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雪翼惨禍 ―2―

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 魔法使いの名門であるトルリーン家の現当主、アリシア・トルリーン。バウディアムス魔法学園を推薦で合格した強者。だというのに、学園での存在感が薄すぎるアリシアは日々鬱憤をため続けていた。推薦合格者など滅多に現れないバウディアムスで、これほど話題にならないことがあっていいのかと、疑念を募らせるばかりだった。
 アリシアが目立たない原因は主に、筆記、実技試験で大暴れしたモニカと、過去類を見ないほどの好成績を叩き出したパーシーと旭の三人なのだが、本人たちにそんなことを抗議しても仕方がないということは本人も理解している。


 だから、この実技試験は適当にこなすことはできない。


「ちやほやされてるのが羨ましいってわけじゃないのよ。でもムカつくでしょ? だって――」


 嫉妬であることは否定しない。けれど、それは名声に対するものでは断じてないのだ。
 奇跡の魔法という規格外(イレギュラー)を扱うモニカ、首席と次席に座するパーシーと旭。その功績を否定するつもりはない。だが一言、言ってやりたいことがあるだけ。何よりも単純な主張、それは――


()()()()()()のに」

「……ここまで持ち上げといて負けるのはダサいよ、トルリーン」

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫」


 負けるつもりないから、と言い残して、アリシアは結界内から姿を消した。


「”白の地獄(ホワイトアウト)”」


 否、クロウの視界が塞がれたのだ。一寸先すら見えない白の闇を前にクロウは身動きが取れない。音もなく、光もない。行動を奪われたクロウが次の一手を打つ。


「目眩し……まぁ、ただの時間稼ぎだよね」


 アリシアと同じ推薦合格者であるクロウ。一時的にではあるものの、共に試験に立ち向かったアリシアの手の内は把握している。
 アリシアの扱う魔法は『雪』。氷の魔法よりも更に繊細で、氷の魔法以上に手数に優れている。その分、攻撃力ではやや劣るものの、その多様な魔法に苦しめられることも少なくない。しかし――


「わかってると思うけど、君の『雪』と僕の魔法って相性最悪だと思わない?」


 クロウ・ナハトェイド。最も得意とする魔法は『影』。影を自在に操り、影を媒介としてあらゆる構成体を創り出すこともできる。ただし、影であることに変わりはないので性質まで同等のものは創ることはできない。影の少ない場所では弱い魔法ではあるものの、より多く、より深い影がある場所では無類の強さを発揮する。
 そして、このノーチェスという土地はクロウが活動するのにはあまりにも最適な土地なのである。


「”(シャドウ)”」


 常に夜空が広がるノーチェスでしかできない、贅沢な魔法の使い方。影など、探さずともどこにでも存在しているノーチェスでは、こんなこともできる。


「”翼影(オロニクス)”」


 影を集めて細分化、大量の羽を構成し一つにまとめる。肩から広がるように固定して、影の操作。オートからマニュアルへ変更。無数の羽が一つになって巨大な翼を創り出す。羽の一枚一枚に至るまでの繊細な操作、飛行することまで可能となる。


「さて、どこまで耐えれるかな?」


 攻撃と防御を両立させた、影の魔法の最適解。クロウ・ナハトェイドとアリシアが激突する。


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 魔法使いの名門であるトルリーン家の現当主、アリシア・トルリーン。バウディアムス魔法学園を推薦で合格した強者。だというのに、学園での存在感が薄すぎるアリシアは日々鬱憤をため続けていた。推薦合格者など滅多に現れないバウディアムスで、これほど話題にならないことがあっていいのかと、疑念を募らせるばかりだった。
 アリシアが目立たない原因は主に、筆記、実技試験で大暴れしたモニカと、過去類を見ないほどの好成績を叩き出したパーシーと旭の三人なのだが、本人たちにそんなことを抗議しても仕方がないということは本人も理解している。
 だから、この実技試験は適当にこなすことはできない。
「ちやほやされてるのが羨ましいってわけじゃないのよ。でもムカつくでしょ? だって――」
 嫉妬であることは否定しない。けれど、それは名声に対するものでは断じてないのだ。
 奇跡の魔法という|規格外《イレギュラー》を扱うモニカ、首席と次席に座するパーシーと旭。その功績を否定するつもりはない。だが一言、言ってやりたいことがあるだけ。何よりも単純な主張、それは――
「|私《・》|の《・》|方《・》|が《・》|強《・》|い《・》のに」
「……ここまで持ち上げといて負けるのはダサいよ、トルリーン」
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫」
 負けるつもりないから、と言い残して、アリシアは結界内から姿を消した。
「”|白の地獄《ホワイトアウト》”」
 否、クロウの視界が塞がれたのだ。一寸先すら見えない白の闇を前にクロウは身動きが取れない。音もなく、光もない。行動を奪われたクロウが次の一手を打つ。
「目眩し……まぁ、ただの時間稼ぎだよね」
 アリシアと同じ推薦合格者であるクロウ。一時的にではあるものの、共に試験に立ち向かったアリシアの手の内は把握している。
 アリシアの扱う魔法は『雪』。氷の魔法よりも更に繊細で、氷の魔法以上に手数に優れている。その分、攻撃力ではやや劣るものの、その多様な魔法に苦しめられることも少なくない。しかし――
「わかってると思うけど、君の『雪』と僕の魔法って相性最悪だと思わない?」
 クロウ・ナハトェイド。最も得意とする魔法は『影』。影を自在に操り、影を媒介としてあらゆる構成体を創り出すこともできる。ただし、影であることに変わりはないので性質まで同等のものは創ることはできない。影の少ない場所では弱い魔法ではあるものの、より多く、より深い影がある場所では無類の強さを発揮する。
 そして、このノーチェスという土地はクロウが活動するのにはあまりにも最適な土地なのである。
「”|影《シャドウ》”」
 常に夜空が広がるノーチェスでしかできない、贅沢な魔法の使い方。影など、探さずともどこにでも存在しているノーチェスでは、こんなこともできる。
「”|翼影《オロニクス》”」
 影を集めて細分化、大量の羽を構成し一つにまとめる。肩から広がるように固定して、影の操作。オートからマニュアルへ変更。無数の羽が一つになって巨大な翼を創り出す。羽の一枚一枚に至るまでの繊細な操作、飛行することまで可能となる。
「さて、どこまで耐えれるかな?」
 攻撃と防御を両立させた、影の魔法の最適解。クロウ・ナハトェイドとアリシアが激突する。