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嘘と真実

ー/ー



 両雄は結界を去っていく。残るものたちに、冷ややかな熱意をもたらし、静かに試合は進行していく。圧倒的な優勝候補を前に畏怖する者、その勇姿を見て同じように燃え上がる者、あるいは、目の前の戦いにしか集中していない者まで。数多の強者たちが戦場を舞う。


 ……1つの結界の戦い以外は。


「いくよ! メルティ!」

「勝負です! モニカ!」


 だだっ広い結界を持て余し、中央にちょこんと座る二人の魔法使いたちが語らう。これが試合だということを忘れていそうな雰囲気を漂わせ、モニカとメルティはこれ以上ないくらいに盛り上がっていた。


「【パーシーは抱き枕がないと眠れない】!」

「う、()! そんなことないと思います!」

「ざ〜んねん! 本当でした〜!」


 二人の考えたルールはシンプル。出題者が問題を出し、それに対して回答者が『嘘か真実か』を当てる。当然、お互いに魔法の使用は禁止。先に三回当てることができた方の勝ち。問題への質問は一回まで可能だ。現在はメルティが一回、モニカが一回当てている状況である。


「ちょっと! 何勝手に人の秘密暴露してんの!?」

「これも勝ち上がるためだから! っていうか、パーシーは自分の相手に集中してよね!」


 顔を真っ赤にして恥ずかしそうに声を荒らげるパーシーを黙らせて、モニカは再びメルティと向かい合って勝負に戻る。


「じゃあ、次はメルティが出題者だね」


 このゲームの勝ち方はとても単純だ。一つは、出題者となった場合、相手が絶対に知りようのない問題を出して正解させないこと。答えが意外であればあるほど効果的だ。もう一つは、相手の嘘を見抜くこと。一度しかできない質問を駆使して嘘を見破ることがこのゲームの勝機である。


「そ、【ソフィアは朝風呂派である】!」

「えぇ〜! そうなの、ソフィア!?」

「私に聞くのは反則でしょ!? あとヴァンちゃんは後でお仕置ね!?」


 他の結界内での戦いにある意味大きな影響を及ぼす二人の勝負。ゲームの内容が気になりすぎて戦いに身が入らない生徒も見られる。特にパーシーとソフィアはいつどんな秘密が暴露されるのかひやひやしながら戦うこととなっている。


「ふふふ……ちょっとズルいけど、今のでわかっちゃったもんね! 嘘だったらソフィアはあんな反応しないはず! だから答えは()()だよ!」

「えへへ、ごめんなさい、嘘です」


 誇らしげに笑い、メルティは嘘をつく。


「な、なんで!? じゃあソフィアは――」

「モニカ。女の武器は嘘と演技だよ」


 何の計画も合図もなく、まるで、本当に咄嗟に反応したように答えたソフィア。嘘と演技を駆使しして、メルティとソフィアは騙す。モニカと目が合ったソフィアは甘やかな毒のような笑みを浮かべて煽る。それもすべて、モニカを陥れるための行動だ。
 こと嘘において、騙すことも、見破ることも、メルティの右に出る者はいない。これはあくまでメルティが嘘の魔法を使っていたら、の話ではあるが、それでも、メルティには()()()()()()()()。嘘をつく人間の特徴的な仕草、嘘を信じ込ませるための手段、嘘の魔法によって磨かれた、人を騙す才能がメルティにはあった。


「……【アリシアは水風呂派である】!」

「それは本当ですね、えへへ」

「むぅぅぅ!! なんでわかるの!? さっきまで上手くいってたのに〜!」


 これで戦況は二対一。モニカは後がない状態になってしまった。そもそも、このゲームにおいて、有利不利は明らかなものだ。嘘の魔法の使い手で、嘘をつくことにも、嘘をみやぶることにも長けたメルティと、正直者であるあまり、まともに嘘をつくことができないモニカ。メルティに先手を打たれた時点で、どちらが勝つかは言うまでもないものとなってしまった。


(私にはもう後がない……次で()()()()を使うのは悪手? あと一回のタイミングで勝利を確定させるために使いたい……)


 どのみち、勝つためには次の回答のターンで正解を当てることは必須だ。モニカが嘘つき勝負でメルティに勝つことは不可能に近い。このゲームがメルティに有利すぎるからだ。
 モニカに勝機があるとすれば、それは自分しか知りえない情報がモニカの方が多いこと。そして、モニカが()()()()()()()()()()()()()ことである。


「【ソフィアのお気に入りの髪色は桃色】である」

「それは――」


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 両雄は結界を去っていく。残るものたちに、冷ややかな熱意をもたらし、静かに試合は進行していく。圧倒的な優勝候補を前に畏怖する者、その勇姿を見て同じように燃え上がる者、あるいは、目の前の戦いにしか集中していない者まで。数多の強者たちが戦場を舞う。
 ……1つの結界の戦い以外は。
「いくよ! メルティ!」
「勝負です! モニカ!」
 だだっ広い結界を持て余し、中央にちょこんと座る二人の魔法使いたちが語らう。これが試合だということを忘れていそうな雰囲気を漂わせ、モニカとメルティはこれ以上ないくらいに盛り上がっていた。
「【パーシーは抱き枕がないと眠れない】!」
「う、|嘘《・》! そんなことないと思います!」
「ざ〜んねん! 本当でした〜!」
 二人の考えたルールはシンプル。出題者が問題を出し、それに対して回答者が『嘘か真実か』を当てる。当然、お互いに魔法の使用は禁止。先に三回当てることができた方の勝ち。問題への質問は一回まで可能だ。現在はメルティが一回、モニカが一回当てている状況である。
「ちょっと! 何勝手に人の秘密暴露してんの!?」
「これも勝ち上がるためだから! っていうか、パーシーは自分の相手に集中してよね!」
 顔を真っ赤にして恥ずかしそうに声を荒らげるパーシーを黙らせて、モニカは再びメルティと向かい合って勝負に戻る。
「じゃあ、次はメルティが出題者だね」
 このゲームの勝ち方はとても単純だ。一つは、出題者となった場合、相手が絶対に知りようのない問題を出して正解させないこと。答えが意外であればあるほど効果的だ。もう一つは、相手の嘘を見抜くこと。一度しかできない質問を駆使して嘘を見破ることがこのゲームの勝機である。
「そ、【ソフィアは朝風呂派である】!」
「えぇ〜! そうなの、ソフィア!?」
「私に聞くのは反則でしょ!? あとヴァンちゃんは後でお仕置ね!?」
 他の結界内での戦いにある意味大きな影響を及ぼす二人の勝負。ゲームの内容が気になりすぎて戦いに身が入らない生徒も見られる。特にパーシーとソフィアはいつどんな秘密が暴露されるのかひやひやしながら戦うこととなっている。
「ふふふ……ちょっとズルいけど、今のでわかっちゃったもんね! 嘘だったらソフィアはあんな反応しないはず! だから答えは|真《・》|実《・》だよ!」
「えへへ、ごめんなさい、嘘です」
 誇らしげに笑い、メルティは嘘をつく。
「な、なんで!? じゃあソフィアは――」
「モニカ。女の武器は嘘と演技だよ」
 何の計画も合図もなく、まるで、本当に咄嗟に反応したように答えたソフィア。嘘と演技を駆使しして、メルティとソフィアは騙す。モニカと目が合ったソフィアは甘やかな毒のような笑みを浮かべて煽る。それもすべて、モニカを陥れるための行動だ。
 こと嘘において、騙すことも、見破ることも、メルティの右に出る者はいない。これはあくまでメルティが嘘の魔法を使っていたら、の話ではあるが、それでも、メルティには|刻《・》|み《・》|込《・》|ま《・》|れ《・》|て《・》|い《・》|る《・》。嘘をつく人間の特徴的な仕草、嘘を信じ込ませるための手段、嘘の魔法によって磨かれた、人を騙す才能がメルティにはあった。
「……【アリシアは水風呂派である】!」
「それは本当ですね、えへへ」
「むぅぅぅ!! なんでわかるの!? さっきまで上手くいってたのに〜!」
 これで戦況は二対一。モニカは後がない状態になってしまった。そもそも、このゲームにおいて、有利不利は明らかなものだ。嘘の魔法の使い手で、嘘をつくことにも、嘘をみやぶることにも長けたメルティと、正直者であるあまり、まともに嘘をつくことができないモニカ。メルティに先手を打たれた時点で、どちらが勝つかは言うまでもないものとなってしまった。
(私にはもう後がない……次で|あ《・》|の《・》|秘《・》|密《・》を使うのは悪手? あと一回のタイミングで勝利を確定させるために使いたい……)
 どのみち、勝つためには次の回答のターンで正解を当てることは必須だ。モニカが嘘つき勝負でメルティに勝つことは不可能に近い。このゲームがメルティに有利すぎるからだ。
 モニカに勝機があるとすれば、それは自分しか知りえない情報がモニカの方が多いこと。そして、モニカが|嘘《・》|を《・》|つ《・》|く《・》|こ《・》|と《・》|に《・》|慣《・》|れ《・》|て《・》|い《・》|な《・》|い《・》ことである。
「【ソフィアのお気に入りの髪色は桃色】である」
「それは――」