【3】
ー/ー
「さあ、もういいか? じゃあ、……行こう」
それだけ告げると、手のスマホをポケットに入れてバラ園を出た。返事なんてないのは承知の上だ。
そのまま真っ直ぐ向かった建物で、ドアから入ってすぐのカウンターに立ってる厳つい制服に声を掛ける。
「──恋人を、殺しました」
眼の前の警官の顔に緊張が走り、隣のもう一人が内線だろう受話器を上げるのが目に入った。
ポケットの中のスマホのディスプレイには、笑顔の葉菜子の画像。バラを見せても、話し掛けても、何も反応は返らない。
出迎えてくれたお気楽な笑顔が無性にムカついたんだ。
俺が投げつけた八つ当たりでしかない言葉に動揺して、胸元にすがりつこうとした恋人を咄嗟に振り払ってた。
狭いダイニングキッチンで、倒れた葉菜子はすぐ後ろにあったテーブルに頭をぶつけた、らしい。
最初は気が昂ってて何も考えられなかった。
料理の意味に、……何故呼ばれたのかにようやく思い当たった俺が抱き起した彼女は息をしてなかったんだ。
一晩中すぐ傍についてたのに、二度と目を開けることはなかった葉菜子。今もそのまま、あの部屋にいる。
殺す気なんかなかった。「殺した」わけじゃないのかもしれない。
……それが、どうした。俺が葉菜子を死なせたのだけは間違いないんだよ。
忠告も聞かずに相変わらず入れている、ポケットの中のスマホの彼女には温もりなんてなかった。
黄金週間。
本当なら、今頃は俺も葉菜子と楽しく幸せに過ごせてたはずだった。それこそバラ園で腕組んで写真撮ってた、かもしれない。
ぶち壊したのは俺自身だ。全部が、自業自得。愚かな男が自ら転げ落ちただけなんだよ。
俺の大事な、──俺を愛して気遣ってくれた恋人は、もう永遠に還らない。
~END~
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