妹を抱き枕にしていた朝
ー/ー
いつもなら起きている時間になっても、休みの日だとわかっていると、身体はなかなか起きてはくれない。頭はサイクル的にも起きろと言ってくるが、もうちょっと寝てたっていいじゃないか。
なんだかいい匂いもするし。妙に安心するような。
それに今日は、腕と足を何かに絡ませたように居心地がいい。横になった身体に何かがスッポリ収まっているようだ。
さらさらとした長い糸のようなものが指に絡まるが、嫌な感じはしない。むしろ気持ちのいい手触りだ。
……待て。
おかしいだろ。俺のベッドの上ではありえない感触だろうが。何を堪能してるんだ。この感触の正体は、もしかしなくても……。
「おはようございます、兄さん」
目を開ければ、満面の笑み。俺が抱え込んでいたのは、観月だった。
俺が寝ぼけた頭で味わっていたのは、すべて観月の感触だったのだ。
一つ大きな欠伸をして、んーっと伸びをする彼女は、まだ眠そうな瞼を押し上げて、ふっと微笑んだ。その眠そうな顔が、妙に色っぽく見える。
「どうだった? 妹枕、気持ちよかった?」
「……何やってんの? お前」
「抱き枕。兄さん、夜中なんて私のことぎゅーって放してくれなかったんだよ? もうちょっと優しくしてほしかったけど、あれはあれで……悪くないかな」
待て待て、いつからいた? というか、俺は寝ながらにして妹の感触の虜になっていたというのか。そんな、信じたくない。でまかせだと思いたい。
「お前、昨日の今日でいやに積極的だな。それに、やっぱり好きじゃないって言ってたじゃないか」
「好きじゃないと、添い寝しちゃダメなの?」
その上目遣いをやめろ。性格はともかく、顔は可愛いんだから。
「ダメってことはないだろうけど……」
「わたしが兄さんの抱き枕になりたかったんだから、それでいいでしょ? 兄さんだって、夜はあんなにわたしを求めてくれたのに。朝になったら拒絶するなんて、酷いよ……」
いかがわしい言い方をするな。わざとらしく泣きそうな顔を作ってみせても、それが偽物であることは俺にはわかる。こういうのは、兄妹には通用しない。
「なあ、観月。お願いだから聞かせてくれよ。お前の目的は何なんだ? 何をしようとしてる?」
明らかに観月は何かを画策している。とても感情的に動いているようには思えない。俺のことが好きだという言葉を本当だと言ったり嘘だと言ったり、これも何か理由があるはずだ。
「……気になる?」
「そりゃあ、気になるよ。俺のことが好きでもないのに、好きなフリをしてるのはなんでだ?」
観月は少し考え込んだ後、不意に四つん這いのまま俺に迫ってくる。鼻先が触れ合うかという距離まで顔を寄せて、こんなことを囁いた。
「……今この場でわたしの服を脱がして、自分の服も脱いで裸のままわたしに抱きついて、愛してるって言いながらキスしてくれたら、全部話してもいいよ?」
……アホか。そんなこと、できるわけないだろ。つまりは、教えない。そう言いたいのか。
「できないの? 気になるって言っても、所詮はその程度ってこと? わたしが自分を押し殺して行動してる理由を、兄さんは知りたくなんかないってことか……ちょっと悲しいな。フリだけでもしてくれたっていいじゃん」
そんな彼女の言葉に触発されるように、俺は思わず観月に肩に手を掛ける。
これを脱がして、裸で抱きつく、か。いや、やっぱり無理だ。いくら挑発されても、そんなことはできない。
「わかった。悪かったよ、兄さん。意地悪してごめんね」
俺は露骨にためらいを表情に出していたらしく、観月は俺の頭を自分の胸元へと抱き寄せる。そして、優しく頭を撫でてくれた。
「甘えん坊な兄さん。……寝言で何言ってたか、教えてあげようか?」
不意にそう言われ、一気に変な汗が出てくる。何を言ったんだ、俺。変なこと言ってない、よな……?
「観月ママ大好きって言って、わたしの首にキスマークつけてくれたら、教えてあげる」
いや、そんなことできるわけないじゃんか。最初から教える気なんかないだろ。こいつに秘密を握られたら終わりだ。
そんな絶望したような俺を見て、大丈夫、誰にも言わないよ、と笑う彼女は、天使のようでも悪魔のようでもあった。
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なんだかいい匂いもするし。妙に安心するような。
それに今日は、腕と足を何かに絡ませたように居心地がいい。横になった身体に何かがスッポリ収まっているようだ。
さらさらとした長い糸のようなものが指に絡まるが、嫌な感じはしない。むしろ気持ちのいい手触りだ。
……待て。
おかしいだろ。俺のベッドの上ではありえない感触だろうが。何を堪能してるんだ。この感触の正体は、もしかしなくても……。
「おはようございます、兄さん」
目を開ければ、満面の笑み。俺が抱え込んでいたのは、観月だった。
俺が寝ぼけた頭で味わっていたのは、すべて観月の感触だったのだ。
一つ大きな欠伸をして、んーっと伸びをする彼女は、まだ眠そうな瞼を押し上げて、ふっと微笑んだ。その眠そうな顔が、妙に色っぽく見える。
「どうだった? 妹枕、気持ちよかった?」
「……何やってんの? お前」
「抱き枕。兄さん、夜中なんて私のことぎゅーって放してくれなかったんだよ? もうちょっと優しくしてほしかったけど、あれはあれで……悪くないかな」
待て待て、いつからいた? というか、俺は寝ながらにして妹の感触の虜になっていたというのか。そんな、信じたくない。でまかせだと思いたい。
「お前、昨日の今日でいやに積極的だな。それに、やっぱり好きじゃないって言ってたじゃないか」
「好きじゃないと、添い寝しちゃダメなの?」
その上目遣いをやめろ。性格はともかく、顔は可愛いんだから。
「ダメってことはないだろうけど……」
「わたしが兄さんの抱き枕になりたかったんだから、それでいいでしょ? 兄さんだって、夜はあんなにわたしを求めてくれたのに。朝になったら拒絶するなんて、酷いよ……」
いかがわしい言い方をするな。わざとらしく泣きそうな顔を作ってみせても、それが偽物であることは俺にはわかる。こういうのは、兄妹には通用しない。
「なあ、観月。お願いだから聞かせてくれよ。お前の目的は何なんだ? 何をしようとしてる?」
明らかに観月は何かを画策している。とても感情的に動いているようには思えない。俺のことが好きだという言葉を本当だと言ったり嘘だと言ったり、これも何か理由があるはずだ。
「……気になる?」
「そりゃあ、気になるよ。俺のことが好きでもないのに、好きなフリをしてるのはなんでだ?」
観月は少し考え込んだ後、不意に四つん這いのまま俺に迫ってくる。鼻先が触れ合うかという距離まで顔を寄せて、こんなことを囁いた。
「……今この場でわたしの服を脱がして、自分の服も脱いで裸のままわたしに抱きついて、愛してるって言いながらキスしてくれたら、全部話してもいいよ?」
……アホか。そんなこと、できるわけないだろ。つまりは、教えない。そう言いたいのか。
「できないの? 気になるって言っても、所詮はその程度ってこと? わたしが自分を押し殺して行動してる理由を、兄さんは知りたくなんかないってことか……ちょっと悲しいな。フリだけでもしてくれたっていいじゃん」
そんな彼女の言葉に触発されるように、俺は思わず観月に肩に手を掛ける。
これを脱がして、裸で抱きつく、か。いや、やっぱり無理だ。いくら挑発されても、そんなことはできない。
「わかった。悪かったよ、兄さん。意地悪してごめんね」
俺は露骨にためらいを表情に出していたらしく、観月は俺の頭を自分の胸元へと抱き寄せる。そして、優しく頭を撫でてくれた。
「甘えん坊な兄さん。……寝言で何言ってたか、教えてあげようか?」
不意にそう言われ、一気に変な汗が出てくる。何を言ったんだ、俺。変なこと言ってない、よな……?
「観月ママ大好きって言って、わたしの首にキスマークつけてくれたら、教えてあげる」
いや、そんなことできるわけないじゃんか。最初から教える気なんかないだろ。こいつに秘密を握られたら終わりだ。
そんな絶望したような俺を見て、大丈夫、誰にも言わないよ、と笑う彼女は、天使のようでも悪魔のようでもあった。