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第32話 追われる夜

ー/ー



日が傾ききる前に、セシアたちは荷をまとめた。

まとめると言っても、大したものはない。水袋が二つ、固くなったパン、擦り切れた布、木炭の短い切れ端。あとは祈祷書と、挟んだ紙。

持ち出せるものは少ない。

リゼは必要なものだけを手早く荷袋へ押し込み、最後に部屋の中をひと目で見回した。

「忘れ物は」

誰も答えない。

忘れられるようなものは、最初から持っていないのだと思った。
残していくのは物ではなく、足跡だけだ。

ミナは頭巾を深く被り、エナは古びた上着の裾を握っている。ルイは荷袋の片方を持つと言い張り、トマはまだ顔色が悪いものの、自分の足で立っていた。

その姿を見て、セシアは胸の奥に痛みとは違う重さを覚えた。

この子たちは、もう助けられるだけの子ではない。
自分の足で、逃げる方へ立っている。

「行くよ」

リゼが低く言う。

それだけで、全員が動いた。

階段を下りる。

古い染物屋の中はしんと静まり返っていて、誰かがここに何日も潜んでいたとは思えない顔をしていた。外へ出る前、リゼが戸に耳をつける。しばらくじっとしてから、ゆっくりと開けた。

夕方の空気は冷たくなりはじめていた。
まだ夜ではない。
だが、明るさに混じる影が少しずつ長くなっている。

裏通りに人影はない。

「今のうち」

リゼを先頭に、六人は町の西へ向かった。

白い家も北舎も、本舎も、町の北にある。
だから西へ抜けるなら、少なくとも今夜のうちにあの流れとは距離を取れる。

道はなるべく広いところを避けた。
裏手の路地、物置の陰、干上がった水路の脇。人目につかない細い線だけを拾って進む。

トマは歩くたびに少しだけ足が遅れる。
ルイが自然にその隣へ寄り、エナが前を見て道を探す。ミナは一度も後ろを振り返らずに歩いていた。

セシアだけが、時々どうしても北の方角を見てしまう。

あの白い流れは、今もどこかで続いている。
逃げるだけで終わっていいのかと、胸の奥のどこかが問い続ける。

けれど、そのたびに祈祷書の重さが答えを返した。

今はこの子たちだ。
今はこの名前を、あの流れの外へ出す

町の端に近づいた頃、リゼが急に足を止めた。

全員がつられて止まる。

前方の細い通りを、白い上着の男がふたり横切った。

北から来たのだ。

白い家の方から流れてきた白さが、そのまま路地へ染み出してきたみたいだった。男たちは周囲を見回し、言葉少なに何かを確認している。探しているのだと分かる。

リゼがすぐに身振りで合図する。

物陰。

息を殺せ。

セシアたちは崩れた石壁の陰へ身体を寄せた。ミナが咄嗟にトマの袖を引き、エナがルイの肩を押す。六人分の気配を、どうにか狭い影の中へ収める。

白い上着の男たちの足音が近づく。

「……西は」

「まだ」

「本舎の方にも伝えてある」

小さな声だった。
けれど、はっきり聞こえた。

本舎。

やはり、もうあちらにも伝わっている。
白い家の子が抜けたことも、北舎からトマが消えたことも、全部。

男たちは少しだけ足を止め、周囲を見回した。

心臓がうるさいほど鳴る。
トマの呼吸が浅くなり、セシアは無意識にその腕へ手を伸ばしていた。

だが、白い上着の男たちはそのまま別の路地へ曲がった。

気配が遠ざかる。

誰もすぐには動けなかった。
ようやくリゼが囁く。

「……行く」

その一言で、止まっていた身体がまた動き出した。

町を抜けるまで、もう会話はほとんどなかった。

石畳が土道に変わる。
家並みが途切れ、低い畑と、刈り入れの終わった草地が広がる。西の空は赤さを失い、群青へ傾きはじめていた。

そこで初めて、ミナが小さく息を吐く。

「……町、出た」

その言葉に、セシアも立ち止まりそうになる。

出た。
それだけのことが、今はとても大きかった。

けれどまだ安心はできない。
道は続いているし、追手が町の外へ出ないとは限らない。

「もう少しです」

リゼが前を向いたまま言う。

「あと少しで、水場のある家に着く」

その“家”という言葉に、ルイがわずかに顔を上げた。
エナも、トマも。

逃げる先ではなく、家。
それが今の四人にとって、どれほど遠い言葉なのかを思う。

西へ続く道は次第に細くなり、やがて林へ入った。
昼間ならただの雑木林だろう。だが、日が落ちかけた今は、木の影がどこまでも深く見える。

その途中で、トマの足が止まった。

「……ごめん」

小さく言う。

ルイがすぐ隣へ寄る。

「少し休む?」

トマは首を振ろうとして、できずに俯く。
セシアはしゃがみ込み、トマの目線まで下りた。

「無理しなくていいです」

「でも」

「ここまで来ました」

トマの肩へ手を置く。

「あと少しです」

その時、背後の林道で何かが鳴った。

枝を踏む音。
人ひとり分か、あるいは二人。

リゼが一瞬で振り向く。

「走れる?」

問いかけではなく、確認だった。

ミナが頷き、エナがトマの腕を取る。ルイは荷袋を片方放り出し、空いた手でトマを支える。セシアもその反対側へ回った。

六人で林の奥へ入る。

足元は柔らかく、落ち葉が音を吸う。だが人数が多いぶん、完全には消えない。後ろでまた枝の音がした。追ってきているのか、ただ動物がいるだけなのか、確かめる余裕はなかった。

「左!」

リゼの声で進路を変える。

細い斜面を下りる。
湿った土が足を取る。トマが滑りかけ、エナがとっさに腕を引いた。ルイも支える。ミナは先に下りて振り返り、待つ。

自分ひとりなら、もっと速く動けた。
でも今は、ひとりも落とせない。

そのことが、怖さと同じくらい強く身体を動かしていた。

林を抜けた先に、低い石垣が見えた。

古い家だった。

屋根は一部傷んでいる。だが壁は残り、戸もまだ使えそうだ。家の横には小さな井戸があり、畑だったらしい区画は草に埋もれている。

「ここ」

リゼが言った。

誰も返事をしないまま、その家へ駆け込む。

戸を閉めた瞬間、外の気配が少しだけ遠くなった。
中は暗い。
人の住んだ匂いは薄れ、乾いた土と古木の匂いだけが残っている。

けれど、町の中の隠れ家より、ずっと息がしやすかった。

ミナがその場へ座り込む。
エナも壁に背をつけ、ルイはようやく荷袋を下ろした。トマは床へ膝をつき、しばらく顔を上げられなかった。

セシアも戸に手をついたまま、大きく息を吐く。

逃げ切れたのかどうかは、まだ分からない。
でも少なくとも、白い家と北舎と本舎のある町からは出た。

それだけでも、今は大きい。

しばらくして、外に追ってくる足音がないことを確かめると、リゼが井戸へ向かった。水を汲み、土間に置く。

「……今夜はここ」

誰に言うでもなく、そう告げる。

ミナが水を飲み、次にエナへ渡す。エナは黙って受け取り、ルイへ回す。トマは最後だった。両手で器を持ち、少しずつ口をつける。

飲み終えたあと、トマがぽつりと言った。

「……名前、呼ばれた」

皆がそちらを見る。

「北舎でも。さっきも」

セシアは祈祷書を開いた。

そこにある四つの名前を、暗い部屋の中で見せる。

ミナ。
エナ。
ルイ。
トマ。

「あります」

静かに言う。

「ここにも」

ミナが少しだけ笑いそうになり、でも泣きそうにもなって、結局何も言えずに目を伏せる。
エナはその頁をじっと見つめ、ルイは指先で自分の名前の近くへ触れた。トマはしばらく見てから、小さく息を吐く。

リゼが土間の壁へ背を預ける。

「本舎は残ってる」

その言葉で、部屋がまた静かになる。

そうだ。
逃げた。
町は出た。
でも、白い家も北舎も本舎も、まだなくなったわけじゃない。

世界の根っこは、少しも変わっていない。

セシアは祈祷書を閉じた。

「……はい」

認めるしかない。

「私たちだけじゃ、あれは止められませんでした」

その言葉は敗北にも聞こえる。
でも、ただの敗北ではなかった。

止められなかった。
それでも、この四人だけは白い流れの外へ出せた。

それもまた、本当だった。

リゼはそれ以上何も言わなかった。
代わりに、壁際の古い棚を払い、毛布代わりの布をかける。寝る場所を作る。水を置く。火は焚かない。夜のうちは暗いままでいい。

その動きを見ながら、セシアはふと思う。

世界は変えられなかった。
でも、生活は作れるかもしれない。

ミナが井戸の水を見つめる。
エナが自分の袖を握る。
ルイが床のきしみを確かめるように足を動かす。
トマはまだ少し眠そうな顔で、祈祷書の方を見ていた。

あまりにも小さなものだ。
それでも、確かに生活の始まりみたいに見えた。

夜が完全に落ちるころには、六人とももう口数が少なくなっていた。

疲れ切っているのもある。
けれど、今はまだ、終わったことよりも残っていることの方が大きい。

あの流れは、明日もどこかで続くのだろう。

それでもセシアは、祈祷書を胸に抱いたまま思う。

少なくともここには、もう番号で呼ばれる者はいない。

今夜はそれでいい。

窓の外では、風が草を揺らしていた。

町の灯りは、もう見えなかった。


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日が傾ききる前に、セシアたちは荷をまとめた。
まとめると言っても、大したものはない。水袋が二つ、固くなったパン、擦り切れた布、木炭の短い切れ端。あとは祈祷書と、挟んだ紙。
持ち出せるものは少ない。
リゼは必要なものだけを手早く荷袋へ押し込み、最後に部屋の中をひと目で見回した。
「忘れ物は」
誰も答えない。
忘れられるようなものは、最初から持っていないのだと思った。
残していくのは物ではなく、足跡だけだ。
ミナは頭巾を深く被り、エナは古びた上着の裾を握っている。ルイは荷袋の片方を持つと言い張り、トマはまだ顔色が悪いものの、自分の足で立っていた。
その姿を見て、セシアは胸の奥に痛みとは違う重さを覚えた。
この子たちは、もう助けられるだけの子ではない。
自分の足で、逃げる方へ立っている。
「行くよ」
リゼが低く言う。
それだけで、全員が動いた。
階段を下りる。
古い染物屋の中はしんと静まり返っていて、誰かがここに何日も潜んでいたとは思えない顔をしていた。外へ出る前、リゼが戸に耳をつける。しばらくじっとしてから、ゆっくりと開けた。
夕方の空気は冷たくなりはじめていた。
まだ夜ではない。
だが、明るさに混じる影が少しずつ長くなっている。
裏通りに人影はない。
「今のうち」
リゼを先頭に、六人は町の西へ向かった。
白い家も北舎も、本舎も、町の北にある。
だから西へ抜けるなら、少なくとも今夜のうちにあの流れとは距離を取れる。
道はなるべく広いところを避けた。
裏手の路地、物置の陰、干上がった水路の脇。人目につかない細い線だけを拾って進む。
トマは歩くたびに少しだけ足が遅れる。
ルイが自然にその隣へ寄り、エナが前を見て道を探す。ミナは一度も後ろを振り返らずに歩いていた。
セシアだけが、時々どうしても北の方角を見てしまう。
あの白い流れは、今もどこかで続いている。
逃げるだけで終わっていいのかと、胸の奥のどこかが問い続ける。
けれど、そのたびに祈祷書の重さが答えを返した。
今はこの子たちだ。
今はこの名前を、あの流れの外へ出す
町の端に近づいた頃、リゼが急に足を止めた。
全員がつられて止まる。
前方の細い通りを、白い上着の男がふたり横切った。
北から来たのだ。
白い家の方から流れてきた白さが、そのまま路地へ染み出してきたみたいだった。男たちは周囲を見回し、言葉少なに何かを確認している。探しているのだと分かる。
リゼがすぐに身振りで合図する。
物陰。
息を殺せ。
セシアたちは崩れた石壁の陰へ身体を寄せた。ミナが咄嗟にトマの袖を引き、エナがルイの肩を押す。六人分の気配を、どうにか狭い影の中へ収める。
白い上着の男たちの足音が近づく。
「……西は」
「まだ」
「本舎の方にも伝えてある」
小さな声だった。
けれど、はっきり聞こえた。
本舎。
やはり、もうあちらにも伝わっている。
白い家の子が抜けたことも、北舎からトマが消えたことも、全部。
男たちは少しだけ足を止め、周囲を見回した。
心臓がうるさいほど鳴る。
トマの呼吸が浅くなり、セシアは無意識にその腕へ手を伸ばしていた。
だが、白い上着の男たちはそのまま別の路地へ曲がった。
気配が遠ざかる。
誰もすぐには動けなかった。
ようやくリゼが囁く。
「……行く」
その一言で、止まっていた身体がまた動き出した。
町を抜けるまで、もう会話はほとんどなかった。
石畳が土道に変わる。
家並みが途切れ、低い畑と、刈り入れの終わった草地が広がる。西の空は赤さを失い、群青へ傾きはじめていた。
そこで初めて、ミナが小さく息を吐く。
「……町、出た」
その言葉に、セシアも立ち止まりそうになる。
出た。
それだけのことが、今はとても大きかった。
けれどまだ安心はできない。
道は続いているし、追手が町の外へ出ないとは限らない。
「もう少しです」
リゼが前を向いたまま言う。
「あと少しで、水場のある家に着く」
その“家”という言葉に、ルイがわずかに顔を上げた。
エナも、トマも。
逃げる先ではなく、家。
それが今の四人にとって、どれほど遠い言葉なのかを思う。
西へ続く道は次第に細くなり、やがて林へ入った。
昼間ならただの雑木林だろう。だが、日が落ちかけた今は、木の影がどこまでも深く見える。
その途中で、トマの足が止まった。
「……ごめん」
小さく言う。
ルイがすぐ隣へ寄る。
「少し休む?」
トマは首を振ろうとして、できずに俯く。
セシアはしゃがみ込み、トマの目線まで下りた。
「無理しなくていいです」
「でも」
「ここまで来ました」
トマの肩へ手を置く。
「あと少しです」
その時、背後の林道で何かが鳴った。
枝を踏む音。
人ひとり分か、あるいは二人。
リゼが一瞬で振り向く。
「走れる?」
問いかけではなく、確認だった。
ミナが頷き、エナがトマの腕を取る。ルイは荷袋を片方放り出し、空いた手でトマを支える。セシアもその反対側へ回った。
六人で林の奥へ入る。
足元は柔らかく、落ち葉が音を吸う。だが人数が多いぶん、完全には消えない。後ろでまた枝の音がした。追ってきているのか、ただ動物がいるだけなのか、確かめる余裕はなかった。
「左!」
リゼの声で進路を変える。
細い斜面を下りる。
湿った土が足を取る。トマが滑りかけ、エナがとっさに腕を引いた。ルイも支える。ミナは先に下りて振り返り、待つ。
自分ひとりなら、もっと速く動けた。
でも今は、ひとりも落とせない。
そのことが、怖さと同じくらい強く身体を動かしていた。
林を抜けた先に、低い石垣が見えた。
古い家だった。
屋根は一部傷んでいる。だが壁は残り、戸もまだ使えそうだ。家の横には小さな井戸があり、畑だったらしい区画は草に埋もれている。
「ここ」
リゼが言った。
誰も返事をしないまま、その家へ駆け込む。
戸を閉めた瞬間、外の気配が少しだけ遠くなった。
中は暗い。
人の住んだ匂いは薄れ、乾いた土と古木の匂いだけが残っている。
けれど、町の中の隠れ家より、ずっと息がしやすかった。
ミナがその場へ座り込む。
エナも壁に背をつけ、ルイはようやく荷袋を下ろした。トマは床へ膝をつき、しばらく顔を上げられなかった。
セシアも戸に手をついたまま、大きく息を吐く。
逃げ切れたのかどうかは、まだ分からない。
でも少なくとも、白い家と北舎と本舎のある町からは出た。
それだけでも、今は大きい。
しばらくして、外に追ってくる足音がないことを確かめると、リゼが井戸へ向かった。水を汲み、土間に置く。
「……今夜はここ」
誰に言うでもなく、そう告げる。
ミナが水を飲み、次にエナへ渡す。エナは黙って受け取り、ルイへ回す。トマは最後だった。両手で器を持ち、少しずつ口をつける。
飲み終えたあと、トマがぽつりと言った。
「……名前、呼ばれた」
皆がそちらを見る。
「北舎でも。さっきも」
セシアは祈祷書を開いた。
そこにある四つの名前を、暗い部屋の中で見せる。
ミナ。
エナ。
ルイ。
トマ。
「あります」
静かに言う。
「ここにも」
ミナが少しだけ笑いそうになり、でも泣きそうにもなって、結局何も言えずに目を伏せる。
エナはその頁をじっと見つめ、ルイは指先で自分の名前の近くへ触れた。トマはしばらく見てから、小さく息を吐く。
リゼが土間の壁へ背を預ける。
「本舎は残ってる」
その言葉で、部屋がまた静かになる。
そうだ。
逃げた。
町は出た。
でも、白い家も北舎も本舎も、まだなくなったわけじゃない。
世界の根っこは、少しも変わっていない。
セシアは祈祷書を閉じた。
「……はい」
認めるしかない。
「私たちだけじゃ、あれは止められませんでした」
その言葉は敗北にも聞こえる。
でも、ただの敗北ではなかった。
止められなかった。
それでも、この四人だけは白い流れの外へ出せた。
それもまた、本当だった。
リゼはそれ以上何も言わなかった。
代わりに、壁際の古い棚を払い、毛布代わりの布をかける。寝る場所を作る。水を置く。火は焚かない。夜のうちは暗いままでいい。
その動きを見ながら、セシアはふと思う。
世界は変えられなかった。
でも、生活は作れるかもしれない。
ミナが井戸の水を見つめる。
エナが自分の袖を握る。
ルイが床のきしみを確かめるように足を動かす。
トマはまだ少し眠そうな顔で、祈祷書の方を見ていた。
あまりにも小さなものだ。
それでも、確かに生活の始まりみたいに見えた。
夜が完全に落ちるころには、六人とももう口数が少なくなっていた。
疲れ切っているのもある。
けれど、今はまだ、終わったことよりも残っていることの方が大きい。
あの流れは、明日もどこかで続くのだろう。
それでもセシアは、祈祷書を胸に抱いたまま思う。
少なくともここには、もう番号で呼ばれる者はいない。
今夜はそれでいい。
窓の外では、風が草を揺らしていた。
町の灯りは、もう見えなかった。