野生の勘
ー/ー 澪みたいな冷静な分析は私にはできないけど、私には野生の勘みたいなのがあった。それは生まれつきで、たまにその人の本心が見通せる。最近の澪はなんだか悲しそうだった。
確信はないけど家族関係かな、とうっすら思っていた。その中途半端な仮説は澪の帰りの表情によって証明された。
澪の役に立ちたかったから急いで近くの店を探したし、途中は何の意味もないしょうもない話で盛り上がった。
澪の屈託のない笑みをみて、裏の部分を深く再認識する。
家に帰りたくないほど嫌なことってなんなの?何でそんな辛そうなのに、完璧に隠してしまうの?
なんで相談してくれなかったのか、という自分勝手でわがままな疑問は心の何処かに落としておいた。
夜ご飯は大丈夫なのか、心配になって聞いた。今までの私の仮説はもしかしたら間違っているかもしれないし、澪は一人でも解決できるかもしれないし。
でも、違った。さっきまでの本当の笑みは消え、どこか距離を置いたような顔になる。無理して嘘つく様子が、もう見るに耐えなくて...
「何で嘘つくの?」
言ってしまった。嘘をつく澪の目はどこか優しかったから、そんな人が家で苦しい目にあってるのなら、少しでも良いから力になりたかった。だって友達じゃん。
「...なんでそんなに悲しそうな顔してるの?ヒマリ」
え?私が?あ...
机に一粒、二粒と水滴が落ちてきた。私、もしかして泣いてるの?顔に触れるとそこには確かに涙があった。
「ごめん、私じゃないのに」
本当に泣く権利があるのは澪なのに。ぼやけた視界に映る澪は私にハンカチを渡してくれた。
正直、急に泣きだしたヒマリを見て何がなんだか分からなかった。私に嘘をつかれたことが悲しかったのか?でも表面上の悲しみというよりも、心の奥まで広がるような温かい悲しみだった。凍りついた心が溶かされるような感覚だった。
「ごめん、私じゃないのに」
意味が分かるはずもないこの一言にヒマリの感情の全てが込められている気がした。
乾いた涙しか出ないこの頭で、私の全てが見透かされていることを知ってしまった。もう後には引けなかった。
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