ひとまずの決着
ー/ー
「あたしは……あたしはお兄のこと、好きじゃないよ。あ、嫌いってわけじゃないけど。その……異性として好きとか、そういうのは、思ってないから」
「だったら何でそんなに観月に突っかかるんだ? 観月の好きにさせればいいじゃんか」
「ダメだよ、そんなの! だって、観月は……」
そこまで言いかけて、星羅はふと口をつぐんだ。観月は性格が悪い、俺には星羅はそう言っていた。本人には言いづらいのだろうか。
「とにかく、観月みたいな性格悪い女に引っかかるお兄を見てられないの! あたしも観月嫌いだし、何が何でも邪魔してやるって、そういうこと!」
性格悪いって言い切ったし。さっきは何を言い淀んだのだろう。
しかしそれを聞いた観月も黙っていない。ピンと手を高く上げて、発言権を得ようとしてくる。
「観月なんかを好きにならないように、あたしがもっと魅力的な女でいてあげる。だから、お願い、観月に靡いたりしないで」
「いや、別に俺も観月を特別好きだと思ってないけど。お前たち二人は、俺の中ではまだ大事な妹だし」
「バカだね、お兄……。あたしは今まで通りでもよかったのに。観月がそういうわけにいかないって言うんなら、あたしだって、今まで通りにはいかないよ」
どこで歯車が狂ってしまったんだろうな。やはり、まだ話さない方が良かったのだろうか。
星羅が受け入れてくれたことで、軽く考えすぎていた部分はあった。二人は親父や母さんとは違う。ずっと知っていて、黙っていたわけじゃない。ずっと信じていたものが、突然違うと言われたのだ。当然、動揺もするだろう。
俺たち三人は、少し落ち着く時間が必要なのかもしれない。
「二人の話はわかった。今度は俺の話を聞いてくれるか?」
俺の言葉に二人は黙ったまま頷いた。
「二人の気持ちも、考えもわかった。だけど俺は、正直そこまで考えていなかった。血縁関係がなかったとしても、妹は妹だ。大事な家族なのは変わりない。そこは、今までと同じだと思ってる。だから、お前たちと恋愛関係になるとかって、考えてもみなかった。お前たちの気持ちには真剣に向き合わないといけないと思ってる。だけど、すぐには無理だ。俺が結論を出すまで、お前たちはまた喧嘩してしまうんだと思う」
星羅が観月をちらと見ると、観月は彼女へ挑発的に舌を出す。やめなさい、と軽く拳骨をくれてやると、観月はしゅんとしたように大人しくなった。
「二人の大事な妹同士が、お互いを傷つけあうのは、見ていてとても悲しい。できれば俺は、仲のいい姉妹、仲のいい兄妹でいたいと思ってる。そんな俺の気持ちは尊重してくれるか?」
一人ひとりに答えを促すと、順々に短く言葉を返してくれる。
「それは……星羅次第かな」
「あたしも、観月による、かな」
お互いに、喧嘩がしたいわけではないのか。……という風には見えないけどな。
「意見の食い違いとかで喧嘩するのはいい。ただ、相手を必要以上に煽るのはやめろ。今は口喧嘩で済んでるからいいが、手が出たら、それこそケガをするかもしれない。そんなお前たちを、俺は見たくない」
「ん……まあ、考えとく」
「あたしは……気を付けるようにするよ。お兄がそう言うなら」
一番心配な観月がそんな返事では、せっかく収拾をつけようとしたのにまとまらないじゃないか。
そんな消化不良のまま、この場は解散になってしまった。今日から春休みとはいえ、時間も時間。二人の妹はまだ中学一年生。四月からようやっと二年生になるという二人に、あまり夜更かしはさせたくなかった。
しかしその夜、二人が部屋に戻り、俺も寝ようとベッドに横になったところで、ケータイにメッセージが届いた。観月からだった。
『今日はごめん。また、ウソついた。兄さんのこと好きってこと。でも、あの場じゃああ言うしかなかったの。わたし、優しいお姉ちゃんだから』
やはり、俺のことが好きだとか愛してるだとかっていうのは本心じゃなかったのか。だが、ああ言うしかなかったというのはどういうことなんだ? それに、優しいお姉ちゃんって、そうは見えないけどな。
どういうことだ? と送り返してみても、返事が送られてくることはなかった。
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「だったら何でそんなに観月に突っかかるんだ? 観月の好きにさせればいいじゃんか」
「ダメだよ、そんなの! だって、観月は……」
そこまで言いかけて、星羅はふと口をつぐんだ。観月は性格が悪い、俺には星羅はそう言っていた。本人には言いづらいのだろうか。
「とにかく、観月みたいな性格悪い女に引っかかるお兄を見てられないの! あたしも観月嫌いだし、何が何でも邪魔してやるって、そういうこと!」
性格悪いって言い切ったし。さっきは何を言い淀んだのだろう。
しかしそれを聞いた観月も黙っていない。ピンと手を高く上げて、発言権を得ようとしてくる。
「観月なんかを好きにならないように、あたしがもっと魅力的な女でいてあげる。だから、お願い、観月に靡いたりしないで」
「いや、別に俺も観月を特別好きだと思ってないけど。お前たち二人は、俺の中ではまだ大事な妹だし」
「バカだね、お兄……。あたしは今まで通りでもよかったのに。観月がそういうわけにいかないって言うんなら、あたしだって、今まで通りにはいかないよ」
どこで歯車が狂ってしまったんだろうな。やはり、まだ話さない方が良かったのだろうか。
星羅が受け入れてくれたことで、軽く考えすぎていた部分はあった。二人は親父や母さんとは違う。ずっと知っていて、黙っていたわけじゃない。ずっと信じていたものが、突然違うと言われたのだ。当然、動揺もするだろう。
俺たち三人は、少し落ち着く時間が必要なのかもしれない。
「二人の話はわかった。今度は俺の話を聞いてくれるか?」
俺の言葉に二人は黙ったまま頷いた。
「二人の気持ちも、考えもわかった。だけど俺は、正直そこまで考えていなかった。血縁関係がなかったとしても、妹は妹だ。大事な家族なのは変わりない。そこは、今までと同じだと思ってる。だから、お前たちと恋愛関係になるとかって、考えてもみなかった。お前たちの気持ちには真剣に向き合わないといけないと思ってる。だけど、すぐには無理だ。俺が結論を出すまで、お前たちはまた喧嘩してしまうんだと思う」
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一人ひとりに答えを促すと、順々に短く言葉を返してくれる。
「それは……星羅次第かな」
「あたしも、観月による、かな」
お互いに、喧嘩がしたいわけではないのか。……という風には見えないけどな。
「意見の食い違いとかで喧嘩するのはいい。ただ、相手を必要以上に煽るのはやめろ。今は口喧嘩で済んでるからいいが、手が出たら、それこそケガをするかもしれない。そんなお前たちを、俺は見たくない」
「ん……まあ、考えとく」
「あたしは……気を付けるようにするよ。お兄がそう言うなら」
一番心配な観月がそんな返事では、せっかく収拾をつけようとしたのにまとまらないじゃないか。
そんな消化不良のまま、この場は解散になってしまった。今日から春休みとはいえ、時間も時間。二人の妹はまだ中学一年生。四月からようやっと二年生になるという二人に、あまり夜更かしはさせたくなかった。
しかしその夜、二人が部屋に戻り、俺も寝ようとベッドに横になったところで、ケータイにメッセージが届いた。観月からだった。
『今日はごめん。また、ウソついた。兄さんのこと好きってこと。でも、あの場じゃああ言うしかなかったの。わたし、優しいお姉ちゃんだから』
やはり、俺のことが好きだとか愛してるだとかっていうのは本心じゃなかったのか。だが、ああ言うしかなかったというのはどういうことなんだ? それに、優しいお姉ちゃんって、そうは見えないけどな。
どういうことだ? と送り返してみても、返事が送られてくることはなかった。