってんだ?使える口説き文句くらい持って来いよ。
って言ってやりたいが、トーカが必要以上に引っ付いて来るため男達にも苛立ちが見える。
こう時は何言っても通じないからなぁ…。
「はぁ…断ります。トーカは俺と行くんで、そっちが引いてくれません?」
「おいおい、言っておくがお前にしたのはお願いじゃねぇ。命令だ。さっさと尻尾巻いて帰れよ雑魚」
「ぶははッ!そうだ、お前も来るか?そこの姉ちゃんが壊れるくらい鳴くところ、目の前で見せてやるよッ!」
気持ち悪ぃ。
なんでこう言う奴に限って自分に自信があるんだ。…いや、それはそうか。これまでの人生で誇れる物が他人を踏み躙る事しかないからな。
だから平気でこう言う事が抜かせるし、それだけで自分が頂点だと勘違い出来る。
不幸だな、自分が哀れだと気付けない人間は。
…いや、寧ろ幸せか。自分を憐れむ事が無いんだから。
うわ、周りの視線が痛い。トーカも苛立ちが募って爆発しそうだ。
時間も無いし、さっさと実力差を分からせるか。
「そうか、なら俺も一つ命令をしよう」
声に魔力を乗せ、力強く叩きつける。
「即刻俺達の前から立ち去れ。痛い目を見る前にな」
「ひっ…な、なんだお前ッ!」
「あああ兄貴!コイツやべぇよ!魔力量が尋常じゃねぇ!化け物だッ!!」
きっと今頃彼らは全身の震えが止まらなくなっているんだろう。見たところ脂汗が止まらない様だ。
これは中々面白いな。つい虐めたくなる。
「確かこうだったか、俺がお前等にしたのはお願いじゃない。命令だ。さっさと尻尾巻いて帰れ、雑魚」
「ひッ……ひぅぁぁ!!」
「あ、兄貴!待ってくれぇ!あ、足がッ…」
面白いほどの態度の変わり様で、2人の男達は逃げて行った。兄貴と呼ばれていた男はもう1人を置いて逃げ、その1人は腰が抜けたらしく泣いている。よく見れば股の辺りが黒くなっている。もしかして漏らしたのか?ダッセぇ。
「そろそろ行くか、トーカ」
「はい。流石ですマスター」
本格的に周りの視線が痛くなって来たため、さっさとその場を離れる事にした。それにしても、こう言う奴は最後まで謝罪もしないのか。
やっぱり関わらないのが一番だな。
—————
見ていただきありがとうございます!
モチベになりますので、良ければ作品フォロー等の評価よろしくお願いします!
大通りを歩きながらトーカに言う。
休日をしっかり満喫出来たため、今日はギルドで活動する事にする。1日戦闘していないだけでも感覚が落ちるからな。
「はい。しかしマスター、私は未だ冒険者登録が出来ない身です。ギルドへ行けば止められるのでは…?」
「そうだろうな。だからトーカにはギルド前で待ってて貰う事になる。ごめんな」
仕方のない事ではあるが、これではトーカを物扱いしているのと同じ様なものだ。
申し訳無さを隠さず言うと、トーカは苦笑して返した。
「大丈夫です。この間マスターが言ってくれましたし、きっと登録出来ますよ」
「…あぁ。そうだと良いね」
会話をしながら歩くとやがてギルドに辿り着いた。いつ見てもこの建物は大きいな。敷地で言ったら一軒家4つ分くらいあるんじゃないか?
トーカを待たせて中に入る。そして何人か見ている掲示板へと向かった。
冒険者ギルドではこうして依頼が掲示板へと貼られる。掲示板は2つに分かれており、片方は恒常依頼、もう一つは特別依頼だ。
迷う事無く特別依頼の掲示板へと向かう。もう10年も冒険者をしていれば手慣れたものだ。
今日出てるのは…西平原にオークの数体と北の森入り口辺りにゴブリンの群れか。後は家の清掃とか工事の手伝いが多いな。
それにしても平原にオークか。基本臆病なゴブリンが森の入り口まで来ているのも珍しい。何かあったのか?
「この中ならオークかな」
依頼書を剥ぎ取って受付まで持って行く。特別依頼の場合はそれで受理されるのだ。ちなみに恒常依頼は毎日同じ内容で募集しているため、依頼書の上に掛かった札を持って行けば受理される。
「すいません、この依頼受けたいんですけ…ど」
「はい。あ…この間の」
作業をしていた受付嬢に話しかける。
が、その顔は見覚えのある者だった。この間のトーカの件で対応して貰った人だ。
決まりとは言え純粋に仕事をしている彼女に当たってしまったのも事実。ここは素直に——
「…あーどうも。先日は怒鳴っちゃってすいませんでした」
「いえ、仕事ですから。それにゴーレムが冒険者として認められない事に怒る気持ちも分かりますので。それで、そちらですか?」
「はい、受理お願いします」
なんとか穏便に済ませられた。
怒っている様子は無かったが、お互いの考えが分かるために気まずい。凄くクールな人だが、同時に話すのも得意ではないらしい。
それより、彼女が受付ならトーカを待たせる意味は無かったな。この人が受理してくれるならトーカが居たところで変わらないだろう。
そんな事を考えている内に受理が終わった。
ついでに気になった事を聞いてみる。
「あの、もしかして北西の方で何か起こってますか?西平原にオーク、北の森入り口にゴブリン、森の奥で何かが起こって、それから逃げて来たとか」
「…流石ですね。詳しくはまだ調査中なので分かりません。ちょうど今朝、他の冒険者の方が調査に向かわれた所なんです」
調査段階か。
ギルドから依頼が出てるって事は、そこそこの確率で何か起こっている証拠だ。群れで行動するゴブリンはともかく、オークが逃げ出すレベルとは…。
「そうですか…後もう一つだけ。トーカの件はいつ返答を貰えそうですか?」
「そうですね…昨日上層部に請願を提出したばかりなので、少なくとも1週間はかかるかと。難しい問題ですので、長くて1月はかかると思っておいて下さい」
「…分かりました。ありがとうございます」
「はい、それではお気をつけて」
そう返すと受付嬢は元の仕事に戻った。
最低1週間、長くて1月か。確かに人間の定義を考え直すと中々進まないだろうし、そのくらいはかかっても仕方ない。
もしこれで認められない時は…最終手段だな。
さて、そろそろ依頼に——
「——ぃだろ?こんな所で放置する様な奴、さっさと忘れちまえよ」
…なんだか面倒な事になっていそうだ。
外に出ると、トーカが屈強な男2人に囲まれている。話の内容的にナンパか。
だがトーカの顔は明らかに苛立っている。腰にある携帯した剣で今にも斬り殺しそうだ。
「トーカ」
「!マスター、お帰りなさいませ」
「おいおいおい、待ち人ってこんなヒョロガリかよッ!姉ちゃんには勿体ねぇなぁ!」
「おい男、この姉ちゃんは今から俺等と遊ぶからよぉ。今日は帰ってくれや」
め、面倒くせぇぇ!!
なんでこれでナンパが成功すると思ってんだ?使える口説き文句くらい持って来いよ。
って言ってやりたいが、トーカが必要以上に引っ付いて来るため男達にも苛立ちが見える。
こう時は何言っても通じないからなぁ…。
「はぁ…断ります。トーカは俺と行くんで、そっちが引いてくれません?」
「おいおい、言っておくがお前にしたのはお願いじゃねぇ。命令だ。さっさと尻尾巻いて帰れよ雑魚」
「ぶははッ!そうだ、お前も来るか?そこの姉ちゃんが壊れるくらい鳴くところ、目の前で見せてやるよッ!」
気持ち悪ぃ。
なんでこう言う奴に限って自分に自信があるんだ。…いや、それはそうか。これまでの人生で誇れる物が他人を踏み躙る事しかないからな。
だから平気でこう言う事が抜かせるし、それだけで自分が頂点だと勘違い出来る。
不幸だな、自分が哀れだと気付けない人間は。
…いや、寧ろ幸せか。自分を憐れむ事が無いんだから。
うわ、周りの視線が痛い。トーカも苛立ちが募って爆発しそうだ。
時間も無いし、さっさと実力差を分からせるか。
「そうか、なら俺も一つ命令をしよう」
声に魔力を乗せ、力強く叩きつける。
「即刻俺達の前から立ち去れ。痛い目を見る前にな」
「ひっ…な、なんだお前ッ!」
「あああ兄貴!コイツやべぇよ!魔力量が尋常じゃねぇ!化け物だッ!!」
きっと今頃彼らは全身の震えが止まらなくなっているんだろう。見たところ脂汗が止まらない様だ。
これは中々面白いな。つい虐めたくなる。
「確かこうだったか、俺がお前等にしたのはお願いじゃない。命令だ。さっさと尻尾巻いて帰れ、雑魚」
「ひッ……ひぅぁぁ!!」
「あ、兄貴!待ってくれぇ!あ、足がッ…」
面白いほどの態度の変わり様で、2人の男達は逃げて行った。兄貴と呼ばれていた男はもう1人を置いて逃げ、その1人は腰が抜けたらしく泣いている。よく見れば股の辺りが黒くなっている。もしかして漏らしたのか?ダッセぇ。
「そろそろ行くか、トーカ」
「はい。流石ですマスター」
本格的に周りの視線が痛くなって来たため、さっさとその場を離れる事にした。それにしても、こう言う奴は最後まで謝罪もしないのか。
やっぱり関わらないのが一番だな。
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