表示設定
表示設定
目次 目次




嘘と真実 ―2―

ー/ー



「【ソフィアのお気に入りの髪色は桃色】である」

「……それは――」


 嘘か、真実か。モニカは答えることを躊躇った。ソフィアはオシャレや流行といったものに敏感で、クラスメイトたちの中では一番身だしなみに気を使うタイプだ。頭のてっぺんから爪の先まで、当然服や髪色までこだわりっている。今の淡い紫の髪色も、地毛ではなく染めている染髪である。桃色にも染めたことはあるはずだ。

 問題は、桃色の髪をソフィアが気に入っているのか、というところにある。


(今のソフィアの髪色は薄紫……ソフィアならきっと気に入った髪色でもしばらくしたら気分で変えそうだよね……)


 思考を巡らせる。『全知の鍵』も使わずにここまで頭を働かせたのは随分久しぶりのことで、ショートしそうになる脳内を整理しながら情報を取り出していく。
 並列思考処理や、大量の情報処理という分野において、モニカは誰よりも秀でていた。『全知の鍵』の影響もあるだろうが、モニカ本人の資質が大きい。間違え探しはもちろん、思考の処理能力が絡む問題は易々と解き明かすことができる。
 モニカは過去の記憶から、ソフィアの癖や傾向を読み取っていく。ソフィアが言っていた好きな色、着ていたファッションの方向性。これまでの足跡をくまなく探して、モニカは推測する。


(答えは……嘘? でも――)


 違和感。

 何かを見落としている。そんな気がした。何か、忘れてはいけないことを、忘れているような感覚がする。

 ソフィアと出会って数ヶ月の間、同じ時を過ごした。それほどお気に入りの髪色なら、一度くらいは桃色に染めるはずなのに、これまでソフィアが髪を桃色にしたことはない。何度も髪色を変えてオシャレを楽しんでいたのにも関わらずだ。


(間違いないはず……なのに、違和感が拭えない……)


 この状況から抜け出せるかもしれない方法が一つだけある。だが、それは賭けになる手段だ。


「……()()!」


 モニカは意を決して声に出した。一度しか使うことのできない『質問』の使い時はここしかない。モニカはそう判断して、答えを絞り込める質問を考える。
 この問題の答えは嘘である、それがモニカの考え。だが、この答えを確定させるための質問はできない。そして、仮に、もし質問がモニカの予想とは違ったものであった場合、答えを探すことがかえって難しくなってしまう可能性もある。だから、この質問は賭けなのだ。


(…………あっ)


 ふと、一つの考えがモニカの頭を過ぎる。

 もし、この問題が真実なのだとすれば、ソフィアはお気に入りの髪色が他にあるのにも関わらず、決してその色には染めず、コロコロと髪色を変えていることになる。その理由は一体なんだろうか?


(何か、()()()()()()()()()()()()()


 ソフィアが桃色を嫌って避けているのだとすれば、染めない理由にはなり得る。だが、そうではないという確信がモニカにはある。


(ソフィアが持っていたバレッタは桃色だった……)


 淡いピンク色の美しいバレッタ。身に着けもせず、大切に保管されていたその装飾品は、確かに桃色をしていた。しかもそれは、ソフィアが旭から貰った贈り物だった。


(なら、私がする質問は一つ……!)


 桃色がお気に入りの髪色なのにも関わらず、頑なに髪を桃色に染めない理由。それは――


「旭!」


 一足先に試合を終え、観戦席でフィスティシアと共に試合を眺めていた男に向かってモニカは叫んだ。微睡んでウトウトしていた旭はモニカの声を聞いて背中を跳ねさせて目を開ける。


()()()()()()()

「……それ、答えなきゃいけないやつか?」

「うん!」


 ため息をついて旭は口を開く。


「まぁ、強いて言うなら……()()だな」


 これで、すべてが繋がった。ソフィアは知っていたのだ。旭の嫌いな色が桃色だということを。ソフィアは恋する少女。旭に振り向いてもらうために調べたのだろう。そして知った。

 自分の好きな桃色が、旭の嫌いな色だということを。

 だから、ソフィアが髪を桃色に染めることはなかった。髪型や髪色を頻繁に変えていたのは、旭の好みを探るためだろう。


「答えは()()、だよ。メルティ」

「――正解です!」


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 嘘と真実 ―3―


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「【ソフィアのお気に入りの髪色は桃色】である」
「……それは――」
 嘘か、真実か。モニカは答えることを躊躇った。ソフィアはオシャレや流行といったものに敏感で、クラスメイトたちの中では一番身だしなみに気を使うタイプだ。頭のてっぺんから爪の先まで、当然服や髪色までこだわりっている。今の淡い紫の髪色も、地毛ではなく染めている染髪である。桃色にも染めたことはあるはずだ。
 問題は、桃色の髪をソフィアが気に入っているのか、というところにある。
(今のソフィアの髪色は薄紫……ソフィアならきっと気に入った髪色でもしばらくしたら気分で変えそうだよね……)
 思考を巡らせる。『全知の鍵』も使わずにここまで頭を働かせたのは随分久しぶりのことで、ショートしそうになる脳内を整理しながら情報を取り出していく。
 並列思考処理や、大量の情報処理という分野において、モニカは誰よりも秀でていた。『全知の鍵』の影響もあるだろうが、モニカ本人の資質が大きい。間違え探しはもちろん、思考の処理能力が絡む問題は易々と解き明かすことができる。
 モニカは過去の記憶から、ソフィアの癖や傾向を読み取っていく。ソフィアが言っていた好きな色、着ていたファッションの方向性。これまでの足跡をくまなく探して、モニカは推測する。
(答えは……嘘? でも――)
 違和感。
 何かを見落としている。そんな気がした。何か、忘れてはいけないことを、忘れているような感覚がする。
 ソフィアと出会って数ヶ月の間、同じ時を過ごした。それほどお気に入りの髪色なら、一度くらいは桃色に染めるはずなのに、これまでソフィアが髪を桃色にしたことはない。何度も髪色を変えてオシャレを楽しんでいたのにも関わらずだ。
(間違いないはず……なのに、違和感が拭えない……)
 この状況から抜け出せるかもしれない方法が一つだけある。だが、それは賭けになる手段だ。
「……|質《・》|問《・》!」
 モニカは意を決して声に出した。一度しか使うことのできない『質問』の使い時はここしかない。モニカはそう判断して、答えを絞り込める質問を考える。
 この問題の答えは嘘である、それがモニカの考え。だが、この答えを確定させるための質問はできない。そして、仮に、もし質問がモニカの予想とは違ったものであった場合、答えを探すことがかえって難しくなってしまう可能性もある。だから、この質問は賭けなのだ。
(…………あっ)
 ふと、一つの考えがモニカの頭を過ぎる。
 もし、この問題が真実なのだとすれば、ソフィアはお気に入りの髪色が他にあるのにも関わらず、決してその色には染めず、コロコロと髪色を変えていることになる。その理由は一体なんだろうか?
(何か、|染《・》|め《・》|ら《・》|れ《・》|な《・》|い《・》|理《・》|由《・》|が《・》|あ《・》|る《・》|は《・》|ず《・》)
 ソフィアが桃色を嫌って避けているのだとすれば、染めない理由にはなり得る。だが、そうではないという確信がモニカにはある。
(ソフィアが持っていたバレッタは桃色だった……)
 淡いピンク色の美しいバレッタ。身に着けもせず、大切に保管されていたその装飾品は、確かに桃色をしていた。しかもそれは、ソフィアが旭から貰った贈り物だった。
(なら、私がする質問は一つ……!)
 桃色がお気に入りの髪色なのにも関わらず、頑なに髪を桃色に染めない理由。それは――
「旭!」
 一足先に試合を終え、観戦席でフィスティシアと共に試合を眺めていた男に向かってモニカは叫んだ。微睡んでウトウトしていた旭はモニカの声を聞いて背中を跳ねさせて目を開ける。
「|嫌《・》|い《・》|な《・》|色《・》|は《・》|何《・》|?《・》」
「……それ、答えなきゃいけないやつか?」
「うん!」
 ため息をついて旭は口を開く。
「まぁ、強いて言うなら……|桃《・》|色《・》だな」
 これで、すべてが繋がった。ソフィアは知っていたのだ。旭の嫌いな色が桃色だということを。ソフィアは恋する少女。旭に振り向いてもらうために調べたのだろう。そして知った。
 自分の好きな桃色が、旭の嫌いな色だということを。
 だから、ソフィアが髪を桃色に染めることはなかった。髪型や髪色を頻繁に変えていたのは、旭の好みを探るためだろう。
「答えは|真《・》|実《・》、だよ。メルティ」
「――正解です!」