雪翼惨禍 ―3―
ー/ー 影の魔法は汎用性が低い。影を操ることしかできない使い勝手の悪さから、好んで使用する魔法使いはめったには存在しない。できることと言えば、影を媒介に武器を作るか、影を操って捕縛に利用するか。それも、影の大きさや深さに左右されるため、現実的には厳しいと言わざるを得ない。なら、なぜクロウはそんな使い勝手の悪い影の魔法を使っているのか。それは明白である。
「追え、”翼影”!」
攻撃、防御、索敵、知覚。すべてを兼ね備えた最適解は何か。その問いの先にクロウが辿り着いたのが、影による羽と翼の構成だった。
それに加え、クロウの並外れた魔力操作と知覚能力が、影の魔法の素質を最大限まで引き出している。影から無数の羽を構成し、それらすべてを自由自在に操る技術。そして、その羽を介して僅かな魔力の変化でさえ感じ取ることができるのだ。
意志を持っているかのように翼影がアリシアを追跡する。視界が遮られていようとも、羽は結界内を縦横無尽に飛び回り、些細な魔力の変化でさえ読み取ることができる。アリシアが捉えられるまで、そう時間はかからなかった。
「そこだ!」
カツン、と
翼影が結界にぶつかる音が響く。塞がれたクロウの視界では、そこで何が起きたのか知ることはできない。直後、クロウは翼影がアリシアに当たっていないということを理解する。遠隔での操作により手応えがなかったからか、クロウがそれを直感するよりも早く、アリシアが動き出した。
「”雪の弾丸”!」
「ッ! 撃ち落とせ、”翼影”!」
全方向から魔力の込められた圧縮された雪氷の弾丸が飛来する。雪遊びのように見えるその魔法に一切の容赦はない。当たれば致命傷は免れないほどの威力の雪玉が数え切れないほど飛んでくる。
対するクロウは翼影を雪玉にぶつけて相殺を試みる。しかし、劣勢だと理解したのは既に手遅れの状態になってからだった。
四方八方からの雪の弾丸。アリシアの姿は捉えられず、雪玉を相殺するので手一杯なこの状況。魔力の込められた雪の弾丸とぶつかることで翼影は相殺されて消えていく。翼影の再構成には媒介となる影と相応の魔力が必要不可欠だ。降り積もった雪が影をかき消している今の状況では大量の翼影の構成は難しい。クロウには防御と索敵に割くリソースがないのが現状だ。
しかし、アリシアは違う。幻想の雪によって結界内は雪が積もっている。雪の弾丸も元はただの雪。いくらでも創り出すことは可能だ。そして、クロウを囲んだ攻撃はアリシアの居場所を悟らせない。
(このままじゃジリ貧だな……使いたくなかったけど、しょうがないか……)
それは、一瞬の出来事だった。
(飽きるほど観たし、もう十分だ。霧のお陰で外からも見えないだろ)
アリシアは攻撃を緩めなかった。
このまま押し切れる。
そんな考えが過ぎった、その瞬間のことだ。アリシアが見たのは、結界内に広がった無数の白線。雪の純白とは違う、異質さすら感じさせるそれが視界に入った。そして、その白線の内の一つは、どこかから伸びてアリシアへと繋がっている。
(……これは)
その瞬間だった。
「ダメじゃないか、よそ見しちゃ」
「……っ!?」
突如として、クロウがアリシアの背後に現れる。余裕そうな笑みを浮かべて、そこに立っていた。
(どうやってここに!? なぜ無傷で! あの白線はブラフ!? いや、それよりもこの距離は!)
逡巡する思考。理解できないことが多すぎて思考がまとまらない。あまりにも突然のことに現実を受け止めきれずにいる思考よりも先に、アリシアの身体が動き出す。
逃げなければ。
至近距離は翼影を展開しているクロウに分がある。接近戦ではまず勝てない。距離を取って応戦を仕掛ける。
そう考えるよりも先に身体が動く。しかし、その隙にあった一瞬の硬直をクロウは見逃さなかった。
「追え、”翼影”!」
攻撃、防御、索敵、知覚。すべてを兼ね備えた最適解は何か。その問いの先にクロウが辿り着いたのが、影による羽と翼の構成だった。
それに加え、クロウの並外れた魔力操作と知覚能力が、影の魔法の素質を最大限まで引き出している。影から無数の羽を構成し、それらすべてを自由自在に操る技術。そして、その羽を介して僅かな魔力の変化でさえ感じ取ることができるのだ。
意志を持っているかのように翼影がアリシアを追跡する。視界が遮られていようとも、羽は結界内を縦横無尽に飛び回り、些細な魔力の変化でさえ読み取ることができる。アリシアが捉えられるまで、そう時間はかからなかった。
「そこだ!」
カツン、と
翼影が結界にぶつかる音が響く。塞がれたクロウの視界では、そこで何が起きたのか知ることはできない。直後、クロウは翼影がアリシアに当たっていないということを理解する。遠隔での操作により手応えがなかったからか、クロウがそれを直感するよりも早く、アリシアが動き出した。
「”雪の弾丸”!」
「ッ! 撃ち落とせ、”翼影”!」
全方向から魔力の込められた圧縮された雪氷の弾丸が飛来する。雪遊びのように見えるその魔法に一切の容赦はない。当たれば致命傷は免れないほどの威力の雪玉が数え切れないほど飛んでくる。
対するクロウは翼影を雪玉にぶつけて相殺を試みる。しかし、劣勢だと理解したのは既に手遅れの状態になってからだった。
四方八方からの雪の弾丸。アリシアの姿は捉えられず、雪玉を相殺するので手一杯なこの状況。魔力の込められた雪の弾丸とぶつかることで翼影は相殺されて消えていく。翼影の再構成には媒介となる影と相応の魔力が必要不可欠だ。降り積もった雪が影をかき消している今の状況では大量の翼影の構成は難しい。クロウには防御と索敵に割くリソースがないのが現状だ。
しかし、アリシアは違う。幻想の雪によって結界内は雪が積もっている。雪の弾丸も元はただの雪。いくらでも創り出すことは可能だ。そして、クロウを囲んだ攻撃はアリシアの居場所を悟らせない。
(このままじゃジリ貧だな……使いたくなかったけど、しょうがないか……)
それは、一瞬の出来事だった。
(飽きるほど観たし、もう十分だ。霧のお陰で外からも見えないだろ)
アリシアは攻撃を緩めなかった。
このまま押し切れる。
そんな考えが過ぎった、その瞬間のことだ。アリシアが見たのは、結界内に広がった無数の白線。雪の純白とは違う、異質さすら感じさせるそれが視界に入った。そして、その白線の内の一つは、どこかから伸びてアリシアへと繋がっている。
(……これは)
その瞬間だった。
「ダメじゃないか、よそ見しちゃ」
「……っ!?」
突如として、クロウがアリシアの背後に現れる。余裕そうな笑みを浮かべて、そこに立っていた。
(どうやってここに!? なぜ無傷で! あの白線はブラフ!? いや、それよりもこの距離は!)
逡巡する思考。理解できないことが多すぎて思考がまとまらない。あまりにも突然のことに現実を受け止めきれずにいる思考よりも先に、アリシアの身体が動き出す。
逃げなければ。
至近距離は翼影を展開しているクロウに分がある。接近戦ではまず勝てない。距離を取って応戦を仕掛ける。
そう考えるよりも先に身体が動く。しかし、その隙にあった一瞬の硬直をクロウは見逃さなかった。
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