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第2話 父の教えと、決意の光

ー/ー



仰向けに転がったまま、ランタンに照らされた光を失ったコアを見つめる。

「もう会えないかもしれない……」

自分のアホな行動を後悔し、半泣きになっていたその時だった。

不意に、その遺物コアが再び明るく光り出したのだ。

ヤードは弾かれたように飛び起きると、コアを両手で大切に包み込み、「ごめんなさい!」と必死に謝った。

その純粋な(?)想いが伝わったのか、小屋の中を照らしていた光が、内壁の一点へとスゥッと収束していく。

ヤードは長年の遺物研究と特異な勘で、すぐにそれが何を意味するのかを理解した。

コアを両手に抱えたまま、小屋の外へと飛び出す。外は猛烈な嵐だった。

だが、今のヤードにとってそんなことは全く気にならなかった。「また、あの綺麗な人に会えるかもしれない!」

大雨が打ち付ける中、ヤードはコアを天高く掲げた。

『シュピン』と音を残し、コアから放たれた一筋の光の線が、分厚い雨雲を切り裂いて、はるか遠く――絶対防壁(超巨大山脈)の中腹をピタリと指し示した。

「……絶対、会いに行く」

ヤードは心に決めた。会えるかもしれない。そう思うと、いても立ってもいられなくなる。

ずぶ濡れになりながら、ヤードは大きく深呼吸をして自分を落ち着かせ、冷静に考えた。

今すぐ行きたい。でも、今の自分の子供の体では、あの死の山「絶対防壁」になんて絶対にたどり着けない。賢いヤードは、その残酷な現実をちゃんと理解していた。

準備が必要だ。それと、もう少し体が大きくなるのを待たなければ。

冷静さを取り戻したヤードは小屋に戻り、布で優しくコアを包み込んだ。

さて、どこに隠しておこうか。宝箱の中は危険だ。リヴ姉ちゃんがひょんなことで持っていかないとも限らない。いや、父ちゃんも母ちゃんも危険だ。誰にも見つからない場所……よし、穴を掘って埋めよう。

ヤードは家の裏手に回り、自宅と作業小屋の間の狭い隙間に穴を掘って、コアを深く埋めた。

(待っててよ! 絶対会いに行くからね!)

決意を胸に小屋の中に戻ったヤードは――再び、あの黒いスカートの中を想像して「ハァ……ハァ……」と荒い息を吐くのであった。

(あ〜もう、どうしていいかわからないこの気持ち、どうすればいいのー!)

ヤードは心の中で叫んだ。

(あ〜、何も手につかないよ。ハァ……ハァ……)

ひとしきり「ハァハァ」のピークを過ぎた頃、ヤードは雨音が止んでいることに気づいた。そして、少し頭を冷やそうと小屋の外に出ることにした。

相変わらず海はひどく時化ているが、分厚い雨雲の隙間から太陽の光が差し込み、荒れ狂う海を照らしている。強い潮風がヒュンヒュンと鳴いていた。

ヤードは小屋のドアを閉め、船着き場の方へと歩き出した。トボトボと歩くその背中は、まだ小さく弱々しい子供のものだ。

「おっ、どうしたヤー坊。一人で散歩かい?」

雨が上がったことで船の様子を見に来ていた、二軒隣のおじさんが話しかけてきた。

「どうした、いつもの元気がないじゃないか」

「うん……そう、散歩してるんだ。海が見たくてね」

「おうおう、ヤー坊も大人びた事を言うようになったもんだ! 海なんか毎日見てんじゃねーか、ワハハ!」

正直、今のヤードは誰にも話しかけてほしくなかったのだが、おじさんは構わず話を続ける。

「さてはヤー坊……お前、恋をしたな!」

『恋』。

ヤードはその言葉自体を知らなかった。今はそっとしておいてほしかったが、その『恋』という言葉の意味だけは無性に知りたくなった。

「おじさん、恋ってなに?」

おじさんはニヤニヤしながら答える。

「おう、恋ってのはな……ほら、お前の父ちゃんと母ちゃん居るだろ? あんな感じだ。相手を死ぬほど好きになる事だぜ」

だが、おじさんは自分で何を言っているのか照れくさくなったのか、ごまかすように「まぁ、そんな感じだ!」と言って、そそくさとどこかへ行ってしまった。

正直、言っている意味がまったくわからない。

(父ちゃんと母ちゃんが、死ぬほど好きあってる……?)

十二歳のヤードにはピンとこなかった。父親と母親が、子供たちの寝ている夜に『恋』し、激しく愛し合っていることなど、知る由もなかったのだから。

トボトボと歩きながら、ヤードは自分の家の方を振り返る。

あんな「ハァハァ」な気持ちになり、下腹部を熱くさせた自分への戸惑いと、得体の知れない罪悪感がヤードを支配していた。

(あー、家に帰り辛い……父ちゃんと母ちゃんの顔、まともに見れないよ。リヴ姉ちゃんに知られたら、もう死のう。あ〜……)

周りはすでに少し薄暗くなってきていた。このまま歩いていてもしょうがない。帰るしかない。そう覚悟を決めた時、家の方から大きな声が響いた。

「おーい、ヤード〜! おーい!」

父親のジェイだ。ジェイは小走りでヤードの元へ来ると、豪快に笑った。

「どうした、あまりに遅いから小屋に見に行ったらお前がいねぇからよ。もしかしてと思ってな、ガハハ!」

実はジェイは、例の二軒隣のおじさんから「息子が恋の病にかかってんじゃないか」と吹き込まれており、息子の状況をだいたい察していたのだ。

そう、父親ジェイもまた、根っからのスケベであった。

ヤードは、「父ちゃんなら教えてくれるかもしれない」と思った。あの事への罪悪感よりも、未知への探究心の方が勝ったのだ。思い切って、父親に尋ねてみる。

「ねぇ父ちゃん。『恋』って何?」

そんな息子の真剣な問いを、ジェイは茶化さなかった。

「そうだな……父ちゃんが母ちゃんを好きになって、リヴとお前が生まれた。相手をな、好きになって……好きすぎてどうしていいかわからなくなる感覚だ。それはな、病だ。だがな、ひとつだけその病を治す方法がある。それはな、相手に『好きだ』って気持ちを、思い切りぶつけるしかねぇんだよ」

「父ちゃんは、母ちゃんに恋をしたの?」

ヤードの探究心は止まらない。

「ああ、したさ! 思いっきりな! 二回断られても、父ちゃんはくじけなかったぞ、ガハハ!」

初めて聞く両親の真実にヤードは驚愕し、そして、少しホッとした。なぜなら、自分がおかしくなったわけじゃないとわかったからだ。

ジェイは優しく息子の肩を叩いて言う。

「ヤード、お前が誰に恋をしたかなんて、そんな野暮なことは聞かねー。だがな、お前も思いっきり、その想いをぶつけてこい! ……ただ最後に、これだけは言っておくぞ。引き際だけは見定めろよな。まぁ、俺の息子ならわかるか!」

そして、ジェイはまたニヤリと笑った。

「そうションボリするなヤード。大丈夫だ、男は皆そうやって大人になるんだ。母ちゃんと姉ちゃんは知らねぇからよ! ……でも、あんまり下腹部をこすりすぎるなよ、血が出るぞ! ガハハガハハ!」

ヤードは自分の全てを完璧に見透かされているような気がして、心底驚愕していた。

(は? あのままだと血が出るの!? 父ちゃんは、何かの能力者なんじゃないか……!?)

ヤードは真剣にそう思っていた。

一方、父親のジェイは、息子のヤードが一人小屋で何をしていたのかを、少し『行き過ぎた方向』で解釈し、勝手に合点がいっていた。

(そうかそうか、ヤードもついに女に興味をもつ年頃になったか。うん、順調に成長しているな)

ジェイは心の中で、息子の健やかな成長を嬉しく思っていたのだ。

そう、父親ジェイは、ただ「スケベ心をよく知る」ヤードの良き理解者であり、スケベの能力が高いだけの、ただの親父だった。

だが、その真実をまだ幼いヤードは、知る由もなかったのだ。

ヤードは父親ジェイに連れられて、家に入った。

ジェイの大きな背中の後ろに隠れるようにしていると、案の定、母親のルーシが厳しい声で飛んできた。

「ヤード! あんたお昼も帰って来ないで、どこほっつき歩いてたの! そんな泥だらけになって……ほら脱ぎなさい、洗うから! 全くしょうがない子だね」

有無を言わさず、無理やり上のシャツを脱がされる。

「ほら、ズボンも脱いで!」

「や、やめてよ、母ちゃん! 僕、もう自分で脱げるよ〜!」

ヤードはズボンの腰をガシッと持って、絶対に降ろされないように必死で抵抗した。

母親ルーシは手を止め、チラッとジェイを見た。

ジェイは、無言で『うん』と頷いて返した。

「……全く」

ルーシは小さく息を吐くと、「そこの桶にお湯沸かしてあるから、自分で体ふくのよ!」と言って背を向けた。

すると、一部始終を見ていた姉のリヴが、面白そうにヤードをいじり始めた。

「ヤード、何恥ずかしがってるのー? 姉ちゃんが脱がしてあげる!」

リヴはやいやいと言いながら、面白がってヤードのズボンを引きずり降ろそうと飛びかかってくる。

「やめろよ、姉ちゃん!!」

ヤードは必死になって、ズボンを脱がされないように押さえた。

――さっきまで抱えていた、得体の知れない罪悪感が薄れていく。

ヤードはいつの間にか、いつもの、この騒がしくも温かい家族の生活に、自然と戻されて行くのだった。






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「もう会えないかもしれない……」
自分のアホな行動を後悔し、半泣きになっていたその時だった。
不意に、その遺物コアが再び明るく光り出したのだ。
ヤードは弾かれたように飛び起きると、コアを両手で大切に包み込み、「ごめんなさい!」と必死に謝った。
その純粋な(?)想いが伝わったのか、小屋の中を照らしていた光が、内壁の一点へとスゥッと収束していく。
ヤードは長年の遺物研究と特異な勘で、すぐにそれが何を意味するのかを理解した。
コアを両手に抱えたまま、小屋の外へと飛び出す。外は猛烈な嵐だった。
だが、今のヤードにとってそんなことは全く気にならなかった。「また、あの綺麗な人に会えるかもしれない!」
大雨が打ち付ける中、ヤードはコアを天高く掲げた。
『シュピン』と音を残し、コアから放たれた一筋の光の線が、分厚い雨雲を切り裂いて、はるか遠く――絶対防壁(超巨大山脈)の中腹をピタリと指し示した。
「……絶対、会いに行く」
ヤードは心に決めた。会えるかもしれない。そう思うと、いても立ってもいられなくなる。
ずぶ濡れになりながら、ヤードは大きく深呼吸をして自分を落ち着かせ、冷静に考えた。
今すぐ行きたい。でも、今の自分の子供の体では、あの死の山「絶対防壁」になんて絶対にたどり着けない。賢いヤードは、その残酷な現実をちゃんと理解していた。
準備が必要だ。それと、もう少し体が大きくなるのを待たなければ。
冷静さを取り戻したヤードは小屋に戻り、布で優しくコアを包み込んだ。
さて、どこに隠しておこうか。宝箱の中は危険だ。リヴ姉ちゃんがひょんなことで持っていかないとも限らない。いや、父ちゃんも母ちゃんも危険だ。誰にも見つからない場所……よし、穴を掘って埋めよう。
ヤードは家の裏手に回り、自宅と作業小屋の間の狭い隙間に穴を掘って、コアを深く埋めた。
(待っててよ! 絶対会いに行くからね!)
決意を胸に小屋の中に戻ったヤードは――再び、あの黒いスカートの中を想像して「ハァ……ハァ……」と荒い息を吐くのであった。
(あ〜もう、どうしていいかわからないこの気持ち、どうすればいいのー!)
ヤードは心の中で叫んだ。
(あ〜、何も手につかないよ。ハァ……ハァ……)
ひとしきり「ハァハァ」のピークを過ぎた頃、ヤードは雨音が止んでいることに気づいた。そして、少し頭を冷やそうと小屋の外に出ることにした。
相変わらず海はひどく時化ているが、分厚い雨雲の隙間から太陽の光が差し込み、荒れ狂う海を照らしている。強い潮風がヒュンヒュンと鳴いていた。
ヤードは小屋のドアを閉め、船着き場の方へと歩き出した。トボトボと歩くその背中は、まだ小さく弱々しい子供のものだ。
「おっ、どうしたヤー坊。一人で散歩かい?」
雨が上がったことで船の様子を見に来ていた、二軒隣のおじさんが話しかけてきた。
「どうした、いつもの元気がないじゃないか」
「うん……そう、散歩してるんだ。海が見たくてね」
「おうおう、ヤー坊も大人びた事を言うようになったもんだ! 海なんか毎日見てんじゃねーか、ワハハ!」
正直、今のヤードは誰にも話しかけてほしくなかったのだが、おじさんは構わず話を続ける。
「さてはヤー坊……お前、恋をしたな!」
『恋』。
ヤードはその言葉自体を知らなかった。今はそっとしておいてほしかったが、その『恋』という言葉の意味だけは無性に知りたくなった。
「おじさん、恋ってなに?」
おじさんはニヤニヤしながら答える。
「おう、恋ってのはな……ほら、お前の父ちゃんと母ちゃん居るだろ? あんな感じだ。相手を死ぬほど好きになる事だぜ」
だが、おじさんは自分で何を言っているのか照れくさくなったのか、ごまかすように「まぁ、そんな感じだ!」と言って、そそくさとどこかへ行ってしまった。
正直、言っている意味がまったくわからない。
(父ちゃんと母ちゃんが、死ぬほど好きあってる……?)
十二歳のヤードにはピンとこなかった。父親と母親が、子供たちの寝ている夜に『恋』し、激しく愛し合っていることなど、知る由もなかったのだから。
トボトボと歩きながら、ヤードは自分の家の方を振り返る。
あんな「ハァハァ」な気持ちになり、下腹部を熱くさせた自分への戸惑いと、得体の知れない罪悪感がヤードを支配していた。
(あー、家に帰り辛い……父ちゃんと母ちゃんの顔、まともに見れないよ。リヴ姉ちゃんに知られたら、もう死のう。あ〜……)
周りはすでに少し薄暗くなってきていた。このまま歩いていてもしょうがない。帰るしかない。そう覚悟を決めた時、家の方から大きな声が響いた。
「おーい、ヤード〜! おーい!」
父親のジェイだ。ジェイは小走りでヤードの元へ来ると、豪快に笑った。
「どうした、あまりに遅いから小屋に見に行ったらお前がいねぇからよ。もしかしてと思ってな、ガハハ!」
実はジェイは、例の二軒隣のおじさんから「息子が恋の病にかかってんじゃないか」と吹き込まれており、息子の状況をだいたい察していたのだ。
そう、父親ジェイもまた、根っからのスケベであった。
ヤードは、「父ちゃんなら教えてくれるかもしれない」と思った。あの事への罪悪感よりも、未知への探究心の方が勝ったのだ。思い切って、父親に尋ねてみる。
「ねぇ父ちゃん。『恋』って何?」
そんな息子の真剣な問いを、ジェイは茶化さなかった。
「そうだな……父ちゃんが母ちゃんを好きになって、リヴとお前が生まれた。相手をな、好きになって……好きすぎてどうしていいかわからなくなる感覚だ。それはな、病だ。だがな、ひとつだけその病を治す方法がある。それはな、相手に『好きだ』って気持ちを、思い切りぶつけるしかねぇんだよ」
「父ちゃんは、母ちゃんに恋をしたの?」
ヤードの探究心は止まらない。
「ああ、したさ! 思いっきりな! 二回断られても、父ちゃんはくじけなかったぞ、ガハハ!」
初めて聞く両親の真実にヤードは驚愕し、そして、少しホッとした。なぜなら、自分がおかしくなったわけじゃないとわかったからだ。
ジェイは優しく息子の肩を叩いて言う。
「ヤード、お前が誰に恋をしたかなんて、そんな野暮なことは聞かねー。だがな、お前も思いっきり、その想いをぶつけてこい! ……ただ最後に、これだけは言っておくぞ。引き際だけは見定めろよな。まぁ、俺の息子ならわかるか!」
そして、ジェイはまたニヤリと笑った。
「そうションボリするなヤード。大丈夫だ、男は皆そうやって大人になるんだ。母ちゃんと姉ちゃんは知らねぇからよ! ……でも、あんまり下腹部をこすりすぎるなよ、血が出るぞ! ガハハガハハ!」
ヤードは自分の全てを完璧に見透かされているような気がして、心底驚愕していた。
(は? あのままだと血が出るの!? 父ちゃんは、何かの能力者なんじゃないか……!?)
ヤードは真剣にそう思っていた。
一方、父親のジェイは、息子のヤードが一人小屋で何をしていたのかを、少し『行き過ぎた方向』で解釈し、勝手に合点がいっていた。
(そうかそうか、ヤードもついに女に興味をもつ年頃になったか。うん、順調に成長しているな)
ジェイは心の中で、息子の健やかな成長を嬉しく思っていたのだ。
そう、父親ジェイは、ただ「スケベ心をよく知る」ヤードの良き理解者であり、スケベの能力が高いだけの、ただの親父だった。
だが、その真実をまだ幼いヤードは、知る由もなかったのだ。
ヤードは父親ジェイに連れられて、家に入った。
ジェイの大きな背中の後ろに隠れるようにしていると、案の定、母親のルーシが厳しい声で飛んできた。
「ヤード! あんたお昼も帰って来ないで、どこほっつき歩いてたの! そんな泥だらけになって……ほら脱ぎなさい、洗うから! 全くしょうがない子だね」
有無を言わさず、無理やり上のシャツを脱がされる。
「ほら、ズボンも脱いで!」
「や、やめてよ、母ちゃん! 僕、もう自分で脱げるよ〜!」
ヤードはズボンの腰をガシッと持って、絶対に降ろされないように必死で抵抗した。
母親ルーシは手を止め、チラッとジェイを見た。
ジェイは、無言で『うん』と頷いて返した。
「……全く」
ルーシは小さく息を吐くと、「そこの桶にお湯沸かしてあるから、自分で体ふくのよ!」と言って背を向けた。
すると、一部始終を見ていた姉のリヴが、面白そうにヤードをいじり始めた。
「ヤード、何恥ずかしがってるのー? 姉ちゃんが脱がしてあげる!」
リヴはやいやいと言いながら、面白がってヤードのズボンを引きずり降ろそうと飛びかかってくる。
「やめろよ、姉ちゃん!!」
ヤードは必死になって、ズボンを脱がされないように押さえた。
――さっきまで抱えていた、得体の知れない罪悪感が薄れていく。
ヤードはいつの間にか、いつもの、この騒がしくも温かい家族の生活に、自然と戻されて行くのだった。