好きなフリ
ー/ー
午後から部活があるからと、観月はラケットバッグを背負って出ていった。
これで邪魔者はいない。星羅と落ち着いてゆっくり話ができる。そう思った俺は、自分の部屋から出て星羅の部屋へ行こうとする。と、部屋から出てきた彼女とばったり出くわした。彼女も同じことを考えていたのだろうか。
「お兄、ちょっと、いい?」
彼女の部屋に呼ばれ、冷たいフローリングの上に座らされる。だが、怒っているような様子はない。今朝のことは、星羅には知られていないらしい。
「あのさ、一応聞きたいんだけど、お兄は観月とどうなりたいの? ワンチャン付き合いたいとか思ってる?」
「どうなりたいと言われてもな……。まだ具体的なことは何も考えてないよ。ただ、もし観月が本気で好意を向けてくるなら、それには真剣に応えるべきだと思ってはいる」
「本気なら、ね……」
星羅にも、その部分が引っかかっているようだった。彼女も気付いていたのだろうか。
「お兄が気づいてるかわからないけど、観月は嘘ついてるよ。好きなフリをしてる。何でそんなことするのかはわからないけど」
「……お前も気付いてたのか。だから、観月はやめておけって言ってたのか?」
「まあ、それもある……かな」
それ以外にもあるのか……。
それにしても、星羅にも気づかれているというのは、観月もわかっているのだろうか。ますます彼女の目的がわからなくなってきた。
「あたしだって、観月が本気ならいいと思う。まあ、あたしは別に、お兄と付き合いたいとかは思わないし。こんなののどこがいいんだかわかんないし」
「ひどい言われようだな……」
「それにね、お兄が養子だってことを茶化してるつもりなら、それは絶対許せない。あたしがボコボコにして、海に沈めてくる」
冗談を言っている顔ではないんだが。それはいくら観月が悪くても、さすがに俺は星羅を止めるぞ。
「お前は本当に、俺のことを大事に思ってくれてるんだな。ありがとう」
「……はぁ? なんでそんなキモいこと言うの急に。別に大事っていうかさ、家族なんだから、それくらい当たり前じゃん。大体さ、あたしも観月もお兄のことは元々嫌いじゃないっていうか、まあ、使えるヤツだと思ってたし。だからって、好きとかそういうのとは違うじゃんって、まあそういうことよ」
突然早口でまくし立てられる。
使えるヤツって、お前は俺の上司か何かかよ。結局何が言いたいのかもよくわからなくなってるし。
「逆にさ、俺がお前を好きになっちゃって、付き合ってほしいってなったら、お前はどうする?」
「え、いや……まあ、考える」
一応、考えてはくれるんだ。
「お前たしか、俺を惚れさせてくれるんだろ? それって、お前も好きじゃないのに俺に好かれようとしてるじゃん。やってることは観月と一緒じゃないか? と、観月も思ってたりするんじゃないか?」
「それは……違うとも、言い切れない」
「もう一度、素直になって、お互いに本当のことを話してみた方がいいんじゃないか?」
「でも……」
星羅は何かを言いかけて、押し黙ってしまった。
観月が本当のことを言うだろうかと不安なのだろうか。それとも他に、何か言いづらいことでもあるのだろうか。
いずれにしても、お互いの考えをはっきりさせないと、今後もこのよくわからない状態は続いてしまう。それは俺にとっても、二人にとっても、決して良いとは言えないはずだ。
「ずっとこのままというわけにはいかないだろ?」
「……わかったよ。ちゃんと話す。嫌だけど。観月が本当のことを言わなかったら、どうするの?」
「ちゃんと本当のことを言うさ。俺に考えがある」
そう自信満々に言い切る俺を、星羅は不安そうにじとっとした目で見るだけだった。
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これで邪魔者はいない。星羅と落ち着いてゆっくり話ができる。そう思った俺は、自分の部屋から出て星羅の部屋へ行こうとする。と、部屋から出てきた彼女とばったり出くわした。彼女も同じことを考えていたのだろうか。
「お兄、ちょっと、いい?」
彼女の部屋に呼ばれ、冷たいフローリングの上に座らされる。だが、怒っているような様子はない。今朝のことは、星羅には知られていないらしい。
「あのさ、一応聞きたいんだけど、お兄は観月とどうなりたいの? ワンチャン付き合いたいとか思ってる?」
「どうなりたいと言われてもな……。まだ具体的なことは何も考えてないよ。ただ、もし観月が本気で好意を向けてくるなら、それには真剣に応えるべきだと思ってはいる」
「本気なら、ね……」
星羅にも、その部分が引っかかっているようだった。彼女も気付いていたのだろうか。
「お兄が気づいてるかわからないけど、観月は嘘ついてるよ。好きなフリをしてる。何でそんなことするのかはわからないけど」
「……お前も気付いてたのか。だから、観月はやめておけって言ってたのか?」
「まあ、それもある……かな」
それ以外にもあるのか……。
それにしても、星羅にも気づかれているというのは、観月もわかっているのだろうか。ますます彼女の目的がわからなくなってきた。
「あたしだって、観月が本気ならいいと思う。まあ、あたしは別に、お兄と付き合いたいとかは思わないし。こんなののどこがいいんだかわかんないし」
「ひどい言われようだな……」
「それにね、お兄が養子だってことを茶化してるつもりなら、それは絶対許せない。あたしがボコボコにして、海に沈めてくる」
冗談を言っている顔ではないんだが。それはいくら観月が悪くても、さすがに俺は星羅を止めるぞ。
「お前は本当に、俺のことを大事に思ってくれてるんだな。ありがとう」
「……はぁ? なんでそんなキモいこと言うの急に。別に大事っていうかさ、家族なんだから、それくらい当たり前じゃん。大体さ、あたしも観月もお兄のことは元々嫌いじゃないっていうか、まあ、使えるヤツだと思ってたし。だからって、好きとかそういうのとは違うじゃんって、まあそういうことよ」
突然早口でまくし立てられる。
使えるヤツって、お前は俺の上司か何かかよ。結局何が言いたいのかもよくわからなくなってるし。
「逆にさ、俺がお前を好きになっちゃって、付き合ってほしいってなったら、お前はどうする?」
「え、いや……まあ、考える」
一応、考えてはくれるんだ。
「お前たしか、俺を惚れさせてくれるんだろ? それって、お前も好きじゃないのに俺に好かれようとしてるじゃん。やってることは観月と一緒じゃないか? と、観月も思ってたりするんじゃないか?」
「それは……違うとも、言い切れない」
「もう一度、素直になって、お互いに本当のことを話してみた方がいいんじゃないか?」
「でも……」
星羅は何かを言いかけて、押し黙ってしまった。
観月が本当のことを言うだろうかと不安なのだろうか。それとも他に、何か言いづらいことでもあるのだろうか。
いずれにしても、お互いの考えをはっきりさせないと、今後もこのよくわからない状態は続いてしまう。それは俺にとっても、二人にとっても、決して良いとは言えないはずだ。
「ずっとこのままというわけにはいかないだろ?」
「……わかったよ。ちゃんと話す。嫌だけど。観月が本当のことを言わなかったら、どうするの?」
「ちゃんと本当のことを言うさ。俺に考えがある」
そう自信満々に言い切る俺を、星羅は不安そうにじとっとした目で見るだけだった。